冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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2章 ゴブリンの砦

STORY34 フェアリーの森のキャンプ

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 チン…

 ホブゴブリンとの激闘に勝利したリアーナとリャッカ。リアーナはレイピアに付着した血を振り払って鞘に納める。

 「リアーナァァ!」

 駆け寄ってきたリャッカがリアーナに抱きつく。

 「ごめんニャ! あたしの対応が遅れたせいでリアーナにケガさせちゃったニャ……」

 「そんなことないよ。リャッカちゃんがいなかったら勝てなかったもの。ありがとう」

 リアーナはリャッカの頭を優しく撫でる。

 「リアーナァ…」

 潤んだ瞳で下から見上げるリャッカにリアーナは笑顔を返す。

 「おっ、いたいた」

 「よかった、二人とも無事なんですね!」

 ゴブリンの大群を全滅させたウラボスとグランザがやってきた。

 「二人とも、遅いニャ!」

 リャッカが不満を洩らす。

 「リャッカちゃん、ウラボスとグランザも危険な役割を担ってくれたんだよ。そんなこと言っちゃダメ。ね?」

 「むぅ…」

 リアーナに注意され、ふてくされるリャッカ。

 「お疲れ様。ウラボス、グランザ」

 リアーナはウラボスとグランザに微笑む。

 「ホブゴブリンか」

 床で絶命している死体を見てウラボスが呟く。

 「うん。リャッカちゃんがいなかったら勝てなかった…」

 リアーナはリャッカの肩に手をそっと置く。

 「そうか。二人とも、よく頑張ったな」

 「リアーナさんもリャッカもすごいです! お疲れ様でした」

 「…グランザとウラボスもお疲れニャ…」

 リャッカは素直になれず呟くように言う。リアーナはそろを優しく見つめる。

 「それじゃ、帰ろっか!」

 リアーナの言葉に一同は頷く。



 暁の渡り鳥はフェアリーの少女と出会った泉へと戻ってきた。

 「おーい、フェアリー! 姿を見せるニャ」

 リャッカの呼び掛けに応じて木々の間を縫うようにしてフェアリーがやってくる。

 「うっそ! あんたたち、生きてたの!?」

 フェアリーの少女は信じられないといった表情をしている。

 「暁の渡り鳥あたしたちをあまく見てもらっちゃ困るニャ」

 得意気に胸を張るリャッカ。

 「それにしたって、たった4人であれだけの数のゴブリンの群れを全滅させるなんて常識はずれもいいところよ!」

 「それを可能にするのが暁の渡り鳥あたしたちニャ!」

 自慢げなリャッカに絶句するフェアリーの少女。

 「これでゴブリンの脅威はなくなったわけなんだし、ラグト村の子供たちを返してくれるよね?」

 「しかたないなぁ…。わかったわよ、返してあげるわ。あんたたちを怒らせないほうがいいのはわかったしね」

 リアーナに言われ、少し残念そうではあるものの子供たちを返すことを約束し、フェアリーは飛び去っていった。

 「よかったですね。それじゃ、今日はここでキャンプしませんか? 皆さんもお疲れですよね?」

 フェアリーを見送って、グランザが提案する。

 「そうね。そうと決まったらみんなで準備しましょ!」

 リアーナに続き、ウラボスとグランザも賛成し、全員でキャンプの準備を始める。



 食事を終えた暁の渡り鳥は焚き火を囲んでいる。

 「今日は俺が見張りをするよ。3人はゆっくり眠ってくれ」

 ウラボスが見張り役を買って出る。

 「そんなわけにはいかないよ! いつも通り交代で寝ようよ」

 「そうニャ! いくらウラボスが化け物でも無理のし過ぎはよくないニャ」

 「そうですよ。疲れているのはウラボスさんだって同じなんですから」

 全員が反対する。

 「この程度なら問題ないんだが…。そうだな。それじゃ、交代にするか。とはいえ、まずは俺に任せてもらうぜ」



 ウラボスは焚き火の炎を無言で眺めている。

 「ねぇ…」

 横になっていたリアーナが身体を起こす。

 「どうした、眠れないのか?」

 ウラボスが小声で訊く。

 「うん…。隣、いい?」

 ウラボスが頷くのを見て、リアーナが横に腰をおろす。リャッカとグランザは静かに寝息を立てている。

 「二人とも、よく眠ってる…。今日は本当に頑張ってくれたんだもんね」

 「それを言うなら、リアーナだって同じじゃないか」

 「ふふふ…。ウラボスもね」

 リアーナが笑顔で返す。

 「…前に、昔の記憶がないって言ってたよね? それってさ、どれくらい前からの記憶がないの?」

 「うーん、俺はある場所にずっと一人きりでいたんだ。どれくらいの年月が流れたのかわからないくらいね。その前のことは全く憶えていない。ある時、魔族の女がやって来たことがきっかけで俺はその場所を出た。そして、リアーナに出会った…」

 「…そうだったんだ…」

 「どうして、そんなことを気にしてるんだ?」

 「…なんとなく、かな。もしかして、ウラボスには恋人がいたのかな…とか考えたら気になってきて…。ごめんね」

 「べつにいいさ。まっ、本人に記憶がないんだ。気にしてもしかたないだろ」

 「うん、そうだね。それに、旅をしてるといつかウラボスのことを知ってる人に出会うかもだし…。ごめん、もう寝るね」

 リアーナはウラボスの記憶が戻るのを願う一方で、その事を恐れている自分がいることに戸惑い、急いで毛布をかぶって眠りにつく。

 ウラボスはその様子を静かに見つめていた。
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