鄒家道士恋物語 憧れていた師兄に溺愛されていました?!~恋の自覚は体から~

オジカヅキ・オボロ

文字の大きさ
32 / 48

32 事件04

「おい、人数揃ってんだろうな?」
「問題ない、四人いる」
「ならいい。行くぞ」

 くぐもった男たちの声を聞くと、雪游は目を開けた。目を開けても視界は真っ黒いのは仕方がない、何しろ頭から麻袋を被せられていた。おまけに後ろ手に縛られているし、足首も縛られていて猿轡さるぐつわまでされている。

 やはりあの男たちが酒に何か入れていたのだ。

 だから前回は記憶がなくなるほど酔っ払ってしまった。冰淵が飲まなかったのは、何かを察していたのか、強くはないせいか。けれど結果的にそのお陰で助かったのだろう。
 自分が酒に弱いせいではないと安心したが、かといって状況が良くなるわけではない。今回は念のため少しだけ本当に飲み、あとは飲んだフリをして寝入ったことにした。
 読み通りといえば読み通りの状況ではある。

 問題は、どこに連れて行かれて何をされるか。

 冰淵の金華猫も雪游の金華猫もこの状況はわかっているし、冰淵に連絡も行っているはず。すっかり安心しているわけではないが、なんとかなるという確信だけはあった。


「本当に信じられない……」
 翌朝朝食を食べながら紫焔から聞き出した話や昨日男たちから聞いた話を整理していたが、考えるほどに耳を覆いたくなる話だった。
「そりゃあ確かに花魄は無害だし、見ている分には小さな美女だけど……人為的に作り出すために人を自殺させるなんて」
 憤りは握った拳に表れたが、振り下ろす先が見つからない。紫焔は苦笑し、短い溜息を吐いた。
「それで商売してるんだから、まさに血も涙もないってやつだなァ」
「人道に悖る」
 短い言葉だが、冰淵もそれなりに思うところはあるのだろう。傍目には表情が動かないのでわかりづらいが。
「氾って商人、最近羽振りがいいって聞いたけど……人間が良くないっていうのは、そのへんが滲み出てたんだろうな……」
「そちらは洪が相手をしているのだろう?」
「ああ」
「劉どのの依頼主はそちらか」
「そうだ。あの爺さん、独自の調査で氾が怪しいってところまでは突き止めたらしい。だが証拠が見当たらず、氾が犯人だとするなら絶対に人を使ってるに違いないし怪しい術も使うのではないかと思って、たまたま店を訪れた我に依頼した。そういうわけだ」
「たまたまねえ……」
 嘘くさい、と思ったが、これこそ確証があるわけではない。溜息を吐くと、改めて紫焔を真っ直ぐ見つめた。
「紫焔、急ぎの用がないなら、鄒家に来ないか? この件、半分くらいは紫焔に片付けてもらったようなものだから、お礼がしたい」
「礼? そりゃこっちこそだ。特に囮と待ち伏せは我ひとりでは手が足りなかった」
「じゃあ、慰労を兼ねて。このまま何もせずに帰したんじゃ、オレたちが渢雪総領に叱られる」
「ふぅん……」
 紫焔は無遠慮に雪游と冰淵の顔をじろじろと交互に見たが、何かを納得したように小さく頷く。
「まあ、いいだろう。急ぐ用事は何もない。美味い食事と宿を用意してくれるというのなら、それに甘えるまでだ」
 出発は朝食後にすると決めると、宿で身支度を整えた。


「……ッつ……」

 馬車の振動でしたたかに床に頭を打ってしまい、うっかり声を出すのを堪えた。ずいぶん悪路を行くものだ。
 寝かされているのは馬車の荷台の中なのだろうと思うが、先ほどから何度か床に頭をぶつけている。これだけぶつけても他の者たちが起きないことが、いっそ不思議だった。

「もう向こうは待ってるんだろ?」
「ああ。早くしろって言っても、限度があらァ。道が悪いし、連中の目が覚めるほうが厄介だろうよ」

 道中、男たちの言葉数は多くない。あまり情報が得られないが、頭目格の男が目的地にいて、そこで雪游ら四人によからぬことをしようとしていることはわかる。

「っ……」

 唐突に馬車が止まった。男たちが別の男たちと何かやりとりをし、荷台へ乗り込んでくると雪游を担ぎ上げる。
 無言で歩き始めると、だんだんとそこがどこなのかわかり始めてきた。
 風が木々を揺らしているからだろう、葉のさざめきが聞こえる。足許は坂になっているのだろう、登っている感覚がある。そうして、あたりに薄らと漂う瘴気や陰気。

 ここはもしかして白平山か。

 にわかに緊張が高まる。
 雪游の距離感が正しければ、男たちはあの自殺現場を通り過ぎている。さらに山の奥へと向かっているようだ。
 四半刻が経った。
 男たちの足音に、がさがさと草をかき分けるような音が混ざる。道がない場所へ行っているのか。
感想 0

あなたにおすすめの小説

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

男同士で番だなんてあってたまるかよ

だいたい石田
BL
石堂徹は、大学の授業中に居眠りをしていた。目覚めたら見知らぬ場所で、隣に寝ていた男にキスをされる。茫然とする徹に男は告げる。「お前は俺の番だ。」と。 ――男同士で番だなんてあってたまるかよ!!! ※R描写がメインのお話となります。 この作品は、ムーンライト、ピクシブにて別HNにて投稿しています。 毎日21時に更新されます。8話で完結します。 2019年12月18日追記 カテゴリを「恋愛」から「BL」に変更いたしました。 カテゴリを間違えてすみませんでした。 ご指摘ありがとうございました。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

俺の幼馴染が陽キャのくせに重すぎる!

佐倉海斗
BL
 十七歳の高校三年生の春、少年、葉山葵は恋をしていた。  相手は幼馴染の杉田律だ。  ……この恋は障害が多すぎる。  律は高校で一番の人気者だった。その為、今日も律の周りには大勢の生徒が集まっている。人見知りで人混みが苦手な葵は、幼馴染だからとその中に入っていくことができず、友人二人と昨日見たばかりのアニメの話で盛り上がっていた。 ※三人称の全年齢BLです※