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第三章 まれびときたりて
一撃必殺脳破壊カラテ in NTRビデオレター
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「サリスが……攫われた、だって?」
嘘だろ? ついさっきまで一緒に話してたっていうのに。若い魔族の男に……まさか、まさかとは思うけど、また転生したアイツじゃねえだろうな。
「と、とにかく勇者様、集会所まで来てください。そこで詳しい話を」
俺はお義父さんについていく。少しずつ日が傾いてきた時間。まだ日は西に輝いているが、もう少ししたら鮮やかに空を赤く染めるだろう。夜になれば魔族の動きも活発化すると聞いている。そうなる前に、サリスがどこにさらわれたのかだけでも突き止めたい。
なんてことだ、俺がついていながらこんなことになるなんて。ほんのついさっき「サリスの事は俺が守る」なんて大見得切ったばっかなのにこの体たらくだ。自分が情けない。
「ベアリス、何とかならないのか?」
『困ったときの神頼みですか。なんともなりませんよ。言ったでしょう? 神族の現世への干渉は最小限にとどめる、って』
くそ、こんな時だけ神様気取りで。ポンコツのくせに。
『おっぱいにデレデレしてたバチがあたったんですよ』
なんだと、そんなバチがあってたまるか!
集会所につくと既に村人たちが集まっていた。本当はここで宴会をするために準備をして集まっていたのかもしれない。しかしみんな一様に不安そうな表情をしている。
「勇者様、これを」
村人の一人が小さな水晶玉みたいなものを差し出した。手のひらに乗るくらいの小さいサイズだ。これはいったい……?
――――――――――――――――
「座れ」
薄暗くじめじめした洞窟の中、男に促されて、サリスは恐る恐る近くにあった岩の上に腰かける。
「私にこんなことして……きっとケンジが、勇者様が許さないんだから!!」
「ほう、ケンジって名前だったのか、あの勇者……」
サリスはその言葉に怯えた。「勇者」という言葉を出せば多少なりとも動揺するかと思っていたのだが、しかしその魔族はどうやら勇者の事も全て分かっていてこんな行動に出ていたようだ、という事が分かったからである。
「ゆ、勇者様は、凄く強いんだから! オンデアの獣だって、一撃で……」
「知っている」
やはり、全て知った上で……ということは、自分が攫われたのも、その勇者の事と何か関わりがあると見てよいだろう、と察した。しかし、次の瞬間魔族の顔が歪んだ。
「あいつの強さは……よく知っている」
恐怖に歪んだのだ。
「本当に……あいつのことが怖くて怖くて……もう二度と、あいつに殺されるのは……」
「カルナ=カルア様」
控えていたメイドの言葉に、カルナ=カルアと呼ばれた魔族の男はかろうじて正気に戻った。
「と、とにかくだ……俺の第一の目的は、勇者に殺されない事。そしてお前はそのための保険だ」
「保険……ってどういうこと? 勇者様に殺されたくないんだったら、おとなしく投降して……」
「そのつもりだ」
「え?」
聞き間違いだろうか。素直に投降すると聞こえたような気がしたが。ふざけているのだろうか。しかしカルナ=カルアは至ってまじめな表情で続きを語る。
「降参だ。はっきり言って勇者とは戦っても無駄、勝てるわけない。俺以外の四天王は俺より弱いし、多分魔王でも話にならないだろう」
なんという情けない言葉か。しかし分からない。てっきり勇者の力に恐れをなして自分を人質に取ろうと考えたのか、とサリスは思っていたのだが、しかしカルナ=カルアははっきりと「降参する」と言った。じゃあ自分を攫って何がしたいのか。
「手始めに……」
手始めに? 何か邪悪な企みでもあるのだろうか、サリスは身構える。
「植樹活動をしようと思う。お前ら毎年近くの川が氾濫するんで困ってるだろう。植樹活動して木がしっかり根をはれば、少なくとも土砂崩れは大分抑えられる」
何を言い出すのかこの魔族は。
「次に孤児院を立てる。身寄りのない子供達を大切に育てる施設だ」
「……つまり、どういうことですか?」
たまらずサリスは直接カルナ=カルアに訊ねた。
「勇者に対してゴマをすりたい」
「な……なんでそれが、私を誘拐することに?」
当然の疑問である。
カルナ=カルアはゆっくりと答える。
「あいつ人の話全然聞かないからな。俺の名前もずっと間違えたままだし。
だから、慈善活動が実を結ぶまでは、お前に『保険』になってもらう」
「なんちゅう情けない……」
思わずサリスの口からは本音が零れてしまった。しかしカルナ=カルアはそんなことを気にする様子はなく、サリスのすぐ横にどかりと座った。余りに距離が近いのでサリスは少しいやそうな表情をする。
「ホラ、そんないやそうな表情しないで。出来る限り楽しそうな雰囲気で行くからな」
「え? 何をするんですか?」
サリスとカルナ=カルアは二人並んで座っている状態である。そしてその正面に、何かよく分からないが、機材を構えたメイドが立っている。
「ケンジに映像を送るんだよ。サリスの身柄は無事だっていうのと、慈善事業をするつもりだから、俺は味方だって事を伝えるためにな。
いいな? 不安な気持ちを与えないために出来る限り明るい雰囲気で行くからな?」
――――――――――――――――
「この水晶玉は……?」
怒りに震える俺の問いに、お父さんは少し震えながら答える。
「その、時が来ればそれに映像を映して送るから、大事に持っておけ、と言われまして……」
くそ、魔族の奴らめ、一体何を考えてやがる。
しかし何の手がかりもないから何もできない。仕方なく俺がその水晶玉を床に置くと、にわかにそれは光を放ち、集会所の壁にプロジェクターのように映像を映し始めた。
映像に映っているのはサリスと……やっぱりカルアミルクだ。サリスは戸惑うような表情を見せ、そしてカルアミルクはいやらしい笑みをして、サリスの肩に手を回している。あのクソ魔族、俺のサリスに何してくれてやがってんだ!!
「ウェ~イ、ケンジくぅ~ん? 見てる~? 魔族四天王のカルナ=カルアでェ~ッス!」
イラッ
「今から~、ケンジくんの大事な大事なサリスちゃんとぉ~? いいこと、しちゃいまぁ~ッス!! イェ~ッ!!」
「ああああああああああああ~~~~ッッ!!」
「ヒッ!?」
俺の体から怒りで魔力がほとばしるのが感じられた。お義父さんが恐怖の声を上げる。
「サーチッ!!」
できる。そう感覚的に分かった。
おれが「サーチ」と唱えると脳内にマップが展開する。赤い光と青い光、そして中央には逆三角形、これが俺の位置だ。青い点は味方の人間を、赤い点は敵を示していると本能的に分かった。
そして、ここから数キロ離れた地点に赤い点と青い点が並んでいる。そこ目がけて俺は全魔力を振り絞ってファイアボールを放つ。
「イヤーーーーーーッ!!」
――――――――――――――――
「サヨナラーーーーーッ!!」
嘘だろ? ついさっきまで一緒に話してたっていうのに。若い魔族の男に……まさか、まさかとは思うけど、また転生したアイツじゃねえだろうな。
「と、とにかく勇者様、集会所まで来てください。そこで詳しい話を」
俺はお義父さんについていく。少しずつ日が傾いてきた時間。まだ日は西に輝いているが、もう少ししたら鮮やかに空を赤く染めるだろう。夜になれば魔族の動きも活発化すると聞いている。そうなる前に、サリスがどこにさらわれたのかだけでも突き止めたい。
なんてことだ、俺がついていながらこんなことになるなんて。ほんのついさっき「サリスの事は俺が守る」なんて大見得切ったばっかなのにこの体たらくだ。自分が情けない。
「ベアリス、何とかならないのか?」
『困ったときの神頼みですか。なんともなりませんよ。言ったでしょう? 神族の現世への干渉は最小限にとどめる、って』
くそ、こんな時だけ神様気取りで。ポンコツのくせに。
『おっぱいにデレデレしてたバチがあたったんですよ』
なんだと、そんなバチがあってたまるか!
集会所につくと既に村人たちが集まっていた。本当はここで宴会をするために準備をして集まっていたのかもしれない。しかしみんな一様に不安そうな表情をしている。
「勇者様、これを」
村人の一人が小さな水晶玉みたいなものを差し出した。手のひらに乗るくらいの小さいサイズだ。これはいったい……?
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「座れ」
薄暗くじめじめした洞窟の中、男に促されて、サリスは恐る恐る近くにあった岩の上に腰かける。
「私にこんなことして……きっとケンジが、勇者様が許さないんだから!!」
「ほう、ケンジって名前だったのか、あの勇者……」
サリスはその言葉に怯えた。「勇者」という言葉を出せば多少なりとも動揺するかと思っていたのだが、しかしその魔族はどうやら勇者の事も全て分かっていてこんな行動に出ていたようだ、という事が分かったからである。
「ゆ、勇者様は、凄く強いんだから! オンデアの獣だって、一撃で……」
「知っている」
やはり、全て知った上で……ということは、自分が攫われたのも、その勇者の事と何か関わりがあると見てよいだろう、と察した。しかし、次の瞬間魔族の顔が歪んだ。
「あいつの強さは……よく知っている」
恐怖に歪んだのだ。
「本当に……あいつのことが怖くて怖くて……もう二度と、あいつに殺されるのは……」
「カルナ=カルア様」
控えていたメイドの言葉に、カルナ=カルアと呼ばれた魔族の男はかろうじて正気に戻った。
「と、とにかくだ……俺の第一の目的は、勇者に殺されない事。そしてお前はそのための保険だ」
「保険……ってどういうこと? 勇者様に殺されたくないんだったら、おとなしく投降して……」
「そのつもりだ」
「え?」
聞き間違いだろうか。素直に投降すると聞こえたような気がしたが。ふざけているのだろうか。しかしカルナ=カルアは至ってまじめな表情で続きを語る。
「降参だ。はっきり言って勇者とは戦っても無駄、勝てるわけない。俺以外の四天王は俺より弱いし、多分魔王でも話にならないだろう」
なんという情けない言葉か。しかし分からない。てっきり勇者の力に恐れをなして自分を人質に取ろうと考えたのか、とサリスは思っていたのだが、しかしカルナ=カルアははっきりと「降参する」と言った。じゃあ自分を攫って何がしたいのか。
「手始めに……」
手始めに? 何か邪悪な企みでもあるのだろうか、サリスは身構える。
「植樹活動をしようと思う。お前ら毎年近くの川が氾濫するんで困ってるだろう。植樹活動して木がしっかり根をはれば、少なくとも土砂崩れは大分抑えられる」
何を言い出すのかこの魔族は。
「次に孤児院を立てる。身寄りのない子供達を大切に育てる施設だ」
「……つまり、どういうことですか?」
たまらずサリスは直接カルナ=カルアに訊ねた。
「勇者に対してゴマをすりたい」
「な……なんでそれが、私を誘拐することに?」
当然の疑問である。
カルナ=カルアはゆっくりと答える。
「あいつ人の話全然聞かないからな。俺の名前もずっと間違えたままだし。
だから、慈善活動が実を結ぶまでは、お前に『保険』になってもらう」
「なんちゅう情けない……」
思わずサリスの口からは本音が零れてしまった。しかしカルナ=カルアはそんなことを気にする様子はなく、サリスのすぐ横にどかりと座った。余りに距離が近いのでサリスは少しいやそうな表情をする。
「ホラ、そんないやそうな表情しないで。出来る限り楽しそうな雰囲気で行くからな」
「え? 何をするんですか?」
サリスとカルナ=カルアは二人並んで座っている状態である。そしてその正面に、何かよく分からないが、機材を構えたメイドが立っている。
「ケンジに映像を送るんだよ。サリスの身柄は無事だっていうのと、慈善事業をするつもりだから、俺は味方だって事を伝えるためにな。
いいな? 不安な気持ちを与えないために出来る限り明るい雰囲気で行くからな?」
――――――――――――――――
「この水晶玉は……?」
怒りに震える俺の問いに、お父さんは少し震えながら答える。
「その、時が来ればそれに映像を映して送るから、大事に持っておけ、と言われまして……」
くそ、魔族の奴らめ、一体何を考えてやがる。
しかし何の手がかりもないから何もできない。仕方なく俺がその水晶玉を床に置くと、にわかにそれは光を放ち、集会所の壁にプロジェクターのように映像を映し始めた。
映像に映っているのはサリスと……やっぱりカルアミルクだ。サリスは戸惑うような表情を見せ、そしてカルアミルクはいやらしい笑みをして、サリスの肩に手を回している。あのクソ魔族、俺のサリスに何してくれてやがってんだ!!
「ウェ~イ、ケンジくぅ~ん? 見てる~? 魔族四天王のカルナ=カルアでェ~ッス!」
イラッ
「今から~、ケンジくんの大事な大事なサリスちゃんとぉ~? いいこと、しちゃいまぁ~ッス!! イェ~ッ!!」
「ああああああああああああ~~~~ッッ!!」
「ヒッ!?」
俺の体から怒りで魔力がほとばしるのが感じられた。お義父さんが恐怖の声を上げる。
「サーチッ!!」
できる。そう感覚的に分かった。
おれが「サーチ」と唱えると脳内にマップが展開する。赤い光と青い光、そして中央には逆三角形、これが俺の位置だ。青い点は味方の人間を、赤い点は敵を示していると本能的に分かった。
そして、ここから数キロ離れた地点に赤い点と青い点が並んでいる。そこ目がけて俺は全魔力を振り絞ってファイアボールを放つ。
「イヤーーーーーーッ!!」
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「サヨナラーーーーーッ!!」
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