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第四章:想う心と○○な味の……
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『……』
俺の言葉に、電話の向こうからみっきーが言い淀む空気が伝わってきて、一瞬の間が開いた後、『直?』と、様子を窺うような声が聞こえてきた。
『何があったんだ? 今どこ? あれから透には会えたんだよね?』
――あれから……。
みっきーに言われて、透さんへの想いにやっと気付けて、透さんのマンションに行って……、すれ違いで会えなかったことも、まだみっきーには言ってなかった。
背中を押してくれたみっきーに、ちゃんと報告をしたかったから。
まだどうなるか分からないのに、途中で泣き言や愚痴を言って、またみっきーの優しさに甘えてしまわないように。
だけどもう……
「透さん、いなくなっちゃった……」
これで終わったんだって思うと、箍が外れたように、全て曝け出したくなってしまう。
『え? いなく……って、何処行ったの? あいつ』
「わ、かんない……。でも、もう二度と会えない……っ……」
『会えないって? なんで……、おい、直? 泣いてるの?』
「け、っこん、するって……」
初めて声に出してその言葉を言ってしまうと、二度と会えないという事が、みるみる現実味を帯びてくる。
さっきまで出なかった涙が、今頃堰を切ったように溢れて止まらなくなった。
「……っ、……ぅッ、」
必死で我慢しても嗚咽が漏れて、みっきーの耳にも届いてしまう。
『おい、今どこだよ?透のマンションか?』
「……う、ん。マンションの近く……っ、……、」
もう、みっきーに甘えちゃ駄目だと思ってるのに……。
道行く人々が、立ち止まって電話をしてる俺のことを振り返って見ている。だけど、もうそんな事を気にする余裕もなくなってしまった。
降り続くみぞれに濡れながら、俺は堪える事も忘れて本格的に泣き出してしまった。
『今から行くから、待ってろよ』
それだけ言うと、みっきーは通話を切った。
通話が切れてしまった携帯を、俺は暫くじっと見詰めたまま立ち尽くしていた。
またみっきーに甘えてしまう自分が、嫌になる。
でも、誰かに傍にいて欲しい。
ただ独りでいるのが苦しかった。
――そういえば、今から行くって……、みっきーって透さんのマンションの場所を知ってるんだろうか? ……いや、知らないはずだ。
もう一度、電話した方がいいだろうか。
そう思って、携帯を操作しようとしたその時、不意に髪を濡らし続けるみぞれの冷たさを感じなくなった。上を見上げれば、誰かが後ろから差し掛けてくれている黒い大きな傘が視界に入った。
俺の言葉に、電話の向こうからみっきーが言い淀む空気が伝わってきて、一瞬の間が開いた後、『直?』と、様子を窺うような声が聞こえてきた。
『何があったんだ? 今どこ? あれから透には会えたんだよね?』
――あれから……。
みっきーに言われて、透さんへの想いにやっと気付けて、透さんのマンションに行って……、すれ違いで会えなかったことも、まだみっきーには言ってなかった。
背中を押してくれたみっきーに、ちゃんと報告をしたかったから。
まだどうなるか分からないのに、途中で泣き言や愚痴を言って、またみっきーの優しさに甘えてしまわないように。
だけどもう……
「透さん、いなくなっちゃった……」
これで終わったんだって思うと、箍が外れたように、全て曝け出したくなってしまう。
『え? いなく……って、何処行ったの? あいつ』
「わ、かんない……。でも、もう二度と会えない……っ……」
『会えないって? なんで……、おい、直? 泣いてるの?』
「け、っこん、するって……」
初めて声に出してその言葉を言ってしまうと、二度と会えないという事が、みるみる現実味を帯びてくる。
さっきまで出なかった涙が、今頃堰を切ったように溢れて止まらなくなった。
「……っ、……ぅッ、」
必死で我慢しても嗚咽が漏れて、みっきーの耳にも届いてしまう。
『おい、今どこだよ?透のマンションか?』
「……う、ん。マンションの近く……っ、……、」
もう、みっきーに甘えちゃ駄目だと思ってるのに……。
道行く人々が、立ち止まって電話をしてる俺のことを振り返って見ている。だけど、もうそんな事を気にする余裕もなくなってしまった。
降り続くみぞれに濡れながら、俺は堪える事も忘れて本格的に泣き出してしまった。
『今から行くから、待ってろよ』
それだけ言うと、みっきーは通話を切った。
通話が切れてしまった携帯を、俺は暫くじっと見詰めたまま立ち尽くしていた。
またみっきーに甘えてしまう自分が、嫌になる。
でも、誰かに傍にいて欲しい。
ただ独りでいるのが苦しかった。
――そういえば、今から行くって……、みっきーって透さんのマンションの場所を知ってるんだろうか? ……いや、知らないはずだ。
もう一度、電話した方がいいだろうか。
そう思って、携帯を操作しようとしたその時、不意に髪を濡らし続けるみぞれの冷たさを感じなくなった。上を見上げれば、誰かが後ろから差し掛けてくれている黒い大きな傘が視界に入った。
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