無色の騎士《ナイト・オブ・カラーレス》

花月慧

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第一章 第一部

死闘 《前編》

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ターニャが目の前から消えた。僕はその光景を目の当たりにして頭が真っ白になった。

「ターニャ!ターニャ!」

僕は叫びながら、一目散に走り出しターニャを探した。さっきまでそこにいたのに地面が抉れ、なにも残さず消失していた。

ドコデ、マチガエタ・・・。ナンデ、ターニャガ・・・。ヤマオトシノセイ、ソレトモボクノ・・・。

「アタルッ!あれっ!あそこに、ターニャがっ!」

思考が深く沈みそうになっていた僕は、ドブルの声ですぐさま顔を上げ、ドブルが指を指す方を見た。ターニャだ!木に引っ掛かっていて生きているのか、ここからじゃ分からないが生きているかもしれない事実に僕は安堵した瞬間、木が激しく揺れていることに気づいた。もしや!

ヴモオオオッ!

僕の悪い予想は当り、山落としが木を揺らしターニャを落とそうとしていた。ヤバイっ!ここから降りるには・・・、くそっ!考えてる暇なんてない、やるぞっ!。僕は決心すると、腰に巻いていたロープをほどいていき崖に近い岩にロープをしっかりと結び始めた。

「ア、アタル。どうする気だ?まさか!」

「ああ、これで崖を降りる」

「は?こんな高さをそんなロープ1本で降りるのかよ!」

「ああ、これしか方法はないっ!」

「いやいや、俺が心配してるのそのロープの長さ!そんな、ロープじゃ岩に結んだだけで崖からちょこんと出るぐらいの長さしかねえじゃん!」

「え?」

「え?じゃねえよ!動揺してんのか?アタル、落ち着けよ」

「お、落ち着いてるよ!いいから、見てろっ!あっ!」

僕は走って崖から飛び降りようとしたが、ロープに阻まれ飛び降りることができなかった。

「な、言っただろ!お前今、杭でロープに繋がれた犬みたいになってたぞ」

「お、おのれっ!山落としめっ!」

「いやいやいや、完全にアタルの自爆じゃん。・・・はぁ、これ使えアタル!」

そう言って、ドブルは自分のカバンからロープを取りだし放り投げた。僕はそそくさと何事もなかったようにドブルからもらったロープを結びだした。

「よし!これで完璧!ドブル援護頼んだぞ!」

「なんか、心配なんだけど・・・。それに俺の実力分かってるんだろ!期待すんな!」

そうして、準備を終えた僕は崖下を降りていった。

うわああああ~っ!っとととと、てっ、痛ってえっ!ああ、痛え、痛え。だけど、今のは本当に危なかった。格好よくおりていったものの気持ちが焦ってしまいロープを掴みそこなり、あやうく崖下へと叩きつけられるところだった。なんとか手探りでロープを掴めたから良かったものの、掴めなかったとしたら・・・。うん、考えるのは止めよう、早く降りないと。

そして、半分の距離を過ぎた矢先にズシンっという音が辺りに鳴り響き、僕は恐る恐る振り返った。

「ターニャッ!」

ターニャがいたであろう木々が薙ぎ倒されるのを見て僕はありったけの声を張り上げたが、ターニャには届いているようには思えなかった。僕は掴んでいたロープを放し、一気に落下していった。掴んでは放し、掴んでは放しと繰り返しようやく地上へと降り立った僕は急いで木が倒れた場所まで駆けてゆき、ターニャを探すが見つからなかった。そんな僕の前に、あいつが姿を現した。

「サガシモノハ、コレカ?」

なぜか言葉を話す山落としが、一足の靴を放り投げた。僕はただ、眺めるだけ。白のブーツ・・・。あれ?どこかで、見たような・・・。

「イイマリョクヲモッタ、メスダッタゼ!モウスコシデ、コノチカラはオレノモノダ!ソレマデ、アソンデヤロウ?ニンゲン!」

モウスコシデ、もう少し・・・。!?たしかに、アイツはもう少しと言った!まだ、取り込まれて間もないのか?もしかしたら・・・。僕は希望を胸に抱き山落としを睨み付けたままポシェットから鉄製の小さなケースを取りだし開封した。中には赤と青いカプセルが二つ入っており、その中の青いカプセルを手に取ると、深く深呼吸をして口の中に放り込んだ。

「さあ、覚悟しろよっ!豚野郎!」

ドンッ!という音とともに巻き上がる砂煙。加速して一瞬で山落としの前に来た僕は、山落としの鼻先を殴り付けた。

「らああああっ!はあ、はあ、やべぇ、すげえ疲れるっ!けど、イケるっ!」

山落としを殴り飛ばした僕は深く息を吸い込み山落としに追い討ちをかけようと走り出した瞬間、ヤツの顔がニヤリと笑ったように見えた。ゴオッと突風が突然吹き荒れ僕は近くの木に叩きつけられた。

「ぐはぁっ!はあ、はあ。くそっ!もしや、ターニャを取り込んだからか。はあ、はあ。早く、早くしないと・・・」

僕は吐血した口を拭い、走り出した。山落としは待ち構えていたかのように、周囲に魔方陣を展開し、幾つもの熱光線を打ち出してきた。

「数が増えようが、余裕っ!?」

「ハハハハハッ!クラエッ!」

複数の熱光線を避けた先には、山落としが口を大きく開け待ち構えていた。僕は咄嗟に腰に差していた瓶を投げ、笑った。

「はっ!バカみたいに開けやがって、また喰らいな!」

何度も味わった苦痛からか、投げつけた瓶を眺め山落としは身体を強張らせた。その一瞬の隙をついて、ぼくは飛び上がって開いていた口を上から叩きつけた。

「オラアアアアッ!」

山落としはあまりの衝撃に倒れこみ、呻き声をあげていた。更に足で頭を踏み続け、気づくと山落としの頭は地面に沈んでいた。

「はあ、はあ、このまま大人しく寝てりゃあいいんだけど・・・そんな訳ないか」

山落としは、僕ごと勢いよく跳ね上がり地面から脱出した。後方に飛んだ僕は上手く着地出来たものの満身創痍だった。

「ぐっ!ごほっ、ごほっ!はあ、はあ、もうリミットか・・・」

僕は血を吐き、膝をついてしまった。先程飲んだカプセルの影響か、手足が痺れてきたようだ。悪いターニャ、助けられそうにないや、天国で謝るから許してくれ。・・・ごめん、ターニャ。

「マアマア、タノシカッタゾ。ニンゲン」

立ち上がることすらままならい僕の目の前に山落としは大きな口を広げていた。全てを諦め目を閉じた瞬間、ブギャッ!という山落としの鳴き声で僕は驚いて目を見開いた。山落としは目から血を流して転げ回り、僕は誰かに担がれようとしていた。

「はっはっはっ!親友よ!真のヒーローは、ピンチの時に駆けつけるのだ!」

ズボンのお尻が破けたが為にチグハグな布を張り付けたおかしなヒーロー《ドブル》が高らかに笑っていた。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
短いですが、この登場で終わらせたいが為にこんな感じに・・・。まあ、前編ということでご勘弁を
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