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17 双子
数日後、雪游は再び渢雪の私室に呼ばれていた。今度は冰淵もいる。
普段なら双子に揃って呼ばれるのは嬉しいのに、この時は少し気が重かった。
「先日の鬼狩りは、いい引率をしたみたいだね。張番の先輩も褒めておられた」
張番は引率ではなく道士の鬼狩りを離れたところから見守る役割だ。だいたい格上の先輩が宛てられるが、先輩から褒められるということは合格点だったということ。ホッと胸を撫で下ろす。
「……よかった」
「うん。私たちも自慢の弟が活躍してくれるのは嬉しい。……だから、元気がないのは心配になる」
「何かあったのか」
「…………」
当の本人がこの場にいて話をするのは難しい。かといってそれを正直に言うのはもっと難しい。
指先をいたずらに弄っている雪游の様子をどう思ったか、渢雪は自分の隣、冰淵をちらりと見る。
「冰淵。お茶の用意をしてきてくれる?」
「渢雪兄さま、それならオレが」
「いいんだ。冰淵もたまにはお茶くらい淹れないとね?」
この笑顔は押しの強い笑顔だ。そうして向けられた相手は折れる以外の手段を持たない。冰淵に対してもその通りで、彼は頷いて立ち上がった。
冰淵が立ち去ったのを見送ると、改めて渢雪が雪游を見る。
「さて……雪游が言いづらいのは、冰淵のことで合っていたかな?」
素直に言えなかったことをズバリと言い当てられ、咄嗟には言葉に詰まる。
「……渢雪兄さまは、人の心が読めるのか……?」
「人の心はわからないけれどね、かわいい弟のことはそれよりはわかるつもりだよ。何があったのか、教えてごらん」
「あの……」
言いづらいことではあるが、昔から渢雪には様々な悩み事を相談してきた。冰淵にももちろん相談してきたが、冰淵に相談しづらいことは渢雪に、渢雪に相談しづらいことは冰淵に相談してきた結果が今だ。
結局、鬼狩りの時に体験した靄々のことを洗いざらい渢雪に吐き出すことになった。
「……なるほど。つまりおまえは嫉妬したということになるね」
「嫉妬」
「その嫉妬が『誰に』『何について』なのかまでは、わたしにはわからないが。……おまえの口ぶりから、師弟相手ではないということはわかる」
だとすると、相手はひとりになるのでは。
思わず渢雪を見つめた目は、縋るようなものになったかもしれない。苦笑されてしまった。
「そういう気持ちを抱いたのがどうしてなのかは、自分で考えたほうがいい。自分の気持ちを大切に考えるんだよ」
言い聞かせるような優しい言葉。自然と胸に届き、響く。
渢雪の言葉はいつもそうだ。だからきっと正しいことだ、と盲目的に思うと、こくりと深く頷いた。
普段なら双子に揃って呼ばれるのは嬉しいのに、この時は少し気が重かった。
「先日の鬼狩りは、いい引率をしたみたいだね。張番の先輩も褒めておられた」
張番は引率ではなく道士の鬼狩りを離れたところから見守る役割だ。だいたい格上の先輩が宛てられるが、先輩から褒められるということは合格点だったということ。ホッと胸を撫で下ろす。
「……よかった」
「うん。私たちも自慢の弟が活躍してくれるのは嬉しい。……だから、元気がないのは心配になる」
「何かあったのか」
「…………」
当の本人がこの場にいて話をするのは難しい。かといってそれを正直に言うのはもっと難しい。
指先をいたずらに弄っている雪游の様子をどう思ったか、渢雪は自分の隣、冰淵をちらりと見る。
「冰淵。お茶の用意をしてきてくれる?」
「渢雪兄さま、それならオレが」
「いいんだ。冰淵もたまにはお茶くらい淹れないとね?」
この笑顔は押しの強い笑顔だ。そうして向けられた相手は折れる以外の手段を持たない。冰淵に対してもその通りで、彼は頷いて立ち上がった。
冰淵が立ち去ったのを見送ると、改めて渢雪が雪游を見る。
「さて……雪游が言いづらいのは、冰淵のことで合っていたかな?」
素直に言えなかったことをズバリと言い当てられ、咄嗟には言葉に詰まる。
「……渢雪兄さまは、人の心が読めるのか……?」
「人の心はわからないけれどね、かわいい弟のことはそれよりはわかるつもりだよ。何があったのか、教えてごらん」
「あの……」
言いづらいことではあるが、昔から渢雪には様々な悩み事を相談してきた。冰淵にももちろん相談してきたが、冰淵に相談しづらいことは渢雪に、渢雪に相談しづらいことは冰淵に相談してきた結果が今だ。
結局、鬼狩りの時に体験した靄々のことを洗いざらい渢雪に吐き出すことになった。
「……なるほど。つまりおまえは嫉妬したということになるね」
「嫉妬」
「その嫉妬が『誰に』『何について』なのかまでは、わたしにはわからないが。……おまえの口ぶりから、師弟相手ではないということはわかる」
だとすると、相手はひとりになるのでは。
思わず渢雪を見つめた目は、縋るようなものになったかもしれない。苦笑されてしまった。
「そういう気持ちを抱いたのがどうしてなのかは、自分で考えたほうがいい。自分の気持ちを大切に考えるんだよ」
言い聞かせるような優しい言葉。自然と胸に届き、響く。
渢雪の言葉はいつもそうだ。だからきっと正しいことだ、と盲目的に思うと、こくりと深く頷いた。
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