最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

メイン君

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第二章 

第39話「常識を燃やし尽くせ」

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 俺はハンズ、この街ベルーナの冒険者だ。
 今、街に危機が迫っている。

 いや……、リルさんとシュンという英雄が守ってるこの街にとっては、危機でも何でもないのかもしれない。

 俺たち冒険者と騎士団や兵士たちは、街の門の前に展開している。
 これから大型ワームを迎撃するところだ。

 街の監視魔法に反応があったため、緊急招集された。
 街の一定距離にAランク以上の強さの魔物が近づくと反応するしろものだ。

 地平線の方から、巨大なワーム系の魔物が街に向かって来ている。
 砂塵さじんを巻き上げこっちに向かってくる大型魔物に、待ち構えている騎士団や冒険者たちも緊張した面持ちだ。

 リルさんは後ろの方にいて、俺からは少し離れている。
 シュンが見当たらないけど、きっとどこかにいるのだろう。

 シュンが、俺とモニカをグレートボアから守ってくれたのは記憶に新しい。
 リルさんとシュンには感謝してもしきれない。

 近くにいるモニカをチラリと見る。
 
 この防衛戦が終わったら……、モニカに告白するんだ……。

 俺は言葉に出さず、胸の内で誓った。

「無茶はしないでね」

 モニカの優しい言葉に、俺は無茶をしてでもモニカを守ることを誓う。

 覚悟を決めてると、グレゴリー騎士団長が隣のローブを着た初老の男と会話しているのが聞こえてきた。
 俺の少し前に二人がいる。
 近くのため会話の内容が聞き取れた。

「わしがこの街に来ていて、お前たちは幸運じゃのう」

「はっ、王国内でも五本の指に入ると言われている、“大魔導士”ユンクル様に力を貸していただくことができ、心強いかぎりです」

 騎士団長がユンクルという魔導士にへりくだっている。
 俺も名前を聞いたことがある有名な魔導士だ。
 ちょうどたまたま王都から用があってこの街に来ていたそうだ。

「ふん、五本と言わずわしが一番だが、この機会に我が魔導をとくと拝むといい。準備は良いなお前たち!」

「「はい」」

 ユンクルの言葉に、付き従ってるローブ姿の数人が返事をする。
 弟子だろうか?

 偉そうな奴だけど、街を守ってくれるなら力を借りたい。
 それは騎士団長はじめ共通の思いだろう。

「ドラゴンすら足を止める我が魔法の真髄しんずいを見せてくれようではないか! 街の・・英雄とやらがいるらしいが、出番は回ってこんぞ! くわっはっは!!」

 ユンクルが気持ち良さそうに語るのが聞こえる。
 倒すのではなく足を止めるというところに、そこはかとなく不安を感じる。

 俺が尊敬してるシュンなら、ドラゴンも倒しちゃいそうなんだよな。
 あの小さな体では無理だとは思うんだけど、何でかね……。





 大型ワームが弓の射程まであと少しというところに差しかかる。

 騎士団長が片手を上げ号令をかける。

「我らには、英雄と、かの大魔導士がついている! 勝利は間違いない! 弓矢っ! 放てーー!!!」

 まずは弓矢の一斉射撃だ。
 数百本の矢の雨がワームに降り注ぐ。

 どうだ?

 大型魔物だろうとただではすまないと、誰もが思ったことだろう。

 ところが、矢のほとんどが何かに弾かれたようにワームをそれていく。

 風の斬撃?
 目に見えない何かが矢を払いのけたように見えた。
 我らが英雄シュンの攻撃をほうふつさせる。

 いくらかの矢はワームの体の部分に当たったけど、全く効いていないようだ。
 あいつを倒すのは相当骨が折れそうだな。

「わしの出番だな。
 ――――ほむらよ――――燃やし尽くせ。
 ファイアボール!!」

 大魔導士ユンクルが一歩前に出る。
 魔法の詠唱をして、ファイアボールを放った。

 火魔法の一つで火の玉を敵に向かって飛ばす魔法だ。
 けど、その規模は俺が知ってるファイアボールよりはるかに大きく、馬車を飲み込めるくらいの大きさがある。
 一般的に知られているファイアボールは両手を広げたくらいの大きさだ。

 さすがは大魔導士と呼ばれるだけある。
 口だけじいさんではなかったようだ。

 ワームまでの距離もまだかなりあるけど、ファイアボールはグングンとその距離をつめていく。

 みんなの視線がファイアボールに集まっている。

 ファイアボールがワームに届くかと思われたその時、ワームの前に土の壁が出現した。
 火の玉は土の壁にあたり轟音ごうおんを発して爆発した。

 視界が開けるとそこには土の壁が残っていた。
 ファイアボールが防がれたのか?。

「なっ!? クレイウォールだと! わしの魔法を止めるとはワーム系でも上位種のようだのう……」

 ユンクルの言葉を聞いた感じだと、魔法で魔法を防いだということのようだ。
 魔法合戦ということか。
 魔法の規模がなかなかお目にかかれないレベルだ。

 しかし、大魔導士の魔法を魔法で防ぐとは、あのワーム……ただものではないな。

 これは接近されたら俺たちでは歯が立たないだろうな。
 リルさんやシュンだったらどう戦うのだろうか……。

 土の壁が崩れ、その向こう側からワームがこっちに近づいてくる。

 ユンクルは落ち着いた様子で語りだす。

「ふむ、どうやらわしの本気が見たいらしいのう。
 魔導に身をささげて六十年……、
 誰しもが不可能と諦めた魔法の合成。
 わしの奥義を見せてくれよう……」

 ユンクルの語りを聞くに、凄い魔法を使うつもりのようだ。
 ユンクルは続ける。

「いくぞ! 弟子たちよ!!
 ファイアストームの準備をしろ!」

「「はい!」」

 ユンクルと弟子たちがそれぞれ魔法の詠唱を始める。

 ユンクルの手には炎が渦巻く。
 弟子たちの周囲には風が吹き荒れている。

 その間にもワームが近づいてくる。

 その時、後ろの方からリルさんの声が聞こえた気がした。

「あっ! 前から――く――――だよ」

 ただ、炎と風の音でリルさんが何と言っているのか聞き取れない。

 ユンクルの手の火魔法と、弟子たちが数人がかりで生み出した風の魔法。
 それらがユンクルの手によって合わせられていく。

「古き伝承には語られていながら……、
 誰もが為せなかった魔法の合成!
 わしの魔力操作ゆえ可能となった……、
 これぞ歴史に埋もれた絶技!
 その威力は掛け合わせた魔法の数倍に達する。
 くらえ、哀れな魔物よ!
 魂までも灰燼かいじんに帰せ!
 ――――ファイアストーム!!」

 歳を感じさせない覇気を持って放たれた合成魔法。

 語り口に恥じない高威力の大魔法がワームに向かって放たれた。
 炎の竜巻が凄まじい音と熱を発している。
 その炎の竜巻はワームを飲み込まんと飛んでいく。

「あれ!?」

 近づいてくるワームを見て俺は間抜けな声を出してしまった。
 俺は斥候職をやってるだけあって普通の人たちよりも目は良いほうだ。

 ワームの先端に見えるのって……。

 シュンのような……。

 間違いない。
 シュンにファイアストームが向かってるよ!?

「ちょっ、ヤバい!?」

 俺は焦るが、今の状況で俺にできることはない。
 炎の竜巻は止まらない。


 けど、英雄には要らぬ心配だったようだ。

 まだまだ声が届くには遠いけど、なぜか俺には聞こえた気がした。

『クルニャーン!』と――。

 そして、シュンの方からも炎の竜巻が放たれた。
 それは、ユンクルが放ったファイアストームの数倍の大きさだった。

 シュンの放った炎はまるで意思を持ってるかのように、ユンクルの魔法を飲み込んだ。
 荒れ狂う炎ながら、俺はそれを綺麗だと思った。
 まるで神話の火神のようだと見とれた。

 神話の火神――炎の竜巻はそのまま空の彼方に飛んでいった。

「ば、馬鹿な……。
 何だあれは!?
 あれは人が勝てる存在ではない……」

 ユンクルが膝をついて愕然がくぜんとしている。

 おそらく今の魔法が正真正銘の全力だったのだろう。
 それを同じ系統の魔法で、しかも数倍の威力で容易たやすく返されれば心も折れるよな。

 大魔導士がやぶれて、ショックのあまり固まっている騎士や冒険者が多い。
 まだシュンと気づいてる人は少ないだろうしね。
 リルさんは、さっきの声からして気づいているのだろう。

 今、俺のやるべきことは一つだ。

 俺は大声で叫び、騎士団長に伝える。
 あれは我らが英雄だということを――――。
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