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09 怪異に遭おう9
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飯盒やテントなどはそのままにし、ひとまず貴重品のリュックや荷物だけを手に取ると、また真岡を先頭に、今度は走り出した。
それに合わせるかのように、何かの気配も近付いてくるスピードを上げてくる。
「真岡さん!」
瀧が声をかけるが、真岡もこういうことに勘がいい。もうわかっているらしかった。シロも行ってくれたはず。
「ほら――、だから言っただろ、余計なことするなって!」
真岡を見失わないように三人が続く。木々や背の高い雑草が行く手を阻むように生えているが、今はそれらを気にかけている場合ではない。
「西山センパイほんと迂闊ですね!」
「嶋田ァ、さっき介抱した恩を忘れやがって……!」
「いいから脚動かしてください!」
四人は山道を、できるだけ全速力で駆けていた。実際のところは木立や雑草が生い茂っているから身軽に、というわけにはいかなかったのだが、全員の気持ちとしては全力だ。
先ほどの怪異よりまずいと思うのは、気配の強さもあるが、気配に凶暴さを感じるところだ。
(こんなところで怪異に掴まったって、せいぜい地方紙かよくて全国紙の端っこにニュースが載るくらいだ!)
それぞれの親は嘆くかもしれないが、怒るほうが先かもしれない。さすがに親より早く逝く不孝はしたくない。
西山は大きなリュックを木の幹にぶつけながらも走る足を止めない。
「普通の山彦だと思ったんだもん!」
「このへんは怪異が多いって言っただろ! 返って来た声、完っ全にヤバかったじゃないか! キャンプ場が閉鎖された理由だってちょっと思い当たってただろう」
「うぐ……反論できない……」
「まったく……おまえ、無事に帰ったらD定食な」
「あっ、じゃあぼくはB定食で」
「オレC定食」
言った後で、はたと真面目な顔で嶋田が真岡を見た。
「でも真岡センパイ、西山センパイだけ無事じゃない可能性も……」
「その時は花を手向けてやろうな……」
「はい……」
「走りながらしんみりした空気を出すな!」
「あっ、そろそろ駐車場……」
真岡がズボンのポケットから鍵を取り出し、走る速度を落とそうとした。
その瞬間だ。
ドォンと腹に響く轟音が鳴り、目の前で火柱が上がった。
燃えているのは車だ。
「お……俺の愛車……」
「……荷物は持ってたから良いとしても、車……」
「ぼんやりしてる場合じゃないですよ! 真岡さん、西山さん、逃げないと!」
「そうですよ! 追い付かれたらどうなるか……せめて走りましょ!」
瀧と嶋田が焦りつつふたりを急かした時、すぐ近くで「ケーン!」と鳴き声が聞こえた。
「な、なんですかなんですか今度はなんですか」
「落ち着け嶋田、あれはシロだ」
「えっ」
「シロ! オレはここ!」
すぐに姿を見せたシロが足許に絡みつく。時計を見る余裕もなかったが、シロは自分の務めを果たしてくれていたということか。
「あれ、シロが来たってことは……」
もしかして誰かが助けに、と言いかけたところで石が踏まれた音がした。そちらを振り返ると、見覚えのある長身の美形が瀧たちを見ている。装いは先ほどの着流しと変わり、古風な漢服だ。
妙に既視感がある。
(なんだろう……知ってるヒトじゃないのは間違いないけど……授業で漢服見たからかな)
そして不思議なことだが、彼が姿を見せた途端、ざわついていた空気がぴたりと収まった。後を追いかけてくる気配も消えてしまったようだ。車の火も収まった。
というのも、彼が自身の纏う空気を一変させたからだ。清浄な『気』が、あたりをなぎ払うように広がった。そのお陰だ。
それに合わせるかのように、何かの気配も近付いてくるスピードを上げてくる。
「真岡さん!」
瀧が声をかけるが、真岡もこういうことに勘がいい。もうわかっているらしかった。シロも行ってくれたはず。
「ほら――、だから言っただろ、余計なことするなって!」
真岡を見失わないように三人が続く。木々や背の高い雑草が行く手を阻むように生えているが、今はそれらを気にかけている場合ではない。
「西山センパイほんと迂闊ですね!」
「嶋田ァ、さっき介抱した恩を忘れやがって……!」
「いいから脚動かしてください!」
四人は山道を、できるだけ全速力で駆けていた。実際のところは木立や雑草が生い茂っているから身軽に、というわけにはいかなかったのだが、全員の気持ちとしては全力だ。
先ほどの怪異よりまずいと思うのは、気配の強さもあるが、気配に凶暴さを感じるところだ。
(こんなところで怪異に掴まったって、せいぜい地方紙かよくて全国紙の端っこにニュースが載るくらいだ!)
それぞれの親は嘆くかもしれないが、怒るほうが先かもしれない。さすがに親より早く逝く不孝はしたくない。
西山は大きなリュックを木の幹にぶつけながらも走る足を止めない。
「普通の山彦だと思ったんだもん!」
「このへんは怪異が多いって言っただろ! 返って来た声、完っ全にヤバかったじゃないか! キャンプ場が閉鎖された理由だってちょっと思い当たってただろう」
「うぐ……反論できない……」
「まったく……おまえ、無事に帰ったらD定食な」
「あっ、じゃあぼくはB定食で」
「オレC定食」
言った後で、はたと真面目な顔で嶋田が真岡を見た。
「でも真岡センパイ、西山センパイだけ無事じゃない可能性も……」
「その時は花を手向けてやろうな……」
「はい……」
「走りながらしんみりした空気を出すな!」
「あっ、そろそろ駐車場……」
真岡がズボンのポケットから鍵を取り出し、走る速度を落とそうとした。
その瞬間だ。
ドォンと腹に響く轟音が鳴り、目の前で火柱が上がった。
燃えているのは車だ。
「お……俺の愛車……」
「……荷物は持ってたから良いとしても、車……」
「ぼんやりしてる場合じゃないですよ! 真岡さん、西山さん、逃げないと!」
「そうですよ! 追い付かれたらどうなるか……せめて走りましょ!」
瀧と嶋田が焦りつつふたりを急かした時、すぐ近くで「ケーン!」と鳴き声が聞こえた。
「な、なんですかなんですか今度はなんですか」
「落ち着け嶋田、あれはシロだ」
「えっ」
「シロ! オレはここ!」
すぐに姿を見せたシロが足許に絡みつく。時計を見る余裕もなかったが、シロは自分の務めを果たしてくれていたということか。
「あれ、シロが来たってことは……」
もしかして誰かが助けに、と言いかけたところで石が踏まれた音がした。そちらを振り返ると、見覚えのある長身の美形が瀧たちを見ている。装いは先ほどの着流しと変わり、古風な漢服だ。
妙に既視感がある。
(なんだろう……知ってるヒトじゃないのは間違いないけど……授業で漢服見たからかな)
そして不思議なことだが、彼が姿を見せた途端、ざわついていた空気がぴたりと収まった。後を追いかけてくる気配も消えてしまったようだ。車の火も収まった。
というのも、彼が自身の纏う空気を一変させたからだ。清浄な『気』が、あたりをなぎ払うように広がった。そのお陰だ。
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