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第二章
第46話「やっぱり家が一番だね」
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俺たちは今、グリフォンの背に乗って街に向かってるところだ。
我が家に帰るために、空を進んでいる。
黄金の木の実が一つしかなく、俺は自分の呪いを解くことができなかったけど、結果的には悪くなかったと思っている。
……
…………
黄金の木の実を見つけた後、俺たちはディーンの村に寄った。
グリフォンを連れて戻ったから驚かれたけど、ディーンが叫んで伝えたことで、すぐに俺たちだと分かってもらえた。
その後すぐ、ディーンの母親に輝く林檎を食べさせることになった。
みなが見守る中、まずは半分を食べさせた。
半分で治るようなら、俺も食べることができるからだ。
けど、そんなに上手くいくはずもなく、半分では石化の症状が改善しなかった。
そこで、残り半分を食べさせたところ無事に石化が解けていった。
言い伝え通り林檎一個分食べさせないと駄目だった。
俺の分の林檎は無いけど、ディーンが泣くほど喜んでいたから、俺は素直に嬉しい気持ちになった。
理不尽に抗おうとする少年が、理不尽をくつがえすことができた。
その結果だけで俺は結構満足だ。
そうこうしているうちに暗くなったので、村に一泊して朝になってから帰ることにしたんだ。
…………
……
「ガルガルッ(もうすぐ着きますね)」
俺を背に乗せて飛んでいるグーリが、声をかけてきた。
一緒に来れることが嬉しいのか、いくぶん声が弾んでる。
「クルニャー(猫とか街の人とかを攻撃しちゃダメだよ)」
グリフォンの攻撃とか洒落にならない。
こいつらAランクの魔物らしいからね。
あ~、帰ったらグーリたちの羽毛でモフモフさせてくれないかな。
絶対、羽毛布団みたいで気持ちいいよね。
俺、リル、ライミーとそれぞれグリフォンの背に乗り、その周りを残りのグリフォンで囲む陣形。
グリフ・ワルキューレの編隊飛行。
なかなか凄い光景ではなかろうか。
街が見えてくる。
街の外壁の上に、魔導士の爺さんが立っているのが見える。
大魔導士ユンクルだ。
なんかデジャヴが……。
そんなことを考えている時だった。
ユンクルが魔法を放ってきた。
氷の槍がこっちに向かって飛んでくる。
あれ?
またこのパターン?
たしかにグリフォンはAランクの警戒すべき魔物だろうけど……。
またやっちゃった感がひしひしと……。
俺は冷や汗を流しながら、グリフォンたちを確認する。
「ガルルゥ!(この程度の魔法で迎え撃とうなど片腹痛いわ!)」
ちょっとグーリ……?
「ガルー(姫様、我らの魔法で城壁ごと炭にして差し上げましょう)」
グリフォンたちがなにやらやる気を出している。
まずいまずい、こいつらが本気を出したら洒落にならない。
「クルニャーン!(待て待てっ! ここは俺がやるから手を出すな!)」
俺が丁度よい威力で魔法を使うからさ。
リルとライミーはこの前と同じパターンだと分かっているからか、あまり焦っている様子はない。
「ガルゥゥ!(さすがシュン様! みずからの手で愚か者に裁きを与えるのですね!)」
「ガルル!(我らも後に続きます! 街を火の海にしてくれましょう!)」
続かなくていい! 火の海にするな!
こいつらには後でちゃんと話をしておかないとな。
まだ呪いのことも解決してないのに、悩みの種が増えていく……。
俺は飛んできた氷の槍に向かって、“火魔法”と“風魔法”を合わせたファイアストームを放つ。
ユンクルも俺だと気づくだろうし、これで大丈夫なはずだ。
炎の竜巻が氷の槍を飲み込み、彼方に飛んでいく。
「ガルガルッ!(おおっ! あの威力の魔法、やはりわたしたちの時には手加減されてたんですね!)」
なぜかグーリたちが尊敬のまなざしを向けてくる。
あー、また街のみんなへの説明が面倒な予感だよ……。
街の広場に着陸した後、ギルドマスターたちへグリフォンたちのことを分かってもらうために四苦八苦したのだった。
ギルマスのおっちゃんが言うには、国を相手にしても引けをとらない戦力らしい。
大人しくしてるから、見逃してください……。
グーリたちにもよく言っておきます……。
◇
「クルニャーン!(ただいまー!)」
家に帰ってきたよ~。
やっぱり家は落ち着くね。
グーリたちを連れて庭に入る。
俺の声を聞いて、猫たちが集まってくる。
「ニャー!(ボス、おかえりっす!)」
ミケが近づいてきた。
グリフォンたちのことを少し警戒しているようだ。
「クルニャー(今日から一緒に暮らすグリフォンだ。まあ……、大きな猫みたいなものだからさ)」
とりあえずミケたちにグリフォンも一緒に住むことを伝える。
「ガルルゥ(わたしはグーリという。身も心もシュン様のものだ。よろしく)」
グーリよ、なんだその自己紹介は……。
まあ、仲良くしてくれよ。
家からミーナが出てきた。
犬耳がパタパタ動いてて、癒される光景だ。
「おかえり~!」
ミーナが一瞬グーリたちを見てひるんだけど、すぐにいつも通りにもどった。
さすが慣れている……。
「ミーナ、ただいま~」
「…………ただいま」
リルもライミーもリラックスしている感じだ。
「あっ、ちょっと待っててね!」
そう言って、ミーナは家の中に戻っていった。
そしてすぐにまた家から出てきた。
ミーナは手に鍋を持っている。
……なんか凄く嫌な予感がしてきた。
「ミーナ、なにそれ~?」
リルがミーナに問いかける。
「これはね、シュンの呪いが解けた、お祝いのつもりで作った料理よ。リルたちのことだから成功したんでしょ。グリフォンを連れて帰って来るくらいだし」
ミーナは俺が目的を達することができたと思ってるようだ。
この際、それはいい。
俺を祝ってくれる気持ちも嬉しいものだ。
ただ、ミーナの料理と聞いて、嫌な予感が止まらない……。
「それがね、シュンの呪いはまだ解けてないんだ。詳しくはあとで話すね」
リルはミーナに答えながらも、鍋の方をチラチラと見ている。
鍋には蓋がされているが、リルも不穏さを感じてるようだ。
「そうなんだ……、残念だったね。じゃあこの料理はシュンを励ますものになればいいな」
そう言って、ミーナが俺の前に鍋を置いた。
すぐにミーナは蓋をはずす。
んなっ!? なんだこれは……。
鍋の中が黒い。
おどろおどろしいとは、まさにこのこと。
「クルニャッ?(なにこれ?)」
「シュン、お祝いといったらブラックターキーの丸焼きでしょ。今回はブラックターキーを丸ごと煮込んでみたの」
ミーナは、煮込んでみたの、と可愛く教えてくれる。
煮込みか……。
まだ鍋の中がグツグツしている。
すでに具材が骨になって浮いてきている。
マグマにブラックターキーを入れたら、こんな風になるかもしれない。
それに、鍋の中からギィイイィと悲鳴のようなものが聞こえる気がする。
マンドラゴラでも入ってるのかな?
においもなかなかくるものがある。
祝いの料理じゃなくて、完全に呪いの料理だよね?
ミーナにはそんなこと言えないけどさ……。
俺は周囲を見回してみた。
リルは、どうしようか困ってる顔だ。
ライミーは、無表情ながらタラーッと一筋の汗が見える。
ミケたちは腰が引けている。
グーリと目が合う。
「ガルガルッ!(シュン様。わたしが、ぎせ……毒見役うけたまわります!)」
グーリが決死の表情で俺につげてくる。
犠牲から毒見に言い直したけど、それ言い直す意味あまりないよね?
この料理?を前に見せてくれたグーリの忠誠は本物だ。
俺は今後いかなる時でも、グーリの忠誠を疑うことは決してないだろう。
それほどまでに、その勇気は称賛にあたいする。
「クルナー(これは俺が食べる)」
というか、他の人に食べさせたら、命に関わる予感がある。
俺は覚悟して黒い鍋料理を食べ始めた。
口に入れた途端、魂が揺さぶられた気がした。
走馬灯が見えた気がした。
正直、味を感じている余裕なんてなかった。
ジェットコースターに乗りながら料理を味わうことなんてできないのと同じだ。
命の危険を感じて、俺は反射的に自己鑑定を使った。
自分の身に何が起こってるのかを把握する必要があるからだ。
――――――――――――
名前:シュン (強呪い)
――――――――――――
「クルルゥ……(ああ……、もっとモフりたかったな……)」
呪いが強呪いに上書きされているのが見えたところで、俺は意識を失った。
◇
目覚めるとみんなが心配そうに俺を囲んでいた。
俺はどれくらい気を失っていたのだろう。
そういえば、呪いはどうなった?
すぐに自己鑑定をしてみると、名前の横にあった“強呪い”の表示が消えていた。
もしかして……。
すぐにスキル欄を確認すると、そこには「呪い無効」の文字があった。
「クルニャーーン!(呪いが解けたーー!)」
まだ混乱してる頭をスッキリさせるためと、みんなに俺は大丈夫だと伝える意味を込めて、俺は大きく叫んだのだった。
我が家に帰るために、空を進んでいる。
黄金の木の実が一つしかなく、俺は自分の呪いを解くことができなかったけど、結果的には悪くなかったと思っている。
……
…………
黄金の木の実を見つけた後、俺たちはディーンの村に寄った。
グリフォンを連れて戻ったから驚かれたけど、ディーンが叫んで伝えたことで、すぐに俺たちだと分かってもらえた。
その後すぐ、ディーンの母親に輝く林檎を食べさせることになった。
みなが見守る中、まずは半分を食べさせた。
半分で治るようなら、俺も食べることができるからだ。
けど、そんなに上手くいくはずもなく、半分では石化の症状が改善しなかった。
そこで、残り半分を食べさせたところ無事に石化が解けていった。
言い伝え通り林檎一個分食べさせないと駄目だった。
俺の分の林檎は無いけど、ディーンが泣くほど喜んでいたから、俺は素直に嬉しい気持ちになった。
理不尽に抗おうとする少年が、理不尽をくつがえすことができた。
その結果だけで俺は結構満足だ。
そうこうしているうちに暗くなったので、村に一泊して朝になってから帰ることにしたんだ。
…………
……
「ガルガルッ(もうすぐ着きますね)」
俺を背に乗せて飛んでいるグーリが、声をかけてきた。
一緒に来れることが嬉しいのか、いくぶん声が弾んでる。
「クルニャー(猫とか街の人とかを攻撃しちゃダメだよ)」
グリフォンの攻撃とか洒落にならない。
こいつらAランクの魔物らしいからね。
あ~、帰ったらグーリたちの羽毛でモフモフさせてくれないかな。
絶対、羽毛布団みたいで気持ちいいよね。
俺、リル、ライミーとそれぞれグリフォンの背に乗り、その周りを残りのグリフォンで囲む陣形。
グリフ・ワルキューレの編隊飛行。
なかなか凄い光景ではなかろうか。
街が見えてくる。
街の外壁の上に、魔導士の爺さんが立っているのが見える。
大魔導士ユンクルだ。
なんかデジャヴが……。
そんなことを考えている時だった。
ユンクルが魔法を放ってきた。
氷の槍がこっちに向かって飛んでくる。
あれ?
またこのパターン?
たしかにグリフォンはAランクの警戒すべき魔物だろうけど……。
またやっちゃった感がひしひしと……。
俺は冷や汗を流しながら、グリフォンたちを確認する。
「ガルルゥ!(この程度の魔法で迎え撃とうなど片腹痛いわ!)」
ちょっとグーリ……?
「ガルー(姫様、我らの魔法で城壁ごと炭にして差し上げましょう)」
グリフォンたちがなにやらやる気を出している。
まずいまずい、こいつらが本気を出したら洒落にならない。
「クルニャーン!(待て待てっ! ここは俺がやるから手を出すな!)」
俺が丁度よい威力で魔法を使うからさ。
リルとライミーはこの前と同じパターンだと分かっているからか、あまり焦っている様子はない。
「ガルゥゥ!(さすがシュン様! みずからの手で愚か者に裁きを与えるのですね!)」
「ガルル!(我らも後に続きます! 街を火の海にしてくれましょう!)」
続かなくていい! 火の海にするな!
こいつらには後でちゃんと話をしておかないとな。
まだ呪いのことも解決してないのに、悩みの種が増えていく……。
俺は飛んできた氷の槍に向かって、“火魔法”と“風魔法”を合わせたファイアストームを放つ。
ユンクルも俺だと気づくだろうし、これで大丈夫なはずだ。
炎の竜巻が氷の槍を飲み込み、彼方に飛んでいく。
「ガルガルッ!(おおっ! あの威力の魔法、やはりわたしたちの時には手加減されてたんですね!)」
なぜかグーリたちが尊敬のまなざしを向けてくる。
あー、また街のみんなへの説明が面倒な予感だよ……。
街の広場に着陸した後、ギルドマスターたちへグリフォンたちのことを分かってもらうために四苦八苦したのだった。
ギルマスのおっちゃんが言うには、国を相手にしても引けをとらない戦力らしい。
大人しくしてるから、見逃してください……。
グーリたちにもよく言っておきます……。
◇
「クルニャーン!(ただいまー!)」
家に帰ってきたよ~。
やっぱり家は落ち着くね。
グーリたちを連れて庭に入る。
俺の声を聞いて、猫たちが集まってくる。
「ニャー!(ボス、おかえりっす!)」
ミケが近づいてきた。
グリフォンたちのことを少し警戒しているようだ。
「クルニャー(今日から一緒に暮らすグリフォンだ。まあ……、大きな猫みたいなものだからさ)」
とりあえずミケたちにグリフォンも一緒に住むことを伝える。
「ガルルゥ(わたしはグーリという。身も心もシュン様のものだ。よろしく)」
グーリよ、なんだその自己紹介は……。
まあ、仲良くしてくれよ。
家からミーナが出てきた。
犬耳がパタパタ動いてて、癒される光景だ。
「おかえり~!」
ミーナが一瞬グーリたちを見てひるんだけど、すぐにいつも通りにもどった。
さすが慣れている……。
「ミーナ、ただいま~」
「…………ただいま」
リルもライミーもリラックスしている感じだ。
「あっ、ちょっと待っててね!」
そう言って、ミーナは家の中に戻っていった。
そしてすぐにまた家から出てきた。
ミーナは手に鍋を持っている。
……なんか凄く嫌な予感がしてきた。
「ミーナ、なにそれ~?」
リルがミーナに問いかける。
「これはね、シュンの呪いが解けた、お祝いのつもりで作った料理よ。リルたちのことだから成功したんでしょ。グリフォンを連れて帰って来るくらいだし」
ミーナは俺が目的を達することができたと思ってるようだ。
この際、それはいい。
俺を祝ってくれる気持ちも嬉しいものだ。
ただ、ミーナの料理と聞いて、嫌な予感が止まらない……。
「それがね、シュンの呪いはまだ解けてないんだ。詳しくはあとで話すね」
リルはミーナに答えながらも、鍋の方をチラチラと見ている。
鍋には蓋がされているが、リルも不穏さを感じてるようだ。
「そうなんだ……、残念だったね。じゃあこの料理はシュンを励ますものになればいいな」
そう言って、ミーナが俺の前に鍋を置いた。
すぐにミーナは蓋をはずす。
んなっ!? なんだこれは……。
鍋の中が黒い。
おどろおどろしいとは、まさにこのこと。
「クルニャッ?(なにこれ?)」
「シュン、お祝いといったらブラックターキーの丸焼きでしょ。今回はブラックターキーを丸ごと煮込んでみたの」
ミーナは、煮込んでみたの、と可愛く教えてくれる。
煮込みか……。
まだ鍋の中がグツグツしている。
すでに具材が骨になって浮いてきている。
マグマにブラックターキーを入れたら、こんな風になるかもしれない。
それに、鍋の中からギィイイィと悲鳴のようなものが聞こえる気がする。
マンドラゴラでも入ってるのかな?
においもなかなかくるものがある。
祝いの料理じゃなくて、完全に呪いの料理だよね?
ミーナにはそんなこと言えないけどさ……。
俺は周囲を見回してみた。
リルは、どうしようか困ってる顔だ。
ライミーは、無表情ながらタラーッと一筋の汗が見える。
ミケたちは腰が引けている。
グーリと目が合う。
「ガルガルッ!(シュン様。わたしが、ぎせ……毒見役うけたまわります!)」
グーリが決死の表情で俺につげてくる。
犠牲から毒見に言い直したけど、それ言い直す意味あまりないよね?
この料理?を前に見せてくれたグーリの忠誠は本物だ。
俺は今後いかなる時でも、グーリの忠誠を疑うことは決してないだろう。
それほどまでに、その勇気は称賛にあたいする。
「クルナー(これは俺が食べる)」
というか、他の人に食べさせたら、命に関わる予感がある。
俺は覚悟して黒い鍋料理を食べ始めた。
口に入れた途端、魂が揺さぶられた気がした。
走馬灯が見えた気がした。
正直、味を感じている余裕なんてなかった。
ジェットコースターに乗りながら料理を味わうことなんてできないのと同じだ。
命の危険を感じて、俺は反射的に自己鑑定を使った。
自分の身に何が起こってるのかを把握する必要があるからだ。
――――――――――――
名前:シュン (強呪い)
――――――――――――
「クルルゥ……(ああ……、もっとモフりたかったな……)」
呪いが強呪いに上書きされているのが見えたところで、俺は意識を失った。
◇
目覚めるとみんなが心配そうに俺を囲んでいた。
俺はどれくらい気を失っていたのだろう。
そういえば、呪いはどうなった?
すぐに自己鑑定をしてみると、名前の横にあった“強呪い”の表示が消えていた。
もしかして……。
すぐにスキル欄を確認すると、そこには「呪い無効」の文字があった。
「クルニャーーン!(呪いが解けたーー!)」
まだ混乱してる頭をスッキリさせるためと、みんなに俺は大丈夫だと伝える意味を込めて、俺は大きく叫んだのだった。
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