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3.結末
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しおりを挟む明らかに二人の歩みは、冷たく静まり返った処刑場へと続いていた。デヴの足取りは重く、彼の顔には心の奥底から滲み出る苦悩が浮かんでいた。しかし、ダーラは全く異なっていた。彼の姿は余裕に満ち、その態度はローカヤタの信念が見事に体現されているかのようだった。
彼らが処刑場へ向かう道中、デヴが立ち止まった。
「私の行為が、信念を守るがを守るがあなたを殺す罪に変わりない。あなたを殺すことはできない」
デヴの言葉は罪悪感に満ちていたが、ダーラはただ淡々と彼を見つめていた。
そして彼は微笑んだ。
「この場に誰も罪人などいない。罪の概念は妄想だ」
彼の言葉はローカヤタの考えを具現化し、人間の感覚に基づく現実認識を示していた。人々は見えない「罪」に縛られて恐れ、自由を失っていた。だが、ダーラにとって、それはただの幻想に過ぎない。
その表情は、彼自身が現実を強く認識し、友人であるデヴが巻き込まれた複雑な力関係を理解し許容していることを示していた。
処刑場へと続く道のりは長く、石畳の冷たさが二人の足元にじわじわと滲み込んでいく。しかし、ダーラの心は静かで、彼の覚悟は既に固まっていた。そしてデヴは、彼の横でその決意を見つめ、深く胸に刻むことしかできなかった。
場の雰囲気が一段と重くなり、周囲の空気は厳粛さで凝縮していった。それでもダーラは、決して動揺することはなかった。
「人は死から逃げたいと思うだろう。だが、生は蝋燭の火が燃えるように只の現象である。生も死も裏表であり、恐れるものではない」
彼の冷静さと決意が場を圧倒し、彼の言葉が処刑場の厳かな空気に響き渡った。
「私はローカヤタの教義を讃え、それに従い、物質的、経験的に知覚できる事実のみを信じます。どのような罪でも、それは観念であり、目に見えず、手で触れることもない幻想です」
彼の言葉はその場にいる誰もが黙り込むほどの力を持っていた。彼は自身の運命を受け入れ、そして語り尽くすことなく、自分の信念を最後まで貫くことを選んだ。
ダーラが話すたびに、デヴは心の底から苦しみと感動を覚えた。
処刑の刻が迫る中、デヴはダーラの姿に心を動かされ、彼自身の信念と罪悪感の間で葛藤し続けた。自分が偽りの告発をしてしまったこと、ダーラが自分のために全てを理解しながら、信念を守りつつ死を受け入れていく姿、それらが彼の心に深い傷を残した。だがそれと同時に、ダーラの信念と覚悟に敬意を表した。
そして、ついにその時が来た。ダーラは粛々と歩みを進め、処刑台に立った。彼の表情は穏やかで、彼の瞳には覚悟と平穏が宿っていた。その姿は、彼の信念と教義、そして彼の生き様そのものを物語っていた。デヴは、その光景を目に焼き付け、ダーラの決意と信念を胸に刻み込んだ。
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