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婚約して6年が達ちました
目前の人
しおりを挟むサクラは自分の目の前の上級生を盗み見た。
殆ど後ろ姿だが、黒髪に黒い枠の眼鏡を掛けている。
ちょっと神経質そうに見える、見るからにインテリくんの様相。
多分イケメンの部類に入る眼鏡男子だが、会った事は無い。
多分。
サクラはざっと見て、そう由衣に告げた。
なら、なんで?
確かに由衣の疑問の言葉は、サクラのそれにも通じる。
知らない人が助けてくれようなんて、無いに等しいのだから疑問に思うのは当たり前の事だった。
「も一回、罪状言ってみなよ」
彼がサクラを断罪しようとした男に、ぞんざいに言ってのけた。
「き、貴様、何者だっ、此処は特殊科の敷地だぞっ! 」
「うん、その位知ってる。で、罪状を言え」
気持ちいい位に切って捨てる黒眼鏡の彼。
「そんな事、お前、無礼だぞ!! 私は、特殊科主席、グラム侯爵家嫡男、オットーと知っての狼藉か! 普通科の生徒のくせに!! 」
「はい、アウト。君に粛正者は向かないようだね。荷物まとめて出て行きな」
にっこりと笑って眼鏡男子が言い放った。
飄々とした態度は崩さずに。
「はぁ、親父達、どう言った人選してんだか…… 」
溜め息混じりに言った言葉は、回りには聞こえていない。
「糞っ!貴様っ!! 」
男が駆け出した。
と、同時に無様に転けた。
「っ!っうう…… 」
あまりの痛みに声すら出ないようだ。
駆け出す瞬間に何かにけつま付いた。
嫌、脚を引っ掛けられたと言うのが正解か。
男が唸りながら顔を上げると、其処には銀髪で赤い目の10歳位の男の子の人形が立っていた。
『家の主に君は何をしようとしているのかなぁ? ん~? 』
と、高くもなく低くもない声音で人形は、男に問い掛けたのだった。
「なっ、なにっ、人形がしゃべっただと!? 」
驚く男は人形を指差して、喚く。
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