白き狼と黄金羊は見る夢が違う -白金の乙女と幻想騎士団-

りんごパイ

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すれ違う運命 3

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アブローラは、着替えもそのままでベットに身を任せた。

掲げる手で光を遮り、
あの子との時間を作ろう、たとえ少しでも…母親らしいことしようをと考えた。
ふと、寝返りを打つと目の前にクローゼットがあった。

あの時クローゼットが開いていた気がした…が、閉まっていた。
あの馬鹿が部屋に入ってきた時…どうなっていたかを思い出してみる。

いきなり人を押し倒してブラウスと下着を捲り上げ、乳房を頬張り野卑に歪んでいる顔を見たくなかったから、顔をそらしたのを覚えている。

確かに…開いていたな…

ワインが効いてきたのか、眠気が襲ってきた。
うとうとしながら、ふと脳裏に浮かんだ。


レインに、見られていた?


眠気が一気に冷め起き上がってしまった。
人に見られていた…しかも息子に見られていた、一部始終を。

レインをいくら探しても見当たらないと報告が上がってきた時とは、別の意味で青くなった。
つぁーと血の気が引いていく。首筋に冷たい刃物が這いずり回るようだ。

嬌態を見られたのか、まだ10歳に満たないとはいえ…見知らぬ男と…情事に耽っている母親を。
見知らぬ男の男根を咥え、尻穴を舐め、突かれる度に悶え、尻を突き出し征服されて嬌態を晒している母親を。

そんな母親を見て…あの子はどう思うのだろうか。

おちんちんは、汚いものだからオシッコする時しか触ってはいけません。と、乳母に教育されている光景を見たことを思い出した。
見られていたとしたら…
男根を咥えて頬張っていた、舐め上げていた、尻穴も舐めさせられていた。
だから、その口でする、おやすみの口づけをを避けられたのか。

顔から火が出る思いだった。

どうしようか、どうしようか、母アムセトに相談するか…アイツとしていたと報告するのか、他の男としていた言うのは更なる混乱の元だ。
脳裏に幾重に不安が浮かんだ。

…最悪だ。

「まさか見ていないよね?」
と、聞くわけにもいかない。

「見ていました。」
と、満面の笑顔で言われたら子供の教育上良くない…はず。

どうする?どうする?どうすればいい?
アブローラは襲い来る眩暈に我を忘れてしまう。

おしっこが出るところを、どうして咥えるのですか?

うんちが出るところを、どうして舐めるのですか?

正当な回答を出せる親などいるのだろうか?いるとは思えない。
怒ってやり過ごすしか思いつかない…大人になったら分かるわ!なんて言うのは、自分には無理だ。

相手が…しゃぶれ!舐めろ!と言ってくるからだ。

侍女達にやらせる様になったらどうしよう…とアブローラは気が遠くなるのを感じた。
自分の尻穴が舐められている時、嬌声を上げてしまった…額に手を乗せ考え込んでしまう。

レインと同じ歳の頃子供なら、『深夜の大運動会』をしていた言えばいいのかもしれないが、

”…あぁ、真昼間じゃないか。”

…そんな事より、レインにとってアイツは、見知らぬ男だ。
見知らぬ男との情事にふける母親を…あの子はどう思うのだろうか。
拭い去れない不安に捕まり、
ワインセラーから取り出したワインをグラスも用意せずそのまま口に運んだ。

自分で自分に解説してしまうほど、アブローラは混乱する。

”自分が同じ歳の頃だったら…”
と、考えてみる。

多分見てしまったことがあったが、あれが、あれで、ああなるのだと理解したのは、成人した後だった。
”そうだ、アイツに夜這いされた時だ”
嫌なことを思い出し、虫の居所まで悪くなる。
ぶつぶつ念仏を唱え始めてしまう、アブローラ。

ワインを水の如くごくごく飲む…その姿は貴族子女ではない、中年の酔っ払いと変わらない。飲み終わった瓶が安酒か、超高級ワインの瓶であるかの差だ。
三本も開け悪酔いするのは確定だった。

”全部アイツが好き勝手にヤるせいだ、犬のように纏わりつき甘えてくるので切るに切れない”

「…結局、拒絶しきれない自分が悪いのか。」

はぁ~
と、深い溜息を吐くアブローラ。

”アイツに名乗らせるか…ダメだな、今日会わなくて良かったのかもしれない。”
”聡いあの子ならアイツが、自分にとって誰なのか分かるか…いや、どうだろうか。”

脳裏に浮かんでは消える不安。
この考えはアブローラを更なる窮地に追い込みかねなかった。

アブローラは知っている。

『アイツ』の子供達は…『アイツ』の子供ではない。

貴族の奥方様の間で流行っているというのは、それらを暗喩して皮肉っているのだ。
アブローラの魔煌眼でみれば一発で判明する、だがアイツはそれを拒絶した。

「子供達に、罪はないないだろ?」

アブローラは、考える。

アイツは何か思う所あるのだろうが、それ以上何も言わなかった。
だが、実子が、誰の子か分からない子に嫡男の座を追われるのだ。
帝国貴族の血統主義は、とうの昔に終わっている。
あると思って現実を見ない者が集まっているだけだ…

…自分ではないか、独白し2本目に口をつけた。

机にうつ伏せに倒れ込み、ワインが魔煌ランプに照らされ輝いているのをいつまでも眺めていた。

「あの子を『政争』に巻き込ませない、だからレインの父親は不明だ。私が笑われれば良い…それだけだ。」

そんな独り言を吐いたような…気がした。





コン、コン

扉をノックする音がする。

”今日は、厄日か?”
と、舌打ちしながら言う。

「なんだ?開いてるぞ」
と、魔力波動からしてケイトなのは分かっていたが…他に人がいるのも分かっていた。

「失礼します、問題が発生しました!」
と、ケイトが驚いた風の声を上げているが、顔は冷静なままであり…アブローラの視線は後ろに控える顎門騎士団の騎士に移っていた。

「問題か…飲んでしまっている、治癒術師を呼んでくれ」
両手を組みながらアブローラは指示を出す。
後ろに控えていた騎士の一人が従者に手配の段取りをさせた。

「応接間で、人払いを済ませてあります」
と、ちらりとアブローラに視線を投げる。

「凶事か、分かった、行こう!」
アブローラは、酔いが回ってはいるもののすらりと立ち上がり上着を羽織る。

険しい顔をしたアブローラと顎門騎士団のシュバリエは、人払いを済ましてある応接間に向かう。
ケイトが侍女達に、水と軽食の手配をする。

ケイトは、何の話は予想がついたが…応接間の前の扉で仁王立ちをし誰も入室出来ないよう扉の警護についた。

正装の騎士と…派遣した騎士が油と血だらけであり…何が起きたか容易に予想できるというものだ…その様子を遠目から見ていた使用人達は何かあった事を疑い始める。

ティナをはじめとする警護の騎士団員の親睦が深いのだ。

険しい顔の正装したシュバリエ本邸にも関わらず汚れたままの姿のシュバリエ…これは、不幸の報告と経験上皆知っていた。

”あぁー、きっと悲報だ…ティナ様は、どうしたのだ…”
皆、仲間の安否を…目をつぶれば思い出す者達の安否を心配せずにいられようか。



「ティナ様が…ラーピリスで………」

アブローラの耳に入ってくる結果は、すでに知っている事だった。








それは、そう遠くない未来…


激戦の地…ラーピリス。

無傷の騎兵などない…

戦場に散った友の名を叫ぶ者、
散乱する、騎兵、人、剣、砲…皆形を変え蹂躙されていく。

ここが人類の決戦の地と定め、全てを投げ打った貴族。
白き幻想騎に…自分の血を引くシュバリエに全てを…未来を託す運命の地。

多くの騎兵とシュバリエを失った。

満足に動ける騎兵は半数を割り込み戦線は崩壊、帝国内での人的被害を減らす為に一匹でも多く魔獣を潰している…苦しい戦況だった。




アブローラは、絶叫する。

命続く限り、生まれ持った呪いである天使に魔力を込め、生命を燃やしジアールを使役する。
大切な人を守る為に…

幻想騎ジアールは、その想いを剣に託し…傷つき倒れ、何度も倒れても、何度も、何度も立ち上がり『人の敵』に、立ち向かう。

生まれてきた使命を果たすため、この世界を守るため…ジラールは立ち上がり咆哮する!
旧世代の遺物であるジアール、人の世界を守る為使命を持って生まれてきた幻想騎。

シュバリエも、幻想騎も己が生まれ持った役目を果たす為、その生命を燃やす!

この『想い』を届けるために!
倒さなければならぬ者がいる…『人の敵』。
シュバリエの使命を果たす為、生命を燃やし絶叫する!

グシャァーーーーーー!!

ジアールの咆哮が、大地を引き裂き天に突き抜ける!

 キュビイイ…ウィーーーーーーン!!

金属音と機械音が金切音をたて、『人の敵』に全てをかけて突進する!!

『この世界を守る為に!!』

アブローラは…
どうして自分が泣くのかも…分からない。
どうして、涙が止まらないのかも…分からない。
どうして、自分の身体が何故震えるのかも…分からない。



その刃が、今…プラチナに突き刺さり……そして、『白銀の乙女』の心の臓を突き破った。


この未来は、回避できたのだろうか…単なる夢なのか、予言された一節なのか。
それは誰にも分からない…
だが、北部の正当なる支配者の高笑いが…響いたのを誰も知る由もない。

それは、まだ起こっていない一未来にしか過ぎない…変えられる未来のはずだ。
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