Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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フォレスタニア調査隊

閑話 目玉は焼きません2

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ルークが使用人達を執り成している頃、嫁達はいつものように会議室に集まっていた。議題は当然、今回の卵不足について。

「事情が事情ですので、今回は自由に討論します。では、みなさんどうぞ!」

いつもならば司会進行を務めるスフィアが、役目を投げ出した。何故なら今回の一件は、かなり急ぐ必要があると判断した為だ。出来れば夜明け前には卵を確保しておきたい。そうしなければ、朝食の質が落ちるからである。

だからと言って、普段は急いでいない訳でもない。毎回スフィアが司会進行を務めるのは、ルークの意向を汲み取っての物だからだ。


嫁の数が多いというのは、多くの危険を孕んでいる。派閥が出来るかもしれない、多数が1人を責め立てるかもしれない。それをルークが嫌っているのである。そうならないよう、スフィアが中立を保っている事で、嫁達の平穏が守られていた。

今回それを辞めたのには、他にも理由がある。責任のほとんどが、誰によるものなのか。わかった上で、スフィアも感情的になってしまったのだ。それだけ食い物の恨みは恐ろしいと言えよう。


「1人当たりの卵の消費量を決めるべきです!」
「「ダメよ(です)!!」」

珍しく挑戦的な意見を述べたのはリノア。対するはティナとナディア。ティナは言わずともわかるのだが、ナディアが反対するのには訳がある。ナディアはプリンが大好きだった。プリンの為ならば、ルークから買収されるのも厭わない程に。まぁ、犯罪行為に手を貸す程ではないのだが。

ティナとナディアの反応を予測出来ていた嫁達だったが、リノアの態度には驚きを隠せない。実はリノア、この世界の一般的な成人女性と比較しても少食の部類に入る。その理由は、勉強も運動も得意でないが為に、量を食べる必要が無かったのだ。

例に漏れずスイーツは大好きなのだが、他の嫁達よりも食べられない。沢山食べるティナを見て、羨ましかったのだ。常日頃から抱え続けた感情により、ルークの嫌いな醜い争いへと発展する。

「満足な供給量ではない卵なのですから、平等に線引きするべきだと思います!」
「それならスイーツだけにして、料理に卵を使わなければいいじゃない!」
「「「「「はぁ!?」」」」」

スイーツ・・・プリンがあれば良いと思っているナディアの言葉に、他の嫁達が異を唱える。

「巫山戯ないでよ!甘い物の食べ過ぎは良くないって、ルークも言ってたじゃない!!」
「それって太るからでしょ?気になる人は控えればいいのよ!私は太らないもの!!」
「「「「「っ!?」」」」」

ルビアの言葉に言い返すナディア。売り言葉に買い言葉なのだが、普段あまり動かない嫁達を敵に回す一言である。

「アンタねぇ!?馬鹿みたいにプリンばっかり食べてるくせに!」
「むっかぁ!ルークに取り入ろうと必死になって、食事を控えてるような女に言われたくないわ!!」
「ナディアさん!それは淑女の嗜みというものです!!」
「そうよそうよ!私もスイーツにがっついてるナディアの姿、みっともないと思ってたわ!!」
「リリエル!アンタ、そんな風に思ってた訳!?」

予想もしていなかったリリエルからの酷評に、ナディアが圧倒的劣勢を悟る。他の嫁達が頷いているのを見れば、余程の馬鹿でもない限り当然だろう。しかし言い返さねば不利になるのだから、ナディアはすぐに声を上げる。とは言っても、苦し紛れの言葉なのだが。

「ちょっ!?わ、私なんかより圧倒的に食べてる人がいるでしょ!!」

ルークの秘技、話題逸らし。パクるのは良くないが、この場では最も効果的な技であった。全員の視線が1人に集中する。それを受けた人物は、全員の視線を追って振り返った。しかし背後に人などいない。

「・・・誰もいませんよ?」
「「「「「アンタよ!!」」」」」
「ガーン!」
「ぷぷっ!」

まるでコントのようなやり取りに、部屋の外から笑いを堪える声が聞こえて来る。扉の前で聞き耳を立てていたのは、他でもないルーク。ティナが責め立てられるだろうと考え、成り行きを見守っていたのだ。

まぁ本当ならば、もっと前に突撃するつもりだった。しかし予想外にも到着した時、何故かナディアが標的にされるという事態。思わず中に入るのを躊躇ってしまったのだ。さらにはティナと嫁達のやり取りが目に浮かぶ状況に、毒気を抜かれて見守る事を選択した。・・・やってる事は盗み聞きなのだが。



ルークの声など聞こえなかったのだろう。嫁達はそのまま話し合いを続ける。

「そもそもティナが馬鹿みたいに食べるからでしょ!」
「馬鹿とはなんですか!!」

ナディアの言い方に、珍しく憤慨したティナが詰め寄ろうとする。居合わせた者達が慌てたのは言うまでもない。これは不味いとばかりに、唯一止められるカレンが止めるのだった。

「落ち着いて下さい。このまま水掛け論を続けても無意味ですよ?」
「そうですね。カレン様の言う通り、此処は責任を追求する場ではありません。」
「ならどうするの?」
「どうやって卵を確保するか考えるべきではないでしょうか?」

ルビアの問い掛けに、珍しく口を開いたのはクレア。こういう時、王族の中でも比較的まともな彼女は口を閉ざす事が多い。口は災いの元なのだと、良く知っているから。しかし今は、火の粉が降り掛かっている。黙ってなどいられないのだ。

「何処からか買う事は出来ないのですか?」
「エミリアさんの言いたい事はわかりますが、それは難しいでしょうね。そもそも卵を供給しているのは、ルークとルビアさんが作った地下農場です。各国へ順番に卸していますから、我々の下に届くのは数日、或いは10日程掛かるでしょう。」

丁寧に事情を説明するユーナ。敢えて言いたい事を言わなかったのだが、鋭い者達は察知する。

「この国に順番が回って来ても、私達の需要を満たす程の供給量ではないって事ね?」
「はい。その辺はルビアさんが良くご存知かと・・・。」

フィーナの問い掛けに、困ったユーナは説明をルビアへ丸投げする。全員の視線が注がれ、ルビアは正直に答える事にした。

「責任者としての権力を振りかざしてるから、本当は答えたくないんだけど・・・。正直に言うと、私達はかなり優遇されてるわ。本来は国単位で卸す取引の中に、私達だけの枠があるのよ。」
「「「「「?」」」」」

自分達だけの枠。そう言われてもピンと来ない嫁達が首を傾げる。その為ルビアは、細かい事情を説明する事にした。それはこうである。

地下農場の食材は、日替わりで卸す国が決まっている。これは希望する国々との話し合いによって決められていた。例えば今日は帝国、明日はカイル王国、その翌日は獣王国。といった具合である。

そのローテーションの中に、ルーク専用の日が存在するのだ。1日取引を行わない日が存在するのだが、各国はそれを容認した。容認せざるを得なかった、とも言う。

希少な食材を多く取り扱う、帝国地下農場。希少どころか、通常であれば出回らない食材を多く含む。取引して貰えるだけでも有り難い事なのだ。


不正ではないが、権力を振りかざすような行為を嫌うルーク。しかし嫁の為を想えば、そんな事も言ってられない。無論、自陣から不満の声が上がらぬよう、対策は万全である。ルーク専用の取引ではあるが、農場で働く者達にも充分な量を分け与えている。所謂従業員特典だ。

これにより関係者から不満が挙がる事も無く、嫁達は満足な食事を摂る事が出来ていたのだった。


「知りませんでした・・・」
「私達の為に・・・」

大きな声で言えない為、ルビア以外では取引を取り纏めるユーナしか知り得なかった内情。ルークの優しさと、何も知らなかった自分の愚かさに俯く嫁達。聞き耳を立てていたルークは、そろそろ潮時かと思って扉を開ける決断を下す。だがしかし、事態は思わぬ方向へと突き進む。

「・・・みなさん!我々に残された手段は1つです!!」
「買えないなら!」
「自分達で集めるしかないわね!」
「「「「「おぉ!!」」」」」

「へ?」

嫁達の掛け声に、扉に手を掛けたままのルークが間抜けな声を上げる。嫌な予感しかしない為、慌てて扉を開けるのだが・・・。

「だ、誰もいねぇ!これは・・・・・時既にお寿司!!」
「「・・・・・。」」

あまりにも予想外の状況に、思いついたのは下らない一言。脇に控えていた使用人達も、あまりの下らなさに声を失う。


まさか全員が揃って夜に転移しようなどとは夢にも思わないルーク。色んな意味でどうしたら良いのかわからず、暫し途方に暮れるのであった。
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