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①
16/ゴールな人とキチガイな兄
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前言、即撤回。
やっぱり兄貴がキチガイすぎる。
「やっめ……!!」
駅前の有名なビジネスホテルにチェックインし部屋に入った途端、ナギはオレにまとわりついてきた。
ミツキをシングルルームの別室に泊まらせたと思ったら。
「ピンチを救ってやったんだから、お礼ぐらい言って欲しいなあ~」
「はいっはい゛っありがとな゛っ!!」
オレはヤケクソで叫ぶが、ナギはそれだけでは離れてくれなかった。
「離せよっ!!」
ナギはドアからの数歩をくっつきながら歩き、そのままベッドへと押し倒してきた。
手はそれぞれ絡ませて押さえ込み、股間にはナギの折り曲がった膝を押しつけられた。
「はぁ……朝の続き、しような」
獲物を捕らえて興奮したナギは、体温を爆発的に上昇させている。
「キモいんだよっおおお前から逃げたんだって分かるだろ!! 追いかけてくんなよ」
オレはありったけの声を出して叫ぶ。
するとナギは顔をしかめたので、オレは少しビクついた。
「クオンとたくさん話したいけど、そんなに大声出すなら口ふさがないといけないな?」
ヒンヤリと冷気の漂う口調にオレは萎縮したが、このままではマズイと思い慌てて謝ることにした。
「ナ、ナギごめん」
「……いいよ、怒ってないよ?」
ナギはそう言って、オレの口を右手でふさいだ。
「ッッッ!!!」
ナギが、ためらいなくオレの右腕に噛みついた。
激痛が全身を巡り、両足をバタつかせる。
抵抗するオレを簡単に押さえ込み、口もふさいだままナギは涼しそうに囁いた。
「これは、ミツキちゃんを危ない目に遭わせたお仕置き」
「ン゛ン゛ッ!!」
頭を振って手を振り払おうとするも、ナギの太くて強い腕はびくともしない。代わりにうつ伏せにされ、上から押さえ込むようにのしかかってきた。
「もう大声出さない……って約束できるなら、離してあげるけど」
すぐにオレは首を縦に振り、兄の条件を受け入れた。
「っはぁッーーーッ」
離されるや否や、オレはありったけの酸素を吸い込んだ。
鼻まで抑えやがって。
「ッ……クソナギが」
オレはまたふさがれないように、小さな声で悪態をついた。
「かわいい、クオン。オレの身体の下で、それ言う?」
「その勃ってるやつ擦ってくんな」
ナギは囁きながら、スリスリと股間をオレの尻に擦り付けていた。
「ミツキちゃん女の子なんだから、気をつけないとダメだろ」
真っ当な説教とエロい仕草を同時にしてくんな。キチガイ野郎が。
「東京もだけど、大阪も子供が行っちゃダメなとこがあるんだよ?」
「悪かったよ……」
確かに、オレだけでなく妹にまで危険な目に遭わせるとこだった。これについては、オレは猛烈に反省しなければならない。
「ミツキ、一人じゃ心細いだろうから、こっちの部屋に呼ぼうよ」
「そうだな、お風呂とかあるだろうから少ししてから連絡しような」
「ラインで入れとけばいいだろ。オレがメール打つからちょっとどいて」
オレは早く兄貴をどかせようと、少し強引に提案した。
が、ナギはオレの上から動こうとはしない。
はぁ、はぁ、と説教しながらも性欲を爆発させていたのだ。
「……たまんないなあ、クオン……♡」
荒く息を吐きながら欲情されても、オレの代わりを見境なく探してるやつなんか信用できない。
「……お前、昨日ガムとヤッたの?」
オレは一番気になっていたことを訊ねる。
「あー、写真見てくれたんだな? もしかして嫉妬してくれた?」
「なっ。……誰が誰に嫉妬するかよ。ナギ、オレのことあきらめたんじゃねーの」
じんわりと伝わる体温に怯えながら、オレは強気での発言を繰り返す。
「ガムくんと遊んだからそう思った? 細っこくて、女の子みたいだったよ」
なんだ、その言い方は。答えになってないだろ。
ちんぽ突っ込んだか突っ込んでないか、ハッキリ言って欲しい。
それでオレの気持ちは変わる。
「オレが好きなのは、クオンだけだよ」
そう言って、ナギはオレの首にキスをした。
くすぐったくて、それでいて快感で。
このまま、ヤッてみたいような気もする。
それは本当にただの興味本位だ。ナギが好きだから、ではないのだ。
「じゃあ、お前ガムとはヤッてないんだな?」
「いやだからエッチはしたよ? ガムくんはちょっと痩せすぎだな」
「はぁあ゛?!!!」
オレのこと好きだと言うくせに、オレを好きだと言うガムとエッチしたのかよ。
「バカなのお前?!」
振り向きながら、思わず大声を出す。
「し、クオン。クレームくるだろ」
「い、いやだってさ……」
「クオンがどんな子好きになるのかなあって知りたかっただけだよ」
いやいやいや。
オレはめちゃくちゃ女の子大好きだわ。気になってた女の子は、いつのまにかガムのセフレになっていた。それでなんだかムカついて、ガッカリもして、ガムにキスしてやった。
あれ。
これってナギのやったことと同じか?
オレは梨央奈ちゃんに嫉妬させようとは思わなかったが。
まあ、もうどっちでもいい。
梨央奈ちゃんにも、ガムにも、もう興味はなくなってる。
ナントカ伊織さんに会ったか、そしてヤッたのか聞きたくなったが我慢した。
これ以上、ナギにオレの思考を読まれたくなかった。
今夜をどうにか乗り切ろう。
オレはまだ、家出を諦めてはいない。
やっぱり兄貴がキチガイすぎる。
「やっめ……!!」
駅前の有名なビジネスホテルにチェックインし部屋に入った途端、ナギはオレにまとわりついてきた。
ミツキをシングルルームの別室に泊まらせたと思ったら。
「ピンチを救ってやったんだから、お礼ぐらい言って欲しいなあ~」
「はいっはい゛っありがとな゛っ!!」
オレはヤケクソで叫ぶが、ナギはそれだけでは離れてくれなかった。
「離せよっ!!」
ナギはドアからの数歩をくっつきながら歩き、そのままベッドへと押し倒してきた。
手はそれぞれ絡ませて押さえ込み、股間にはナギの折り曲がった膝を押しつけられた。
「はぁ……朝の続き、しような」
獲物を捕らえて興奮したナギは、体温を爆発的に上昇させている。
「キモいんだよっおおお前から逃げたんだって分かるだろ!! 追いかけてくんなよ」
オレはありったけの声を出して叫ぶ。
するとナギは顔をしかめたので、オレは少しビクついた。
「クオンとたくさん話したいけど、そんなに大声出すなら口ふさがないといけないな?」
ヒンヤリと冷気の漂う口調にオレは萎縮したが、このままではマズイと思い慌てて謝ることにした。
「ナ、ナギごめん」
「……いいよ、怒ってないよ?」
ナギはそう言って、オレの口を右手でふさいだ。
「ッッッ!!!」
ナギが、ためらいなくオレの右腕に噛みついた。
激痛が全身を巡り、両足をバタつかせる。
抵抗するオレを簡単に押さえ込み、口もふさいだままナギは涼しそうに囁いた。
「これは、ミツキちゃんを危ない目に遭わせたお仕置き」
「ン゛ン゛ッ!!」
頭を振って手を振り払おうとするも、ナギの太くて強い腕はびくともしない。代わりにうつ伏せにされ、上から押さえ込むようにのしかかってきた。
「もう大声出さない……って約束できるなら、離してあげるけど」
すぐにオレは首を縦に振り、兄の条件を受け入れた。
「っはぁッーーーッ」
離されるや否や、オレはありったけの酸素を吸い込んだ。
鼻まで抑えやがって。
「ッ……クソナギが」
オレはまたふさがれないように、小さな声で悪態をついた。
「かわいい、クオン。オレの身体の下で、それ言う?」
「その勃ってるやつ擦ってくんな」
ナギは囁きながら、スリスリと股間をオレの尻に擦り付けていた。
「ミツキちゃん女の子なんだから、気をつけないとダメだろ」
真っ当な説教とエロい仕草を同時にしてくんな。キチガイ野郎が。
「東京もだけど、大阪も子供が行っちゃダメなとこがあるんだよ?」
「悪かったよ……」
確かに、オレだけでなく妹にまで危険な目に遭わせるとこだった。これについては、オレは猛烈に反省しなければならない。
「ミツキ、一人じゃ心細いだろうから、こっちの部屋に呼ぼうよ」
「そうだな、お風呂とかあるだろうから少ししてから連絡しような」
「ラインで入れとけばいいだろ。オレがメール打つからちょっとどいて」
オレは早く兄貴をどかせようと、少し強引に提案した。
が、ナギはオレの上から動こうとはしない。
はぁ、はぁ、と説教しながらも性欲を爆発させていたのだ。
「……たまんないなあ、クオン……♡」
荒く息を吐きながら欲情されても、オレの代わりを見境なく探してるやつなんか信用できない。
「……お前、昨日ガムとヤッたの?」
オレは一番気になっていたことを訊ねる。
「あー、写真見てくれたんだな? もしかして嫉妬してくれた?」
「なっ。……誰が誰に嫉妬するかよ。ナギ、オレのことあきらめたんじゃねーの」
じんわりと伝わる体温に怯えながら、オレは強気での発言を繰り返す。
「ガムくんと遊んだからそう思った? 細っこくて、女の子みたいだったよ」
なんだ、その言い方は。答えになってないだろ。
ちんぽ突っ込んだか突っ込んでないか、ハッキリ言って欲しい。
それでオレの気持ちは変わる。
「オレが好きなのは、クオンだけだよ」
そう言って、ナギはオレの首にキスをした。
くすぐったくて、それでいて快感で。
このまま、ヤッてみたいような気もする。
それは本当にただの興味本位だ。ナギが好きだから、ではないのだ。
「じゃあ、お前ガムとはヤッてないんだな?」
「いやだからエッチはしたよ? ガムくんはちょっと痩せすぎだな」
「はぁあ゛?!!!」
オレのこと好きだと言うくせに、オレを好きだと言うガムとエッチしたのかよ。
「バカなのお前?!」
振り向きながら、思わず大声を出す。
「し、クオン。クレームくるだろ」
「い、いやだってさ……」
「クオンがどんな子好きになるのかなあって知りたかっただけだよ」
いやいやいや。
オレはめちゃくちゃ女の子大好きだわ。気になってた女の子は、いつのまにかガムのセフレになっていた。それでなんだかムカついて、ガッカリもして、ガムにキスしてやった。
あれ。
これってナギのやったことと同じか?
オレは梨央奈ちゃんに嫉妬させようとは思わなかったが。
まあ、もうどっちでもいい。
梨央奈ちゃんにも、ガムにも、もう興味はなくなってる。
ナントカ伊織さんに会ったか、そしてヤッたのか聞きたくなったが我慢した。
これ以上、ナギにオレの思考を読まれたくなかった。
今夜をどうにか乗り切ろう。
オレはまだ、家出を諦めてはいない。
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お久しぶりです。
書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。
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