短編集

れぐまき

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選んだ道(茶々の忍)

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戦孤児であった私
村から焼きだされ、絶望していた所を救ってくださったのは一人の小さなお姫様だった


名前は茶々様


彼女の家に引き取られた私は、彼女の父君の命で女忍として育てられた
茶々様は大変お優しい方で、身分が違う私にも大層良くしてくださり、彼女の妹たちともすぐに仲良くなった

数年後、父君や兄君が叔父君に攻め込まれて亡くなられたり、その叔父君までもが家臣に攻め込まれて亡くなられたりなど
怒涛の日々が続いたが、それでも彼女は強く気高く、美しく、優しい、私の憧れで
私は何時までも茶々様のお側で彼女をお守りしようと考えていた

でも、それは叶わない願い

彼女の末の妹である江様が再嫁なさると決まった日のこと
私は茶々様の部屋に呼ばれ、そこで頼まれた

「江を頼みます」



私にとって茶々様の願いとは尤も優先させるもの
もちろん私の意思よりも遥かに大事なもので…
だからこそ、私はこの彼女の頼みを断ることが出来ず、江様について秀忠殿のもとへ渡った

それ以来、茶々様との面会は許されず、二十年近くの時が流れた


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


自室を整理する
あらかた片付いた所で部屋の前に人の気配を感じた

「…誰?」

声をかけると襖が開く
そこに居たのは我が主の妹君の夫・秀忠殿

「あぁ…貴方か」
「・・・何をしているんだ?」
「片付けを」
「物を捨てすぎでは?何も残ってないじゃないか」
「必要ないから」

軽く受け答えしながら手を動かしていると彼に手を掴まれる

「・・・」

無言で見つめられ私は一つ息を吐いた

「何?」
「・・・此処に居ろ」
「無理」

即答すると彼は表情をゆがめる
そのままグッと引き寄せられた

抵抗する気もなく身を任せると抱きしめられる

「お前が俺や江に忠誠を誓っていないことは分っていた
お前が本当に慕っているのは茶々殿だけだという事も
此処に来たのも彼女に頼まれたからだという事も」
「…」
「その茶々殿が今、窮地に立たされていることも知っている」
「…」
「行くなとは言わない。せめて、逝くな」
「…」
「帰ってきてくれ
…頼むから」

痛いほどの力が籠められた腕
“いくな”の響きの違いで彼は私がやろうとしていることを察しているのだと悟った

身を捩り、男の腕から抜け出す

「無理」

それだけ告げて立ち上がった
引き止める声もしたが、無視して庭から城を抜け、茶々様の居られる大阪城に向って駆け出した


茶々様は、私がいきなり目の前に現れたら驚くだろうか?
江は如何したと怒るだろうか?
死にに来るなど何事かと叱られるかもしれない

それでもいい

元より彼女に救われた命
彼女と共に終われるなんてこの上ない幸せだ

それに、人生に一度くらい言いつけを破っても罰は当たらないだろう







<身体が離れることは我慢出来ても
魂が離れることは我慢できないのです>
(茶々様)
(…何故きたのです?)
(私は貴女様のお側に居たいのです)
(・・・貴女って人は…)
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