最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

メイン君

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第二章 

第54話「結構強い猫科のグリフォン」

「グーリ! あそこの湖のそばに下りてっ!」

 私の背に乗ったリル様が、少し先に見える湖を指差す。
 目的地に到着だ。

「ガルゥ……!(待っていろ! ウナギよ)」

 リル様の言うパリフワにつられた感があるけど、シュン様が帰ってきた時にもてなす食材探しだと思えば、気も紛れるというものだ。

 湖のそばに降り立つ。
 村が近くにあると聞いてたけど、空から見たとき、村と湖にはある程度の距離があった。

 リル様が私の背から降りる。

「この湖にウナギがいるはずなんだけど、どうやって見つけよっか……?」

 リル様が、湖を見て首をひねっている。
 湖といっても結構大きいし、深さもありそうだ。
 潜って探すのは最後の手段だろう。

「ガルッゥウ!(任せてください! 私に名案が!!)」

 私は、リル様の前に出る。

 先日、シュン様から聞いた話を元に、名案を思い付いたのだ!
 ライミーさんの実体験が元になったとも言えるだろう。

「グーリ、何かいい方法があるの?」

 後方から問いかけられる。

 ええ、ありますとも。
 見ていてください。

「ガルゥウウ!!(――――雷撃サンダーボルト!!)」

 私の雷魔法によって、湖の水面がバチッと波打つ。

 フッフッフ……、ウナギよ、気絶して浮かんでくるがいい。

 期待しながら少し待つ……。

 …………。

「何も起こらないよ……?」

 リル様が不思議そうにしてる。
 たしかに、何も浮かんでこない。

「ガル……(あれ……、もしかして雷魔法を撃っても、水面を伝わるだけなのですか……?)」

 衝撃の事実だ。
 雷魔法でゴッソリいこうと思ったけど、水中の魚には効果がないらしい。

 かっこつけたものの、リル様にカッコ悪い姿を見せてしまった……。

 こうなったら、湖の中に潜って、いっぱい獲って名誉挽回しよう!

 そう思って湖の淵に近づいた時のことだ。

 ザバーっと水面が盛り上がった。

「あっ……!?」

 リル様が声を出す。

 私もすぐに気付いた。
 ちょっとヤバいかもしれないことを。

「ガルッ!(失礼っ!)」

 リル様の服をくちばしでくわえてバックステップしながら、その場を離れる。

 私がいた場所に何かが叩きつけられる。
 轟音の後、砂ぼこりが舞う。

 すぐに砂ぼこりは晴れ、攻撃してきた奴が姿を現す。

 私よりもはるかに大きい、何やらヌルッとした魔物だ。
 私を丸のみにできそうな大きさだ。

 一見、巨大なヘビにも見えるが、質感は完全に水生の魔物のそれだ。
 体の一部は陸に出ているけど、水中に隠れていて見えない部分もかなり大きそうだ。

「これがウナギ……? こんなに大きいの?」

 リル様はウナギと言ってるけど、水龍と言われても納得しそうなたたずまいだ。
 完全に湖の主だ。
 水神とあがめられて、お供え物をされててもおかしくない気がする。

「ガルルッ!(逃げてくださいっ!)」

 リル様を危険にさらすわけにはいかない。
 私は、リル様と巨大ウナギの間に位置取る。
 後方をチラチラ見て、逃げてくれるように身ぶりで伝える。

「グーリ? グーリが戦って足止めしてるうちに逃げろってこと??」

 リル様が、私の意図に気づいてくれる。
 
「ガルゥガルッ!(ええ、逃げてください。ここは任せてください! ……けど、倒してしまってもいいですよね)」

 ウナギがいくら巨大で強そうといっても、シュン様の強さに比べたら食材の域を出ない……はずだ。
 覚悟を決めて、一歩踏み出す。

「ギュイー!!」

 巨大ウナギは、大きな体に似合わない甲高い鳴き声を発した。
 陸に乗り上げても、ひるまないところを見ると、陸上でもある程度動けるのだろう。

 せめてリル様がある程度離れるまで、私は逃げるわけにはいかない。
 ちょっと前の私では勝てなかったであろう相手だ。
 けど、今の私は違う……。

「ガルゥウ!!(くらえっ!!)」

 火魔法をはなつ。

 しかし、まるで効いた様子はない。
 なんとなく効かないことは予想していた。

 私はここで一つの挑戦をするしかないと、腹をくくった。

 シュン様には遠く及ばないけれども、魔法は私の得意分野だ。
 練習で成功したことはないけど、私は本番に強いのだ。
 シュン様が使ってるところを見てから憧れてた魔法の合成。

「ガルガルッ!!(こうだっ!!)」

 “水魔法”と“火魔法”を同時に発動させる!

 シュン様は簡単にやっていたけど、どちらが強すぎても上手く合成されないのだ。
 強大な敵を前にしても、焦らない強靭きょうじんな精神力が必要だ。

 意識の左半分が水魔法、右半分が火魔法、それを意識の内で合わせ――――。

 合わせようとした魔法が途中で弾けた――。

「ガァァルゥッ!?(――痛っ!?)」

 熱い痛い熱い――!?

 体の中で魔法が暴走する。
 体が爆発して腕がもげたかと思った。
 ちゃんと手足が、まだついてるのを見てほっとした。

 練習の時は威力を抑えていたけど、今は威力を上げようとしたせいか、反動がやばかった。
 
 魔法が少し落ち着いた今も、目の前がチカチカする。

 私が何かをやろうとしてることが伝わったのか、巨大ウナギが警戒して様子を見てくれているのが、不幸中の幸いだ。
 今攻撃されてたら私は終わってた。

「ギュイギュイー!!!」

 巨大ウナギは、危険はないと思ったのか、鳴き声を発しながら体当たりを仕掛けてきた。
 思った通り、かなりの速度の攻撃だ。 

 私はそれをなんとか避ける。

 これはかわし続けられるものではない。
 おそらくこれが最後のチャンスになるだろう。

 私は意識を集中する。

 思い浮かべるは、尊敬する我があるじ

 あの小さな体の内に、大きな力が満ちるのをイメージする。

 “火魔法”と“水魔法”を均等の魔力で溶け合うように編みつむぐ……。

 元から一つの魔法であるかのように……。

 今までに感じたことの無いような感覚が全身を包んだ。
 緊張感と高揚感が全身を駆け巡る。

 シュン様の顔が浮かぶ。
 厳しさの中にも、大きな優しさをたたえているあの眼差し。
 シュン様に名前を呼ばれるだけで、胸が高鳴る日々が思い浮かぶ。
 先日、私の自慢である胸の羽毛に埋もれて嬉しそうにしてる姿を見たときは、死んでも良いと思った。
 仕草の一つ一つが本当に愛らしくて……。
 
 そうだ……、約束してたっけ……?

「グーリー!!!」

 リル様の声で我に返った時には、巨大ウナギが大きな口を開き私を飲み込もうとしているときだった。

 けど、不思議と恐怖はない。

 シュン様とのお出かけの約束のためにも、こんなところで負けるわけにはいかない。

 そして、今のタイミングを“ちょうど良い”と思ってしまった。
 この魔法で調理してくれる。

 体の中にあるエネルギーを前方に向けて放つ。
 
「ガルゥウウウ!!(――沸き立つ熱螺旋ボイルトルネード)」

 普段使っている火魔法や水魔法とは比べものにならない魔力が自分からほとばしるのを感じた。

 高熱の水蒸気が巨大ウナギの頭部に直撃したと思ったら、その方向を上に変えた。
 巨大ウナギが竜巻に巻き込まれたように、空に向かって打ち上げられる。
 水中に隠れていた体ごと空に巻き上げられる。
 
 自身が放ったからこそ理解わかる魔法の威力。
 規模も今まで使っていた魔法の比ではない。

 圧縮された高熱の水蒸気に内側から蒸された巨大ウナギは、もう生きてはいないだろう。
 口を大きく開けていたため、弱い体内に攻撃を叩きこめたのも大きい。

「グーリ? 今の凄いね……」

 リル様が空に打ち上げられた巨大ウナギを見上げながらつぶやく。

「ガルゥ……(シュン様の薫陶くんとうのたまものです……)」

 合成魔法の初めての成功。
 魔法の扱いに長けているグリフォンでも使えるものがいない魔法だ。

 成功の瞬間、私はシュンさまの存在を身近に感じた。
 今思い返しても、少し涙ぐみそうだ。

 魔法成功の余韻よいんに浸っていると、空から巨大ウナギが落ちて来た。

 轟音を立てて地面に落ちる。
 思った通りすでに息絶えている。

 リル様と二人で、巨大ウナギの状況を確認した。

「グーリの魔法は本当に凄かったよ。しかも良い具合に火が通ってるよ」

 リル様が嬉しそうにつげてくる。

 巨大ウナギは、体内から全身を蒸されている。
 今も湯気が出ていて、その湯気から良い匂いがただよってくる。

 いや、それよりも……、陸に打ち上げられて再確認したけど……。
 これ……完全に水龍か何かでは……??

「ガルルッ(まあいいか……)」

 ウナギか水龍かは些細なことだろう。
 大事なことは美味しいかどうかだ。

 リル様が「いったん火が通ってるから蒲焼きにするのも楽ちんだね~」と言っている。

 私は「大魔法を使ったエネルギー補給をしないといけないですね!」と、たくさん食べる大義名分を頭の中で繰り返したのだった。





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