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第八幕 奸計の古城
水の迷路
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城壁の中は意外に広かった。
前庭は大半が水没しているが、あちこちに石像や噴水の跡なんかが残っていて、元々は立派な庭だったんだなと分る。
それに通路と水路が複雑に立体交差していて、この時点でもう既に迷路っぽい。水路には今も澄んだ水が流れている。城の後にそびえる山から流れ出した川をそのまま引き込んでいるようだ。凝った造りだ。
俺とニコは敵の奇襲を警戒しながら、ゆっくり正面玄関の方に歩いて行った。
そう、結局お昼になっても3人は戻ってこなかった。案の定だ。
ナラさんはこの城の中を知っている。迷って出られなくなったなんてことはあり得ない。何者かが3人を捕らえている、そういうことだろう。子供たちもだ。
全ては敷かれたレールの上、誰かの思うつぼ、運命の力……それは分かっている。それに、俺たちが行けば3人は怒るだろう。
それでも俺たちは行かなければならない。バンド仲間を捨てて逃げることは絶対にできない。
石畳の通路の先に立派な階段があり、そこを上った先にあるのが建物の正面玄関らしい。
俺が階段に足をかけると
「待って、ソウタ」
ニコが止める。
「どうした?」
「何か……何かいる」
「えっ!?」
慌てて周囲を見回す。
しかし、何もいない。この辺にだって蛇やゴキはいるはずなんだが、動く物の気配はない。どこからか聞こえる水音以外はしんと静まっている。
「あれ? 勘違いかな?」
彼女も怪訝な顔できょろきょろしている。
「とりあえず進もうか」
「うん」
俺は階段を一段二段上がった。
その時、どこかでヒヒっと小さく笑う声がした……ような気がした。もう一度立ち止まり周囲を見渡すが、やっぱり何もいない。
気のせいだよな。あいつがこんな所にいるはずない。
元々は立派な扉がついてたはずの正面玄関も、今は大きな四角い口が開いているだけだ。中のホールにも光が差し込み、床の所々に雑草が生えているのが見えている。
「ニコ、行くぞ」
「うん」
さすがに彼女も緊張した顔をしている。
しかしここまで来て今さら迷うことはない。もう既に十分迷った結果だ。他に手はない。引き返すことはできない。
俺は足を踏み出した。
中に入ると湿っぽくひんやりした空気に包まれる。明らかに外とは違った空気だ。
振り返ると外の景色が普通に見えている。いくらでも外の世界に戻れそうだが、試しに戻ってみる意味も無い。もうたぶんフラグは立ってしまったんだろう。前に進むのみだ。
正面に階段みたいな石段があるが、上から水が流れて来て小さい滝のようになっている。
流れ落ちた水は水路に注ぎ、どこかに流れ出している。つまりこれは階段ではないな。流水のオブジェだ。
じゃあ、どっちに進んで行ったらいいんだ?
ホールの左右に小部屋が見えている。こっちかな。
入ってみるが、どちらも単なる小部屋で、行き止まりだ。先には進めない。
あれ? いきなりルートが分からないぞ。バグってるんじゃないだろうな。こんなことならナラさんにルートを訊いとけば良かった。でも「お前らは絶対来んな」って言われてたし、とても訊ける雰囲気じゃなかったんだよな。
「ソウタ、歌い手が中に入ったらルートが変わって、どこをどう進んでも地獄の扉に導かれるって言ってたよね?」
「ああ、言ってたな」
「じゃあ、とりあえずこの滝を登って行ってみようよ。進まないと何も分からないよ」
その通りだな。ここから先に進むにはこの滝を登っていくしかない。
「うん、行ってみよう」
足元に水が流れているのでつるつる滑る。ニコに手を貸しながら気をつけて登っていく。
「見て、これ」
ニコが指差したのは階段の一部、コケで覆われたところだ。よく見ると、コケが踏まれて少し剥がれている。しかも断面が新しい。間違いない。誰かの足跡だ。
「ここを登るルートで間違ってないみたいだな」
「行こ、ソウタ」
「うん、行こう」
登りきった所は水が溜まって大きな屋内プールのようになっている。のぞき込むと結構深そうだ。水面に飛び石のようなものが並んでるが、奥の方は暗くて見えない。
「これ、この飛び石を渡って行くしかなさそうだな」
「うん、そうだね……あ、でも、ちょっと待って」
彼女は水面に手をかざし、小声で凍歌を歌った。見る間にプールの水面は白く凍りついた。
「足が滑って落ちたらいけないし、水の中から敵が出てきてもいけないし、凍らしとくね」
ナイス! ナイスだニコ。これで安心してプールを渡って行けるよ。
しかしプールはかなり広かった。プールというよりは大きな池だ。途中でもう一度ニコが凍歌を歌い、どうにか無事に渡り終えた。
渡ったところは下りの階段になっている。その先は洞窟のような暗い通路で、いかにも何か出てきそうな雰囲気だ。
と思ったら、いた!
通路の真ん中を塞いでるのは人間よりもでかいサイズのナメクジだ。これはアミじゃなくても悲鳴をあげそうだ。
幸い、動きはゆっくりで、すぐこちらに襲いかかってくる気配はない。しかし通路を塞いでいて、こいつを片付けないと前に進めない。
ナラさんの話によると、こいつに直接触れると粘液でベタベタになって動きにくくなる、5分で歩けるルートにも1時間かかってしまう、それをもじって『一刻城』と呼ばれるようになったんだとか。
だとすると剣で物理的に攻撃はしたくない。しかもこの狭い空間で炎系の歌術を使うと煙や臭いでえらいことになりそうだ。よし、ここはやはりフリーズドライで行こう。
ニコが凍歌を放ち、ガチガチに凍り付いたのを、俺が震歌で粉々にする。
パリーン! という綺麗な音を立てて巨大ナメクジはキレイに消失した。よし進もう。
やがて丁字路にさしかかった。
どこを通っても最終的には例の扉にたどり着くということだったが、右側はさらに下って行って地下道みたいになってる。何かヤバそうな雰囲気だ。やっぱフラットな左側のルートを行ってみよう。
しばらく進むと通路の左右に小部屋がいくつかあった。もう3人がチェックしてくれてるかもしれないが、念のため子供たちがいないかのぞき込んでみる。
結果、子供たちはいなかった。しかし代わりにいろいろいた。
また巨大ナメクジがいた。
う、巨大クモもいた。
うわあ! 天井に巨大ゴキがいたよ! ひい!
それにしてもニコはこういう生物には全く動じない。
「ニコは苦手な生き物ってないの?」
「うん、一番苦手なのは人間だよ」
「えっ?」
「あっ、もちろんソウタは大丈夫だし、アミもハルさんも大丈夫だよ。ナラさんは鹿だし。でも知らない人はみんな苦手だし、声の大きい人や、筋肉むきむきの男の人も怖いの」
「声が大きくて筋肉むきむきって……あの馬鹿ゴリラとか?」
「そうそう、ああいう人が一番怖いし嫌い」
イズの町で牛ゴリラにふっとばされてたあの馬鹿、その後どうしてるんだろうな。まあもう二度と会うこともないだろうが。
そんなことを話しながら歩いていると目の前に水路が現れ、道は行き止まりになってしまった。仕方ない。さっきの丁字路まで引き返し、もう一方の道を行こう。
ヤバそうと思った予感は当たっていた。次から次へと巨大ナメクジが現れる。アミがいたらきゃーきゃー騒いでいただろう。
一匹一匹凍歌と震歌で片付け、薄暗い道を進んで行くと階段が現れた。それを上ったところで俺たちは呆然とした。
あれ? また大きな池に出てきた。これ、さっきと同じ池か?
そう思ってよく見ると確かに水面がまだ一部凍ってる。間違いない。さっきと同じ池だ。
しかし、全く同じ場所に戻ってしまったのかと思ったら、光の差し込む角度が違うし、飛び石の並び方もさっきと違う。どうも池の違う部分に出てきたようだ。
どちらにしても進むしかない。また凍歌で安全対策をとった上で、飛び石をたどって行く。
そして池を渡り終えるとまた下りの階段だ。その先にはさっきと同じような通路が続いている。
ひょっとして、進んで行くとまたこの池に出てくるんじゃないかと思っていたら、やはりその通りだった。道が枝分かれしている所はあったが、結局また同じ池の、また違う岸辺に出てきた。飛び石の並び方も変わっている。
「ソウタ、これね、元々この池の周りにいろんな通路があって、飛び石の配列が変わることでルートを操作されてるんじゃないかな」
ああ! なるほど。さすがニコだ。鋭い。
「それで結局、例の扉に導かれるわけか」
「うん、そうだと思う」
「3人と子供たちはどこにいるんだろ?」
「分からないけど、みんな扉に行き着くんじゃないかな」
「そうだな。少なくとも俺たちがここに入った時点でルートは一択になってるもんな」
「うん。行こう、ソウタ」
「よし、行こう」
池を渡ると今度は上りの階段になっていた。階段の先は古城の上階につながっている。壊れた窓から光が差し込むため通路は明るいが、至る所が破損していて歩きにくい。
それに突然、水路や小さい滝に行方を遮られ、少し前まで戻らざるを得ないことも度々だった。小部屋もたくさんあるので、いちいちのぞいてるとなかなか進めない。
しかも。
この地上階の部分は蛇だらけ。本当に蛇だらけだ。
俺は泣きそうになりながら震刃を撃ちまくった。敵は正面から来るとは限らない。横から来る奴はニコが凍刃で処理してくれた。
もううんざりしながらルートを進んで行くと下りの階段が現れた。あれ? また池に出てきたぞ。ただ、これまでと比べてだいぶ奥の部分だ。
飛び石の上を伝って行くと、おそらく池の一番奥と思われる部分にたどり着いた。そこからは真っ直ぐ通路が伸びている。これまでと造りが違う。
通路の先はがらんとしたホールのような所につながっていた。どこか上方から光が射していて、真っ暗ではない。
「あああああああっ!」
突然、女の子の悲鳴が響いた。
「何で……何で来ちゃったのよ……馬鹿、バカぁ!」
駆け寄ってきたのはアミだ。俺の胸に飛び込んで来たかと思うと、泣きながら拳でドコドコ叩いてくる。痛い、痛い、痛いんですけど。
横でニコが困った顔してるのに気がつくと、今度はニコにもしがみついていった。
「馬鹿ニコ、何で入って来たのよ……」
「……ごめんなさい。でもやっぱりみんなを放って行けないもん」
2人で抱き合ってしくしく泣いてる。何だ、俺は叩いてもニコは叩かないんだな。
前庭は大半が水没しているが、あちこちに石像や噴水の跡なんかが残っていて、元々は立派な庭だったんだなと分る。
それに通路と水路が複雑に立体交差していて、この時点でもう既に迷路っぽい。水路には今も澄んだ水が流れている。城の後にそびえる山から流れ出した川をそのまま引き込んでいるようだ。凝った造りだ。
俺とニコは敵の奇襲を警戒しながら、ゆっくり正面玄関の方に歩いて行った。
そう、結局お昼になっても3人は戻ってこなかった。案の定だ。
ナラさんはこの城の中を知っている。迷って出られなくなったなんてことはあり得ない。何者かが3人を捕らえている、そういうことだろう。子供たちもだ。
全ては敷かれたレールの上、誰かの思うつぼ、運命の力……それは分かっている。それに、俺たちが行けば3人は怒るだろう。
それでも俺たちは行かなければならない。バンド仲間を捨てて逃げることは絶対にできない。
石畳の通路の先に立派な階段があり、そこを上った先にあるのが建物の正面玄関らしい。
俺が階段に足をかけると
「待って、ソウタ」
ニコが止める。
「どうした?」
「何か……何かいる」
「えっ!?」
慌てて周囲を見回す。
しかし、何もいない。この辺にだって蛇やゴキはいるはずなんだが、動く物の気配はない。どこからか聞こえる水音以外はしんと静まっている。
「あれ? 勘違いかな?」
彼女も怪訝な顔できょろきょろしている。
「とりあえず進もうか」
「うん」
俺は階段を一段二段上がった。
その時、どこかでヒヒっと小さく笑う声がした……ような気がした。もう一度立ち止まり周囲を見渡すが、やっぱり何もいない。
気のせいだよな。あいつがこんな所にいるはずない。
元々は立派な扉がついてたはずの正面玄関も、今は大きな四角い口が開いているだけだ。中のホールにも光が差し込み、床の所々に雑草が生えているのが見えている。
「ニコ、行くぞ」
「うん」
さすがに彼女も緊張した顔をしている。
しかしここまで来て今さら迷うことはない。もう既に十分迷った結果だ。他に手はない。引き返すことはできない。
俺は足を踏み出した。
中に入ると湿っぽくひんやりした空気に包まれる。明らかに外とは違った空気だ。
振り返ると外の景色が普通に見えている。いくらでも外の世界に戻れそうだが、試しに戻ってみる意味も無い。もうたぶんフラグは立ってしまったんだろう。前に進むのみだ。
正面に階段みたいな石段があるが、上から水が流れて来て小さい滝のようになっている。
流れ落ちた水は水路に注ぎ、どこかに流れ出している。つまりこれは階段ではないな。流水のオブジェだ。
じゃあ、どっちに進んで行ったらいいんだ?
ホールの左右に小部屋が見えている。こっちかな。
入ってみるが、どちらも単なる小部屋で、行き止まりだ。先には進めない。
あれ? いきなりルートが分からないぞ。バグってるんじゃないだろうな。こんなことならナラさんにルートを訊いとけば良かった。でも「お前らは絶対来んな」って言われてたし、とても訊ける雰囲気じゃなかったんだよな。
「ソウタ、歌い手が中に入ったらルートが変わって、どこをどう進んでも地獄の扉に導かれるって言ってたよね?」
「ああ、言ってたな」
「じゃあ、とりあえずこの滝を登って行ってみようよ。進まないと何も分からないよ」
その通りだな。ここから先に進むにはこの滝を登っていくしかない。
「うん、行ってみよう」
足元に水が流れているのでつるつる滑る。ニコに手を貸しながら気をつけて登っていく。
「見て、これ」
ニコが指差したのは階段の一部、コケで覆われたところだ。よく見ると、コケが踏まれて少し剥がれている。しかも断面が新しい。間違いない。誰かの足跡だ。
「ここを登るルートで間違ってないみたいだな」
「行こ、ソウタ」
「うん、行こう」
登りきった所は水が溜まって大きな屋内プールのようになっている。のぞき込むと結構深そうだ。水面に飛び石のようなものが並んでるが、奥の方は暗くて見えない。
「これ、この飛び石を渡って行くしかなさそうだな」
「うん、そうだね……あ、でも、ちょっと待って」
彼女は水面に手をかざし、小声で凍歌を歌った。見る間にプールの水面は白く凍りついた。
「足が滑って落ちたらいけないし、水の中から敵が出てきてもいけないし、凍らしとくね」
ナイス! ナイスだニコ。これで安心してプールを渡って行けるよ。
しかしプールはかなり広かった。プールというよりは大きな池だ。途中でもう一度ニコが凍歌を歌い、どうにか無事に渡り終えた。
渡ったところは下りの階段になっている。その先は洞窟のような暗い通路で、いかにも何か出てきそうな雰囲気だ。
と思ったら、いた!
通路の真ん中を塞いでるのは人間よりもでかいサイズのナメクジだ。これはアミじゃなくても悲鳴をあげそうだ。
幸い、動きはゆっくりで、すぐこちらに襲いかかってくる気配はない。しかし通路を塞いでいて、こいつを片付けないと前に進めない。
ナラさんの話によると、こいつに直接触れると粘液でベタベタになって動きにくくなる、5分で歩けるルートにも1時間かかってしまう、それをもじって『一刻城』と呼ばれるようになったんだとか。
だとすると剣で物理的に攻撃はしたくない。しかもこの狭い空間で炎系の歌術を使うと煙や臭いでえらいことになりそうだ。よし、ここはやはりフリーズドライで行こう。
ニコが凍歌を放ち、ガチガチに凍り付いたのを、俺が震歌で粉々にする。
パリーン! という綺麗な音を立てて巨大ナメクジはキレイに消失した。よし進もう。
やがて丁字路にさしかかった。
どこを通っても最終的には例の扉にたどり着くということだったが、右側はさらに下って行って地下道みたいになってる。何かヤバそうな雰囲気だ。やっぱフラットな左側のルートを行ってみよう。
しばらく進むと通路の左右に小部屋がいくつかあった。もう3人がチェックしてくれてるかもしれないが、念のため子供たちがいないかのぞき込んでみる。
結果、子供たちはいなかった。しかし代わりにいろいろいた。
また巨大ナメクジがいた。
う、巨大クモもいた。
うわあ! 天井に巨大ゴキがいたよ! ひい!
それにしてもニコはこういう生物には全く動じない。
「ニコは苦手な生き物ってないの?」
「うん、一番苦手なのは人間だよ」
「えっ?」
「あっ、もちろんソウタは大丈夫だし、アミもハルさんも大丈夫だよ。ナラさんは鹿だし。でも知らない人はみんな苦手だし、声の大きい人や、筋肉むきむきの男の人も怖いの」
「声が大きくて筋肉むきむきって……あの馬鹿ゴリラとか?」
「そうそう、ああいう人が一番怖いし嫌い」
イズの町で牛ゴリラにふっとばされてたあの馬鹿、その後どうしてるんだろうな。まあもう二度と会うこともないだろうが。
そんなことを話しながら歩いていると目の前に水路が現れ、道は行き止まりになってしまった。仕方ない。さっきの丁字路まで引き返し、もう一方の道を行こう。
ヤバそうと思った予感は当たっていた。次から次へと巨大ナメクジが現れる。アミがいたらきゃーきゃー騒いでいただろう。
一匹一匹凍歌と震歌で片付け、薄暗い道を進んで行くと階段が現れた。それを上ったところで俺たちは呆然とした。
あれ? また大きな池に出てきた。これ、さっきと同じ池か?
そう思ってよく見ると確かに水面がまだ一部凍ってる。間違いない。さっきと同じ池だ。
しかし、全く同じ場所に戻ってしまったのかと思ったら、光の差し込む角度が違うし、飛び石の並び方もさっきと違う。どうも池の違う部分に出てきたようだ。
どちらにしても進むしかない。また凍歌で安全対策をとった上で、飛び石をたどって行く。
そして池を渡り終えるとまた下りの階段だ。その先にはさっきと同じような通路が続いている。
ひょっとして、進んで行くとまたこの池に出てくるんじゃないかと思っていたら、やはりその通りだった。道が枝分かれしている所はあったが、結局また同じ池の、また違う岸辺に出てきた。飛び石の並び方も変わっている。
「ソウタ、これね、元々この池の周りにいろんな通路があって、飛び石の配列が変わることでルートを操作されてるんじゃないかな」
ああ! なるほど。さすがニコだ。鋭い。
「それで結局、例の扉に導かれるわけか」
「うん、そうだと思う」
「3人と子供たちはどこにいるんだろ?」
「分からないけど、みんな扉に行き着くんじゃないかな」
「そうだな。少なくとも俺たちがここに入った時点でルートは一択になってるもんな」
「うん。行こう、ソウタ」
「よし、行こう」
池を渡ると今度は上りの階段になっていた。階段の先は古城の上階につながっている。壊れた窓から光が差し込むため通路は明るいが、至る所が破損していて歩きにくい。
それに突然、水路や小さい滝に行方を遮られ、少し前まで戻らざるを得ないことも度々だった。小部屋もたくさんあるので、いちいちのぞいてるとなかなか進めない。
しかも。
この地上階の部分は蛇だらけ。本当に蛇だらけだ。
俺は泣きそうになりながら震刃を撃ちまくった。敵は正面から来るとは限らない。横から来る奴はニコが凍刃で処理してくれた。
もううんざりしながらルートを進んで行くと下りの階段が現れた。あれ? また池に出てきたぞ。ただ、これまでと比べてだいぶ奥の部分だ。
飛び石の上を伝って行くと、おそらく池の一番奥と思われる部分にたどり着いた。そこからは真っ直ぐ通路が伸びている。これまでと造りが違う。
通路の先はがらんとしたホールのような所につながっていた。どこか上方から光が射していて、真っ暗ではない。
「あああああああっ!」
突然、女の子の悲鳴が響いた。
「何で……何で来ちゃったのよ……馬鹿、バカぁ!」
駆け寄ってきたのはアミだ。俺の胸に飛び込んで来たかと思うと、泣きながら拳でドコドコ叩いてくる。痛い、痛い、痛いんですけど。
横でニコが困った顔してるのに気がつくと、今度はニコにもしがみついていった。
「馬鹿ニコ、何で入って来たのよ……」
「……ごめんなさい。でもやっぱりみんなを放って行けないもん」
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