出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第四章:想う心と○○な味の……

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「会えなくなるのは勿論寂しいけど、二度と会えないって……なんで?」

 知り合ったばかりで、そんなに月日は経ってないけど、急にいなくなったら、それはやっぱり寂しい。

 普通じゃ考えられないような衝撃的な出会いだったし、短い期間だけど結構親密な(身体のことじゃなくて……)付き合いをしてると思うし……。

 出会ってから今までのことを振り返りながら、俺はじっとみっきーの顔を見つめて答えを待った。

「実は、前から誘われていたんだけど……」

 なんだか言いにくそうに鼻の頭を人差し指で掻きながら、みっきーはその理由を話し始めた。

「……俺、メキシコに行こうと思うんだ」

「へ……?」

 ――メキシコ? なんでいきなりメキシコ?

 あまりもいきなりな話で、まったく現実味がないんだけど!

「メキシコって……? そ、そりゃまた遠いね。何しに行くの?」

「飲食店をね……ファーストフード的な店をやらないかって話があるんだよ」

「へぇ~、でもなんでメキシコなの?」

「スパイシーなメキシコ料理、陽気なメキシカン、蛾の大群が俺を呼んでるんだよ」

 みっきーは上を見上げ、両手を広げ、大げさ過ぎるジェスチャーで、メキシコについて熱く語る。

「ちょっ、蛾の大群ってなんなの」

「ん? あぁ、見た事ないけど、友人が言ってたから」

「なにそれ……」

 まぁ、みっきーらしいと言えば、みっきーらしいけど……。

「だからね、直……」

 急にマジモードで、俺に向き直るみっきー。たった今、おどけていたくせに。

 付いていけずに呆気にとられている俺の足元に、何故かみっきーが跪いた。

「ちょ……、何してるの!」

 驚いている俺に構わず、みっきーは跪いたまま両手で俺の手を握りしめた。

「みっきー?」

 ――なっ、なんだ? どうしたんだ? みっきーが、何が言いたいのか何をしたいのか全くわかんねえ!

「だからね、直……、俺と一緒に行かない? メキシコ」

 ――へ?

「な、何言ってんの、行かないよ!」

 間髪入れずに『行かない』って言っちゃったけど、この対応で合ってるよね? 別におかしくないよね? だってメキシコだろ? しかもそこで住んじゃうってことでしょ?

 だけど、みっきーは大げさに哀しそうな顔をして、あからさまに落ち込んでる。

「そんなに、あっさり断らなくても……」

 そう言って、俺の膝に顔を埋めて「しくしく……」とか言いながら、泣きマネをしている。

「あ、あのさ、みっきー?」

「俺……向こうに行っちゃったら、本当に今度いつ帰ってこれるか分かんないんだよ?」

「うん……」

「それでも、いいんだ?」

「んーー、でも、みっきーは行きたいんだろ?」

「……それはそうだけど……でも俺と離れたくない……とか、そういう風には思わないの?」

 俺の膝に埋めていた顔を上げ、みっきーが上目遣いに真っ直ぐ俺を見つめてくる。

 ……って、あれ? なんかホントに目がウルウルしてんじゃん。マジで泣きそうなの?

「……んーーーー」

 そりゃ、いなくなるのは寂しい。でもみっきーのやりたい事を、俺が止めるわけにもいかないし。 

 ど、どう言ったらいいんだ? こんな時……。

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