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47 艶めく夜02
「久しぶりにおまえに触れる」
呟くように冰淵が言う。言われてみればその通りで、雪游の修行が始まってからは一度も触れられていない。体を気遣われたのかもしれないし、修行に集中する時だからだったのかもしれない。
言われてしまうともっと触れられたくなってしまうのは、どういうわけだろう。
「にぃ、……ひょうえん、さま。もっと、触って……」
こういう時には名を呼ぶのだったと思い出す。
けれど、名を呼ぶのは慣れない。まさか呼び捨てするわけにもいかないから『さま』を付けているが、冰淵がやや不満げにしているのは伝わってくる。けれど幼少の頃から成人してもずっと『兄さま』と呼んできたのだから、今さら名前だけで呼ぶのも気恥ずかしかったし、目上の人を呼び捨てする度胸はない。
様子を窺うより先に、手のひらが雪游の体を舐めるような手つきで触れてくる。肌がぞくぞくと震えた。これから先の好意を予感させるようで、羞恥と期待が同時に湧く。知られれば浅ましいと言われてしまうだろうか。
腰から双丘を撫でられれば、窄まったところへ触れられ、一度離れる。その間に息を吐くが、すぐに濡れた指がまたそこをくすぐるように撫でてきた。きっと軟膏だ。痛みを麻痺させる効能もあると知っている。貴重なもののはずだが、こんなことに使っていいのだろうか。けれど冰淵もそれは承知のはずで、その上で使っているのなら問う必要はない。
慣れないからまだ緊張してしまうが、冰淵の手のひらは肩から首筋、それから頬を撫で、くちびるに吸い付かれる。
「っ、ン……」
口中を余すことなく舐めるような、食べ尽くすような口付けに酔う間、指は雪游の後孔をゆっくりとほぐしていく。冰淵の長い指が自分のナカに入り、掻き回し、広げていくのは背徳的な悦びをもたらした。
鄒家の外でも内でも聖人君子とも評される冰淵が、まさか弟弟子を相手にこんなことをしているなんて、誰が思いつくだろう。
そうして何本か入った指が、ナカで感じるところを撫でてくると、もうダメだ。あられもない声をひっきりなしに上げ、冰淵の衣にしがみついてしまう。
蕩けたところで冰淵の熱を受け入れるのは、念入りに下ごしらえされた後で食べられるのに似ていると思う。ゆっくり挿入されるのもそうだ。
「あ……ぁあ……ッ」
後ろから、腰を抱かれて高い位置から挿入されるのは、獣のまぐわいに近い。体を支える肘はとうに崩れていて、寝台の敷栲に爪を立てる。
脚を開かされて、繋がったところも割り開かれてナカを突かれると、深いところまで入っていく感覚におかしくなりそうだった。
「ッぁ、ア、っ……ひょ、えん、さまぁ……もお……ッ」
体中に回った熱を吐き出したくて、後ろを振り返る。言葉が続けられなかったのは、冰淵が獣のような顔をしていたからだ。
――初めて、見る。
そんな顔で熱を穿っていたのかと思うと、それだけで興奮し、達してしまいそうになる。
懼れる気持ちもあるのに、食べられてしまうかもしれないことへの興奮もして、穿たれた熱をつい締め付けてしまった。冰淵の動きが一瞬止まったが、腰を掴まれてより深くへと熱を突き入れられる。腰が震えてしまったのはどうしようもない。
止めてほしいのにもっと欲しくて、貪欲に悦楽へ堕ち、快楽に溺れてしまう。怖くもあるのにもっと欲しい。
「アッあ、あ、もぉ、……ッ」
「ふ、っ……出して……」
声に誘われるように体の中の熱が一気に高まる。
「ッあ、あ、アッ、ぁアッ……!」
突き上げられるたびに漏れる声は抑えきれず、一際高い声を上げると熱を放出した。まだ甘く声を上げ続けてしまうのは、冰淵がなおも動きを止めてくれないから。
「アッ、ん、ぁ……おかしく、なっちゃう……ッ」
「すまない、――足りない」
好きな人の欲は止められないし、止めたくない。
それでも過剰な快楽を身に受けて逃げそうになる体を押し留めるのは難しい。けれど好きな人のすることだから、嫌とも止めてとも言えないし言いたくない。
そうして体がまた熱を溜めた頃、ナカで冰淵の熱を受け止めて、雪游もまた冰淵の手で熱を吐き出す。
「は……っは、ン……」
呼吸はなかなか整わず、涼しい房室のはずなのに肌が汗ばむほどしっとりしている。繋がりが解かれると、敷布の冷えたところを求めて体を横たえた。すぐに冰淵に抱きしめられる。
日頃はひんやりした冰淵もこの時ばかりは熱くなっているが、不思議と不快感はない。自分からも冰淵に抱きつき、密着する。
「……きもちいい……」
うっとりとした声が、感じたままに漏れた。腕の中で甘えるようにくっついていると、冰淵から頭を撫でられて額に口付けられる。
肩や背中を撫でてくれるのには意図があるだろうか。
ちらりと見上げれば、ジッと見つめられてから触れるだけの口付けをされる。
「冰淵さま?」
呼ぶと、一度視線を外され、それから長い溜息を吐かれてしまった。
何かあるのだろうか。
不安に思っていると、今度は先ほどより強い力で抱きしめられる。反射的に、そっと抱きしめ返した。
「すまない。雪游の体を気遣いたくもあるのだが……もう少し、触れたい」
頬を撫でてくれる様子は気遣わしくはある。けれど要求はそれとは真逆のもの。普段の清らかな冰淵を見て、誰がこんな要求をすると思うだろう。
だから、自分の体を顧みる気はなくなってしまった。
「……うん。いいよ」
頷くと、今度は自分から冰淵に口付けをした。
呟くように冰淵が言う。言われてみればその通りで、雪游の修行が始まってからは一度も触れられていない。体を気遣われたのかもしれないし、修行に集中する時だからだったのかもしれない。
言われてしまうともっと触れられたくなってしまうのは、どういうわけだろう。
「にぃ、……ひょうえん、さま。もっと、触って……」
こういう時には名を呼ぶのだったと思い出す。
けれど、名を呼ぶのは慣れない。まさか呼び捨てするわけにもいかないから『さま』を付けているが、冰淵がやや不満げにしているのは伝わってくる。けれど幼少の頃から成人してもずっと『兄さま』と呼んできたのだから、今さら名前だけで呼ぶのも気恥ずかしかったし、目上の人を呼び捨てする度胸はない。
様子を窺うより先に、手のひらが雪游の体を舐めるような手つきで触れてくる。肌がぞくぞくと震えた。これから先の好意を予感させるようで、羞恥と期待が同時に湧く。知られれば浅ましいと言われてしまうだろうか。
腰から双丘を撫でられれば、窄まったところへ触れられ、一度離れる。その間に息を吐くが、すぐに濡れた指がまたそこをくすぐるように撫でてきた。きっと軟膏だ。痛みを麻痺させる効能もあると知っている。貴重なもののはずだが、こんなことに使っていいのだろうか。けれど冰淵もそれは承知のはずで、その上で使っているのなら問う必要はない。
慣れないからまだ緊張してしまうが、冰淵の手のひらは肩から首筋、それから頬を撫で、くちびるに吸い付かれる。
「っ、ン……」
口中を余すことなく舐めるような、食べ尽くすような口付けに酔う間、指は雪游の後孔をゆっくりとほぐしていく。冰淵の長い指が自分のナカに入り、掻き回し、広げていくのは背徳的な悦びをもたらした。
鄒家の外でも内でも聖人君子とも評される冰淵が、まさか弟弟子を相手にこんなことをしているなんて、誰が思いつくだろう。
そうして何本か入った指が、ナカで感じるところを撫でてくると、もうダメだ。あられもない声をひっきりなしに上げ、冰淵の衣にしがみついてしまう。
蕩けたところで冰淵の熱を受け入れるのは、念入りに下ごしらえされた後で食べられるのに似ていると思う。ゆっくり挿入されるのもそうだ。
「あ……ぁあ……ッ」
後ろから、腰を抱かれて高い位置から挿入されるのは、獣のまぐわいに近い。体を支える肘はとうに崩れていて、寝台の敷栲に爪を立てる。
脚を開かされて、繋がったところも割り開かれてナカを突かれると、深いところまで入っていく感覚におかしくなりそうだった。
「ッぁ、ア、っ……ひょ、えん、さまぁ……もお……ッ」
体中に回った熱を吐き出したくて、後ろを振り返る。言葉が続けられなかったのは、冰淵が獣のような顔をしていたからだ。
――初めて、見る。
そんな顔で熱を穿っていたのかと思うと、それだけで興奮し、達してしまいそうになる。
懼れる気持ちもあるのに、食べられてしまうかもしれないことへの興奮もして、穿たれた熱をつい締め付けてしまった。冰淵の動きが一瞬止まったが、腰を掴まれてより深くへと熱を突き入れられる。腰が震えてしまったのはどうしようもない。
止めてほしいのにもっと欲しくて、貪欲に悦楽へ堕ち、快楽に溺れてしまう。怖くもあるのにもっと欲しい。
「アッあ、あ、もぉ、……ッ」
「ふ、っ……出して……」
声に誘われるように体の中の熱が一気に高まる。
「ッあ、あ、アッ、ぁアッ……!」
突き上げられるたびに漏れる声は抑えきれず、一際高い声を上げると熱を放出した。まだ甘く声を上げ続けてしまうのは、冰淵がなおも動きを止めてくれないから。
「アッ、ん、ぁ……おかしく、なっちゃう……ッ」
「すまない、――足りない」
好きな人の欲は止められないし、止めたくない。
それでも過剰な快楽を身に受けて逃げそうになる体を押し留めるのは難しい。けれど好きな人のすることだから、嫌とも止めてとも言えないし言いたくない。
そうして体がまた熱を溜めた頃、ナカで冰淵の熱を受け止めて、雪游もまた冰淵の手で熱を吐き出す。
「は……っは、ン……」
呼吸はなかなか整わず、涼しい房室のはずなのに肌が汗ばむほどしっとりしている。繋がりが解かれると、敷布の冷えたところを求めて体を横たえた。すぐに冰淵に抱きしめられる。
日頃はひんやりした冰淵もこの時ばかりは熱くなっているが、不思議と不快感はない。自分からも冰淵に抱きつき、密着する。
「……きもちいい……」
うっとりとした声が、感じたままに漏れた。腕の中で甘えるようにくっついていると、冰淵から頭を撫でられて額に口付けられる。
肩や背中を撫でてくれるのには意図があるだろうか。
ちらりと見上げれば、ジッと見つめられてから触れるだけの口付けをされる。
「冰淵さま?」
呼ぶと、一度視線を外され、それから長い溜息を吐かれてしまった。
何かあるのだろうか。
不安に思っていると、今度は先ほどより強い力で抱きしめられる。反射的に、そっと抱きしめ返した。
「すまない。雪游の体を気遣いたくもあるのだが……もう少し、触れたい」
頬を撫でてくれる様子は気遣わしくはある。けれど要求はそれとは真逆のもの。普段の清らかな冰淵を見て、誰がこんな要求をすると思うだろう。
だから、自分の体を顧みる気はなくなってしまった。
「……うん。いいよ」
頷くと、今度は自分から冰淵に口付けをした。
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