異世界の大家さん ~魔王様? 城ごと俺のモノですが~

メイン君

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第15話 オリカ無双

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「結構な数いるなあ……」

 ダイチがゲンナリした様子で呟く先には、およそ三十体くらいの巨大な鳥に似た魔物がたむろしている。
 この魔物はコカトリス、大きさは三メートル近くあり、巨大な鶏がワニの鱗を備えているような見た目だ。

『わたしにかかればヨユーよ! 安心しなさい!』

 ダイチの近くから女の子の声が響いた。発生源はダイチの装備している黒い胸甲からだ。

「私も手伝おうか?」

 お馴染みの騎竜をダイチの隣に並べているミレーニアが問いかける。冒険者ギルドが大騒ぎになりかねない魔物の量だが、その様子はお気楽な感じだ。

 魔族領の村にコカトリスの群れがやってきて畑や家畜を荒らした為、村の住民達は困っていた。
 しかし住民では返り討ちになるほど凶暴で強敵な魔物の為、住民達は少し離れた砦に避難した上で、退治して欲しいという依頼を城に出したのだ。

 そこで今回、オリハルコンアーマーであるオリカの性能実験も兼ねて、ダイチとミレーニアは村までやって来たのである。

「オリカもこう言ってるし、やれるところまでやるさ」

 騎竜から降りたダイチはコカトリスの群れに向かって歩み始める。胸甲が一瞬輝きプレートアーマーへと変化する。
 黒いプレートアーマーを纏うその姿はさながら黒騎士といったところだろうか。
 しかし、重そうなその鎧の見た目に反して、ダイチは軽快な足取りで進んでいく。

「危なくなったら、すぐ呼んでね」

 背中越しのミレーニアの声に、振り向かず手を挙げるだけで応える。

「さあ行くぞ、オリカ!」

 腰からミスリル製の剣を抜き、ダイチはオリカに声をかける。このミスリル製の剣、ミレーニアの魔剣には遠く及ばないが結構高価な代物で、金貨七十枚近くの価値があるものだ。

『まかせなさい! 魔法がきてもへっちゃらだかんね』

 オリカが自信満々に応える。
 コカトリスは強力な雷魔法を使うため、大勢で囲んでも手こずるような相手だ。

 ダイチが近付いて来たことに一体のコカトリスが気づく。

――――バチッ

 ダイチの正面数十センチくらいのところで火花が散った。

「凄いな……」

『あたりまえでしょー、こんなヘナチョコ雷じゃあ、わたしの障壁はやぶれないんだからっ』

 目に見えない壁、魔法障壁が雷を止めたことに感心するダイチと、調子の出てきたオリカ。

 ダイチは一番近いコカトリスの喉元に剣を突き立てる。コカトリスは暴れるものの、剣をさらに奥まで突き入れたところで動かなくなった。
 剣を抜こうとしたところで、周囲の他のコカトリスから次々に雷撃が飛んでくるが、ダイチに当たる直前で火花が散るだけだ。

 ダイチはコカトリスを足で抑え、突き立てた剣を抜く。

「オリカ、大丈夫か」

 視線はコカトリスの群れに向けたまま、問いかけるダイチ。

『来るときにも言ったでしょ。コカトリスてーどの攻撃じゃあ、わたしには通らないんだから』

 頼もしい言葉を返すオリカ。エヘンと胸をはった少女がそこにいるようだ。

「本当助かるよ」

 ダイチはコカトリスの群れの中に切り込んでいく。一体を袈裟斬りに両断し、振り向きざまに別の個体の腹部を斬りつける。
 しかし、勢いが足らなかったか、コカトリスが予想以上に硬かった為か腹部に食い込んだものの刃が途中で止まってしまった。

 周囲の他のコカトリスはチャンスだと思ったのか、剣を抜こうとしてるダイチに一斉にたかり始めた。

「大丈夫とは聞いてたけど、あまり気分の良いものじゃないな……」

 複数のコカトリスの集中攻撃に晒されているものの、口調に余裕のあるダイチ。
 ダイチはオリカの防御性能に関して事前にある程度聞いていた。コカトリスの攻撃でダメージを受けることはないとのことだった。

 コカトリスのくちばしによる攻撃は鉄板すら穿つ程の威力を持つ。これだけの数のコカトリスに集中攻撃をされたら、熊ですらミンチになるところだ。

 しかし、鎧に覆われていない部分にも攻撃を受けているが、まるで平気そうなダイチ。

『わたしの障壁はムテキよ!』

 調子に乗るだけの力を発揮しているオリカ。

「じゃあ、一体ずつ倒していくとするか」

 攻撃を受けないとしても、コカトリスを三十体近く倒すというのは中々に骨の折れる作業だ。
 林の太い木を数十本切り倒す作業は想像以上に大変なものだが、コカトリスの場合は攻撃もしてくるためいくら攻撃を受けないとしても、気を抜くわけにはいかずその労力は中々に過酷だ。

 さて、頑張るかとダイチが気合を入れたところでオリカから声がかかる。

『あれ? わたしがやってもいいんだよね?』

 何も問題ないよね?という様子のオリカ。

「え?」

 オリカの言ってる事の意味が分からないダイチ。

『うん! いくよー!』

 その瞬間、漆黒のプレートアーマーが閃き、一瞬で半径二十メートル内にいたコカトリスは全て黒い・・槍状のモノで串刺しになった。
 黒い槍状のものは全てプレートアーマーから生えている。

「………………」
 
 コカトリス達はもちろん何が起こったのか分からなかったはずだが、ダイチも数瞬何が起こったのか理解できなかった。

「オリカ……」

 何が起こったのかは大体理解できたが、驚きと呆れの中なんとかオリカに呼びかけるダイチ。

『ざっとこんなもんよ! どう? すごいでしょ! ほめてもいいのよ?』

 周囲の見える範囲のコカトリスを殲滅したため、黒い胸甲に戻ったオリカ。
 その声ははしゃいでるように聞こえる。

「こういうことできるなら教えておいてくれよ…………まあでも本当に助かった。ありがとな、オリカ」

 ダイチは優しく胸甲を撫でる。

『…………も、もっといっぱいなでていいのよ』

 さっきまではしゃいでいた大きな声と違って、どこか照れたように小さい声のオリカ。

「そこー! あんまりイチャつかないー!」

 ミレーニアが騎竜に乗ったまま近付いてきた。
 剣を抜いており、どうやら逃げ出したコカトリス数体を騎乗したまま片付けて回っていたようだ。

「ミレもおつかれ、とりあえず完了だな。砦に報告に戻ろう、コカトリスの片付けは砦の兵士に頼もう」

 イチャつくどうこうに関してはスルーすることにしたようだ。

「ダイチお疲れ様、それにオリカちゃんもお疲れ。しかし、さっきのヤバイね。あれを使いこなされたら私でもちょっとヤバイかも」

 コカトリス複数体を瞬殺したさっきの攻撃は、ミレーニアをして凄まじい攻撃だったようだ。
 ミレーニアにとってオリカは完全に女の子として「ちゃん」付けになっている。

『とーぜんよー、あー楽しかったー! また戦いにつれてきてね』

 強すぎる女の子達に囲まれ、オリカには物理的にも囲まれ、ダイチは静かに溜め息をついた。


■■■


 村の近くの砦には、コカトリスから避難した住民達がいる。ダイチ達は砦の兵士長に報告し、それを兵士達が避難していた住民に伝えた。

「コカトリスの退治が終わったらしいぞ」

「え、早すぎない? ちょっと前に依頼したばかりよ」

「ああ、それが魔王様直々に退治に出てくれたらしいぞ。それに滅茶苦茶強い騎士様が付き添ってたらしい」

「魔王様のいい人・・・だったりするのかな。お会いしてみたいわねー」

 その人柄か、その強さからか、住民達にも人気のある魔王様だった――。 

 
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