上 下
8 / 21
本編

8

しおりを挟む
「えっと、キッチンと食堂はさっきのところで、お風呂はこの階段を上った廊下の右突き当たり、お手洗いはその横です」

馬…改め、クロノさんが家の説明をしてくれるのを聞きながら後をついていく

「キッチンと食堂は共用ですけど、二階のお風呂と
お手洗いは客人用で僕は使いませんのでみさとさんの好きに使っていただいて構いません」

まじか

他人と暮らすときに一番問題になるのは水回りの使い方や順番だと思っている私としては、それはものすごく嬉しい
親戚の家にお世話になっていた時も、彼氏と同棲していた時も、好きなときにトイレを使えないのが何より苦痛だったのだ

「ありがとうございます!」

ここに来て初めて満面の笑みでお礼を言う
彼はまたピクリと反応してパッと顔をそらした
さっきからなんなんなんだ…?

「あ…えっと、では、この部屋を使ってください
また後で呼びに来ます!」

そう言うだけいって逃げるように去っていったクロノさんをぼーっと見送り、とりあえずあてがわれた部屋のドアノブを握る
そっと開けて中を覗きこんで、思わず感嘆の声をあげた

「うわ、すごー…!」

オシャレなソファとローテーブルのセットが中央に置かれている応接スペースのような部分は、シンプルながらも飾り棚や絵画、観葉植物などで装飾されており、とても落ち着く
奥に続いているであろう扉を開けると、予想どおり寝室が広がっていた
ベッドの他にテーブルランプと小さなアンティークディスクも置いてある

ベッドでかっ!
てか、天蓋付きとかラブホ以外で始めてみたわ
家具もオシャレでかわいいし…
ほんとにここ使っていいの?

めちゃくちゃ好みな部屋に嬉しくなり、ぼふりと音を立てて勢いよくソファにダイブする

異世界とかとんでもないと思ったけど、以外と悪くないかもしれない
しおりを挟む

処理中です...