Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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フォレスタニア調査隊

シュウとユキ

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「ふと思ったんだが・・・魔神のいなくなったこの世界で、魔族を隔離する理由は何だ?」
「1つは魔族が強い事。良からぬ事を考える輩は必ずいるだろ?そうなった場合、この大陸の住人では対処出来ないからな。もう1つは魔神が封印されているって事だ。」
「・・・いつか解き放たれると?」
「いいや、それは無い。ティラミスの施した封印は完璧だ。文字通り命を懸けたんだからな。解き方を知ってるのはオレだけだ。」

解けない程に完璧な封印が施されている。にも関わらず警戒する理由は何なのか。それはルークにもわからなかった。

「意味がわからないんだが・・・」
「封印された者達を助けようと、他の世界に居る魔神達が押し寄せる可能性はゼロじゃないだろ?何をしようと無駄なんだが、それを知るのはオレだけだ。説明した所で、オレの言葉を鵜呑みにするような奴らでもない。」

アークの言葉はもっともである。敵対する者が何を言おうと、簡単に信用出来る訳がなかった。そんな相手ならば、敵対する事にはならないだろう。

「過去にあったのか?」
「いいや、1度も無いな。他の神々が押さえ込んでいるから、そんな余裕なんて無いだろう。」

つまりは、均衡が崩れれば起こり得る話だと悟ったルーク。当然不安を覚えて確認を取る。

「将来的に起こり得るって事か?」
「あぁ。創生2柱が本格的に動き出せば、確実にな。」
「・・・・・。」
「心配するな、今すぐって訳じゃない。」
「・・・その時までに力を付けろって事か。」
「そういう事だ。さてと、そろそろいいか?」

もう帰らなければならないと、アークは静かに立ち上がる。まだ聞きたい事はあるが、急ぐような事でもないと考え頷き返すルーク。それを確認したアークが転移しようとして、去り際に思い出した事を告げる。

「お前のそのチートみたいな力、期待しているぞ。それから真白雪、ティナだが・・・どちらの名前か決めておいてくれ。呼び難くてかなわん。まぁお前もか。」
「ルークじゃなくていいのか?」
「あぁ。特に意味も無いしな。3秒で考えた名前だ、気にするな。」
「は?ちょっ、おい!・・・あの野郎!!」

名付けが適当だった事を仄めかし、ニヤリと笑って消えるアーク。思わず詰め寄ろうとしたルークだったが、当然間に合わずに悪態をつく。

「まぁいいか。それより今はティナの事だ。アークの奴が何も言わなかったって事は、気付いてないんだろうな。ティナって言うより、雪の方なんだけど。健康な雪なんて、オレにも予想出来ないぞ・・・。」


何やら不穏な事を呟くルークであった。雪がどのような存在なのか、知っているのは神埼家の住人だけである。



アークが立ち去り、今後の事で1つだけ言っておかなければならないルークは嫁達の下へと向かう。使用人に案内されて辿り着いたのは大きな会議室。中に入ると、都合良くティナ以外の嫁達が勢揃いしていた。当然エリド村の者達も同席している。

「ティナは・・・いないのか?」
「えぇ。独りになりたいからと言って、何処かへ行ってしまいました。」
「そうか。好都合だな。」
「「「「「?」」」」」

ルークが呟いた言葉の意味がわからず、全員が揃って首を傾げる。

「別にティナに聞かれたくないって訳じゃない。ただ・・・みんなには警戒しといて欲しいんだ。」
「警戒ですか?」
「あぁ、警戒だ。相手は勿論ティナ。」
「すみません、意味がわからないのですが・・・。」

ルークは真剣な表情でティナを警戒しろと告げるが、嫁達はティナの何を警戒すれば良いのかわからない。代表して問い掛けるスフィアと視線を合わせた後、ルークはカレンやナディアに視線を向ける。

「詳しい事はオレにもわからないけど、今までのティナではないはずだ。過ごした年月を鑑みれば、影響は小さいのかもしれない。」
「・・・嫌な予感がするわね。」
「ナディアの言う通りだ。それはオレも感じてるしな。」
「具体的には?」

どう警戒すれば良いのかわからず、フィーナが説明を求める。

「別に敵対行動を取るとか、そういう類の話じゃない。いや、むしろその方がわかり易いかもしれないな。」
「ティナが一体何をすると言うの!?」
「母さんが心配する気持ちはわかるけど、今回は本当にそういった話じゃないんだ。ティナは・・・何を仕出かすか予測出来ない。」
「「「「「・・・え?」」」」」

深刻そうな雰囲気の中、ルークの言葉に拍子抜けする一同。しかしルークの表情は相変わらず真剣なまま。

「そうだな・・・カレンには失礼な表現だけど、オレとカレンを足して2を掛けたのが今のティナだと考えて欲しい。」
「「「「「・・・・・はぁ!?」」」」」

全員が一瞬、ルークとカレンを足して2で割った姿を想像する。それだけでも手に負えないが、ルークは2を掛けろと言ったのだ。その結果、全員が揃って思考を放棄した。スフィアやルビアでさえも。

「ルークとカレンさんを足して2で割っただけでも大問題ですよ!?」
「ちょ・・・」
「カレンがもう1人か、それ以上って事!?」
「ナディア、覚えていて下さいね・・・」
「カレン様だけでも手に余るのに、トラブルメイカーが増えるって事!?」
「フィーナは私をそんな風に見ていたのですね・・・」

瞳から光が失われて行くカレンの姿に、ルークは危機感を覚える。慌てて口をついたのは、狙いとは真逆の言葉であった。

「それどころか、カレンが可愛く見える可能性が高い!だからみんなには・・・はっ!?」
「へぇ・・・ルーク?何か言い残した事は有りますか?」
「いや、その・・・ティナを探しに行かなくちゃ!」
「「「「「あっ!」」」」」

身の危険を感じたルークが転移すると、カレン以外の全員が声を上げる。しかしすぐさま不穏な気配を感じ取り、全員がカレンから距離を取ろうとした。

「スフィア、ナディア、フィーナ!貴女達は私とじっくり話し合いましょうか?」
「「「いや、あの・・・」」」
「「「「「・・・・・」」」」」

カレンに捕まった3人を残し、他の者達は静かに部屋を後にするのだった。




1人だけ逃亡した事で4人を敵に回すだろうと考えたルークだったが、そんな考えはすぐに吹き飛ぶ。それはルークの転移先がティナの部屋であり、そこにティナの姿があった為だった。

「ティナ・・・」
「どちらが本当の私なのでしょうか?」
「どっちも、って答えを望んではいないんだろうな。」
「・・・重ねた歳月ではティナですから。」
「そういう意味だと、オレは秀一なんだよな。」

この時、ルークもティナも何方か一方の姿を選択すべきだと考えていた。ティナはティナを、ルークは秀一を選ぶ方に傾いている。互いの考えが手に取るようにわかるからこそ、ティナは悩んでいたのである。

この悩みに関しては、明確な答えなど無い。どちらを選んだとしても、責められる事は無いのだから。だからこそティナは悩んでいた。贅沢な悩み故に、答えを出す事が難しいのだ。


「ねぇ?・・・アナタはどっちのワタシが好き?」


この質問に、ルークはどう答えるべきか悩む。おそらくだが、自分の答えによって決まるだろうと感じたからだ。最愛の人の今後を左右するであろう選択。しかしズルいとは思わない。雪であろうとティナであろうと、一生を共に過ごす覚悟は出来ている。責任を取ると誓っている。

どちらも愛している。そんな答えは許されないと感じていた。だからこそ悩むのは一瞬であった。

「・・・どちらか一方を選べと言われたなら、オレは雪を選ぶ。」
「そっかぁ・・・。」


ルークの答えは、ティナの予想通りであった。ルークはいずれ皇帝の座を退く。そうなった時、秀一の姿の方が都合が良いのは明白。嫁達の事をどうするかは先の話だが、ティナも例外ではない。

退位した後、行方をくらますのが最適。その場合、秀一の姿を選択した方が都合が良いのは明白である。ティナのままであれば至らなかった考えも、雪の記憶を取り戻した今なら容易に理解出来た。

しばし天井を眺めて沈黙するティナを見守っていると、顔を下げたティナと目が合った。

「・・・決めたよ。みんなの所へ行こっか?」
「あぁ。」

ティナの選んだ答えは気になるが、みんなの前で打ち明けるとわかり振り向くルーク。扉へと歩き出したルークに、ティナが声を掛ける。

「シュウ君は、どうしてみんなをお嫁さんにしたの?」
「・・・ティナが望んだから、かな。」
「私?」
「あぁ。本当はティナだけのつもりだったんだ。でも、ティナはそれを望まなかった。だからあの時・・・ナディアも受け入れる事になった時、考えを改めた。」
「どんな風に?」

それまで振り返る事なく、斜め上を見ながら答えていたルークが振り返る。

「雪に友達を、家族を作ってあげようと思った。」
「そっか・・・。なら、もっと後に雪が現れてたら?」
「とりあえず謝ったかな。その後はわからない。」
「みんなと別れて欲しいって言ったら?」
「その時は・・・雪とは違う道を歩む事になっただろうな。そこまで無責任な男じゃないって事は、誰よりも雪が知ってるだろ?」
「そうだね・・・そうだね!」

ティナの姿で雪の口調というギャップに戸惑いつつも、ティナが笑顔を見せた事で安堵するルーク。ティナに微笑み返すと、嬉しそうにルークの右腕に飛びつくティナであった。



ティナに右腕を抱えられたまま会議室へ辿り着き、扉を開けると全員の視線を浴びる事となった。誰もが思い思いの言葉を口にしようとしたが、それをティナが遮る形で口を開く。

「悩み抜いた末に決めました。ティナ=ブランシェは今後、神崎雪として生きて行きます。」
「オレも神崎秀一として生きていく事になるけど、暫くの間はオレも雪もルーク、ティナでもあるから。一応名前は・・・シュウとユキって事で頼む。」

揃って頭を下げる2人。数秒の後、顔を上げると全員が笑顔で頷くのが目に入った。受け入れられた事でホッとしたシュウとユキは、顔を会わせて微笑み合う。


すると2人の体から眩い程の光が放たれ、その場に居合わせた者達は耐えきれずにギュッと目を閉じるのであった。
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