鄒家道士恋物語 憧れていた師兄に溺愛されていました?!~恋の自覚は体から~

オジカヅキ・オボロ

文字の大きさ
37 / 48

37 想い02

 そういった話もあり、双子のことは第一印象から好きだったのだろうなとはわかる。それからもずっと好きで、ずっと慕ってきた。あんな道士になりたいと憧れもしているし、ひとりの人間としても尊敬している。
 今にして思えば「双子のうちどちらを選ぶか」という場面で冰淵を選ぶことは多かった気がするし、冰淵に選ばれることも多かった。鬼狩りの引率がわかりやすい。
 従陰のことを差し引いても、冰淵はよく見てくれていたと思う。
 ――それなのに。

「……全然、気付かなかった」
「気付かれないようにしていたから、当然だろう」

 年上で、人間としても人格者で通っていて、道士としてもずっと格上の人だ。そんな人が本気で隠すなら外からはわかりようがなかったし、まだまだ未熟な雪游が自分で気付く機会はない。
 雪游が偶然の出来事で自分の気持ちに気付かなければ、ありえなかった。冰淵が言ってくれなければわからなかった。

「そうかもしれないけど。……自分で気付けたら、オレだってちょっとは成長してるってことになるだろう?」

 自惚れだ、と思うのが先だろうが、そこは黙っておく。
 冰淵は氷の華が溶けて清らかな水を垂らすように微笑んだ。

「そうかもしれない。……だが、無理だ。墓の中まで持っていくつもりだった」
「墓まで……」

 冰淵がそう決意していたのなら、そうなっていたのだろう。
 けれど仙人になってしまえば寿命は人よりずっと長いものになる。その間もずっと、雪游への想いをひとりで抱えたままでいるつもりだったのか。

「じゃあ、言ってくれれば良かった。……いや、もう言ってくれたからいいんだけど……オレのことでもあるんだから、今度からオレのことで何かあったら言ってほしいし……教えてほしい」

 自分のことだから知りたい。
 身を乗り出して間近で秀麗な顔を覗き込みながら言えば、冰淵は浅く頷いてくれた。

「……今度からはそうしよう」
「絶対だからね」
「ああ」

 再度頷いてくれたことにホッとすると、冰淵に顔を寄せられ、口付けられてしまった。

「もっとしても?」
「う……うん」

 じわじわと顔が赤くなってきている気がする。慣れていないせいか、それともこんなことをしそうにない冰淵がしてくれることの、羞恥にも似た背徳感のせいか。あるいはどちらのせいでもあるか。
 抱きしめられると、膝の上で横抱きにされた。なんだか子どもの頃のようで、気恥ずかしい。けれど冰淵が近いから、そこは嬉しかった。つい肩のあたりにもたれてしまう。
 左手で背を支えられ、頬から首筋、それから袷から手が忍び込み、鎖骨や胸許を撫でられる。冰淵の滑らかな手のひらの感触は心地よい。小さい頃はよく頭や頬を撫でられたが、入浴以外でこんなに肌に触れられたことはない。

 そうして、長じてから肌を見せたことがないことに気付いた。もちろん冰淵の肌、体も見たことがない。――あの時を除いて。

 抱きしめられた時に、思ったよりずっと体に厚みがあって逞しいことはわかっている。
 けれどそれを目で見るのは話が違ってきて、だから結局、自分の肌や体であろうと冰淵の肌や体であろうと、見て、見られるのはとんでもなく恥ずかしいのではないか。
 そう思うのに、見たいとも触れたいとも、触れられたいとも思ってしまう。

「……兄さまにも、触っていい……?」
「ああ。触って」

 一番に触れたくなるのは、やはり誰より綺麗な顔だ。子どもの頃は抱き上げられるたびに触れていたと思うが、十も過ぎれば鄒家の双子にそんなことが許されないと理解できるもの。
 とはいえその頃は、『兄さまたち』に気軽に触れられなくなったことが不満でしかなかったのだけれど。

 冰淵の下衣の袷を寛げる。肌は日焼けを知らない色で、滑らかさは極上の宝玉のようだ。自分などよりよほど美しく、肌の下の筋は無駄なく張られている。

 指の腹や手のひらで触れるだけでなく、自然と胸へ口付けた。頭を撫でられると、胸だけでなく肩、腰、腹筋にも何かを確かめるように触れる。
 どう触れば、冰淵が触れてくれたように触れられるのだろう。

「……雪游」
「っ、はい」

 慌てて顔を上げると、額に口付けされた。

「触れたくなってしまった。……いいだろうか」

 そんな風な要望をされるとは思わなかった。けれど冰淵がそうしたいと言うのなら、自分の答えはひとつだけだ。冰淵に触れられるのは、何よりずっと嬉しいから。

「……うん」

 浅く頷くと、頬へ口付けがひとつ。乱れた袷からまた手が差し込まれ、大きく撫でられる。頬をひと舐めした冰淵のくちびるは、今度は口の端、そしてくちびるを舐めた。迷ったのは一瞬で、自分からも舌をそっと出すと冰淵の薄いくちびるをぺろりと舐める。
 それが引き金になったようで、舌を舌で舐められ、引っ込めれば追いかけられて口中をまさぐられる。

「……ん……」

 鼻にかかる声すら食べてしまおうとするように、息を継ぐ間も与えられないほどの口付けは情熱的だ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

男同士で番だなんてあってたまるかよ

だいたい石田
BL
石堂徹は、大学の授業中に居眠りをしていた。目覚めたら見知らぬ場所で、隣に寝ていた男にキスをされる。茫然とする徹に男は告げる。「お前は俺の番だ。」と。 ――男同士で番だなんてあってたまるかよ!!! ※R描写がメインのお話となります。 この作品は、ムーンライト、ピクシブにて別HNにて投稿しています。 毎日21時に更新されます。8話で完結します。 2019年12月18日追記 カテゴリを「恋愛」から「BL」に変更いたしました。 カテゴリを間違えてすみませんでした。 ご指摘ありがとうございました。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

俺の幼馴染が陽キャのくせに重すぎる!

佐倉海斗
BL
 十七歳の高校三年生の春、少年、葉山葵は恋をしていた。  相手は幼馴染の杉田律だ。  ……この恋は障害が多すぎる。  律は高校で一番の人気者だった。その為、今日も律の周りには大勢の生徒が集まっている。人見知りで人混みが苦手な葵は、幼馴染だからとその中に入っていくことができず、友人二人と昨日見たばかりのアニメの話で盛り上がっていた。 ※三人称の全年齢BLです※