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41 記憶1
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やけに空腹で目が覚めた。
「ん……ん?」
ベッドに寝かされていたらしい。すぐに自分がどこにいるのかわからなかった。
「あー……そっか、途中で気絶しちゃったんだ……」
つまり梓玥がここまで運んで寝かせてくれたということだろう。後で礼を言わなければ、と思って背伸びをすると、体のあちこちが悲鳴を上げるようにばきばきと音がした。枕とクッションを背もたれに、上体を起こす。
「起きた?」
「あれっ?!」
声のほうを振り向く。
気付かなかったが、梓玥が部屋にいたらしい。すぐにベッドサイドへやってきて、瀧の顔を見るとホッとした顔になる。
「梓玥さん……」
「お腹、空いているだろう。食事を持ってくるから」
「オレ、どれくらい気を失ってた?」
どうにも外が暗い気がする。ベランダから飛び降りたのが夜だったのは間違いないし記憶の蓋を開けてもらった時も、朝ではなかった。
まさか一時間か二時間で腹が鳴るということもないはずだ。もしかしたら二十時間くらい寝たままだったのか。
(それってあまりにも寝過ぎじゃないか……?)
だが梓玥からの答えは、そんな予想を上回った。
「丸三日」
「え……っ」
咄嗟に言葉が出ない。
(道理で……お腹がめちゃくちゃ空いてるわけだよ……)
変に納得してしまう。
「待ってて」
「う、うん」
部屋を出て行く梓玥を見送ると、記憶のことについて考える。蓋を開けてもらったから、夢で見た事象は自分の体験として覚えているということ。けれど夢と混ざっているようにも思う。
(オレが狐のオレを通して追体験したことも、間違いなく『オレの』体験だし記憶なんだろうけど……ちょっと他人事っぽいな。どこまで思い出したのかもわからないし)
多分これは質問されて答えるほうが早いだろうなと思う。ひとりでいた時のことは、変わり映えがなさすぎて思い出す必要を感じない。
(後で梓玥さんに協力してもらうことにしよう。夢で見ていないことも聞かれれば、間違いなく自分の、狐の頃の記憶だな)
そうして、以前危惧したような――狐の自分になってしまった、というような感覚がないことに気付く。大学の記憶もオカ研で体験したフィールドワークの記憶も消えていない。そのことについては心の底からホッとした。やはりどこかで自分ではない何者かになるのではないかという恐れはあったから。
(乗っ取られるとか……そういうのじゃないんだな。過去のオレから、今のオレに続いてる……みたいな感じだ。それを思うと、やっぱり狐のオレもオレなんだな)
だから他の誰かになるわけじゃないし、記憶が上書きされるわけでもない。
納得していると、軽いノックの後でドアが開く。
「どうした?」
梓玥は盆を持って戻ってきた。
盆ごと雑炊を受け取る。温かそうな湯気をたてているのは、雑炊らしい。卵や葱だけではなく、大根や白菜、人参、鶏肉まで入っている。米も具も全部くたくたに煮込まれていて、胃に優しそうだ。極端に腹の減っている今はありがたい。
いただきますと匙で掬った米を吹き冷まして一口食べる。出汁の味が良く出ていて美味しい。
「ん……いや、ちゃんと記憶が全部オレのものになった実感がないから、きっと梓玥さんに質問してもらって答えるのがいいのかなって」
「……食べてからにしよう」
「うん」
温かさが胃によく沁みる。
(身分のある方に作らせていいのかは、やっぱり悩むけど)
けれど本人が瀧にやらせてくれないし、今に関しては仕方がないと言い訳が通ると思いたい。
やけに空腹で目が覚めた。
「ん……ん?」
ベッドに寝かされていたらしい。すぐに自分がどこにいるのかわからなかった。
「あー……そっか、途中で気絶しちゃったんだ……」
つまり梓玥がここまで運んで寝かせてくれたということだろう。後で礼を言わなければ、と思って背伸びをすると、体のあちこちが悲鳴を上げるようにばきばきと音がした。枕とクッションを背もたれに、上体を起こす。
「起きた?」
「あれっ?!」
声のほうを振り向く。
気付かなかったが、梓玥が部屋にいたらしい。すぐにベッドサイドへやってきて、瀧の顔を見るとホッとした顔になる。
「梓玥さん……」
「お腹、空いているだろう。食事を持ってくるから」
「オレ、どれくらい気を失ってた?」
どうにも外が暗い気がする。ベランダから飛び降りたのが夜だったのは間違いないし記憶の蓋を開けてもらった時も、朝ではなかった。
まさか一時間か二時間で腹が鳴るということもないはずだ。もしかしたら二十時間くらい寝たままだったのか。
(それってあまりにも寝過ぎじゃないか……?)
だが梓玥からの答えは、そんな予想を上回った。
「丸三日」
「え……っ」
咄嗟に言葉が出ない。
(道理で……お腹がめちゃくちゃ空いてるわけだよ……)
変に納得してしまう。
「待ってて」
「う、うん」
部屋を出て行く梓玥を見送ると、記憶のことについて考える。蓋を開けてもらったから、夢で見た事象は自分の体験として覚えているということ。けれど夢と混ざっているようにも思う。
(オレが狐のオレを通して追体験したことも、間違いなく『オレの』体験だし記憶なんだろうけど……ちょっと他人事っぽいな。どこまで思い出したのかもわからないし)
多分これは質問されて答えるほうが早いだろうなと思う。ひとりでいた時のことは、変わり映えがなさすぎて思い出す必要を感じない。
(後で梓玥さんに協力してもらうことにしよう。夢で見ていないことも聞かれれば、間違いなく自分の、狐の頃の記憶だな)
そうして、以前危惧したような――狐の自分になってしまった、というような感覚がないことに気付く。大学の記憶もオカ研で体験したフィールドワークの記憶も消えていない。そのことについては心の底からホッとした。やはりどこかで自分ではない何者かになるのではないかという恐れはあったから。
(乗っ取られるとか……そういうのじゃないんだな。過去のオレから、今のオレに続いてる……みたいな感じだ。それを思うと、やっぱり狐のオレもオレなんだな)
だから他の誰かになるわけじゃないし、記憶が上書きされるわけでもない。
納得していると、軽いノックの後でドアが開く。
「どうした?」
梓玥は盆を持って戻ってきた。
盆ごと雑炊を受け取る。温かそうな湯気をたてているのは、雑炊らしい。卵や葱だけではなく、大根や白菜、人参、鶏肉まで入っている。米も具も全部くたくたに煮込まれていて、胃に優しそうだ。極端に腹の減っている今はありがたい。
いただきますと匙で掬った米を吹き冷まして一口食べる。出汁の味が良く出ていて美味しい。
「ん……いや、ちゃんと記憶が全部オレのものになった実感がないから、きっと梓玥さんに質問してもらって答えるのがいいのかなって」
「……食べてからにしよう」
「うん」
温かさが胃によく沁みる。
(身分のある方に作らせていいのかは、やっぱり悩むけど)
けれど本人が瀧にやらせてくれないし、今に関しては仕方がないと言い訳が通ると思いたい。
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