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第1章
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料理を前にして食欲を抑え切れなくなったマリティムが、辛抱堪らずハランヘルトに訊ねる。
「食べていい!?」
「どうぞ、召し上がれ」
ハランヘルトの答えを聞くと同時に、嬉々としてサンドイッチへと手を伸ばし、ひとつ掴んでかぶりつく。
あまりの美味しさに、んふ~っ! と感動しつつ、ひとつ目をあっという間に食べてしまうと、
「美味しい!」
と感激しながらふたつ目に手を伸ばす。
その天真爛漫な様子は、人間の子供となんら変わりなかった。
そうか、と答えるハランヘルトの目には、親が我が子を見つめる時のような温かさがあった。
ふたつ目もペロリと食べ終えたマリティムが、続けてスープ皿へと手を付ける。皿の縁を両手で掴むと、そのまま口元まで運び、皿を傾けて呑もうとした。
すると隣に座っているエルフが優しく声をかける。
「横にあるスプーンを使うのよ」
「スプーン?」
初めて聞く言葉に、マリティムは首をかしげた。
手を出して、というエルフの言葉に従い、皿を机の上に戻すと片手を差し出す。
エルフは皿の横に置かれていた銀のスプーンを持ち上げ、マリティムの手のひらにそっと置きながら、
「これを使うと呑みやすいわ」
と教えてあげた。
マリティムは用途の分からないスプーンなる物を胸元まで持ってくると、しげしげと眺めてから、柄の部分を握り締める。
「それでスープをすくって呑むのよ」
と言うエルフの説明を受け、言われるがままにスープをすくう。
そうそう、上手よ! そのまま口に持っていって、とエルフに見守られながら口元に運ぶと、口に入れたスプーンごと食べるものだと思って柄を噛みちぎった。
スープはとても美味しかったが、スプーンは何の味もしなかった。もっと噛めば美味しくなるのかと思いつつ、真顔でもぐもぐと噛み続ける。
隣ではエルフが青ざめながら、
「きゃーッ!!? 早く出して!!」
と絶叫していた。
一部始終をそばで見ていたハランヘルトとペルフェクトは、前のめりになったまま、驚きのあまり固まってしまう。
ペルフェクトが呆然としながらも、
「驚かされっぱなしで……言葉もありません」
とつぶやくと、ハランヘルトも同感だと言わんばかりに頷いてから、
「こうも認識が違うとは……」
と種族間の文化の違いを痛感していた。
全て食べ終えたマリティムは、不思議そうに空の皿を見つめていたが、ハランヘルトに向かっておもむろに口を開く。
ちなみに噛みちぎられたスプーンの先はというと、無惨な姿で皿の横に置かれていた。
「さっきのお食事、どうやって作ったの」
「ん? この城で作ってるぞ」
ハランヘルトは何の気無しに答えたつもりだったが、マリティムは何故か天井を見上げ、驚きを隠せない。
「このお城が作ってるのッ!?」
なにか勘違いしてるな、と思ったハランヘルトだったが、このとき脳裏に妙案が浮かぶ。
「そうだぞ! だからお城を滅ぼしたら、美味しい料理が作れなくなってしまうぞ」
「じゃあこのお城は滅ぼさない!」
元気はつらつとして応じるマリティムの答えに、
「うんうん、そうしてくれるかな」
とハランヘルトも満面の笑みをたたえる。
「食べていい!?」
「どうぞ、召し上がれ」
ハランヘルトの答えを聞くと同時に、嬉々としてサンドイッチへと手を伸ばし、ひとつ掴んでかぶりつく。
あまりの美味しさに、んふ~っ! と感動しつつ、ひとつ目をあっという間に食べてしまうと、
「美味しい!」
と感激しながらふたつ目に手を伸ばす。
その天真爛漫な様子は、人間の子供となんら変わりなかった。
そうか、と答えるハランヘルトの目には、親が我が子を見つめる時のような温かさがあった。
ふたつ目もペロリと食べ終えたマリティムが、続けてスープ皿へと手を付ける。皿の縁を両手で掴むと、そのまま口元まで運び、皿を傾けて呑もうとした。
すると隣に座っているエルフが優しく声をかける。
「横にあるスプーンを使うのよ」
「スプーン?」
初めて聞く言葉に、マリティムは首をかしげた。
手を出して、というエルフの言葉に従い、皿を机の上に戻すと片手を差し出す。
エルフは皿の横に置かれていた銀のスプーンを持ち上げ、マリティムの手のひらにそっと置きながら、
「これを使うと呑みやすいわ」
と教えてあげた。
マリティムは用途の分からないスプーンなる物を胸元まで持ってくると、しげしげと眺めてから、柄の部分を握り締める。
「それでスープをすくって呑むのよ」
と言うエルフの説明を受け、言われるがままにスープをすくう。
そうそう、上手よ! そのまま口に持っていって、とエルフに見守られながら口元に運ぶと、口に入れたスプーンごと食べるものだと思って柄を噛みちぎった。
スープはとても美味しかったが、スプーンは何の味もしなかった。もっと噛めば美味しくなるのかと思いつつ、真顔でもぐもぐと噛み続ける。
隣ではエルフが青ざめながら、
「きゃーッ!!? 早く出して!!」
と絶叫していた。
一部始終をそばで見ていたハランヘルトとペルフェクトは、前のめりになったまま、驚きのあまり固まってしまう。
ペルフェクトが呆然としながらも、
「驚かされっぱなしで……言葉もありません」
とつぶやくと、ハランヘルトも同感だと言わんばかりに頷いてから、
「こうも認識が違うとは……」
と種族間の文化の違いを痛感していた。
全て食べ終えたマリティムは、不思議そうに空の皿を見つめていたが、ハランヘルトに向かっておもむろに口を開く。
ちなみに噛みちぎられたスプーンの先はというと、無惨な姿で皿の横に置かれていた。
「さっきのお食事、どうやって作ったの」
「ん? この城で作ってるぞ」
ハランヘルトは何の気無しに答えたつもりだったが、マリティムは何故か天井を見上げ、驚きを隠せない。
「このお城が作ってるのッ!?」
なにか勘違いしてるな、と思ったハランヘルトだったが、このとき脳裏に妙案が浮かぶ。
「そうだぞ! だからお城を滅ぼしたら、美味しい料理が作れなくなってしまうぞ」
「じゃあこのお城は滅ぼさない!」
元気はつらつとして応じるマリティムの答えに、
「うんうん、そうしてくれるかな」
とハランヘルトも満面の笑みをたたえる。
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