鄒家道士恋物語 憧れていた師兄に溺愛されていました?!~恋の自覚は体から~

オジカヅキ・オボロ

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03 情報を得る

 翌日は丘家荘きゅうかそうで再度聞き込みをした後に村を出、他ふたつの村で聞き込みをした。そうして、三日目には中程度の地方都市である新昌しんしょうにやってきた。
 地方都市とはいえ、村の規模よりずっと大きい。つまり、人が多い。

「話を聞くのは大変かと思ったけど、わざわざ亡くなった人の家族を集めてるとは思わなかったな……」

 訴状を持ってきた役人に会おうと庁舎に行くと、思いがけず熱く歓待されてしまった。この街では、男性より女性の自殺者が多いらしい。

「でもやっぱり共通点がないんだよなぁ……亡くなった場所以外」

 酒場のテーブルに腕を投げ出して突っ伏す。

「……雪游せつゆう
「っ」

 咎める響き。慌てて体を起こし、ぴしっと背を伸ばす。ちょうど注文した料理が運ばれてきたところだった。
 蒸した魚に炒めた野菜や茸にとろりとした餡をかけた魚料理や、野菜炒め、溶き卵のスープ、肉団子に甘辛いタレをかけたもの。どれもが美味しそうだったし、箸を付ければ美味しさで笑顔になる。

「兄さま、魚美味しいのでたくさん食べてください」

 もちろん冰淵ひょうえん十行仙じゅっこうせんを日頃から行っている以上、俗っぽい料理をあまり必要としないことはわかっているが、どうせなら同じ料理を食べて欲しい。
 じっと見つめる雪游の意志が固いことに気付いたのか、冰淵は雪游と渢雪にしかわからないほんのりとした笑みを見せると、取り皿に野菜を取ってくれた。ついでのように魚も取ってくれたのが嬉しい。

「それにしても、この頃は景気が悪い、辛気くさくてかなわねえや」

 隣のテーブルの男たちが、酒場の喧噪に負けまいとしてか声高に話をしている。

こうの大旦那のとこの嫁と三番目の娘もだろう?」
さいの嫁だってそうだ! おれが聞いた話じゃ、隣近所の村でも何人も死んでるってよ」
「洪の大旦那、すっかり気ぃ落としちまって、後を狙ってるはんのやつが何人も洪派の商人に声かけてるってよ」
「あいつ最近妙に羽振りがいいもんなあ」
「他人の苦しんでる時に美味うまい汁すすってんなら、そりゃあもう悪いことやってるに決まってるさ」
「あいつのところこそ……なんて影で言ってる連中もいるって話じゃねえか」

 内容が内容だから、雪游も食事をゆっくりと進めつつ、黙って彼らの話に耳を傾けた。
 もちろんこういった情報収集も兼ねて、酒場を夕食の場所に選んだのだ。

「それよ。二、三日前ここに来た道士崩れっぽい男がいたろう」
「ああ、劉何某りゅうなにがしとかいう若い男か」
「おれの見立てじゃあ、あいつが怪しいんじゃないかってな」
余所者よそものだからってすぐに疑うのはどうかと思うが」

「馬鹿、あいつがの婆ァに何訊いたか知ってるか? 山に祠がないかとか言い伝えがないかとか……ただの道士がそんなもんに用があるもんか。百年以上前には、そういうので悪さした道士がいるって、おれぁ祖母さんに聞いて覚えてんだ」
「だからってそいつが悪さしたわけじゃねえだろう。そいつがここに来たより前から人死には出てるんだぞ」

「だからさ。過去にそういうものがあったんなら、新しく作るよりラクじゃねえか? 全部じゃなくても途中まであるんだからよ」
「家造るんじゃねえんだぞ、そんな簡単なもんか」

 雪游は思わず冰淵を見た。今の話は聞き捨てならない情報を含んでいる。
 こういう時は愛想のいい雪游の出番だ。

「ねえおじさんたち、今の話、詳しく教えてほしいんだけど……」
「ああ? なんだ、坊主」
「おっ、その身なり……もしかして、あんたら道士か?」
「道士? こんな綺麗な兄ちゃんがか?」
「なら、自殺の……」
「そうそう。なんでもいいから手がかりがほしいんだよね。おじさんの今の話も、もしかしたら役に立つかもしれないからさ。教えてくれない?」

 雪游は、冰淵の孤高の美貌めいた雰囲気ではなく、親しみやすい近所の顔が良い兄さんといった違いがある。普通の民に受けるのはどちらかといえば自分のほうだ。これは子どもの頃から何度も体験したことなので間違いない。
 近寄りがたい美貌というのがあれば、それは冰淵のことになる。雪游にとってはあくまで表面上のことでしかないが。
 酒を注がれ注ぎ返し、男たちとの話は夜更けまで話は続いた。
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