異世界の大家さん ~魔王様? 城ごと俺のモノですが~

メイン君

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第7話 ミレーニアの膝枕

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「城に帰るには遅いし今夜は宿屋に泊まって、明日の朝にギルドに来る感じでいいか?」

 ギルドを出た所で、ダイチがミレーニアメリーに声をかける。

「え!? 二人でお、お、お泊り!?」

 動揺するミレーニアメリー

「この暗い中帰るのもアレだろ? 嫌だったか?」

 いつも通り冷静なダイチ。

「い、嫌じゃない! むしろ……良い……というか……」

 首をブンブンと振って否定する。段々言葉が小さくなり最後の方はダイチには聞こえていないようだ。

「そんなに特別なことじゃないだろ、いつも俺達は同じ城に住んでるんだからさ。そういうの一つ屋根の下って言うんだっけ」

「そ、それは盲点だったわ!? これからはお城に戻っても今までの二人じゃいられないかも!?」

 何やら混乱気味のミレーニアメリー……。

「それに冒険者なら、男女混じって宿に止まることはもちろん、野宿だって日常茶飯事らしいぞ」

 いたって冷静なダイチ。

「それはそうかもしれないけど……」

「そういうことで、宿屋に行くぞ。確か街の門までの道沿いに宿屋があったはずだ。空いてるといいけど」

 そう言いながらダイチはスタスタと先に進んでいく。

「あー……こんなことなら、もっとセシリアにイロイロ教わっておけばよかったかも……」

 ダイチには聞こえない程小さな声で呟くミレーニアメリー。頼れるサキュバスお姉様である。


■■■


「いらっしゃいませ~。お二人ですか~」

 宿屋の受付に座っている女性から間延びした声で挨拶をされる。

 淡い茶髪と垂れ目から優しそうな印象を受ける。歳は二十代前半くらいに見える。そして何と言っても目を引くのが、茶色のウサミミ、片方だけピコピコと動いていて、「おいでおいで」をされている気分になりそうだ。

「部屋に空きはありますか?」

 ダイチが問いかける。

「ベッドが一つの部屋しかないですけど~、恋人同士さんならいいですよね~」

 受付の女性はダイチ達を恋人同士だと思っているようだ。

「こ、こ……」

 ミレーニアメリーが顔を赤くしながら、ダイチの方をじっと見つめている。

「……大丈夫です。ここに名前を書けばいいですか」

 ダイチはチラリとミレーニアメリーの方を見たが、手続きを進めることにしたようだ。

「お願いします~。料金は先払いで、お湯が必要でしたら別料金になります~。あと、あちらが食堂になってます~」

「先に食事をするから、後でお湯と体を拭く布をお願いしたいです」

 ダイチは先に食事にすることを伝える。

「分かりました~、食事後にお湯を渡しますので、声をかけてくださいね~。わたしはエミリーと言います~」

 間延びした声で受付の女性が名前を名乗る。

「ああ、そうでした~。お部屋の壁は薄いので声とか音には気をつけてくださいね~」

 エミリーがウインクしつつウサミミを片方折り曲げて、そんな事をダイチ達に言ってくる。

「…………」

 ダイチは沈黙している。ミレーニアメリーは真っ赤になりながら俯いてしまった。

「これは恋人同士の方々には言う事になってる、この宿屋の決まりでした~」

 笑顔で告げるエミリー。

 その後、ダイチ達は食事をしてお湯の入った木のタライを受け取ってから、エミリーの案内する二階の部屋に行った。


■■■


「今日はなんかいろいろあったな……」

 ダイチ達が案内された部屋は、八畳くらいの広さで、真ん中にセミダブルサイズのベッドが置いてある。
 お互い背を向けてベッドに腰掛け、それぞれお湯で体を拭いている。
 ミレーニアメリーは落ち着かないのかソワソワしている。

「そ、そうね、久しぶりにダイチと二人で過ごせて楽しかったわ」

 そう告げるミレーニアメリーはチラチラと背後のダイチの様子を気にしている。

「そうだ、この部屋に居る間はメリーじゃなくて、いつも通りミレって呼んでいいか?」

 体を拭き終わり、服の袖に手を通しながらダイチがミレーニアに問いかける。

「もちろんよ、ミレって何度でも呼んでいいわ」

 ミレーニアも服を着終わりダイチに答えるが、少し混乱気味だ。

「プフッ、分かったよミレ……」

 ダイチは少し噴き出すも、笑顔でミレの名前を呼ぶ。その様子は「ミレ」と呼ぶのが久しぶりで、その名前を大事に呼ぼうとするかのようだ。

「ダイチ……」

 ダイチを見つめるミレーニアの瞳が熱っぽく潤んでいる。

「今日はありがとな」

「えっ?」

 突然のダイチのお礼に、ミレーニアが目をぱちくりさせる。

「二回も俺のために怒ってくれただろ? ありがとな……」

「…………そんなこと無いよ。だって……」

 ダイチの言葉を聞いて泣きそうな表情のミレーニア。

「そうだ、俺にできることだったら何かするよ。寝る前にマッサージでもしようか?」

「…………だったら…………膝枕したい」

 勇気を振り絞るようにミレーニアが告げる。

「えっと、膝枕したいって? ミレの膝に俺を寝させたいってこと?」

 言ってて自分でも何を言ってるのか分からない様子のダイチ。

「そう……駄目?」

 首を傾げるミレーニアの様子がとても可愛く、庇護欲が刺激されそうだ。

「いや、駄目じゃないけど、膝枕って普通男が女性に『してもらいたい』ものだろ?」

「普通は知らないけど……私はダイチを膝枕したいの……」
 
 潤んだ瞳でダイチにお願いするミレーニア。

「まあ、ミレがいいなら……」

 そうして、ミレーニアがダイチを膝枕することになった……。


 ベッドの上で嬉しそうにダイチを膝枕するミレーニア。
 ニコニコしながらダイチの髪を撫でている。

「なんか、子供の頃に戻った気分だよ……」

 ミレーニアの膝の上で、ダイチが呟く。
 その後、少しの間お互い他愛も無い会話をしている内にダイチが眠りに着いた。

 眠ったダイチを起こさないようにベッドの枕に移動させるミレーニア。
 ミレーニアは申し訳程度にダイチの肩に寄り添うように眠りに着いた。


■■■


 朝食を取るために部屋から受付まで下りてきたダイチ達。
 受付には昨日と同じくウサミミお姉さんのエミリーがいる。

「朝食を取りたいのですが」

 エミリーに告げるダイチ。

「大丈夫ですよ~。食堂へどうぞ~」

 朝から間延びした声のエミリー。

「ありがとう」
 
 礼を告げて食堂に行こうとするダイチとミレーニア。

「あ、そうそうお客様、ゆうべはお楽しみでしたね~」

 昨日と同じく目と耳のウインクコンボでそんな事を言うエミリー。
 朝から首まで真っ赤になって俯いてしまうミレーニア。

「……それを言うのも、この宿屋の決まりですか?」

 呆れ交じりでエミリーに問いかけるダイチ。

「そうですよ~、よく分かりましたね~」

 朝から先が思いやられるダイチだった……。
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