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第八幕 奸計の古城
帰る家
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俺たちが崖を上がった場所にいることはおそらくもうバレてる。ここも長居は無用だ。
しかしこれからどちらに向かうべきかについては意見が割れた。
ハルさんは、このまま大海峡に沿って西へ進み、大陸の西海岸に出ようという。
そこから南下すれば海沿いにレジスタンス組織がある街が点在する。補給にも有利だし、情報収集もしやすい。大陸の南端までたどり着けばそこは広大な山岳地帯で、長期潜伏できそうな場所も見つかるだろう。
ただ、人のいるところには敵もいる。街の人もいつ密告者になるか分からない。道中で敵に襲撃されるリスクはそれなりにある。
ナラさんは全く正反対の方向、つまり東側に進み、大陸中央部の大森林に紛れ込んでしまった方が安全だという。
こっちに進むと人家はほとんどない。全て自給自足だ。情報も全く入らない。敵がいるのかどうかも分からないが、姿をくらますという意味では有利だ。
どちらの言うことも一理ある。どちらを選んでも一長一短だ。2人はだんだんヒートアップして、ほとんど言い争いに近くなってきた。
「街の便利さが鹿のあなたに分かるわけないでしょ!?」
「おお、分からんわ! お前かて森のメリットが分かるんか!」
「アタシは半分エルフの血が流れてるのよ。少なくとも半分は分かるわ!」
「はっ! そんなもじゃもじゃ頭で耳隠しとるような中途半端なエルフがおるか!」
「うるさいわね。隠してないといろいろ支障があるのよ!」
「耳隠すぐらいやったら森のこと語るな、ヴォケ!」
っていうか、もう完全にケンカじゃないか。
「ちょ、ちょ、待って、待って下さい。2人とも冷静に、冷静に」
とりあえず割って入るが、
「あなたが早く行き先を決めないからケンカになるんじゃない」
「も、何でもええからお前が決めえな」
決定を任されてしまった。
どうしようか……
ただ俺はどうしても気になることがあった。それはジゴさん、ナギさんの消息だ。
最後に鳥急便で手紙をやりとりしたのはボナ・キャンプを出る前だから、もうかれこれ4、5ヶ月前になる。
危険な場所に向かってるようだったし、無事かどうかすごい気にかかる。向こうも俺たちのことを心配してくれてるだろう。ひょっとしたら俺たちが死んだという誤情報が伝わってるかもしれない。
それに、これはプライベートなことだけど、ニコとの結婚についても、ご両親にちゃんと話をしておかないといけない。
「お2人の言うことはどちらも間違ってないと思いますが、僕としてはジゴさんナギさんが気にかかります。連絡を取り合うためにも、情報収集のためにも、まずはいったん街に出ましょう」
ナラさんは「ちっ」、ハルさんは「ふふん」、みたいな感じだが、ニコの嬉しそうな顔を見るとホッとする。
しかしナラさんが妙なことを言った。
「西海岸に行くんやったら行くで、しゃあないしワシも行くけどな、お前らが近寄らん方がええ街があんねん」
「え? どこですか、それは?」
「言うても知らんやろ? 『レミ』っちゅう街や」
「あら、大きなレジスタンス組織のある街よ。近寄っちゃダメなの?」
「そうや。まあ、街そのものは別に問題ないねんけど、近くに『一刻城』っちゅう場所があってな。そこには絶対、近寄らんこっちゃ」
「え、どうして?」
「何かすごいモンスターがいるとか?」
「とんでもない迷宮になってるとか、かしら?」
みな勝手な推測を口にするが、ナラさんの話は意外だった。
「ちゃうちゃう。あのな、その場所は黙呪王の城と連動しとってな、そこに入ってしまうともう黙呪王の城に行って戦わんとしゃあなくなってしまうねん」
「え……」
それ、ヤバ過ぎるだろ。俺たち、黙呪王と戦わずに逃げまくることを目指してるのに、それじゃ完全にアウトじゃないか。
「そやろ? そやから近寄るな、っちゅうとんねん。分かったか?」
「分かりました!」
全員声を揃えて返事した。とりあえずレミの街は全力で回避しなければならないな。
俺たちは5人で西に向けて出発した。正確には4人と1頭というべきだが、ナラさんはもうほとんど人間だ。だから5人でいい。
いずれにしても、ようやっとメンバーが全員そろった感じだ。5人編成の旅人パーティーだな。
ゲーム的に言うと、まずアミは剣士で前衛、これは間違いない。身のこなしが軽いので、敵に斬り込むこともできるし迎撃も強い。ただ戦局によっては剣舞で支援役に回ることもできる。困った時にはヒーラーにもなれる。っていうか本当はヒーラーが本職なんだが。
俺も前衛だ。ジョブは何だろうな……そんな言葉はないけど『歌術士』ってところか。震刃が得意で、多少は剣も使うので、格好良く言えば魔剣士、みたいな感じか。
ただパーティーの中では俺がナイト=タンク的な役割をする必要がある。まあ人からヘイトを集めるならお得意だ……ってそんな悲しいこと言わすなよ。
ニコも、ジョブは歌術師だが、威力のある歌術をいろいろ使えるから中衛アタッカー、いわゆる魔術師的な立ち位置になるだろう。ヒーラーとしても超優秀だ。
ハルさんは後衛で支援職だな。ギタ郎で奏術をがんばってもらう。ただ、いろいろな歌術を器用に使えるし、ボウガンも使えるから、いわゆるアーチャー、遠距離アタッカーとしても活躍してもらえる。
ナラさんも後衛だな。戦闘が始まったらリズムを刻んでもらって、それを奏術としてみんなに利用してもらう。ただ雷の歌術などいろいろ歌術は使えるので、場合によっては遠距離アタッカーになることもできる。
改めて考えると、俺以外の4人は相当な実力者だ。コンビネーションがうまく機能すればとんでもない力を発揮するかもしれない。
歩き出した俺たちの前に敵はすぐに現れた。
いや、黙呪兵とか親衛隊とかそういう連中じゃない。自然の生き物だ。
にょろにょろした長い生き物……そう、蛇だ。
この辺りの森は、やたらめったら蛇がいる。小さいのが多いが、時々、モンスター級の大蛇が出てくることもある。この前の蛇女ほどではないが、それでも結構見上げるぐらいの大きさだ。
しかも強力な毒を持っており、咬まれたら結構ヤバい。さらに、好戦的で向こうからどんどん飛びかかってくる。無益な殺生は避けたいのだが、こうなるともう敵として倒さざるを得ない。
ちなみに俺は、ミミズもゴカイもダメだったが、蛇も苦手だ。どうも長細い生き物は総じてダメみたいだ。
しかし幸いうちのパーティーの女性2人は平気で、アミは曲刀をぶんぶん振り回し、ニコは凍刃を飛ばして、どんどん片付けてくれる。俺の出る幕はない。
「ホントに蛇、多いわね……ほらまたいるわよ」
だいたいは目の良いハルさんが見つけてくれる。
「えっ!? マジすか? どこ? どこ?」
「情けないわねえ。あなた、それでも歌い手様なの? ほら、もう死んでるわよ」
俺がバタバタしてる間にアミが片付けてくれる。
と、その時、急にニコが凍刃を飛ばした。
白い刃が飛んで行った方を見ると大きなコブラの頭が胴体から離れて落ちるところだった。早い、強い。
「あんた絶対歌い手様じゃないわね。ニコが歌い手様よ」
「……いや、マジで俺もそう思う」
ニコは俺の横を黙って歩いてる。俺と目が合うとにっこり笑ってくれる。もうその髪は完全に真っ黒だ。
やっぱりこの子が歌い手なのかな……じゃ、俺はいったい何なんだ? 何のために召喚されたんだ? そこが分からないんだよな。
ぼーっと考えながら歩いてると、目の前に何かどさっと落ちてきた。
「うわああああああっ!」
黄色と黒のまだら模様! 猛毒のタイガースネークだ!
恐怖で走り出したくなるのを抑えて震刃を撃とうとしたら、もうその時にはアミの曲刀とニコの凍刃が蛇を切り刻んでいた。
「あんた、反応が遅いのよ」
またアミに睨まれる。
っていうかこの2人、本当にすごい。ハンパない反応速度だ。
「ニコはそれなりにトレーニングしてきたけど、アミは素人のはずだろ。どうやってそんな実戦的な剣術を身につけたんだ?」
「ふふん。だから前にも言ったでしょ。お母さんの元カレに稽古つけてもらったって」
「いや、それにしても反応速いよな」
あんまり褒めるとアミは怒ったような顔をする。素直じゃないなあ、この子。
「そういえばアミ、出発する時、どうやってお母さんを説得したんだ?」
気になってたことを訊いてみた。
「うん、それがね。意外とあっさり送り出してくれたのよ」
「へええ」
「いつかこういう日が来るのは分かってたわ、みたいな」
「ああ、なるほど」
「まあ、アタシからも話はしたけどね。でも意外とすぐに許可してくれたのよ」
ハルさんが口を挟む。
ふうん。まあ、俺を発情させて娘とエッチさせようと必死だったからなあ、あの人。娘が俺の所に行くって言うんだったら反対はしないか。
「でもアミがいなかったら宿の方は困るんじゃないのか?」
「それがね、もう宿を畳んでレジスタンス組織に戻るんだって」
「あれ? レジスタンス組織は出禁になったんじゃなかったっけ?」
「それそれ。聞いてよ、ソウタ」
ハルさんはオバさんみたいな口調になった。
「ほら、ボナ・キャンプのノボがいるでしょ。彼がエメに戻っておいでって声をかけてたみたい。どうもあの2人、昔いろいろあったみたいでね……」
ああ、ノボさん。あのヒゲのダンディなオジさんだ。
確か独身だったと思うけど、あの人は女性にはモテそうだ。エメさんとはお似合いかもしれない……いやいや、エメさんが一人の男性だけで収まるとも思えない。
っつーか、あの人があんな男だらけの所に行ったら、蛙の群れに蛇を放すようなもんだ。モメなきゃいいけどな。
そんなことを考えてたら、また目の前にドサッと蛇が落ちてきた。本当に蛇の楽園みたいな所だな、ここは。
今度は俺も早かった。震刃でさっと毒蛇の首をはねた。アミも既に抜刀していたが、今度は俺の方が早かった。
彼女は刀を収めながら言った。
「……だから私、もう帰る家がないの」
ふふっと笑った顔が寂しそうだった。俺はちょっと声を大きくして言った。
「それは、俺もニコもハルさんもナラさんも同じだ。それが旅人なんだよ。今は俺たちのいるところがお前の帰る家だ」
「ふん、あんた、たまにちょっと良いこと言うじゃないの」
そっぽ向いたままだが、その顔はちょっと赤くなってる。やっぱり可愛いな、こいつ。
しかしこれからどちらに向かうべきかについては意見が割れた。
ハルさんは、このまま大海峡に沿って西へ進み、大陸の西海岸に出ようという。
そこから南下すれば海沿いにレジスタンス組織がある街が点在する。補給にも有利だし、情報収集もしやすい。大陸の南端までたどり着けばそこは広大な山岳地帯で、長期潜伏できそうな場所も見つかるだろう。
ただ、人のいるところには敵もいる。街の人もいつ密告者になるか分からない。道中で敵に襲撃されるリスクはそれなりにある。
ナラさんは全く正反対の方向、つまり東側に進み、大陸中央部の大森林に紛れ込んでしまった方が安全だという。
こっちに進むと人家はほとんどない。全て自給自足だ。情報も全く入らない。敵がいるのかどうかも分からないが、姿をくらますという意味では有利だ。
どちらの言うことも一理ある。どちらを選んでも一長一短だ。2人はだんだんヒートアップして、ほとんど言い争いに近くなってきた。
「街の便利さが鹿のあなたに分かるわけないでしょ!?」
「おお、分からんわ! お前かて森のメリットが分かるんか!」
「アタシは半分エルフの血が流れてるのよ。少なくとも半分は分かるわ!」
「はっ! そんなもじゃもじゃ頭で耳隠しとるような中途半端なエルフがおるか!」
「うるさいわね。隠してないといろいろ支障があるのよ!」
「耳隠すぐらいやったら森のこと語るな、ヴォケ!」
っていうか、もう完全にケンカじゃないか。
「ちょ、ちょ、待って、待って下さい。2人とも冷静に、冷静に」
とりあえず割って入るが、
「あなたが早く行き先を決めないからケンカになるんじゃない」
「も、何でもええからお前が決めえな」
決定を任されてしまった。
どうしようか……
ただ俺はどうしても気になることがあった。それはジゴさん、ナギさんの消息だ。
最後に鳥急便で手紙をやりとりしたのはボナ・キャンプを出る前だから、もうかれこれ4、5ヶ月前になる。
危険な場所に向かってるようだったし、無事かどうかすごい気にかかる。向こうも俺たちのことを心配してくれてるだろう。ひょっとしたら俺たちが死んだという誤情報が伝わってるかもしれない。
それに、これはプライベートなことだけど、ニコとの結婚についても、ご両親にちゃんと話をしておかないといけない。
「お2人の言うことはどちらも間違ってないと思いますが、僕としてはジゴさんナギさんが気にかかります。連絡を取り合うためにも、情報収集のためにも、まずはいったん街に出ましょう」
ナラさんは「ちっ」、ハルさんは「ふふん」、みたいな感じだが、ニコの嬉しそうな顔を見るとホッとする。
しかしナラさんが妙なことを言った。
「西海岸に行くんやったら行くで、しゃあないしワシも行くけどな、お前らが近寄らん方がええ街があんねん」
「え? どこですか、それは?」
「言うても知らんやろ? 『レミ』っちゅう街や」
「あら、大きなレジスタンス組織のある街よ。近寄っちゃダメなの?」
「そうや。まあ、街そのものは別に問題ないねんけど、近くに『一刻城』っちゅう場所があってな。そこには絶対、近寄らんこっちゃ」
「え、どうして?」
「何かすごいモンスターがいるとか?」
「とんでもない迷宮になってるとか、かしら?」
みな勝手な推測を口にするが、ナラさんの話は意外だった。
「ちゃうちゃう。あのな、その場所は黙呪王の城と連動しとってな、そこに入ってしまうともう黙呪王の城に行って戦わんとしゃあなくなってしまうねん」
「え……」
それ、ヤバ過ぎるだろ。俺たち、黙呪王と戦わずに逃げまくることを目指してるのに、それじゃ完全にアウトじゃないか。
「そやろ? そやから近寄るな、っちゅうとんねん。分かったか?」
「分かりました!」
全員声を揃えて返事した。とりあえずレミの街は全力で回避しなければならないな。
俺たちは5人で西に向けて出発した。正確には4人と1頭というべきだが、ナラさんはもうほとんど人間だ。だから5人でいい。
いずれにしても、ようやっとメンバーが全員そろった感じだ。5人編成の旅人パーティーだな。
ゲーム的に言うと、まずアミは剣士で前衛、これは間違いない。身のこなしが軽いので、敵に斬り込むこともできるし迎撃も強い。ただ戦局によっては剣舞で支援役に回ることもできる。困った時にはヒーラーにもなれる。っていうか本当はヒーラーが本職なんだが。
俺も前衛だ。ジョブは何だろうな……そんな言葉はないけど『歌術士』ってところか。震刃が得意で、多少は剣も使うので、格好良く言えば魔剣士、みたいな感じか。
ただパーティーの中では俺がナイト=タンク的な役割をする必要がある。まあ人からヘイトを集めるならお得意だ……ってそんな悲しいこと言わすなよ。
ニコも、ジョブは歌術師だが、威力のある歌術をいろいろ使えるから中衛アタッカー、いわゆる魔術師的な立ち位置になるだろう。ヒーラーとしても超優秀だ。
ハルさんは後衛で支援職だな。ギタ郎で奏術をがんばってもらう。ただ、いろいろな歌術を器用に使えるし、ボウガンも使えるから、いわゆるアーチャー、遠距離アタッカーとしても活躍してもらえる。
ナラさんも後衛だな。戦闘が始まったらリズムを刻んでもらって、それを奏術としてみんなに利用してもらう。ただ雷の歌術などいろいろ歌術は使えるので、場合によっては遠距離アタッカーになることもできる。
改めて考えると、俺以外の4人は相当な実力者だ。コンビネーションがうまく機能すればとんでもない力を発揮するかもしれない。
歩き出した俺たちの前に敵はすぐに現れた。
いや、黙呪兵とか親衛隊とかそういう連中じゃない。自然の生き物だ。
にょろにょろした長い生き物……そう、蛇だ。
この辺りの森は、やたらめったら蛇がいる。小さいのが多いが、時々、モンスター級の大蛇が出てくることもある。この前の蛇女ほどではないが、それでも結構見上げるぐらいの大きさだ。
しかも強力な毒を持っており、咬まれたら結構ヤバい。さらに、好戦的で向こうからどんどん飛びかかってくる。無益な殺生は避けたいのだが、こうなるともう敵として倒さざるを得ない。
ちなみに俺は、ミミズもゴカイもダメだったが、蛇も苦手だ。どうも長細い生き物は総じてダメみたいだ。
しかし幸いうちのパーティーの女性2人は平気で、アミは曲刀をぶんぶん振り回し、ニコは凍刃を飛ばして、どんどん片付けてくれる。俺の出る幕はない。
「ホントに蛇、多いわね……ほらまたいるわよ」
だいたいは目の良いハルさんが見つけてくれる。
「えっ!? マジすか? どこ? どこ?」
「情けないわねえ。あなた、それでも歌い手様なの? ほら、もう死んでるわよ」
俺がバタバタしてる間にアミが片付けてくれる。
と、その時、急にニコが凍刃を飛ばした。
白い刃が飛んで行った方を見ると大きなコブラの頭が胴体から離れて落ちるところだった。早い、強い。
「あんた絶対歌い手様じゃないわね。ニコが歌い手様よ」
「……いや、マジで俺もそう思う」
ニコは俺の横を黙って歩いてる。俺と目が合うとにっこり笑ってくれる。もうその髪は完全に真っ黒だ。
やっぱりこの子が歌い手なのかな……じゃ、俺はいったい何なんだ? 何のために召喚されたんだ? そこが分からないんだよな。
ぼーっと考えながら歩いてると、目の前に何かどさっと落ちてきた。
「うわああああああっ!」
黄色と黒のまだら模様! 猛毒のタイガースネークだ!
恐怖で走り出したくなるのを抑えて震刃を撃とうとしたら、もうその時にはアミの曲刀とニコの凍刃が蛇を切り刻んでいた。
「あんた、反応が遅いのよ」
またアミに睨まれる。
っていうかこの2人、本当にすごい。ハンパない反応速度だ。
「ニコはそれなりにトレーニングしてきたけど、アミは素人のはずだろ。どうやってそんな実戦的な剣術を身につけたんだ?」
「ふふん。だから前にも言ったでしょ。お母さんの元カレに稽古つけてもらったって」
「いや、それにしても反応速いよな」
あんまり褒めるとアミは怒ったような顔をする。素直じゃないなあ、この子。
「そういえばアミ、出発する時、どうやってお母さんを説得したんだ?」
気になってたことを訊いてみた。
「うん、それがね。意外とあっさり送り出してくれたのよ」
「へええ」
「いつかこういう日が来るのは分かってたわ、みたいな」
「ああ、なるほど」
「まあ、アタシからも話はしたけどね。でも意外とすぐに許可してくれたのよ」
ハルさんが口を挟む。
ふうん。まあ、俺を発情させて娘とエッチさせようと必死だったからなあ、あの人。娘が俺の所に行くって言うんだったら反対はしないか。
「でもアミがいなかったら宿の方は困るんじゃないのか?」
「それがね、もう宿を畳んでレジスタンス組織に戻るんだって」
「あれ? レジスタンス組織は出禁になったんじゃなかったっけ?」
「それそれ。聞いてよ、ソウタ」
ハルさんはオバさんみたいな口調になった。
「ほら、ボナ・キャンプのノボがいるでしょ。彼がエメに戻っておいでって声をかけてたみたい。どうもあの2人、昔いろいろあったみたいでね……」
ああ、ノボさん。あのヒゲのダンディなオジさんだ。
確か独身だったと思うけど、あの人は女性にはモテそうだ。エメさんとはお似合いかもしれない……いやいや、エメさんが一人の男性だけで収まるとも思えない。
っつーか、あの人があんな男だらけの所に行ったら、蛙の群れに蛇を放すようなもんだ。モメなきゃいいけどな。
そんなことを考えてたら、また目の前にドサッと蛇が落ちてきた。本当に蛇の楽園みたいな所だな、ここは。
今度は俺も早かった。震刃でさっと毒蛇の首をはねた。アミも既に抜刀していたが、今度は俺の方が早かった。
彼女は刀を収めながら言った。
「……だから私、もう帰る家がないの」
ふふっと笑った顔が寂しそうだった。俺はちょっと声を大きくして言った。
「それは、俺もニコもハルさんもナラさんも同じだ。それが旅人なんだよ。今は俺たちのいるところがお前の帰る家だ」
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