出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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 長椅子に座ったまま、やっと服を整え終わったところで「立てるか?」と、訊かれて「はい」と、答えたものの、足に力が入らない。

 立ち上がって一歩踏み出した途端に、足が縺れて床に崩れ落ちそうになってしまい、その人の腕に支えられた。

「危ないっ、大丈夫?」

 身体がふらついて、そのままトンッと、その人の胸に頭を預ける形で体重をかけてしまった。

「……っ」

 肩を抱き寄せられるように支えられて、また身体がぴくっと反応してしまう。

 実は、未だに俺の半身は萎えるどころか、ったままの状態で……。

「おい? どうした?」

 なんだかさっきよりも息苦しくて、心臓もドクドクしていて、身体が熱い。荒い息が治まらなくて、上下に肩を動かしていた。

「おい、勇樹……、何を飲ませた?」

 その人が振り返って、桜川先輩に訊いている。

「別に……酒飲んでただけだよ」

「うそつけ」

 その人の強い口調に、桜川先輩が不機嫌そうな声で言い捨てる。

「兄貴の部屋のクローゼットに隠してあった薬だよ」

 ――え? 薬?

 薬なんて、飲んだ覚えは無い。

 つか、兄貴って……。この人は桜川先輩のお兄さん……、つまりこの店のオーナーなのか。

「あ……」

 ――桜川スペシャル……。

 桜川先輩が作った、あのカクテルを飲んでからだ。 身体が妙に敏感になって熱くなったのは。

「ばかやろう! 何を勝手に持ち出してんだ」

「別にいいだろ?兄貴だって、楽しみたい時に使ってんだろ?」

「アホか」

 はぁーっと、長い溜め息を一つ吐き、その人は俺の身体を支え直した。

「ごめんな。身体、辛いかもしれないけど、歩けるか? 送っていくから」

 俯く俺の顔を覗き込みながら、その人は申し訳なさそうな声で、そう言った。

「……すみません……大丈夫ですから」

 そうは言ったものの、顔を上げる力もなく、俯いたままの視界は、床の木目しか捉えていない。

「いいから俺に掴まって。外に出たら気分も良くなるかもしれない」

 支えられてなんとか歩けるけれど、酒を呑み過ぎた時のようにフワフワしていて、足元は不安定だ。支える為に腰に腕を回されただけで、身体の熱がまた上がった。

「おいお前ら、ちゃんと店の後片付けしておけよ。適当に済ませてたら後で痛い目見るぞ」

 最後にその人は、先輩達に脅しの声をかけて、俺の身体を支えたまま店のドアを開け、外へゆっくりと歩き出した。

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