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小さな公園
右手を前に突き出すと鮮やかな赤色の細い線が目の前をゆらゆらと泳いでいる。
その先を目で辿るとリビングの窓を突き抜け、空の向こう側に続いていた。
その先は見えないほどに果てしなく遠い。
「あー あー」
「ふふっ。 どうしたの? 小指に何か付いてるの?」
「ん?どうかしたのか?」
「この子が小指を突き出して何か言ってるのよ」
「ゴミでも付いてて取って欲しいんじゃないか?ハッハッハ」
「だあぁっだ!」
「違うって言ってるわよ?ふふっ」
お母さん、お父さん。
私を産んでくれてありがとう。
私はこの赤い糸がたどり着く場所を知っている——
上を向くと沢山の建物から四角い光が溢れるのが見え、横を向くと目の前を無数の光が過ぎ去り、前を向くと薄い板から出る光が人々の顔を照らしていた。
そんな月明かりが霞んでしまう程に騒がしい光の中で、今日の帰る場所を選んでいた。
しかし歩いている道中、俺は重大な事を忘れていた事に気づいた。
「あ……」
裏のポケットから財布を取り出し恐る恐る中身を覗いてみる。
ジャラッ——
手の上に広げたそれはとても軽く四種類の小銭がそれぞれ一枚ずつあるだけだった。
116円………。
そういえば、昼飯にコンビニでおにぎり食べたんだった。
久しぶりにインターネットカフェに泊まろと思ったのに……。
仕方がなく静かに小銭を財布の中に戻し、今日もいつもの場所にとぼとぼと足を進めた。
中心街から少し離れて行くと高々に聳え立つマンションは無くなり、民家が建ち並ぶ静かな住宅街へと変わっていく。
そして住宅街の近くにある大きな病院が見えてくる。
その病院を目印に進んでいくと、一つの街灯に照らされた小さな公園に辿り着く。
ここに来るのは何度目だろうか。
そんな事いちいち数えていないが、あれから1ヶ月くらいは経っただろう……。
数ヶ月前——
俺の親は父親の不倫が原因で離婚した。
その後母はすぐに別の男を家に連れてきた。
父親は不倫相手とどうなったか知らないが母も不倫していたのだ。
俺はその生活に耐えれず反対したが、母は自分の寂しさを優先し聞いてくれなかった。
結局、みんな自分の事ばかりだった。
だから俺は家を出て都会に来た。
そんな嫌な記憶を思い出してしまい、振り払う事のできない怒りが込み上げてくるのを抑え、公園へと入っていった。
しかし、いつもは静かな公園から人の話し声が聞こえてくる。
誰かいるのか……。
今日はここもダメかと来た道を戻ろうとした時——
「早く金出せよっ」
如何にも誰かがカツアゲをしている様な言葉が聞こえた。
「約束したよなぁ?一万持って来なかったらどうなるか知ってるよな?」
「持ってきたから許してぐだざぃっ!」
遠目から目を凝らすと中心の遊具の近くに金髪のヤンキー男が二人と地面に尻を付いて怯えている男がいる。
その光景は体験した事のあるような屈辱感をまた思い出させた。
抑えた筈の血流がふつふつと湧き上がり身体全身を支配していく。
「どいつもこいつも自分さえよければそれでいいのかよ!!」
プツンッ——
その時、頭の中で何かが切れる音が聞こえた気がする。
だけどそれからの記憶は無く、気づいたら地面に仰向けに倒れて夜空を見上げていた。
あいつらは?
そのまま顔を左右に向けるが公園には誰も居なかった。
あれ……どうなったんだ?
右手を使い起き上がろうとしたが手のひらに何かを掴んでいる感触がある。
腕を上げ目の前で手のひらを広げると握り潰された一万円札が顔に落ちてきた。
「え……。何で俺が持ってんだよ……」
その先を目で辿るとリビングの窓を突き抜け、空の向こう側に続いていた。
その先は見えないほどに果てしなく遠い。
「あー あー」
「ふふっ。 どうしたの? 小指に何か付いてるの?」
「ん?どうかしたのか?」
「この子が小指を突き出して何か言ってるのよ」
「ゴミでも付いてて取って欲しいんじゃないか?ハッハッハ」
「だあぁっだ!」
「違うって言ってるわよ?ふふっ」
お母さん、お父さん。
私を産んでくれてありがとう。
私はこの赤い糸がたどり着く場所を知っている——
上を向くと沢山の建物から四角い光が溢れるのが見え、横を向くと目の前を無数の光が過ぎ去り、前を向くと薄い板から出る光が人々の顔を照らしていた。
そんな月明かりが霞んでしまう程に騒がしい光の中で、今日の帰る場所を選んでいた。
しかし歩いている道中、俺は重大な事を忘れていた事に気づいた。
「あ……」
裏のポケットから財布を取り出し恐る恐る中身を覗いてみる。
ジャラッ——
手の上に広げたそれはとても軽く四種類の小銭がそれぞれ一枚ずつあるだけだった。
116円………。
そういえば、昼飯にコンビニでおにぎり食べたんだった。
久しぶりにインターネットカフェに泊まろと思ったのに……。
仕方がなく静かに小銭を財布の中に戻し、今日もいつもの場所にとぼとぼと足を進めた。
中心街から少し離れて行くと高々に聳え立つマンションは無くなり、民家が建ち並ぶ静かな住宅街へと変わっていく。
そして住宅街の近くにある大きな病院が見えてくる。
その病院を目印に進んでいくと、一つの街灯に照らされた小さな公園に辿り着く。
ここに来るのは何度目だろうか。
そんな事いちいち数えていないが、あれから1ヶ月くらいは経っただろう……。
数ヶ月前——
俺の親は父親の不倫が原因で離婚した。
その後母はすぐに別の男を家に連れてきた。
父親は不倫相手とどうなったか知らないが母も不倫していたのだ。
俺はその生活に耐えれず反対したが、母は自分の寂しさを優先し聞いてくれなかった。
結局、みんな自分の事ばかりだった。
だから俺は家を出て都会に来た。
そんな嫌な記憶を思い出してしまい、振り払う事のできない怒りが込み上げてくるのを抑え、公園へと入っていった。
しかし、いつもは静かな公園から人の話し声が聞こえてくる。
誰かいるのか……。
今日はここもダメかと来た道を戻ろうとした時——
「早く金出せよっ」
如何にも誰かがカツアゲをしている様な言葉が聞こえた。
「約束したよなぁ?一万持って来なかったらどうなるか知ってるよな?」
「持ってきたから許してぐだざぃっ!」
遠目から目を凝らすと中心の遊具の近くに金髪のヤンキー男が二人と地面に尻を付いて怯えている男がいる。
その光景は体験した事のあるような屈辱感をまた思い出させた。
抑えた筈の血流がふつふつと湧き上がり身体全身を支配していく。
「どいつもこいつも自分さえよければそれでいいのかよ!!」
プツンッ——
その時、頭の中で何かが切れる音が聞こえた気がする。
だけどそれからの記憶は無く、気づいたら地面に仰向けに倒れて夜空を見上げていた。
あいつらは?
そのまま顔を左右に向けるが公園には誰も居なかった。
あれ……どうなったんだ?
右手を使い起き上がろうとしたが手のひらに何かを掴んでいる感触がある。
腕を上げ目の前で手のひらを広げると握り潰された一万円札が顔に落ちてきた。
「え……。何で俺が持ってんだよ……」
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