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本編

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「みさとさん?どうされました?」

馬特有のつぶらな瞳で問いかけてくるクロノさん

「えっと、ですね…
そのぉ~・・・」

さて、どうしようか
ただの食欲のためにこの一か月でせっかく築いた和やかな関係を崩すのは避けたい
でも肉は食べたい
せめてあるのかどうか確認はしたい
なにか・・・
何か遠回しな聞き方はないのか・・・

ぐぅぅぅぅ~・・・

口ごもりながら思考を巡らせていると部屋中に大きな音が響いた

「「・・・」」

音の正体は何をかくそう、私の腹の虫である

・・・ありえない
恥ずかしすぎるっ…!!
だって、だって肉のこと考えてたらお腹が減ってしまったんだ!
仕方ないじゃないか!

「・・・ぷっ」
「!」

耐えきれなくなったようにクロノさんが噴き出す
私も違う意味で耐え切れなくなり言い訳しようと口を開いた

「ち、違うんです!
い、今のは・・・っ!」
「いえ、大丈夫ですよ
僕も小腹がすいてきたところでしたから」
「い、いや
だから今のは違くて・・・」

言い募るが、クロノさんはそれを笑顔で制して立ち上がる

「すぐに夕飯の準備をしますね
少し待っていてください」
「あ…」

そういって部屋を出ていってしまったクロノさんを見送り私はあまりの恥ずかしさにソファから崩れ落ちた

つらい…
今のはつらい…
今の流れだと私がクロノさん探してたのお腹減ったからだと思われた…
ご飯のことしか考えてないみたいじゃん…
・・・あながち間違いでもないのがさらにつらい…

力なくソファの座面に突っ伏し頭を抱える
しばらくそうしていると、ふとある考えに思い至った

…いや、待てよ?
もしかしてこれはチャンスなのでは?

待ちきれない風を装って食事の準備を手伝いつつ食材のことを話ながらさりげなーく肉があるのか聞いてみたらよいのでは…?

「それだ!」

ガバリと顔をあげ勢いよく立ち上がった私は急いでキッチンに向かった
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