最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

メイン君

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第三章 幻獣だってモフっちゃう

第68話「人海戦術ならぬ猫海戦術」

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 今朝は早くから、庭に猫たちを整列させている。 
 今日は、俺たちにとって重要な調査を行う予定だ。

 昨日出会った少女冒険者のメアリーから、リルの二つ名や、俺たちの街での評判を少し聞いて、調査の必要性を感じたからだ。
 調べたからといって何かできるわけではないかもしれないけど、悪い評判があるとしたら放っておくわけにもいかないだろう。
 昨日の冒険者たちの態度を見るかぎりは大丈夫だと思うけど、リルがうとまれていたら嫌じゃんか。

「クルニャーン!(諸君! 目的は分かったな。今日は戦闘ではないから、二匹でペアを作って街の各地で調査を行ってくれ!)」

 戦闘時は五匹一組のところだが、今日はペアで十分だ。

「「「ニャー!!(はい、ボス!!)」」」

 日頃の訓練のたまものか、五十匹にものぼる猫たちがビシッと整列したまま応える。
 子猫たちはまだ訓練に参加してないけど、つい最近まで子猫だったであろう幼い猫が何匹か見受けられる。
 何となく昨日の駆け出し冒険者たちを思い出して、頑張って欲しいなと親心みたいなものを感じる。

「クルニャー!(では、昼食までには戻ってくるんだぞ! 調査開始!!)」

 猫たちには街の各所に行って、この家と俺たちの評判に聞き耳を立ててくるように言い含めてある。
 街の人たちが話しているのを近くで聞くだけだから、もしかしたら今日の今日では話題に上らないなんてこともあるかもしれない。
 その時は、また後日でいいだろう。
 今回は、猫たちにも新しいことをさせて、できることを増やしていくという訓練の意味合いもあるのだ。

「「「ニャーーン!(はい!)」」」

 鳴き声とともに猫が一斉に散らばっていく。
 モコモコが視界に広がる光景は、正しく目の保養だ。
 猫が一生懸命走る姿って何度見ても可愛いなあと、自分が猫だということも忘れて見とれてしまう。

「ガルルゥ(シュン様、私も行きましょうか?)」

 グーリが手持ち無沙汰な様子で聞いてくる。

「クルルゥ……(グーリだと、街の人たちが怖がるだろ……)」

「ガルゥ……(ですよね……。クッ……)」

 役に立てないのが悔しいようだ。

「クルニャー(グーリにはいつも助けられているよ)」

「ガルルッ……(シュン様……)」

 グーリの表情がパァッと明るくなる。
 助けられているというのは、俺の本心だ。

「クルルニャ(ほら、グーリには教えて欲しいことがあるんだから)」

 グリフォンは魔法に長けた種族だが、グーリはその中でも天才と呼んでも差し支えないほどの力を持っている。
 魔法についての知識も、まだグーリの方に一日の長がある。
 基礎的なことから、体に魔法をまとわせる技術、教えてもらいたいことはたくさんあるのだ。

「ガルルゥ!(喜んで教えて差し上げますとも! 今日は何からにしましょう!)」

 嬉しそうにするグーリからの魔法の講義は、とても有意義なものだった。




 
 調査を終えた猫たちが、お昼前になると戻ってきた。

「クルニャー!(お疲れ様、諸君!)」

 うーん……、群れを率いるということに、俺はいまいち慣れない。
 とりあえず、リルや俺たちの評判について何か情報があったかを聞いていくことにした。

「ミャー!(はーい! 僕たち話してるの聞けたよ!)」

 幼さの残る猫が元気よく手を上げている。
 ピョンピョンしている姿がなんだか微笑ましい。

「クルニャ?(どんなこと言ってた?)」

「ミャー(えっとね……、冒険者の人たちだったんだけど、ボスとリルさんに助けられたことがあるって言ってたよ。この家の方にお尻を向けて寝られないって言ってた)」

 冒険者たちは、武勇伝や戦いの話を酒の肴や退屈しのぎの世間話にすることが多い。
 そういう時は本心が出ることが多いし、彼らは案外律儀なのだ。
 あと、お尻じゃなくて足だよね……。

「ニャーン(私も聞けました! お爺さんが酒場でブツブツとボスのことを言ってました)」

 他にも話を聞けた猫がいたようだ。
 それにしても、お爺さんに文句を言われるようなことあったかな……。

「クルナー?(それで、何て言ってたんだ?)」

 心当たりは無いが聞いてみよう。
 
「ニャー(なんか、『弟子にして欲しい』とか『召使いでもいいから雇って欲しい』とか言ってました。)」

 あー……、心当たりあった。大魔導士のお爺さんだ。
 一時は魔法について教えてもらおうと思ったけど、言葉が通じないし断ってもらってるんだった。

 そんな感じで、思った以上に評判を聞けたペアが多かった

「ニャーン!(『美味しいお肉の為なら、どこへでも向かうAランク冒険者!』)」

「ミー!(『作る料理は、街の料理屋さんよりも美味しい!』)」

「ニャン(『リルさんのおかげで、街道がいつも安全です』)」

「ニャー!(『あんなに可愛いのに強いなんて、お近づきになりたい!』)」

 そんな感じのことを聞いたらしい。
 ちょっと『食』に偏り気味だけど、リルの評判は悪くないな。
 近づいてくる悪い虫は俺が、追い払うけどねっ。

 街の子供たちからの声も結構あったようだ。
 猫たちから報告を受ける。

「ミャー(『俺、あの家のグリフォンにタッチして帰ってきたんだぜ!』)」

 悪ガキの度胸試しみたいになってるな……。
 うちのグリフォンたちは害意が無ければ、攻撃しないのに。

「ニャーン(『猫ちゃんがいっぱいで、モッフモッフのフワフワッなんだよ!』)」

 それは俺も同感だ。モフモフしに来ていいからね。

「ニ゛ャー(『なんでも食べるらしいじゃんか。きっとあのいつも肩に乗ってる猫は非常食だぜ』なんて言ってる男の子がいたわ。良い雄猫的な意味で美味しそうというところは同感ね、ジュルリ……)」

 そいつかー、そいつが噂の出どころか……。あと、そいつは決して美味しそうとは言ってないぞ……。

 聞いてる限りは子供たちや、その親御さんたちから、危険な家という認識はされていないようでホッとした。
 リルがうとまれていたら嫌だもんね。
 
 『銀色の暴食狼シルバー・グラトニー』という二つ名も、食を追求する強い冒険者という好意的な意味合いで呼ばれているということが分かった。
 街を守ってくれた英雄に対する敬意みたいなものも込められているらしい。

 俺が想像していた以上に、街での評判は良いものだった。
 良い街だな……、街にまた危険が迫ることがあったら、頑張らないとな……。

「ガルルゥ……(シュン様、良かったですね……)」

「クルニャ?(何がだ?)」

「ガルルッ(リル様の評判を前から心配していましたからね)」

 グーリにはバレバレだったようだ。
 結構無茶やってる自覚はあったから、街の人たちに迷惑に思われてないか少し気にしていたのだ。

 評判調査は上々の成果と言えるだろう。
 猫たちの動きも良く、俺の指示にしっかり従ってくれた。

「クルニャー!(さあ! 仕事の後は美味しい昼食だ!!)」

 リルが作ってくれてるはずだ。
 猫たちは一斉に家の方に駆けて行った。
 

 その日の夕方、ギルドマスターが我が家にやってきた。
 なんとなく、また忙しくなる予感がしたのだった。
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