1 / 1
赤い輪、青い輪
しおりを挟む
死んだ後はどこに行けるのか、子供のころはずっとそういうことを考えていた。多分私の祖父母や年老いた親戚たちが次々と亡くなり、葬式に行くことは恒例行事のようになってて。
陰鬱さより感じたのは死後の世界に対する疑問。それを忘れて日々を生きるなんてことは出来ない。宗教にのめり込むことは性格的に出来なかった。私はどちらかと言うと疑い深い懐疑的な人間なのである。
子供としての記憶が残っている二つ目のクリスマスからサンタクロースを信じなくなった。今でも覚えている。信じることなくただ目を開けたまま、私の父が私の部屋に入ってプレゼントが入っている箱を床に置くのを暗闇の中からじっと見ていた。有名なキャラクターでもなく、どこから買ってきたのかわからないアンティークな雰囲気の女の子を模した縫いぐるみだった。彼女に名前を付けて遊んだことはいい思い出。
夢の中ではよく彼女と遊んだものである。もしかしたら夢じゃなく虚構と現実の区別がろくにつかなかった時に作られた嘘のような偽物の記憶かも知れないが。
だとしても驚くことはないと思う。人間の脳なんて錯覚だらけで、嘘に騙されやすく、偽物と本物の区別が出来るのはその分野で数十年も働いて直感を鍛えたほんの一握りの人たちだけ。
大人になって仕事についてからも死後の世界に関する書籍は暇な時にでも探してみることが多かった。仕事もある意味では死後の世界と関わっていると言えなくもない。私は古生物学者になった。昔から本を読むのが好きだったし、エビデンスを集めてはロジックを組み立てて物事を説明するというのは懐疑的に生きている私の本質ととてもあっているんだと思っていた。
結婚はしていない。二十歳過ぎたころにお腹に正体不明の痛みを感じて病院に行って検査をしてもらったことあるけど、その時自分の体が子供を作れるようには出来てないことがわかったので。子宮に良性腫瘍があったんだけど、悪性に替わったら取り返しのつかないことになるかもしれないと手術を受けて、取り除いてもらったのである。
だから結婚なんて今更する気にはなれず。毎月に経験しないといけない生理の痛みがなくなったことでむしろ生きるのが楽になったんだと思う。
その日は遅くまで学会で発表されている色んな論文を呼んでいた。私の専攻分野は古生代。カンブリア紀から始まってペルム紀に終わる、約3億年ほどの長さを持つ期間で、今では形すら残ってない原型となった数多くの生物や絶滅した生物、色んな地質学的イベントがあって、色んな学問とのコネクションが必要な時代と言える。大気の成分の違いによる環境の違いなどは生物学だけでは説明できないので。
そうやって論文を読んでいたところで、ふと思いついたのがあったのはただの偶然だったのか。現代の生物学では進化論を主要な理論として考えているが、本当に進化論が正しいのなら、生物は今よりずっと多種多様な形で進化していたはずである。古生物の不思議な形のように。それが採用されなかったのは進化に有利が不利か以前の何か別の要因があるのかもしれない。例えば、知性を持つ存在の意識が宿るに適切な形が先にあって、それに向かって生物が進化してゆくように出来ているとか。
普段はこのような形而上学的な思考はしない。しかしこう考えると説明できなくもないと思わずにはいられないというか、例えば可愛い動物を見て可愛いと感じるのは脳に遺伝子的にそうインプっとされているとかじゃなく、我々の意識がそのような指向性を最初から持っていて、それに外側の環境が変化するように出来ているに過ぎないというのならどうだろう。
この宇宙に意識と言う形で寄生していくために求めるのは決まっていて、それをかなえてくれなかったら意識がその生物から距離を取るようにしているとか。
そんな単純なものじゃない気はするけど、ならば生物の死が必然なのはこの宇宙が自分たちに寄生している存在である意識を自分の中から弾き出そうとしているのかもしれない。
そう思って馬鹿馬鹿しいとウォッカ入りのオレンジジュースを一口飲んだ。夜のお供である。深夜まで変なテンションで起きているせいでこんな変な考えが思いついたかもしれない。
寝て起きたら忘れるだろうと、私はベッドに入って眠りについた。
そして夢を見た。
その世界はどこまでも広がっていた。無限のように、どこまでも。大地は星にあらず、世界はただの大地であった。なんでわかるかって、直感でそのようなことがわかるように出来ていたから。それが間違いだとは思いもしなかった。その無限に広がる大地には当然だけど重力もあった。そうでなかったら大地の形を保てるわけがない。
そしてそこで私は数々の生物を目にした。体を動かせる器官、ここで言う足の形とその仕組みが様々で、大きさも様々。視覚器官である目の位置も様々な場所にあって、その数も種類によって違った。私はその世界をただ浮いていた。浮いて、どこまでも自由に動かすことが出来た。まるでこの世界で生まれてここまで過ごしていたかのようであった。
太陽はなく、代わりに夢のような光の帯が大地の上を覆っていた。それは点滅したり、形を変えたりと、例えるなら眩しいまでの光を放つ極光。
そこでの私は自分に寿命がないことをわかっていた。そこでの私は死ぬことなく無限に生きることが出来た。世界は自分の外側から自分を壊しに来るものではなく、世界と私は繋がっていた。楽園のようであった。悲しみも、痛みも、恐怖も、不安も、怒りも、理由もなく湧き上がってくる衝動も、自分と違う存在とのぶつかりも、心が擦り減って出てしまうような声なき叫びのようなものもない。
あるのはただ静かに過ぎてゆく時間と、数えきれないほど多種多様な形をした生物、いや、生物ですらないだろう、生きているということはいつかは死ぬということでもある。その世界での私は自分に死がないことをわかっていたから、生物としての範囲から離れていたんだと思う。
それはとても不思議で、平和があるのならこのような状態を指すのではないかと思うくらい。
しかしその世界がたとえ永遠であったとしても、私の意識はその永遠に属するものではなかったようで。夢から覚めるといつもの日々が始まる。
じゃあ忘れられるのか。忘れられると思っていたけど、ずっと記憶の片隅に、意識の片隅にその不思議な夢はなぜか鮮明にと残ってて離れない。
それでいてまた次の日の夢にも見られるのかと期待するも夢を見ることは出来なかった。あれは私の脳が勝手に作り出した幻か何かなんだろう、なんて思うほど私は生物学が万能だと思っているわけではない。学問をする人間ならたとえそれが自分が一生を捧げる分野であろうと懐疑的な目を向けないと行けない。それは基本中の基本である。
だから私はその夢の意味を生物学的な唯物論で説明できるなんてことは思わず、だからと本当にこことは違う世界、違う次元に意識だけが飛んでからそれらを目撃したんだろうという結論を出すこともなかった。それでも忘れられなかったので悶々とした気持ちで過ごしたのだ。
それに転機が訪れたのは何気なく入った古本屋で、とある書籍を見つけてから。私の子供のころからの興味は死後の世界にあることに今でも変わりはない。だからその本を手にしたのも自分の興味がずっと残っていたから。
タイトルは『魂は次元を超える。来世が自分が知っているものであると思い込むと後悔するかもしれない。』と言う、かなりふざけた感じのものだったんだけど。
著者の名前が聞いたことのない言語みたいな雰囲気をしていて、出版社も気になってその場で検索してみたところ当たらず。いつ出版されたのか気になってみてみたところ、年代が文字化けしていたのが少し不気味と感じた。表紙は黒と赤のグラデーションで、デザインだけ見ると推理小説が思い浮かぶ。それも犯人がただの恨みによる殺人を行う定番のモチーフではなく、サイコパスによる残虐的性格の犯人によるサスペンス系の推理小説。
誰かがいたずらで書いたものなのかと気になって少しページをめくってみたところ、文章は割としっかりしていて、仮設と言うよりかは可能性と考察の話が殆どで、論理の飛躍は自分から認めているのに好感が持てた。最後のところは自分の体験で締めくくっていたんだけど、私はその場で細部まで読むことは出来ず、購入しては自分、マンションの一室にもどってソファーに座って紅茶を飲みながら読み進めた。
著者が建てた仮設をまとめるとこんな感じになる。
1.人の魂は次元を放浪するように出来ていて、その生でほかの魂を持つ存在にどう接したのかによってどこの次元に行けるのかが半ば決まる。
2.魂同士での引力や斥力が死後になったら肉体を失った魂を飛ばしたり引き寄せたりする。
3.そして魂を持つ存在は人だけではない。例えば地球のような星も引力を持っていて、もしかしたらこの宇宙も魂を持っているのかもしれない。
4.この次元より強い引力を持つ上位の世界と弱い引力を持つ下位の世界、そして平行して同じほどの引力を持つ世界がある。
5.同じ程度の存在、例えば人間同士の魂の引力と斥力は、同程度の知性を持つ場合は同じ力を持っている。ここで言う知性とは学力などではなく、物事の本質をどこまで理解できるかによって決まるとする。
6.この世界を生きている魂を持つ存在に対して残酷なことをしてしまうと斥力が発生し、この世界から離れやすくなり、それが一定値以上に達すると下位の世界へと落ちる。逆もまたしかり。引力が強すぎる場合は上位の世界へ引っ張られる。
7.引力も斥力もほとんど発生しない生き方をした場合は同じ程度の引力を持つ次元に流れる可能性もある。
そして著者が書いたのは、上位の世界でも同じ程度の世界、この仮説によると多分私が経験したのもこれだと思う、でもなく。下位の世界のことであった。
ここからは彼が個人的に体験したと主張するものである。
──俺は子供の頃親に虐待を受けた。殆どの子供は虐待を受けると知能が発達しにくくなったり、結論を急ぐようになったり、不安に駆られやすくなる。俺も同じだった。ただ俺が違っていた点は、俺は親がただ俺を精神かつ肉体的にただ苦しみを与えただけでなく、俺もそのように人に痛みを与えては自分が欲しいものを手にすることを当たり前と言う生き方をするのが俺のためであるとずっと言い聞かされていたところにある。
だから俺は大人になってから詐欺師になった。じの頭はよかったんだと思う。親から虐待を受けても人をだますことには才能があった。口車に載せていい気にさせて契約書をろくに読まずお金を渡してくれる。そこで俺は快感を覚えた。自分が子供のころから経験していた世界がそこにはあった。
人を騙し、奪った。暴力団とも関わったことがあるし、詐欺でだまし取ったお金でいい思いをしようとしたけど思ったよりいい思いがいい思いじゃなかったので女に暴力を振るったことも多かった。そんな俺が変わるきっかけとなったのは交通事故にあってからだった。運転ミスで車ごと崖の下に転落し、生死をさ迷った。何十日も昏睡状態だったらしい。幸い俺にはお金があった。保護者となってくれたのは俺に殴られながらも最後まで残ってくれた女性だった。彼女には一生感謝してもしきれないだろう。
ただ俺が昏睡状態で経験したものはとても一言では表せない出来事だった。よく悪いことをすると地獄に落ちると言うが、地獄は所詮は人が想像したもの。永遠に拷問を受けるなんて、神経に対して刺激を受けることに過ぎない。そんなものがあると信じられるわけがない。
だからそれは決して地獄などと言う単純な、この世界の罪人のためだけに存在するような付属品としての場所ではなく、一つの世界であったのだとはっきり言える。
俺はとても矮小な存在となっていた。空はいつでもどこでもどんよりとした暗く澱んでいて、どこへ行っても悪臭がした。太陽の代わりに赤黒い輪が浮かんでいた。そしてそこで俺は小さくか弱い、今と変わらぬ人間の姿であった。人間だったのは俺だけじゃない。俺以外にも多くの人間がいたが、どれもまともじゃなかった。
カルト教団のような宗教がいくつもあって、私利私欲に走っているなどと言うことすらない、ただひたすら何かしらの意味を求めて残虐なことをしていた。それはあまりにも惨いことで、人を何かしらの神に対して生贄に捧げることを浮かべばいい。それも原型を止めないほどに壊して。
そんなことをしてもらいたい神なんてただの邪神ではないかと思ったけど、そんなことはなかった。普通にいたのだ。神のような存在が。ただの巨人と言えなくもないかも知れないが、俺が見る限りそれは人の姿と似ていた。真っ白な手足は数十メートルは超えていて、頭には幾何学模様が描かれている。それがもとからある器官なのかそれとも自分たちで刻み込んだのかはわからない。
それは遠くから見てもわかった。それは怒りに満ちているようであった。なぜそうなのかはわからない。
それの機嫌を損ねることだけはしてはいけない、それだけが直感的にわかるものであった。
心の中はよくぐちゃぐちゃになっていた。昼夜がない世界は感覚が狂いやすい。時計なんて誰も使っていない。食べ物は大きな、奇怪な姿を持つ何かの死骸だった。味も酷かった。二度と味わいとは思えないほどの味で、味がただ舌と鼻だけではなく物理的な痛みのように感じるほどだった。
声を発しても支離滅裂なことしか話せず、言葉は意味を持たない。意味を持つような単語を話そうとしても伝わらない。だから皆何となく、最小限の動作で意思疎通を行う。指さしたりする。一人が指さして、また一人が指さして、それが一人に向かうと、皆がその人に刃物を振り下ろす。俺は異邦人として招き入れられて、儀式には参加しなかったので殺されることはなかったが、すべてを見てないと行けなかった。
その中に入りたいとは思えないだろう、それはまさに地獄のような光景であった。体の一部が腐り落ちる病気とかもあって、それもまるで風のようにかかり安い。
痛みも酷いのだろう、うめき声が悲鳴にかわる時があって、その時はうるさいと皆が集まって住む場所から追い出される。
子供が生まれるものだから性行為も当然ながらするけど、基本的に乱交である。そうする理由は誰も誰に対して感情を向けないから。意思疎通も出来ず、自分を指さすかも知れない人間を好きになれる人間なんていない。
だがここには水がない。そう。この世界には水がない。じゃあなんで人間の形をしているのか、それはわからない。(※ここで私は意識が形を求め、物質はそれにこうおうするように出来ているという私が何気なく思いついた仮説を思い出した。もしかしたら、これが事実である場合に限るけど、その下位の世界の人間と言うのは人間の形をしているだけで全く別の存在なのかもしれない)
喉は乾かないからそれだけはいいかもしれない。しかしそれだけである。綺麗な水がないから誰も洗わない。だから酷い匂いがする。いい匂いがするものなんてどこにもない。ここに自然のような景色は存在しない。植物の代わりに空に向かって糸のような触手を伸ばしているようにしか見えない、ただ止まっているけど近づいてはいけないと言われる奇怪な何かがあるだけ。それを食べるのが巨大なムカデのような怪物である。ムカデと違う点はそれの足がムカデと違って長いところである。足がゲジのように胴体よりずっと長い。
長さは30メートルほど。そこにある生物はとても大きい。人間は絶対的な捕食者にはどうしてもなれず、小さくまとまっては石を削って家を作りそこにもぐる。
それでも無条件に安全になるわけではない。あの神と呼ばれる巨人が石の中から人を取り出して、小さい子供が虫をいじめるようなことをする。
恐怖するしかない。それがそうしないするためには先に潰した人間をそいつに見せるしかない。そうすると興味を失うのか少しの間は見えなくなるらしい。それも少しの間だけ。
そんな世界で俺は何年も過ごしていた。時の感覚が違うだけなのかもしれないが。
巨大な門がある。門は神が守っていて、その大きさも数百メートルを超える。それはオブジェのように荒野の中でポツンと建っている。真黒な、石で出来て門。
それを開いたら、神の一人をここから追放出来るらしい。
門は重く、それを開くためには命を捧げないほどの力を使う必要がある。そう、この世界の人間には筋肉のリミッターのようなものがない。その代わりに力は使えば使うほど寿命が減る。この世界の人間の寿命は力を全然使わない場合は永遠に生きらられるらしい。その永遠を全部捧げると、あの門が開けるのだと。
俺はこの世界に未練がないどころかこんな悪夢からは早く覚めたいと願っていた。だから神が人間が行う儀式の犠牲者を見物に行く間に、門まで行って、永遠を捧げ門を開いた。
そうしたらこの世界に戻れたのである。
だから俺は、この命を大事にしないと行けない。これからは俺が今まで起こした過ちを取り戻さないと行けない。そうしないと俺はまたあの地獄のような世界へ落ちてしまうだろう──
まるで小説のような話だと思った。脳に異常をきたしているかもしれない。だけど否定する根拠はどこにもない。私は、この人生で誰かのために行動したことも誰かに意図的に痛みを与えたこともほとんどない。他人とのかかわりが少ない人生。学会との関係は淡泊で、大学に通っている学生たちには事務的に接している。結婚もしてないし、親は私が丁度三十を過ぎたころに亡くなった。二人とも高齢だったのだ。私を産んだ時に予想だにしていなかった妊娠だったらしい。60も過ぎていて、だから私の親戚とかもそうやって次々と死んでいったのだ。別に呪われたとか、遺伝子的に問題があるとかじゃない。全員が健康的で、なくなった時は90歳以上。
そして私よりずっと早く生まれた私の兄と姉は親子ほど年が離れていて、姪っ子の一人は私より年上。
そんな家族関係だったものだから、世代差もあってあまり会話をすることもなく、私が子供の頃には彼らは自分のことは自分でやっていた。学校では静かに本を読むのが好きで、友人も少なく結局大人になってからは誰ともあわたなくなった。
だから私は、この本で言っていることが仮に事実であるのなら、死んでしまった場合、同じ程度の世界へ行ってしまうのだろう。
その日の夜は夢を見た。
夢での私は肌が異常に白く、手足の長い人になっていた。多くの人たちが私と同じで。
顔には幾何学模様が描かれていた。
何もかも香ばしく、暖かい。
皆は皆に優しかった。見た目は少し変だけど、別にそこまで気になるほどでもない。
空気は綺麗で、空には青白い輪が浮かんでいた。
時に妖精のような小人たちが何かをやっている。
気になって小人が住む家を掴んでは覗いてみる。
怖がっているようなので安心させようとしたら、大きさが違い過ぎたのか少し触っただけで壊れてしまった。
少し罪悪感を感じる。
けど皆はそうする必要はないという。
妖精たちは自分たちで自分たちを残虐な形で殺してはそれを私たちに見せてくれるんだと。
そんなことを見に行くのかと聞いたら、そうしないともっと多くを殺すという。
なら仕方ない。
悪い場所ではなかったけど、退屈な場所だった。
妖精たちを見るのもすぐ飽きる。
砂漠にには白い門があって、それが開くと私はこの体の意識をここから離してもといた世界へ戻せるらしい。
急に門が開いたので、私は急いで門の先に意識を飛ばし、自分の世界に戻ることが出来た。
──夢から起きた私は何かを忘れたような気がしていた。昨日は本を買っていた気がするけど、そんなことあったっけと首をかしげる。紅茶を飲んで眠気を覚まし、大学に。
今日もいつもの一日が始まる。
陰鬱さより感じたのは死後の世界に対する疑問。それを忘れて日々を生きるなんてことは出来ない。宗教にのめり込むことは性格的に出来なかった。私はどちらかと言うと疑い深い懐疑的な人間なのである。
子供としての記憶が残っている二つ目のクリスマスからサンタクロースを信じなくなった。今でも覚えている。信じることなくただ目を開けたまま、私の父が私の部屋に入ってプレゼントが入っている箱を床に置くのを暗闇の中からじっと見ていた。有名なキャラクターでもなく、どこから買ってきたのかわからないアンティークな雰囲気の女の子を模した縫いぐるみだった。彼女に名前を付けて遊んだことはいい思い出。
夢の中ではよく彼女と遊んだものである。もしかしたら夢じゃなく虚構と現実の区別がろくにつかなかった時に作られた嘘のような偽物の記憶かも知れないが。
だとしても驚くことはないと思う。人間の脳なんて錯覚だらけで、嘘に騙されやすく、偽物と本物の区別が出来るのはその分野で数十年も働いて直感を鍛えたほんの一握りの人たちだけ。
大人になって仕事についてからも死後の世界に関する書籍は暇な時にでも探してみることが多かった。仕事もある意味では死後の世界と関わっていると言えなくもない。私は古生物学者になった。昔から本を読むのが好きだったし、エビデンスを集めてはロジックを組み立てて物事を説明するというのは懐疑的に生きている私の本質ととてもあっているんだと思っていた。
結婚はしていない。二十歳過ぎたころにお腹に正体不明の痛みを感じて病院に行って検査をしてもらったことあるけど、その時自分の体が子供を作れるようには出来てないことがわかったので。子宮に良性腫瘍があったんだけど、悪性に替わったら取り返しのつかないことになるかもしれないと手術を受けて、取り除いてもらったのである。
だから結婚なんて今更する気にはなれず。毎月に経験しないといけない生理の痛みがなくなったことでむしろ生きるのが楽になったんだと思う。
その日は遅くまで学会で発表されている色んな論文を呼んでいた。私の専攻分野は古生代。カンブリア紀から始まってペルム紀に終わる、約3億年ほどの長さを持つ期間で、今では形すら残ってない原型となった数多くの生物や絶滅した生物、色んな地質学的イベントがあって、色んな学問とのコネクションが必要な時代と言える。大気の成分の違いによる環境の違いなどは生物学だけでは説明できないので。
そうやって論文を読んでいたところで、ふと思いついたのがあったのはただの偶然だったのか。現代の生物学では進化論を主要な理論として考えているが、本当に進化論が正しいのなら、生物は今よりずっと多種多様な形で進化していたはずである。古生物の不思議な形のように。それが採用されなかったのは進化に有利が不利か以前の何か別の要因があるのかもしれない。例えば、知性を持つ存在の意識が宿るに適切な形が先にあって、それに向かって生物が進化してゆくように出来ているとか。
普段はこのような形而上学的な思考はしない。しかしこう考えると説明できなくもないと思わずにはいられないというか、例えば可愛い動物を見て可愛いと感じるのは脳に遺伝子的にそうインプっとされているとかじゃなく、我々の意識がそのような指向性を最初から持っていて、それに外側の環境が変化するように出来ているに過ぎないというのならどうだろう。
この宇宙に意識と言う形で寄生していくために求めるのは決まっていて、それをかなえてくれなかったら意識がその生物から距離を取るようにしているとか。
そんな単純なものじゃない気はするけど、ならば生物の死が必然なのはこの宇宙が自分たちに寄生している存在である意識を自分の中から弾き出そうとしているのかもしれない。
そう思って馬鹿馬鹿しいとウォッカ入りのオレンジジュースを一口飲んだ。夜のお供である。深夜まで変なテンションで起きているせいでこんな変な考えが思いついたかもしれない。
寝て起きたら忘れるだろうと、私はベッドに入って眠りについた。
そして夢を見た。
その世界はどこまでも広がっていた。無限のように、どこまでも。大地は星にあらず、世界はただの大地であった。なんでわかるかって、直感でそのようなことがわかるように出来ていたから。それが間違いだとは思いもしなかった。その無限に広がる大地には当然だけど重力もあった。そうでなかったら大地の形を保てるわけがない。
そしてそこで私は数々の生物を目にした。体を動かせる器官、ここで言う足の形とその仕組みが様々で、大きさも様々。視覚器官である目の位置も様々な場所にあって、その数も種類によって違った。私はその世界をただ浮いていた。浮いて、どこまでも自由に動かすことが出来た。まるでこの世界で生まれてここまで過ごしていたかのようであった。
太陽はなく、代わりに夢のような光の帯が大地の上を覆っていた。それは点滅したり、形を変えたりと、例えるなら眩しいまでの光を放つ極光。
そこでの私は自分に寿命がないことをわかっていた。そこでの私は死ぬことなく無限に生きることが出来た。世界は自分の外側から自分を壊しに来るものではなく、世界と私は繋がっていた。楽園のようであった。悲しみも、痛みも、恐怖も、不安も、怒りも、理由もなく湧き上がってくる衝動も、自分と違う存在とのぶつかりも、心が擦り減って出てしまうような声なき叫びのようなものもない。
あるのはただ静かに過ぎてゆく時間と、数えきれないほど多種多様な形をした生物、いや、生物ですらないだろう、生きているということはいつかは死ぬということでもある。その世界での私は自分に死がないことをわかっていたから、生物としての範囲から離れていたんだと思う。
それはとても不思議で、平和があるのならこのような状態を指すのではないかと思うくらい。
しかしその世界がたとえ永遠であったとしても、私の意識はその永遠に属するものではなかったようで。夢から覚めるといつもの日々が始まる。
じゃあ忘れられるのか。忘れられると思っていたけど、ずっと記憶の片隅に、意識の片隅にその不思議な夢はなぜか鮮明にと残ってて離れない。
それでいてまた次の日の夢にも見られるのかと期待するも夢を見ることは出来なかった。あれは私の脳が勝手に作り出した幻か何かなんだろう、なんて思うほど私は生物学が万能だと思っているわけではない。学問をする人間ならたとえそれが自分が一生を捧げる分野であろうと懐疑的な目を向けないと行けない。それは基本中の基本である。
だから私はその夢の意味を生物学的な唯物論で説明できるなんてことは思わず、だからと本当にこことは違う世界、違う次元に意識だけが飛んでからそれらを目撃したんだろうという結論を出すこともなかった。それでも忘れられなかったので悶々とした気持ちで過ごしたのだ。
それに転機が訪れたのは何気なく入った古本屋で、とある書籍を見つけてから。私の子供のころからの興味は死後の世界にあることに今でも変わりはない。だからその本を手にしたのも自分の興味がずっと残っていたから。
タイトルは『魂は次元を超える。来世が自分が知っているものであると思い込むと後悔するかもしれない。』と言う、かなりふざけた感じのものだったんだけど。
著者の名前が聞いたことのない言語みたいな雰囲気をしていて、出版社も気になってその場で検索してみたところ当たらず。いつ出版されたのか気になってみてみたところ、年代が文字化けしていたのが少し不気味と感じた。表紙は黒と赤のグラデーションで、デザインだけ見ると推理小説が思い浮かぶ。それも犯人がただの恨みによる殺人を行う定番のモチーフではなく、サイコパスによる残虐的性格の犯人によるサスペンス系の推理小説。
誰かがいたずらで書いたものなのかと気になって少しページをめくってみたところ、文章は割としっかりしていて、仮設と言うよりかは可能性と考察の話が殆どで、論理の飛躍は自分から認めているのに好感が持てた。最後のところは自分の体験で締めくくっていたんだけど、私はその場で細部まで読むことは出来ず、購入しては自分、マンションの一室にもどってソファーに座って紅茶を飲みながら読み進めた。
著者が建てた仮設をまとめるとこんな感じになる。
1.人の魂は次元を放浪するように出来ていて、その生でほかの魂を持つ存在にどう接したのかによってどこの次元に行けるのかが半ば決まる。
2.魂同士での引力や斥力が死後になったら肉体を失った魂を飛ばしたり引き寄せたりする。
3.そして魂を持つ存在は人だけではない。例えば地球のような星も引力を持っていて、もしかしたらこの宇宙も魂を持っているのかもしれない。
4.この次元より強い引力を持つ上位の世界と弱い引力を持つ下位の世界、そして平行して同じほどの引力を持つ世界がある。
5.同じ程度の存在、例えば人間同士の魂の引力と斥力は、同程度の知性を持つ場合は同じ力を持っている。ここで言う知性とは学力などではなく、物事の本質をどこまで理解できるかによって決まるとする。
6.この世界を生きている魂を持つ存在に対して残酷なことをしてしまうと斥力が発生し、この世界から離れやすくなり、それが一定値以上に達すると下位の世界へと落ちる。逆もまたしかり。引力が強すぎる場合は上位の世界へ引っ張られる。
7.引力も斥力もほとんど発生しない生き方をした場合は同じ程度の引力を持つ次元に流れる可能性もある。
そして著者が書いたのは、上位の世界でも同じ程度の世界、この仮説によると多分私が経験したのもこれだと思う、でもなく。下位の世界のことであった。
ここからは彼が個人的に体験したと主張するものである。
──俺は子供の頃親に虐待を受けた。殆どの子供は虐待を受けると知能が発達しにくくなったり、結論を急ぐようになったり、不安に駆られやすくなる。俺も同じだった。ただ俺が違っていた点は、俺は親がただ俺を精神かつ肉体的にただ苦しみを与えただけでなく、俺もそのように人に痛みを与えては自分が欲しいものを手にすることを当たり前と言う生き方をするのが俺のためであるとずっと言い聞かされていたところにある。
だから俺は大人になってから詐欺師になった。じの頭はよかったんだと思う。親から虐待を受けても人をだますことには才能があった。口車に載せていい気にさせて契約書をろくに読まずお金を渡してくれる。そこで俺は快感を覚えた。自分が子供のころから経験していた世界がそこにはあった。
人を騙し、奪った。暴力団とも関わったことがあるし、詐欺でだまし取ったお金でいい思いをしようとしたけど思ったよりいい思いがいい思いじゃなかったので女に暴力を振るったことも多かった。そんな俺が変わるきっかけとなったのは交通事故にあってからだった。運転ミスで車ごと崖の下に転落し、生死をさ迷った。何十日も昏睡状態だったらしい。幸い俺にはお金があった。保護者となってくれたのは俺に殴られながらも最後まで残ってくれた女性だった。彼女には一生感謝してもしきれないだろう。
ただ俺が昏睡状態で経験したものはとても一言では表せない出来事だった。よく悪いことをすると地獄に落ちると言うが、地獄は所詮は人が想像したもの。永遠に拷問を受けるなんて、神経に対して刺激を受けることに過ぎない。そんなものがあると信じられるわけがない。
だからそれは決して地獄などと言う単純な、この世界の罪人のためだけに存在するような付属品としての場所ではなく、一つの世界であったのだとはっきり言える。
俺はとても矮小な存在となっていた。空はいつでもどこでもどんよりとした暗く澱んでいて、どこへ行っても悪臭がした。太陽の代わりに赤黒い輪が浮かんでいた。そしてそこで俺は小さくか弱い、今と変わらぬ人間の姿であった。人間だったのは俺だけじゃない。俺以外にも多くの人間がいたが、どれもまともじゃなかった。
カルト教団のような宗教がいくつもあって、私利私欲に走っているなどと言うことすらない、ただひたすら何かしらの意味を求めて残虐なことをしていた。それはあまりにも惨いことで、人を何かしらの神に対して生贄に捧げることを浮かべばいい。それも原型を止めないほどに壊して。
そんなことをしてもらいたい神なんてただの邪神ではないかと思ったけど、そんなことはなかった。普通にいたのだ。神のような存在が。ただの巨人と言えなくもないかも知れないが、俺が見る限りそれは人の姿と似ていた。真っ白な手足は数十メートルは超えていて、頭には幾何学模様が描かれている。それがもとからある器官なのかそれとも自分たちで刻み込んだのかはわからない。
それは遠くから見てもわかった。それは怒りに満ちているようであった。なぜそうなのかはわからない。
それの機嫌を損ねることだけはしてはいけない、それだけが直感的にわかるものであった。
心の中はよくぐちゃぐちゃになっていた。昼夜がない世界は感覚が狂いやすい。時計なんて誰も使っていない。食べ物は大きな、奇怪な姿を持つ何かの死骸だった。味も酷かった。二度と味わいとは思えないほどの味で、味がただ舌と鼻だけではなく物理的な痛みのように感じるほどだった。
声を発しても支離滅裂なことしか話せず、言葉は意味を持たない。意味を持つような単語を話そうとしても伝わらない。だから皆何となく、最小限の動作で意思疎通を行う。指さしたりする。一人が指さして、また一人が指さして、それが一人に向かうと、皆がその人に刃物を振り下ろす。俺は異邦人として招き入れられて、儀式には参加しなかったので殺されることはなかったが、すべてを見てないと行けなかった。
その中に入りたいとは思えないだろう、それはまさに地獄のような光景であった。体の一部が腐り落ちる病気とかもあって、それもまるで風のようにかかり安い。
痛みも酷いのだろう、うめき声が悲鳴にかわる時があって、その時はうるさいと皆が集まって住む場所から追い出される。
子供が生まれるものだから性行為も当然ながらするけど、基本的に乱交である。そうする理由は誰も誰に対して感情を向けないから。意思疎通も出来ず、自分を指さすかも知れない人間を好きになれる人間なんていない。
だがここには水がない。そう。この世界には水がない。じゃあなんで人間の形をしているのか、それはわからない。(※ここで私は意識が形を求め、物質はそれにこうおうするように出来ているという私が何気なく思いついた仮説を思い出した。もしかしたら、これが事実である場合に限るけど、その下位の世界の人間と言うのは人間の形をしているだけで全く別の存在なのかもしれない)
喉は乾かないからそれだけはいいかもしれない。しかしそれだけである。綺麗な水がないから誰も洗わない。だから酷い匂いがする。いい匂いがするものなんてどこにもない。ここに自然のような景色は存在しない。植物の代わりに空に向かって糸のような触手を伸ばしているようにしか見えない、ただ止まっているけど近づいてはいけないと言われる奇怪な何かがあるだけ。それを食べるのが巨大なムカデのような怪物である。ムカデと違う点はそれの足がムカデと違って長いところである。足がゲジのように胴体よりずっと長い。
長さは30メートルほど。そこにある生物はとても大きい。人間は絶対的な捕食者にはどうしてもなれず、小さくまとまっては石を削って家を作りそこにもぐる。
それでも無条件に安全になるわけではない。あの神と呼ばれる巨人が石の中から人を取り出して、小さい子供が虫をいじめるようなことをする。
恐怖するしかない。それがそうしないするためには先に潰した人間をそいつに見せるしかない。そうすると興味を失うのか少しの間は見えなくなるらしい。それも少しの間だけ。
そんな世界で俺は何年も過ごしていた。時の感覚が違うだけなのかもしれないが。
巨大な門がある。門は神が守っていて、その大きさも数百メートルを超える。それはオブジェのように荒野の中でポツンと建っている。真黒な、石で出来て門。
それを開いたら、神の一人をここから追放出来るらしい。
門は重く、それを開くためには命を捧げないほどの力を使う必要がある。そう、この世界の人間には筋肉のリミッターのようなものがない。その代わりに力は使えば使うほど寿命が減る。この世界の人間の寿命は力を全然使わない場合は永遠に生きらられるらしい。その永遠を全部捧げると、あの門が開けるのだと。
俺はこの世界に未練がないどころかこんな悪夢からは早く覚めたいと願っていた。だから神が人間が行う儀式の犠牲者を見物に行く間に、門まで行って、永遠を捧げ門を開いた。
そうしたらこの世界に戻れたのである。
だから俺は、この命を大事にしないと行けない。これからは俺が今まで起こした過ちを取り戻さないと行けない。そうしないと俺はまたあの地獄のような世界へ落ちてしまうだろう──
まるで小説のような話だと思った。脳に異常をきたしているかもしれない。だけど否定する根拠はどこにもない。私は、この人生で誰かのために行動したことも誰かに意図的に痛みを与えたこともほとんどない。他人とのかかわりが少ない人生。学会との関係は淡泊で、大学に通っている学生たちには事務的に接している。結婚もしてないし、親は私が丁度三十を過ぎたころに亡くなった。二人とも高齢だったのだ。私を産んだ時に予想だにしていなかった妊娠だったらしい。60も過ぎていて、だから私の親戚とかもそうやって次々と死んでいったのだ。別に呪われたとか、遺伝子的に問題があるとかじゃない。全員が健康的で、なくなった時は90歳以上。
そして私よりずっと早く生まれた私の兄と姉は親子ほど年が離れていて、姪っ子の一人は私より年上。
そんな家族関係だったものだから、世代差もあってあまり会話をすることもなく、私が子供の頃には彼らは自分のことは自分でやっていた。学校では静かに本を読むのが好きで、友人も少なく結局大人になってからは誰ともあわたなくなった。
だから私は、この本で言っていることが仮に事実であるのなら、死んでしまった場合、同じ程度の世界へ行ってしまうのだろう。
その日の夜は夢を見た。
夢での私は肌が異常に白く、手足の長い人になっていた。多くの人たちが私と同じで。
顔には幾何学模様が描かれていた。
何もかも香ばしく、暖かい。
皆は皆に優しかった。見た目は少し変だけど、別にそこまで気になるほどでもない。
空気は綺麗で、空には青白い輪が浮かんでいた。
時に妖精のような小人たちが何かをやっている。
気になって小人が住む家を掴んでは覗いてみる。
怖がっているようなので安心させようとしたら、大きさが違い過ぎたのか少し触っただけで壊れてしまった。
少し罪悪感を感じる。
けど皆はそうする必要はないという。
妖精たちは自分たちで自分たちを残虐な形で殺してはそれを私たちに見せてくれるんだと。
そんなことを見に行くのかと聞いたら、そうしないともっと多くを殺すという。
なら仕方ない。
悪い場所ではなかったけど、退屈な場所だった。
妖精たちを見るのもすぐ飽きる。
砂漠にには白い門があって、それが開くと私はこの体の意識をここから離してもといた世界へ戻せるらしい。
急に門が開いたので、私は急いで門の先に意識を飛ばし、自分の世界に戻ることが出来た。
──夢から起きた私は何かを忘れたような気がしていた。昨日は本を買っていた気がするけど、そんなことあったっけと首をかしげる。紅茶を飲んで眠気を覚まし、大学に。
今日もいつもの一日が始まる。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
まばたき怪談
坂本 光陽
ホラー
まばたきをしないうちに読み終えられるかも。そんな短すぎるホラー小説をまとめました。ラスト一行の恐怖。ラスト一行の地獄。ラスト一行で明かされる凄惨な事実。一話140字なので、別名「X(旧ツイッター)・ホラー」。ショートショートよりも短い「まばたき怪談」を公開します。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる