最強猫科のベヒーモス ~モフりたいのに、モフられる~

メイン君

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第三章 幻獣だってモフっちゃう

第70話「問題はいつも向こうからやってくる」

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 樹海の調査依頼を受けた俺たちは、グリフォンの背に乗り、空から樹海をうかがっているところだ。

「クルナー……(空から見ても、よく分からないな……)」

 眼下に広がる樹海は壮大だけど、どこかに異常が起きているかというと、空から眺めるだけではいまいち分からない。

「……木しか見えない」

 ライミーも、同意見のようだ。
 地平線の果てまで、森が広がっている光景はなかなか圧倒的だ。

 樹海内に何か大きな存在がいるように感じられる気もするけど、広大な樹海の存在感がそう感じさせていると言われれば、そうかもしれないなとも思ってしまう。
 要は、空から見ただけでは、というのが結論だ。

「行ってみようか!」

 リルの掛け声を受けて、グリフォン達が降下し始める。
 樹海に足を踏み入れてみないと、何も始まらないだろう。

「クルニャー!(何がいるか分からない。常に警戒を解くなよ!)」

「ガルルッ!(お任せをっ!)」

 俺たちは、普段の依頼では入ったことがないような、樹海の深部目指して降りていったのだった。





「これ、美味しいね」

 リルが桃に似た果物を美味しそうに食べている。
 グーリ達も、周囲を警戒しつつもモグモグしながら歩みを進めているところだ。

 かれこれ二時間ほど探索しているのだが、今のところ特に変わったことは起こっていない。
 俺が毒見した果物を皆で食べながら進むという、完全にピクニックだ。
 深い森が作り出す幻想的な木漏れ日もあいまって、思った以上にまったりした感じになってしまっている。

 美味しそうな……じゃなくて……、強そうな魔物も今のところ出くわしていない。

「クルニャン……(よく考えたら、樹海って言ってもかなり広いんだよなあ……)」

 樹海のどこかに異常があるとしても、すぐには見つからなくて当然だろう。
 気長に数日かけて調査しなきゃいけないかもしれないな……。

 そんなことを考えているときのことだった。

「ガルッ!(シュン様!)」

「クルルッ(ああ、念のため警戒を!)」

 俺たちは、前方から接近してくる気配を察知した。
 まだ姿は見えないが、気配からすると、1体の魔物を数体の魔物が追いかけているようだ。
 樹海の食物連鎖といったところだろうか。

 逃げてくる方向からして、すぐに俺たちの目前に姿をあらわすだろう。
 危険を感じるほど凶悪な気配でもないし、逃げずに様子を見ることにした。

 すぐに、それらは俺たちの前に姿をあらわした。
 どんな魔物が来るか警戒していたのに、その姿を見た俺は、かなり驚かされた。

 大型犬サイズの白い馬。馬にしては小さく、仔馬といったところだろうか。
 たてがみまで白く、フワフワと風になびいている。
 そしてその頭部からは、一本の角が生えている。

 その姿から、俺が想像するのは架空のあの生き物。
 純真な乙女にしか懐かないという、あれだ。

「キュイー!(もう無理、死んじゃう!)」

 何かから逃げている姿は、必死そのものだ。
 鳴き声はヒヒーンじゃないんだなと、場違いなことを思ってしまった。

「キュッ!?(えっ!?)」

 俺たちの姿に驚き、そして石につまずき、ズザーっと俺たちの目前まで滑ってくる。
 盛大に顔面スライディングだ……。

 ちょっと悪いことをしてしまった感がある。
 白く整った毛並みは、輝くように美しく、悪意のある魔物には見えない。
 今まで、ケルベロスを除いて猫科以外の魔物の言葉は伝わってこなかったのに、言葉が伝わってきたことも気になっている。

「クルニャーン!(みんな、ちょっと下がってて!)」

 みんなを下がらせて、俺はをイメージさせる魔物の近くまで行く。
 追跡者への対応も考えてのことだ。

「ガウゥゥ……」

 ユニコーンが逃げてきた方から、狼のような魔物が5体あらわれた。
 すぐには襲いかかってこずに、こちらを威嚇してくる。

「ガルルッ!(シュン様、ヘルウルフです!)」

 ヘルウルフは、A級の魔物でしかも集団行動することから凶悪で手ごわく、冒険者たちから恐れられている魔物だ。
 
「クルニャーン!(グーリ、大丈夫だ! すぐに片づける)」 

 まだユニコーンが良い奴と決まったわけではないけど、話を聞きたいし、ヘルウルフを片づけてしまおう。

「「ガウッ!!」」 

 ヘルウルフが連携してこちらに飛び掛かってくる。

「キュイー(いや~)」

 ユニコーンが、飛び掛かってくるヘルウルフから顔をそむけた。

 俺はいくつか魔法を合成して、ヘルウルフを迎え撃った。
 “カーバンクル・キャット”に進化してから、魔法の威力と精度が以前よりも向上している。
 周囲の森を燃やさないように気をつけ、ヘルウルフの同時攻撃を全て撃ち落とすように魔法を放つ。

 ユニコーンが、恐る恐るこちらに顔を向けた時には、ヘルウルフは倒し終わっていた。

「クルニャン?(大丈夫?)」

 できるだけ優しく声をかけてみる。

「キュー??(何が起こったの??)」

 ユニコーンが混乱したようにキョロキョロしている。
 そして、その体が明滅し始める。

「シュン、どうなってるの?」

「ガルガルッ(シュン様、無事ですか)」

 リル達が近くまでやってくる。

 ユニコーンの明滅が増していく。
 このまま消えちゃうとか、ないよね?

 そんなことを思った瞬間、ユニコーンがカッと光を放った。

「クルルッ!?(何だ!?)」

 ユニコーンが放った光はすぐに晴れた。
 なぜか、そこには一人の幼女がいた。

「「…………」」

 しばし無言の一同。

 一番最初に口を開いたのはグーリだった。

「ガルルゥ……(人化じんかの術ですか……? シュン様、これは好機かもしれません)」

 グーリの言葉に、嫌な予感がする。
 心なしか、幼女がおびえた様子をみせる。

「クルニャ?(何が好機なんだ?)」

「ガルガルゥ(以前、シュン様は人化の術を望んでおられました)」

 グーリが真面目な顔で告げてくる。

「クルルゥ……(いつか人化してみたい、とは言ったかもね……)」

 俺の嫌な予感が増す。

「ガルルゥ!(……でしたら、此奴を食せば人化の能力が手に入るかもしれません!)」

 グーリが名案だとばかりに叫ぶ。

「ひぃ~! わたし美味しくないもん!」

 悲鳴を上げる幼女。

「クルニャーン!!(やめてあげて~!!)」

 再び、場に混乱が満ちたのだった――。
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