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プロローグ
しおりを挟む平成最後の夏ーーー。
夕焼けが鮮やかに染まった頃、うざったい蝉の音をバックミュージックに陽炎の漂うアスファルトを無言で歩いている高校生カップルがいた。
否、カップルではない。
友達以上恋人未満と言うのが適切だろう。それに彼女にはれっきとした彼氏がいる。僕には好きな女の子がいる。
彼女は僕がこんな事を考えてるとは到底考えていないだろう。
そんなしょうもないナレーションをつけながら彼女を見つめた。
「…なによ」
「へ?」
「さっきからチラチラこっち見てるでしょう」
「えっ…あーっと、なんかさ、こういうの、ほら、青春っぽいなーって、ね!」
「…こんな関係が?」
彼女はそっと立ち止まって少し寂しそうな笑顔を僕に向けた。しまった、と思った時にはもう遅かった。
「ねぇ、あんたはなんでこんな関係受け入れるの?」
彼女はさっきとはキャラが打って変わったように俯く僕の顔を覗き込んでくる。
「ねぇ、こんな不純な関係なんで受け入れるの?」
あぁまたいつものパターンだ。彼女のペースに乗せられる。また…また僕は…
「ねぇ、なんで?なんでこんなことしちゃうんだろうね?」
いつものように彼女は僕の首に腕を回してくる。顔と顔がくっつきそうになるくらいまで近付いてる。彼女の一言一言がが一層色っぽく聞こえる。何回この状況を経験してもバクバクしてる心臓の音だけは誤魔化せないな、なんて思いながら必死に笑顔を繕って言った。
「…さぁ?」
すると彼女はいつもの台詞を吐いた。
「ねぇ、私の事…必要としてくれる?」
僕もいつもの台詞を吐いた。
「僕には君が必要だ」
その言葉を聞くと安心したように笑みを零した彼女は僕の胸に飛び込んで、僕の首に回していた腕を僕の背中に移し替えて僕をきつく抱きしめた。
僕もそれを受け入れて彼女の腰に手を回した。
無言の時間が数秒流れて、もうたまらないとばかりに彼女が顔をあげた。
僕は彼女の言いなりだ。
彼女の思う通りに僕は動く。
彼女の操り人形のように、彼女の思いを受け入れーーーーー。
僕らは唇を重ねた。
夕焼けに映る2人のシルエットはとても美しく、甘美で、甘酸っぱい青春ドラマの1ページのようだった。
ただ、この1ページは甘いだけじゃない
彼女には優しい1つ年上の彼氏がいる
僕には絶賛片思い中の女の子がいる
互いに依存しあう誰にも言えない関係
心地の良い友達以上恋人未満の存在
互いに存在価値を確かめ合う大切な存在
僕達だけの秘密の放課後が、また始まる
応援ありがとうございます!
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