41 / 48
41 劉紫焔と白寒澤02
「雪游の大きな声が聞こえたけれど、何かあったのかい?」
扉から「お邪魔するよ」と優しげな声で渢雪が入室してきた。
「渢雪兄さま……すみません」
「私しかいなかったからいいけれど、叔父上がいたら叱られただろうね。気を付けるように」
「はい」
雪游が大人しく頷いたのを見てから、渢雪は冰淵と紫焔をそれぞれ見つめる。
「それで?」
「…………」
今度は冰淵がちらりと紫焔を見た。たしかに冰淵が又聞きで言うより、本人から説明してもらったほうが早いと思う。
「……鄒家は頑固が性情か……?」
ぼやくように言う紫焔は、先ほどから何度溜息を吐いているのだろう。数えようかと思ったが、やめておいた。
「意志が固いと言ってください。それで、劉紫焔どの?」
いつものやわらかな微笑みは、引くことを知らない。人によっては頑固と言うだろうし、別の人にとっては押しが強いと言うかもしれない。雪游は渢雪兄さまはいつも優しく微笑んでくださるなあ、と思うだけなのだけれど。
紫焔は額に手を当てると、肺の奥からの深い溜息を吐き、事情を説明した。どのみち雪游と冰淵が関わるなら遅かれ早かれ渢雪に説明をせねばならないのだから、手間が省けたと思ってほしい。
「なるほど、仔細承知しました。……条件が難しいね。雪游、七日で出来そうかい?」
「七日……」
今までできなかったことが、たった七日でできるだろうか。
「白寒澤どのは期限を決めておられなかったけれど、早ければ早いほうがいいことなのでしょう、紫焔どの?」
「そうなるな」
「だから七日が程良い期限だろうと思う。もちろんおまえひとりでやることではなく、冰淵も手伝ってくれるだろうからね。心強く臨むといい」
ねえ冰淵、と話を振られた冰淵は、特に動じるでもなく頷いてくれる。冰淵が手伝ってくれるなら、たしかに心強いと思えた。
「我も面倒を見よう。頼む側だからな、当然だ」
「鄒家の中での固定概念も、紫焔どのは外部の方だから良案が浮かぶかもしれないね。くれぐれもよろしくお願いします」
微笑みとともに去って行く渢雪を見送った後、紫焔は「はぁ」と感心したような疲れたような声を漏らした。
「八仙家の当主ともなると、あの若さでもなかなか食えなくなるもんだな」
「渢雪兄さまは優しい方だけど?」
「……おまえはせめて家の外では人を疑うことを覚えろよ」
「兄さまたちのことを疑ってどうするんだよ」
「おまえのは盲目というやつだ」
「失礼だな」
笑う紫焔に突っかかろうとすると、冰淵が間に入って止められてしまう。宥めてくれているのか、頭を撫でられた。
「……仲が良くて結構なことだ。じゃあ小僧、動きやすい格好に着替えろ。早速修行を始めるぞ」
「早速……」
けれどこれは残り時間を考えれば当然か。気を引き締めて頷く。
「どうにかなるまで、朝食後、昼食後は夕食後まで、みっちり特訓だ」
「わかった」
それでどうにかなるのかも五分五分なのだろうが、せっかく渢雪も公認だ。成長できる機会なのだし、成果はあげたい。冰淵がまた頭を撫でてくれる。
「あまり気負いすぎぬよう」
「はい」
頷くと、すぐに自分の部屋へ引き上げ、支度を始めた。
扉から「お邪魔するよ」と優しげな声で渢雪が入室してきた。
「渢雪兄さま……すみません」
「私しかいなかったからいいけれど、叔父上がいたら叱られただろうね。気を付けるように」
「はい」
雪游が大人しく頷いたのを見てから、渢雪は冰淵と紫焔をそれぞれ見つめる。
「それで?」
「…………」
今度は冰淵がちらりと紫焔を見た。たしかに冰淵が又聞きで言うより、本人から説明してもらったほうが早いと思う。
「……鄒家は頑固が性情か……?」
ぼやくように言う紫焔は、先ほどから何度溜息を吐いているのだろう。数えようかと思ったが、やめておいた。
「意志が固いと言ってください。それで、劉紫焔どの?」
いつものやわらかな微笑みは、引くことを知らない。人によっては頑固と言うだろうし、別の人にとっては押しが強いと言うかもしれない。雪游は渢雪兄さまはいつも優しく微笑んでくださるなあ、と思うだけなのだけれど。
紫焔は額に手を当てると、肺の奥からの深い溜息を吐き、事情を説明した。どのみち雪游と冰淵が関わるなら遅かれ早かれ渢雪に説明をせねばならないのだから、手間が省けたと思ってほしい。
「なるほど、仔細承知しました。……条件が難しいね。雪游、七日で出来そうかい?」
「七日……」
今までできなかったことが、たった七日でできるだろうか。
「白寒澤どのは期限を決めておられなかったけれど、早ければ早いほうがいいことなのでしょう、紫焔どの?」
「そうなるな」
「だから七日が程良い期限だろうと思う。もちろんおまえひとりでやることではなく、冰淵も手伝ってくれるだろうからね。心強く臨むといい」
ねえ冰淵、と話を振られた冰淵は、特に動じるでもなく頷いてくれる。冰淵が手伝ってくれるなら、たしかに心強いと思えた。
「我も面倒を見よう。頼む側だからな、当然だ」
「鄒家の中での固定概念も、紫焔どのは外部の方だから良案が浮かぶかもしれないね。くれぐれもよろしくお願いします」
微笑みとともに去って行く渢雪を見送った後、紫焔は「はぁ」と感心したような疲れたような声を漏らした。
「八仙家の当主ともなると、あの若さでもなかなか食えなくなるもんだな」
「渢雪兄さまは優しい方だけど?」
「……おまえはせめて家の外では人を疑うことを覚えろよ」
「兄さまたちのことを疑ってどうするんだよ」
「おまえのは盲目というやつだ」
「失礼だな」
笑う紫焔に突っかかろうとすると、冰淵が間に入って止められてしまう。宥めてくれているのか、頭を撫でられた。
「……仲が良くて結構なことだ。じゃあ小僧、動きやすい格好に着替えろ。早速修行を始めるぞ」
「早速……」
けれどこれは残り時間を考えれば当然か。気を引き締めて頷く。
「どうにかなるまで、朝食後、昼食後は夕食後まで、みっちり特訓だ」
「わかった」
それでどうにかなるのかも五分五分なのだろうが、せっかく渢雪も公認だ。成長できる機会なのだし、成果はあげたい。冰淵がまた頭を撫でてくれる。
「あまり気負いすぎぬよう」
「はい」
頷くと、すぐに自分の部屋へ引き上げ、支度を始めた。
あなたにおすすめの小説
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
男同士で番だなんてあってたまるかよ
だいたい石田
BL
石堂徹は、大学の授業中に居眠りをしていた。目覚めたら見知らぬ場所で、隣に寝ていた男にキスをされる。茫然とする徹に男は告げる。「お前は俺の番だ。」と。
――男同士で番だなんてあってたまるかよ!!!
※R描写がメインのお話となります。
この作品は、ムーンライト、ピクシブにて別HNにて投稿しています。
毎日21時に更新されます。8話で完結します。
2019年12月18日追記
カテゴリを「恋愛」から「BL」に変更いたしました。
カテゴリを間違えてすみませんでした。
ご指摘ありがとうございました。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。
俺の幼馴染が陽キャのくせに重すぎる!
佐倉海斗
BL
十七歳の高校三年生の春、少年、葉山葵は恋をしていた。
相手は幼馴染の杉田律だ。
……この恋は障害が多すぎる。
律は高校で一番の人気者だった。その為、今日も律の周りには大勢の生徒が集まっている。人見知りで人混みが苦手な葵は、幼馴染だからとその中に入っていくことができず、友人二人と昨日見たばかりのアニメの話で盛り上がっていた。
※三人称の全年齢BLです※