兄の溺愛がエグいので家出しますっ。

ナツキ

文字の大きさ
9 / 26

9/おかずな人とシコい兄

しおりを挟む
ガムとの約束なんかもうどうでもいい。

モモちゃんとのやわらかいえっちも、ガムとの倒錯的なそれからも、ナギとの情事に比べたら雲泥の差だ。
甘く官能的な誘惑に負けて、オレは用務員室奥に設置された仮眠室へと足を踏み入れた。

「んっ……ま、って……」
戸棚で見えなかったそこに辿り着くやいなや、ナギは飢えていた動物のように愛撫し始めた。
性欲にまみれたオレが待てと言いたくなるくらいにナギはがっついている。
グチュグチュと汚らしい獣のような深いキスをされ、オレは酸素が足りずにたどたどしく喘いだ。
「んあっナ、ナギィッ……」
咥内を犯されながら乳首を摘まれ、股間は右膝で刺激され、ビクビクと身体が痙攣した。
「クオン……」
オレの悶える様子に余裕な顔をして微笑むから、オレは息も絶え絶えに煽ってやった。
「っ……お前、かっこいいくせに、なんでこんな下品なキスすんの」
「気持ちいーんじゃないの?」
わざとらしく驚いた声を上げるもんだから腹が立ったけど、オレはもっともっと気持ちよくなりたかったので兄に服従する。
「気持ちいーに決まってるじゃん……」
「クオン……」




プチュ……クチュ……
「はぁ……クオン……ちんぽこすってやるから、脱ぎなよ」
「ん……」
オレはキスを受けながらハーフパンツとトランクスを下ろし、ナギの手を誘導する。
激しい獣のキスは、オレの欲求を満たすに十分で、ちんぽはバキバキになり今にも破裂しそうだった。とろとろ流れ出る先走りを塗りつけながら扱かれると、オレは何度も初めての快感を得ておかしくなりそうになる。
「んっ♡ん゛ん゛っーーー♡♡♡」
「イキそ? まだダメだよ」
ふいに、ナギは扱く手をやめた。
「んぁ……」
はぁ、はぁと束の間の休息で酸素を脳に送る。
細胞のひとつひとつが、ナギの刺激に鼓舞していた。沸き立つような感情は、ナギが兄だということもそれで不快な思いをしていたことも帳消しにしてしまった。


きっとオレの理性はぶっ飛んだんだろう。ただただエクスタシーを求めるサルのような感覚だ。目をつぶり、同じ顔のあいつを思い浮かべる。あの冬毛の鳥のような頭をしたかわいい彼も、実はオレと同類でこんなことしてんのかななんて思ったりし、淫らな様子を想像してピクピクと甘イキを繰り返した。




兄の病的な偏愛の行先に、ついに気づかなかった。









「うっ………」

ドビュッドビュッ

「はぁっ♡はぁっ♡」

「いっぱい出たね♡クオンの、舐めていい?」
どろりと右手にへばりついた精液を、ナギはおいしそうに舌を這わせる。
「初めてクオンのザーメンもらえた♡♡♡」
「きも……」
ふー、と長い息を吐き、呼吸を整える。
「ナギ、キスうまいね」
「そう? 良かった」
ナギはにこにこと水かきを舐めながら返事をする。その表情は、とんでもなくエロかった。約束がなければ、もう少し相手してやってもいいなと思うほどだ。
だがオレは鍵を無くしたガムがかわいそうだと思い、服を整えたあとリュックからスマホを取り出した。
ーーー鍵あった?
オレはガムがどんな状況か確認しようと、まずはメールを打ってみた。用務員室から出たら電話してやろう。

そう考えていた。

お気楽なほどに、ナギの溺愛ぶりを軽んじていたんだ。

オレがのらりくらりとリュックを背負う頃、ナギは左手でスマホを取り出し、画面を確認していた。そうして、オレが背を向け二歩三歩歩く刹那の時間に、素早くタイピングしていた。
ーーーない
同時に、オレのスマホに返事が来た。
「……」
仮眠室から出る前に、戸棚を曲がる前に、ナギの方をちらりと見やる。

ナギはこちらを見て微笑んでいた。

「……じゃあな」
ゾクっと悪寒が走り、オレは慌てて別れの言葉を告げる。
無言のまま、ナギは手を振った。





自転車のサドルに座り、オレはガムに電話をする。
「あ、ガムー今どこ?」
「……。……ははっ」
「……なに……」
笑う声は、ガムの声色とは違った。再び、オレを恐怖が支配する。

背後でドアの開く音がした。




「「まだ気づかないわけ」」




二重に聞こえたナギの声は、穏やかで慈愛に満ち、純真な乙女のごとく澄んだものだった。








オレは、逃げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...