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フォルトゥナと守護騎士
優しい死神
しおりを挟む零の翳した掌に、一筋の風が円を描いてくるくると巡り墜ちていく。
或いはもう一つの風が、同じ様に今度は螺旋を描きながら立ち昇っていく。
そんな風が幾つも零の掌に集まって、一つの物体を形作る。
段々と姿を形作るそれは、縦半分だけの仮面だ。
顔の右半分を隠す仕様の仮面。
目が出る部分だけが穿つように開けられている、半透明な仮面、それがひとりでに動き、彼の顔の右半分に吸い込まれるように張り付いた。
その瞬間、キャサリンは目を見張った。
仮面が零の顔を溶かすように馴染んでいくその様子は、皮膚と筋肉を溶かし、骨を剥き出しにさせた。
流石にその工程は見せたく無いのだろう、零は外套のフードを目深に被った。
どれ程の美貌を誇っていても、一皮剥けば皆同じ、逸れを具現化した様相は、キャサリンを驚かせて見せたが、彼女に嫌な思いはさせなかった。
先程と違い零は右半分だけを隠して、左側は普通に瞳まで見せている。
一瞬だけだが左右揃って見た彼の顔は不謹慎だが目を見張るような神々しさがあった。
外套の中に隠れていた零の右腕がすっと持ち上げられ、人目に付いた。
骨だけの腕。
やせ細って骨と皮に成ったのでは無く、マトモな骨だけの姿は、顔だけでなくその身体までも違えていた。
「さて問題です。この姿を見て連想するモノはなんでしょうか? 」
そう質問をした零は、痛みも何もなく飄々としている。
キャサリンは、自然と戦慄く唇を動かして、以外や以外、
「し、死神様……、 けど、神々しいですわ……」
と、答えた。
声の震えは止められないが、その態度は真逆だ。
頬を染め、恥じらっている。
『女神フォルトゥナ』の御使いとは死神の事を指しているとは、キャサリンも気付かなかった。
「やっぱ、普通そう言う反応…… 」
と、零は口の中で呟きかけ、キャサリンを見てきょとんとして目を瞬いた。
通常とは異なった、彼女の態度の違いに。
彼女の言葉と零の驚きを見たヘンディクは、其処でブヒッと笑いをこらえた声を上げて、そして我慢しきれずに大笑いを始めた。
一通り爆笑して、目に涙を溜めながらヘンディクは、
「流石ですねぇ。私のフォルトゥナは『ヘンディクってばカッコいい~っっ!! 』って言って下さいましたよ。流石次代のフォルトゥナ候補ですね…… 」
と、こっそり零だけに解るように囁いた。
零は、一瞬驚いた顔を見せたが笑む事でヘンディクへの返事とし、馬上のキャサリンを見上げた。
「キャサリン、至極光栄に思うよ。ありがとう。俺、君を絶対護ってみせるから」
零は綺麗な顔の半分で緩く笑いかけた。
そんな彼の表情にキャサリンは、ボボッと顔を真っ赤にさせた。
── ああっ、わたくしはもう……、恥ずかしすぎますわっ ──
恥ずかしがる彼女に、零は微笑みをその顔に浮かべたまま言った。
「女神フォルトゥナは、運命を司る女神なのは知ってるよな。実はその範囲ってのは多種多様で、生と死もその範疇に含まれているんだ。『フォルトゥナの守護騎士』の得物ってのが大抵が大鎌で、俺の得物も偶然大鎌でさ、あの綺麗な見た目のままコレを振るうより、生と死を強調するこの姿の方がインパクトが強いから、わざとこんな姿に成ってるんだよ。一種の戦闘形態のようなものかなぁ…… 」
そう言って、零は微苦笑して見せた。
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