スキル無限のサラリーマン、異世界で英雄になる

ただのA

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第2話:人喰い狼の巣窟

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第2話:人喰い狼の巣窟

「この森は”人喰い狼”の巣窟です」

エリスの言葉に、健一の背筋が凍る。

「……マジかよ」

異世界に召喚されたばかりで、右も左も分からない。そんな状態で、いきなり魔物との戦闘とか無理ゲーすぎる。

「とにかく、慎重に進みましょう。今のあなたでは、まともに戦うのは危険です」

エリスは穏やかに言うが、その表情には微かな緊張が滲んでいた。

「この森を抜ければ、近くの村に辿り着けます。そこに着けば、武器や防具を整え、戦う準備ができるでしょう」

「なるほど……。じゃあ、さっさと抜けるしかないな」

健一は深呼吸し、森の中を進み始めた。
迫りくる影

森は思った以上に静かだった。葉擦れの音と、遠くで鳥の鳴く声が聞こえるだけ。

だが、その静けさが逆に不安を煽る。

(……まるで、何かが俺たちを狙っているみたいだ)

その予感は、すぐに現実のものとなる。

ガサッ……!

「……ッ!」

茂みの奥、赤く光る二つの眼。

健一は本能的に分かった。“人喰い狼”だ。

「やばい……!」

狼は低く唸り声を上げながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。その動きは獲物を狙う捕食者そのものだった。

(どうする……? 逃げるか? いや、背を向けた瞬間に襲われるかもしれない)

武器はあるが、剣を握った経験はゼロ。しかも、スキルの使い方すら分かっていない。

「健一さん、落ち着いてください」

エリスの声が冷静さを取り戻させる。

「あなたのスキルの力を信じてください。あなたは全てのスキルを習得できる。つまり、戦いの技術も、今ここで学べば身につくはずです」

「今ここでって……そんな簡単に……」

だが、その時。

——スキル習得開始。

頭の中に、何かが流れ込んできた。剣の握り方、敵との間合いの取り方、狼の弱点——すべてが、一瞬で理解できる。

(……これは……!)

健一は、腰の剣を抜いた。

狼が飛びかかる。

(動きが見える……!)

健一は一歩踏み込んだ。剣を横に振る——刃が狼の脇腹をかすめ、血飛沫が舞う。

「……やれた?」

狼は怯んだが、まだ倒れない。鋭い牙をむき出しにし、次の一撃を狙っている。

「まだ油断しないでください!」

エリスが警告する。健一は剣を構え直した。

(いける……俺にも戦える……!)

次の瞬間、狼が飛びかかってきた。

だが——。

ズバッ!

剣が狼の喉元を貫いた。

狼は短い悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。

「……勝った……?」

恐る恐る息を整える健一。やがて、狼の体はゆっくりと光に包まれ、消滅していった。

「やりましたね」

エリスが微笑む。

「健一さんは、もう立派な戦士です」

「……いやいや、マジで信じられねぇ……」

まるでゲームのように、戦い方が身についた。これが**「スキル無限習得」**の力。

しかし、健一は気づく。

「まだ……他にもいるな」

周囲に、複数の赤い眼が光っていた。

「チッ……マジかよ」

人喰い狼たちが、ゆっくりと包囲を始める。

——異世界最初の試練は、まだ終わらない。

|→第3話へ続く
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