ドラゴンすら眠らせる俺の睡眠魔法 ~ダメ可愛い美少女にはシエスタを~

メイン君

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第19話「タナトスの呪い」

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 おとぎ話級に可愛いとうわさのドラゴン娘のことは、さておいて。

「アル、それであの少女の状況をなんとかする方法はあるの?」

 石の台座の上の少女に目を向ける。

 アルの話からすると、七大竜王のザッハークタナトスが悪い意味で関わっているということだろう。

 そうなると、眠っているのは少女の意思ではなく、瘴気しょうきをばらまいているのも不本意だろう。
 不本意な眠りを強いられているなんてと、許せない気持ちがわいてくる。
 
 寝ることをこよなく愛する俺は、眠りに対して人一倍こだわりを持っている。

 そのためか、この状態を生み出したやつに強い怒りを感じている。 

 まあ、この少女が実は悪いやつだという可能性もなくはない。
 けど、おそらく被害者で間違いないだろう。

 そういうわけで、できればなんとかしたいところだ。

「そんなに難しいことじゃないはずだよ。
 タナトス系統の“死と悪意の呪い”がこの少女に込められてるんだけど……」

 難しくないんだ。

 アルの説明が続く。

「呪いが込められてからかなり長い年月が経っていて、
 効果が弱くなっているんだ。
 今ならネロの睡眠魔法で上書きできる可能性が高いはず。
 僕も力を貸さないとだけど」

 そんなことできるんだ。

 タナトス系統の力に、ヒュプノス系統の力をぶつけて上書きする感じだろうか。

「ちなみに悪影響とか、
 デメリットみたいなものはあるの?」

 長い年月続いていた状態を変えるというのは、少なからず気になるよね。

「特にないんじゃないかな。
 しいて言うなら、少女の体が月日の経過の影響を受けて、
 耐えられない可能性はあるかも」

「え? それって死んじゃうんじゃないの?」

 だとしたら、全然大丈夫ではないじゃんね。

「うーん、そうだとしても、
 それは元々の寿命だししょうがないと思うよ」

「……そうは言ってもね。
 少女の姿で寿命で助かりませんでした、
 っていうのは受け入れがたいものがあるよ……」

 この子の未来を摘み取ることにならないだろうか。
 それにおそらくだけど、黒ドラはこの少女を護っていたんだと思う。

 ドラゴンが護っている少女、きっと良い子で間違いないだろう。

「でも何もしなければ、
 このまま呪われたままの状態で、
 いつかは本当の死を迎えるか、
 アンデッドになるかだよ」

「まあ、そうだけどさ……」

「どうするの? 
 僕はこのまま放置するのも選択肢の一つだと思うよ」

 ここに来なかったことになるだけだと、アルが言う。

 どうすべきか……。

 俺は目をつむり内心の想いを確認する。

 決めた。

「よし! 解呪を試みるよ!
 やらなきゃ後悔しそうだしね」

 やらないで後悔するなら、やって後悔する方を選ぶ。

 それに美少女が不本意な眠りに、いや眠りとは言えないような眠りについてることは許せない。

 俺は、睡眠魔法で幸せな眠りを与えたいんだ。

 実はいつもレーカが俺の睡眠魔法をねだってくると、凄く嬉しい気持ちになる。

 俺にも誰かに幸せを与えることができるんだと、そんな風に思えると心が温かくなるんだ。
 それが小さな幸せだったとしても。
 
 レーカと出会う前には思ってもいなかった。

 誰かに求められるっていうのは、嬉しいものなんだね。

 そう思ってレーカを見ると、本人はポケーっとしていてまるで緊張感がない。

 そんなレーカを見たら、ちょっと気が楽になった。

「ありがとなっ」

 いつもありがとう、という気持ちを込めてレーカの頭を撫でた。
 赤い髪はとても柔らかくフワフワしている。

「んっ」

 レーカは目をつむって気持ち良さそうにしてくれる。

 くそ……。

 いつも駄目ドラゴンのくせに、可愛いじゃないか。

 これがアルの言う“ギャップ萌え”ってやつなのか?

「さあ! アル、やり方を教えてくれ。
 それに力を貸してくれ!」

 きっと上手くいくはずだ。

「オッケーだよ。
 ネロ、まずはいつも睡眠魔法をつかう要領で、
 少女を魔法の対象にするんだよ」

 俺は両手の手のひらを少女に向けて、気持ちを集中させる。

「それから?」

「魔法の発動と同時に全身にムラなく魔力を行き渡らせるんだよ。
 全身の血管が血を全身に運ぶように、
 ネロの睡眠魔法を隅々まで丁寧にかけていくんだよ。
 そのタイミングで僕がネロの魔力を増幅させるから、
 それも合わせてコントロールしてね」

「わかった」

 俺たちは今、台座をぐるりと取り囲むように立っている。
 台座を挟んで反対側にはレーカが立っている。

 レーカとセシルさんが見守る中、少女に向けて睡眠魔法を発動させる。

 いつもよりも丁寧に魔法をかけていく。

「おやすみなさい……」

 睡眠魔法を唱えると、少女の全身が淡く輝き始める。

「ほぇー」

 レーカの声が耳に届くが、ちょっとそれどころじゃない状況だ。

 自分の魔力と、呪いの魔力がせめぎ合っているのが、手から伝わってくる。

「いくよ!」

 アルの声と同時に身体に力がみなぎってくるのが分かった。

 アルの力が俺に加わったのだろう。
 頼もしい力が加わり、せめぎ合いが激しさを増していく。

 少女は台座の上で眠ったままだが、その体内では二つの相対する魔力がせめぎ合い荒れ狂っている。

「丁寧に、丁寧に……」

 俺は独り言をつぶやきながら、魔力を少女の全身に行き渡らせていく。

 その時、ふと視界のすみに、拳をぐっと握りしめているレーカの姿が見えた。
 ちらり視線だけで見やると、眼差しも真剣そのものだった。

 さっきはあまり興味なさそうだったのに、今は真剣に応援してくれている姿に胸が熱くなった。

 ここは踏ん張らないとな。


 どれくらいの時間、魔力を操作していただろうか。

 長い時間のように感じたけど、実際は結構短い時間だったかもしれない。

 荒れ狂っていた魔力が、スーっと収まっていくのを感じた。
 
 それと同時に少女の淡い輝きも落ち着いたものになった。
 どことなく、少女から黒い何かが消えうせたような印象を受ける。

「ふぅー……。成功したのか?」

 どっと疲れが押し寄せてきて、俺はなんとか倒れないように膝に手をつく。

「タナトスの呪いを消すことには成功だよ。
 あとはこの子がどうなっているかだね……」

 アルの言葉にみんなの視線が台座の上の少女に集まる。

 今まで唱えた睡眠魔法で一番大変だったんだ……。
 無事でいてくれよ……。

 名前も知らない少女の無事を祈り、誰も声を出すことなくしばしの時を待つ。

 全く反応がなく、ピクリともしない少女。

 これは、駄目だったのか……、そう思った時だった。

「……ん、……ぅう」

 少女は寝ぼけているかのような声を出し、目を開けたのだった――――。

 
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