鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂

文字の大きさ
204 / 211

王たる資格

しおりを挟む
「やはり思った通り。てめえに王たる資格はねえ」

 急にドラーガさんが勢いづきだした。前に進み、玉座に座るガスタルデッロの前に出る。両側には巨大な悪魔、グレーターデーモン。しかしそれに怯むことなく、口の端にはいつもの余裕の笑みを湛えている。

「全てが見えているわけじゃねえ」

「なんだと?」

「実際イリスウーフが今俺達になんと呼ばれているのか気付いていなかったな? 今は本名のノイトゥーリと呼ばれていることを予知できなかった」

 ドラーガさんの言葉に、ガスタルデッロは笑みを消し、そして眉間に皺を寄せた。

「ごちゃごちゃ言わずに俺達に協力しろ。市民の避難を助け、火砕流を止めるんだ。お前なら何か方法も考えつくだろう?」

「不遜なり」

 低く、深い声だった。ガスタルデッロは今はもう明らかに怒りの表情を見せている。

 しかし……

「当然だ。てめえと違ってこの俺様は何が起こっているのかをちゃぁんと見てんだからな」

 彼は自分の目を指差しながら言葉を続ける。

「この目でよ」

 そういえば……ドラーガさんは以前に言っていたことがあった。

「俺のこの目は全ての嘘を見抜く。真実を見る。事情が分からんふりして会話ごっこしてたお前の演技も当然見抜いてたし……」

 そうだ。ドラーガさんは目を見て話せばたとえ魔物だろうと嘘を見抜けると豪語していた。

「お前が何に絶望して自暴自棄になっているのかも、な」

「やれ!!」

 その瞬間ガスタルデッロは右手を上げてグレーターデーモン達に指示を出した。

「ゲッ、まずい!!」

 私は慌ててポーチから隠していたナイフを取り出す。

 刃渡りは二十センチほどのサバイバルナイフ。冒険には必需品の使い慣れた刃物だ。そして左手にはデュラエスに斬られた樫の杖の残り(ドラゴンキラー)、しかし6体のグレーターデーモン相手には分が悪い。

 悪魔たちはガスタルデッロの目の前にいるドラーガさんを無視して全数が私たち二人に突っ込んでくる。

 しかし即座にノイトゥーリさんがドラゴンブレスを吐き、前衛の二体を消し炭に変える。

「危ない!!」

 ブレスの硬直を狙って悪魔が攻撃を仕掛けてくるが私がそれを樫の杖で払い、即座に背後に回り込んで敵の脇腹後方にナイフを突き立てる。

 狙いは肋骨の一番下、その骨が頼りなく守る臓器、腎臓だ。

 悪魔は跳ね上がるように大きく体を痙攣させてその場に倒れ込んだ。腎臓は神経が集中していて、これを破壊されれば最悪の場合痛みでショック死することもある。

 人間と同じように悪魔にもそれが有効かどうかは分からないけれど、少なくともこの悪魔は昏倒して戦闘不能に陥った。

 これで2対3になったけれど、数の上ではまだ不利な上に、正直言って実力的にもドラゴンに匹敵すると言われるグレーターデーモン、私たち二人で勝てるとは思えない。

 ノイトゥーリさんが半竜化し、私もドラゴンキラーとナイフで応戦するけど、さっきの様な不意打ちは通用しない。耐え凌ぐのが精いっぱいだ。

 ドラーガさんが、ドラーガさんが何とかしてくれることを信じて。

 ガスタルデッロは巨大な十字剣をスラッと抜いてドラーガさんの首筋に当てる。

「観念しろ、すぐに三人とも彼岸の地に送ってやろう」

 ドラーガさんはその言葉には答えない。

 そして動揺も見せない。決して威圧されて委縮されているわけではないのだ。

「ガキのくせに、随分と調子に乗っていやがるな」

「なに!?」

 二人が会話を続けている間も私達は何とかグレーターデーモンの攻撃を凌いでいる。半数が即座にやられたことで敵も警戒しているようだ。敵の主力武器は鋭い爪と丸太の様な尾。

 私はナイフと杖で、ノイトゥーリさんは鋭い爪で、何とか凌いでいる、けど、そう長くはもたない。ドラーガさん、なんとかして!

「ガキだからガキだっつったんだよ。自分の思ったような結果にならなくて八つ当たりする奴がなんでガキじゃねえと思うんだ」

 ドラーガさんはずい、と一歩前に出る。

「ワイウードが何を思ってあんな魔笛を作ったのか、いや転生したのか。それがずっと分からなかった。最初はドラゴニュートを裏切って人間につくのかと思ったがそれも違った。訪れたのはドラゴニュートにも人間にも、地獄の様な世界だけだった」

「黙れ」

「だがやがてカルゴシアの町は復活した。一方でドラゴニュートは滅びた」

「黙れと言っている!」

 ガスタルデッロの表情がみるみるうちに険しくなっていく。今まで常に余裕の笑みを浮かべてきた二人。しかしガスタルデッロの方にその面影はすでにない。

「これが狙いだったのか、ワイウードはやはり人間に味方したのかと絶望した。やはりデュラエスが言うように人間の『繋がり』に負けたのかと。
 ……だがそれでも、納得ができなかった。自分の命を犠牲にしてまで、自分が見ることができない物に賭けるなど、そんなことがあり得るのか、と」

「黙れ!!」

 だが一方のドラーガさんの表情にも余裕の笑みはない。慎重に、ガスタルデッロの様子を窺うように、まるで探りながら話すようだ。

 いつの間にかグレーターデーモン達の攻撃もその手は止んでいた。あるじの異変を敏感に感じ取ったのだろう。

 正直助かった。このまま戦っていたら先は見えていた。不意打ちで最初の三体は倒したものの、残りの三体には傷一つつけることができていないどころかかなり押されていた。

 あとはドラーガさんがいつもの口八丁で丸め込んでくれれば……でもどう見ても相手を怒らせてるだけにしか見えないんだけど……

「だからアカシックレコードに頼った。それだけが知りたくて、三百年も探し続けた」

 ガスタルデッロは再び刀身をドラーガさんの首にピタリと当てる。鬼の形相で。

「貴様に何が分かる」

「分かるさ。アカシックレコードに触れたことがあるのはお前だけだとでも思ってるのか?」

 え? どういうこと?

「平和を願ったワイウードの祈りのその先に地獄しか待ち受けていなかった事、そして三百年経った今も人間は愚かしくも自分の幸福だけを願い、苦しみもがき続けている事……それがお前の本当の絶望の引き金を引いた……」

「黙れ!!」

 一際大きく怒鳴り声を上げるとガスタルデッロは剣を天に掲げた。

「地上の王、ウィリエール・トリエスティナ・ガスタルデッロの名において命ずる。全知全能たる星の記憶よ、その輝きをもってしての者を虜にせん。ドミニオン!!」

 その瞬間、眩い光にドラーガさんが包まれた。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

腐った伯爵家を捨てて 戦姫の副団長はじめます~溢れる魔力とホムンクルス貸しますか? 高いですよ?~

薄味メロン
ファンタジー
領地には魔物が溢れ、没落を待つばかり。 【伯爵家に逆らった罪で、共に滅びろ】 そんな未来を回避するために、悪役だった男が奮闘する物語。

処理中です...