鄒家道士恋物語 憧れていた師兄に溺愛されていました?!~恋の自覚は体から~

オジカヅキ・オボロ

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41 劉紫焔と白寒澤02

「雪游の大きな声が聞こえたけれど、何かあったのかい?」

 扉から「お邪魔するよ」と優しげな声で渢雪が入室してきた。

「渢雪兄さま……すみません」
「私しかいなかったからいいけれど、叔父上がいたら叱られただろうね。気を付けるように」
「はい」

 雪游が大人しく頷いたのを見てから、渢雪は冰淵と紫焔をそれぞれ見つめる。

「それで?」
「…………」

 今度は冰淵がちらりと紫焔を見た。たしかに冰淵が又聞きで言うより、本人から説明してもらったほうが早いと思う。

「……鄒家は頑固が性情か……?」

 ぼやくように言う紫焔は、先ほどから何度溜息を吐いているのだろう。数えようかと思ったが、やめておいた。

「意志が固いと言ってください。それで、劉紫焔どの?」

 いつものやわらかな微笑みは、引くことを知らない。人によっては頑固と言うだろうし、別の人にとっては押しが強いと言うかもしれない。雪游は渢雪兄さまはいつも優しく微笑んでくださるなあ、と思うだけなのだけれど。
 紫焔は額に手を当てると、肺の奥からの深い溜息を吐き、事情を説明した。どのみち雪游と冰淵が関わるなら遅かれ早かれ渢雪に説明をせねばならないのだから、手間が省けたと思ってほしい。

「なるほど、仔細承知しました。……条件が難しいね。雪游、七日で出来そうかい?」
「七日……」

 今までできなかったことが、たった七日でできるだろうか。

「白寒澤どのは期限を決めておられなかったけれど、早ければ早いほうがいいことなのでしょう、紫焔どの?」
「そうなるな」
「だから七日が程良い期限だろうと思う。もちろんおまえひとりでやることではなく、冰淵も手伝ってくれるだろうからね。心強く臨むといい」

 ねえ冰淵、と話を振られた冰淵は、特に動じるでもなく頷いてくれる。冰淵が手伝ってくれるなら、たしかに心強いと思えた。

「我も面倒を見よう。頼む側だからな、当然だ」
「鄒家の中での固定概念も、紫焔どのは外部の方だから良案が浮かぶかもしれないね。くれぐれもよろしくお願いします」

 微笑みとともに去って行く渢雪を見送った後、紫焔は「はぁ」と感心したような疲れたような声を漏らした。

「八仙家の当主ともなると、あの若さでもなかなか食えなくなるもんだな」
「渢雪兄さまは優しい方だけど?」
「……おまえはせめて家の外では人を疑うことを覚えろよ」
「兄さまたちのことを疑ってどうするんだよ」
「おまえのは盲目というやつだ」
「失礼だな」

 笑う紫焔に突っかかろうとすると、冰淵が間に入って止められてしまう。宥めてくれているのか、頭を撫でられた。

「……仲が良くて結構なことだ。じゃあ小僧、動きやすい格好に着替えろ。早速修行を始めるぞ」
「早速……」

 けれどこれは残り時間を考えれば当然か。気を引き締めて頷く。

「どうにかなるまで、朝食後、昼食後は夕食後まで、みっちり特訓だ」
「わかった」

 それでどうにかなるのかも五分五分なのだろうが、せっかく渢雪も公認だ。成長できる機会なのだし、成果はあげたい。冰淵がまた頭を撫でてくれる。

「あまり気負いすぎぬよう」
「はい」

 頷くと、すぐに自分の部屋へ引き上げ、支度を始めた。
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