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トルトゥーガ!!
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「よう木偶の坊ども、こんなところでパーティーの準備か?」
意気揚々と部屋に入って声をかけるのはまさかのドラーガ・ノート。入口で話しかけて誘き出すってさんざん言ったのに無視したのか忘れたのか、堂々と部屋の中に入っていった。
私とクオスさん、アルグスさんはぽかん、と呆気に取られている。
「なんだ? 大陸最強の冒険者、Sランクパーティーのメッツァトルがあいさつに来たってのに無視か?」
大仰に手を広げてドラーガさんは語り掛けるが、相手は無言。
そりゃそうだ。相手はゴーレムなんだから。
エンチャンターはいないけれど、中にいたのは三体の青銅のゴーレム。身の丈は2メートル余り、体には不思議な文様が刻まれ、頭部には簡易的ではあるものの顔が掘りこまれている。
「返事もできないのか? お前らの口は飾りか?」
飾りですよ。
というか何なのこの人? 確か魔力が弱い上に運動神経もよわよわで戦闘は出来ない筈じゃ? なのになんでこんなにしゃしゃり出てきてるの? それも作戦を無視する形で。
「まっ、首都で魔導力学の学位を取った俺様にお前らみたいな低学歴が気後れして話しづらいのは分かるがな。いったいここで何してんだ? 話くらいなら聞いてやるぜ?」
ゴーレム相手に学歴マウント取り始めたぞ。
というか、もしかしてこの人、相手がゴーレムだって分かってない?
作戦の要点は『相手が会話可能な存在なら』戦闘を避けるってもの。つまり話の通じないゴーレムの時点で次のフェイズ、『敵を通路に誘き出してアンセさんの魔法で迎撃』に移るはずなんだけど、ドラーガさんが戻ってきてくれないとそれもできない。
「どこ卒? お前どこ卒よ?」
「危ないドラーガさん!!」
間一髪。
ゴーレムが拳を振り上げてドラーガさんに殴りつけたところを私が彼の体を引っ張って躱すことができた。ゴーレムだから当然だけど問答無用の攻撃だ。
「罠よ!! 部屋から出て!!」
その直後クオスさんが叫ぶ。それと同時にゴウン、と何かが動く音がした。「何か分からないが、しかし何かまずい」そう感じて私はそのままドラーガさんを引っ張って出口を目指す。
しかしそれよりも早く床が崩れた。なんと、部屋全体が落とし穴の罠だったんだ。
「これに掴まれ!!」
アルグスさんの声と共に私とドラーガさんの前に彼の丸盾が飛んできた。よくよく見ればアルグスさんの手には鎖が握られており、それが盾に繋がっている。ヨーヨーみたいに投擲できる盾なのか!
「ぐえっ!!」
しかしドラーガさんが盾を掴もうと伸ばした両手は空を切り、代わりに盾の縁が彼の顔面を直撃した。
気を失って穴に落ちていこうとする彼の腰をがっしりと抱き込んで、私は左手で盾に繋がっている鎖を掴む。なんて世話の焼ける!
「しっかり掴まってろ! 一気に引き上げるぞ!!」
気合一発、アルグスさんは盾を引き上げる。成人二人分の体重をものともしない。細身に見えるけどさすがは近接戦闘職の最高峰、勇者だ。私とドラーガさんは何とか通路に戻ることができた。
「はぁ、はぁ……まさかモンスター以外にも罠があったなんて」
私は気絶したドラーガさんを通路に投げ捨てて後ろを振り返る。モンスターと落とし穴、二重の罠だった。ドラーガさんが一人で突っ込まなければ引っかかることはなかったはずだったけど。
「下がって、マッピさん! まだいる!!」
クオスさんが腰の短剣を抜きながら部屋のあった場所を睨む。そこには大穴が開いており、その暗闇にゴーレム達も吸い込まれていったように見えたけど……
部屋の出入り口から青銅の腕が見える。次に顔が。ゴーレムは一体だけ壁にへばりつき、よじ登ってきていたようだ。
「アルグス、私がやるわ!」
少し遠くからアンセさんが声をかけたけど、アルグスさんはそれを手で制した。
「君がやると溶かしてしまうだろう? このゴーレムは少し怪しい。分解して僕が調べる。マッピ達も下がって」
ゴーレムと私達の間に遮るようにアルグスさんが立ちはだかる。私は彼の言う通り気絶したドラーガさんを担ぎ直して距離をとる。
とるけれども。
アルグスさん、まさかその無銘のショートソードでブロンズゴーレムと戦うつもりだろうか。
鋼は当然青銅よりも硬い。とはいえ、青銅のかたまりに対して斬撃で切りつけるなら分が悪い。やるならそれこそアンセさんの炎で焼き尽くすか、私のメイスで叩き潰すかしないと無理だと思う。
しかしアルグスさんは剣を抜きもせず、ほとんど棒立ちみたいな状態で、軽く膝を曲げてゴーレムに対峙する。
ゴリゴリと青銅同士が擦れ合う音。頭一つ分以上大きい青銅のかたまり、中身まで青銅が詰まってるのかは知らないけれど、それでも重量は数百キロから1トンは軽くあるはず。
ブオン、と轟音を上げてノーモーションのパンチがアルグスさんを襲う。アルグスさんはそれを躱すのではなく盾で受ける。できるの? あの質量攻撃を!?
しかし盾は正面で受け止めるのではなく斜めに当て、ラウンドした表面でいなすようにパンチを受け流す。予想外の方向にパンチを流されたゴーレムは重心が泳ぐ。
アルグスさんはそこへ潜り込むように懐に入り、外側から右足で関節蹴り、さらに休むことなく左足で下段回し蹴りを決める。ゴーレムは全く自分の体を支えきれず、両膝と掌を地面についた。
「トルトゥーガ!!」
アルグスさんがそう叫ぶと確かに魔力の発動を感じた。すぐに彼の丸盾が手元で回転を始める。よくよく見れば盾の縁にはさっきまではなかった棘のような刃が何枚も突き出している。
鎖の方を掴んでフレイルのように遠心力をつけて、咎人の如く差し出された首にトルトゥーガが下りてくる。金属同士のガキン、という派手な衝突音と共にゴーレムの首が落ちた。
「こいつの核はどこかな……?」
まだ終わりじゃない。首を落とされたゴーレムはすぐに立ち上がる。臨戦態勢を解かないアルグスさんの盾はまだ回転したまま。あれは魔法で回転させているのか。
次のゴーレムの攻撃、ジャブのように短く鋭いパンチ、しかし回転する丸盾の芯を捉えることができない。
「やっぱり学習してきたな! 普通のゴーレムじゃない!」
そう呟いて、何度かゴーレムのジャブをいなすと、アルグスさんは一瞬のスキをついて懐に入り込み、体の継ぎ目、胸と腹の境目に盾の縁を滑り込ませる。
ギイイイイィィン! という金属同士の破砕音がダンジョン内に響く。銅は防爆素材とも呼ばれ、鉄と違って摩擦や衝撃で火花が出にくいが、回転するトルトゥーガにより、のこぎりで木材を切るように体を切断されている!
周囲にキラキラと銅の粉が吹き飛び、やがてゴーレムの体は真ん中で上下に両断され、今度こそ、その動きを止めたのだった。
「す……凄い……これが、勇者の戦い方……」
アルグスさんはゴソゴソとしばらくゴーレムの体を漁っていたけど、何かを見つけたようで、小さな石みたいなものを拾い上げていた。
「熱ちち、どうにも、普通のゴーレムじゃなかったみたいだけどね」
緑色に輝く宝石。
アルグスさんがゴーレムの体内から取り出した核は、私が見たこともない石だった。
意気揚々と部屋に入って声をかけるのはまさかのドラーガ・ノート。入口で話しかけて誘き出すってさんざん言ったのに無視したのか忘れたのか、堂々と部屋の中に入っていった。
私とクオスさん、アルグスさんはぽかん、と呆気に取られている。
「なんだ? 大陸最強の冒険者、Sランクパーティーのメッツァトルがあいさつに来たってのに無視か?」
大仰に手を広げてドラーガさんは語り掛けるが、相手は無言。
そりゃそうだ。相手はゴーレムなんだから。
エンチャンターはいないけれど、中にいたのは三体の青銅のゴーレム。身の丈は2メートル余り、体には不思議な文様が刻まれ、頭部には簡易的ではあるものの顔が掘りこまれている。
「返事もできないのか? お前らの口は飾りか?」
飾りですよ。
というか何なのこの人? 確か魔力が弱い上に運動神経もよわよわで戦闘は出来ない筈じゃ? なのになんでこんなにしゃしゃり出てきてるの? それも作戦を無視する形で。
「まっ、首都で魔導力学の学位を取った俺様にお前らみたいな低学歴が気後れして話しづらいのは分かるがな。いったいここで何してんだ? 話くらいなら聞いてやるぜ?」
ゴーレム相手に学歴マウント取り始めたぞ。
というか、もしかしてこの人、相手がゴーレムだって分かってない?
作戦の要点は『相手が会話可能な存在なら』戦闘を避けるってもの。つまり話の通じないゴーレムの時点で次のフェイズ、『敵を通路に誘き出してアンセさんの魔法で迎撃』に移るはずなんだけど、ドラーガさんが戻ってきてくれないとそれもできない。
「どこ卒? お前どこ卒よ?」
「危ないドラーガさん!!」
間一髪。
ゴーレムが拳を振り上げてドラーガさんに殴りつけたところを私が彼の体を引っ張って躱すことができた。ゴーレムだから当然だけど問答無用の攻撃だ。
「罠よ!! 部屋から出て!!」
その直後クオスさんが叫ぶ。それと同時にゴウン、と何かが動く音がした。「何か分からないが、しかし何かまずい」そう感じて私はそのままドラーガさんを引っ張って出口を目指す。
しかしそれよりも早く床が崩れた。なんと、部屋全体が落とし穴の罠だったんだ。
「これに掴まれ!!」
アルグスさんの声と共に私とドラーガさんの前に彼の丸盾が飛んできた。よくよく見ればアルグスさんの手には鎖が握られており、それが盾に繋がっている。ヨーヨーみたいに投擲できる盾なのか!
「ぐえっ!!」
しかしドラーガさんが盾を掴もうと伸ばした両手は空を切り、代わりに盾の縁が彼の顔面を直撃した。
気を失って穴に落ちていこうとする彼の腰をがっしりと抱き込んで、私は左手で盾に繋がっている鎖を掴む。なんて世話の焼ける!
「しっかり掴まってろ! 一気に引き上げるぞ!!」
気合一発、アルグスさんは盾を引き上げる。成人二人分の体重をものともしない。細身に見えるけどさすがは近接戦闘職の最高峰、勇者だ。私とドラーガさんは何とか通路に戻ることができた。
「はぁ、はぁ……まさかモンスター以外にも罠があったなんて」
私は気絶したドラーガさんを通路に投げ捨てて後ろを振り返る。モンスターと落とし穴、二重の罠だった。ドラーガさんが一人で突っ込まなければ引っかかることはなかったはずだったけど。
「下がって、マッピさん! まだいる!!」
クオスさんが腰の短剣を抜きながら部屋のあった場所を睨む。そこには大穴が開いており、その暗闇にゴーレム達も吸い込まれていったように見えたけど……
部屋の出入り口から青銅の腕が見える。次に顔が。ゴーレムは一体だけ壁にへばりつき、よじ登ってきていたようだ。
「アルグス、私がやるわ!」
少し遠くからアンセさんが声をかけたけど、アルグスさんはそれを手で制した。
「君がやると溶かしてしまうだろう? このゴーレムは少し怪しい。分解して僕が調べる。マッピ達も下がって」
ゴーレムと私達の間に遮るようにアルグスさんが立ちはだかる。私は彼の言う通り気絶したドラーガさんを担ぎ直して距離をとる。
とるけれども。
アルグスさん、まさかその無銘のショートソードでブロンズゴーレムと戦うつもりだろうか。
鋼は当然青銅よりも硬い。とはいえ、青銅のかたまりに対して斬撃で切りつけるなら分が悪い。やるならそれこそアンセさんの炎で焼き尽くすか、私のメイスで叩き潰すかしないと無理だと思う。
しかしアルグスさんは剣を抜きもせず、ほとんど棒立ちみたいな状態で、軽く膝を曲げてゴーレムに対峙する。
ゴリゴリと青銅同士が擦れ合う音。頭一つ分以上大きい青銅のかたまり、中身まで青銅が詰まってるのかは知らないけれど、それでも重量は数百キロから1トンは軽くあるはず。
ブオン、と轟音を上げてノーモーションのパンチがアルグスさんを襲う。アルグスさんはそれを躱すのではなく盾で受ける。できるの? あの質量攻撃を!?
しかし盾は正面で受け止めるのではなく斜めに当て、ラウンドした表面でいなすようにパンチを受け流す。予想外の方向にパンチを流されたゴーレムは重心が泳ぐ。
アルグスさんはそこへ潜り込むように懐に入り、外側から右足で関節蹴り、さらに休むことなく左足で下段回し蹴りを決める。ゴーレムは全く自分の体を支えきれず、両膝と掌を地面についた。
「トルトゥーガ!!」
アルグスさんがそう叫ぶと確かに魔力の発動を感じた。すぐに彼の丸盾が手元で回転を始める。よくよく見れば盾の縁にはさっきまではなかった棘のような刃が何枚も突き出している。
鎖の方を掴んでフレイルのように遠心力をつけて、咎人の如く差し出された首にトルトゥーガが下りてくる。金属同士のガキン、という派手な衝突音と共にゴーレムの首が落ちた。
「こいつの核はどこかな……?」
まだ終わりじゃない。首を落とされたゴーレムはすぐに立ち上がる。臨戦態勢を解かないアルグスさんの盾はまだ回転したまま。あれは魔法で回転させているのか。
次のゴーレムの攻撃、ジャブのように短く鋭いパンチ、しかし回転する丸盾の芯を捉えることができない。
「やっぱり学習してきたな! 普通のゴーレムじゃない!」
そう呟いて、何度かゴーレムのジャブをいなすと、アルグスさんは一瞬のスキをついて懐に入り込み、体の継ぎ目、胸と腹の境目に盾の縁を滑り込ませる。
ギイイイイィィン! という金属同士の破砕音がダンジョン内に響く。銅は防爆素材とも呼ばれ、鉄と違って摩擦や衝撃で火花が出にくいが、回転するトルトゥーガにより、のこぎりで木材を切るように体を切断されている!
周囲にキラキラと銅の粉が吹き飛び、やがてゴーレムの体は真ん中で上下に両断され、今度こそ、その動きを止めたのだった。
「す……凄い……これが、勇者の戦い方……」
アルグスさんはゴソゴソとしばらくゴーレムの体を漁っていたけど、何かを見つけたようで、小さな石みたいなものを拾い上げていた。
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