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第6話
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休み時間、
「ツリー、無かったの?」
清美が聞き返した。
「うん、だから柊矢さんと買いに行くんだけど良かったら一緒に来てくれる?」
「いいよ。置く場所は?」
「リビングに置くものじゃないの?」
「それは家によるよ。リビングが狭かったら玄関とかテーブルの上とか」
「場所はあるからリビングに置けると思う」
「そっか」
霧生家のリビングならそれなりに大きいものでも問題ない。
トラックで運ばなければならないような巨大なツリーを注文しようとしたくらいだからプラスチックのツリー程度なら値段も気にしないだろう。
大きいツリーならオーナメント形式のアドベントカレンダー七十二個飾れるはずだ。
清美は楸矢と小夜、柊矢の三人に色違いのアドベントカレンダーを贈る事にした。
中のお菓子は徳用大袋のチョコになっちゃうけど……。
「ケーキは普通のでいいんだよね?」
「特に決まりはないよ。流行り廃りはあるけど」
「最近の流行りは?」
「クリスマスはブッシュ・ド・ノエルかなぁ」
「クリスマスは?」
「何年か前から十二月一日から毎日シュトレンってケーキを食べるのが流行り始めたんだよ」
「毎日ケーキ食べるの?」
「待降節に一個のケーキを毎日少しずつ食べるんだよ」
「そうなんだ。清美はパーティで食べたいケーキある?」
清美に聞いてきたと言う事はおそらく楸矢や柊矢には希望が無かったのだ。
ツリーを持ってないくらいだからクリスマスにケーキを食べたりもしなかったか、食べたとしても元カノの好みに合わせていたのだろう。
「あたしは特に無いよ」
「ならブッシュ・ド・ノエル、作れそうなら作ってみる。あと、シュトレンって言うのも」
小夜はそう言って作り方を検索し始めた。
デパートの売り場は混雑していた。
「ツリーがいっぱいある……」
小さい物は三十センチ程度の物から大きいものは二メートルのものまで様々だった。
「どれにしたら良いの?」
小夜が困ったように清美に訊ねた。
一緒に来た柊矢も清美を見ている。
「柊矢さんちならこれくらいかな」
清美はそう言って一メートル半近いツリーを指した。
「これだけ大きいと車に入らないから配達ですね」
小夜が柊矢に言った。
「組み立て式だよ。まぁそれでも箱は大きいけど」
「飾りは……付いてるんだ。なら買わなくて良いのかな」
「あ、飾るのは三十日まで待って」
「うん、分かった」
「他に買う物は?」
柊矢が箱を手にして訊ねた。
「ツリーの飾りは付いてるので、後は特に……」
小夜がそう言うと柊矢はツリーの会計に向かった。
買い物を終えると三人はデパートの外に出た。
デパートの前には大きなクリスマスツリーがあり、植え込みもイルミネーションの電飾で飾られていた。
「ここも夜は綺麗そう。二十五日、晴れると良いね」
小夜がツリーや電飾を見ながら言った。
どうやら二十五日に清美と楸矢が中央公園に行く話は聞いているようだ。
「夜だから雨じゃなきゃ良いんだけどね。雪でも降ってくれればロマンチックなのになぁ。なんで東京って四月には積もるのに十二月には降らないんだろ」
「ちらつくくらいなら偶にあるだろ」
「クリスマスに降った事あります?」
「さぁな。クリスマスの天気なんか気にした事ないからな」
彼女がいたにも関わらずクリスマスの天気を気にした事が無いなんてデートをした事が無かったのだろうか。
柊矢さんから振ったって聞いたけどホントは振られたんじゃ……。
小夜はその点寛大というか気にしない性格なので問題ないと思うが。
そう言う意味ではお似合いなのかもしれない。
割れ鍋に綴じ蓋と言うか……。
翌日、清美と小夜は雑貨屋に来ていた。
クリスマスリースを買いに来たのだ。
小夜がリースを見ている間に清美はオーナメント形式のアドベントカレンダーを見ていた。
一セットだけなら大した金額ではないのだが三セットに加えて中に入れるお菓子代となるとかなりの金額になってしまう。
清美が悩んでいるところへ小夜が来た。
「楸矢さんへのプレゼント?」
清美が持っているラッピングペーパーを見て小夜が訊ねた。
「あ、小夜」
しまった!
一人で買いに来れば良かった……。
「清美、これプレゼントするの?」
「どうしようか考えてたんだ」
清美は曖昧に答えた。
「楸矢さん、喜ぶと思うよ」
「ホント?」
「うん、私も柊矢さんへのプレゼントこれにしようかな。違う種類のなら間違えないよね」
「そうだね」
「清美はどれにするの?」
「どれにしようかな……」
ま、いっか。
自分のは買わないようだし後で小夜の分を買お。
柊矢には別のものを用意すれば良いだろう。
「小夜、中身はどれ買うの?」
「え、お菓子ならなんでもいいんでしょ。自分で作るよ」
そうか……。
ケーキが作れるなら小さいお菓子くらい簡単だろう。
清美は中身用のお菓子に目を向けた。
買えそうな金額のものはどれもビニールに包まれている。
クッキーはビニールに包まれてる方が湿気る心配なくて良さそうだけど……。
カラフルな包みならともかく、透明なビニール包装だといかにも市販品という感じだ。
それに様々な色や形があるジンジャークッキーはともかく、それ以外のお菓子は見た目も味も同じものだ。
毎日同じお菓子では途中で開ける楽しみがなくなるだろう。
よほど味が良ければ別だろうが高校生の小遣いで買える金額のものがそんなに美味しいとは思えない。
「ツリー、無かったの?」
清美が聞き返した。
「うん、だから柊矢さんと買いに行くんだけど良かったら一緒に来てくれる?」
「いいよ。置く場所は?」
「リビングに置くものじゃないの?」
「それは家によるよ。リビングが狭かったら玄関とかテーブルの上とか」
「場所はあるからリビングに置けると思う」
「そっか」
霧生家のリビングならそれなりに大きいものでも問題ない。
トラックで運ばなければならないような巨大なツリーを注文しようとしたくらいだからプラスチックのツリー程度なら値段も気にしないだろう。
大きいツリーならオーナメント形式のアドベントカレンダー七十二個飾れるはずだ。
清美は楸矢と小夜、柊矢の三人に色違いのアドベントカレンダーを贈る事にした。
中のお菓子は徳用大袋のチョコになっちゃうけど……。
「ケーキは普通のでいいんだよね?」
「特に決まりはないよ。流行り廃りはあるけど」
「最近の流行りは?」
「クリスマスはブッシュ・ド・ノエルかなぁ」
「クリスマスは?」
「何年か前から十二月一日から毎日シュトレンってケーキを食べるのが流行り始めたんだよ」
「毎日ケーキ食べるの?」
「待降節に一個のケーキを毎日少しずつ食べるんだよ」
「そうなんだ。清美はパーティで食べたいケーキある?」
清美に聞いてきたと言う事はおそらく楸矢や柊矢には希望が無かったのだ。
ツリーを持ってないくらいだからクリスマスにケーキを食べたりもしなかったか、食べたとしても元カノの好みに合わせていたのだろう。
「あたしは特に無いよ」
「ならブッシュ・ド・ノエル、作れそうなら作ってみる。あと、シュトレンって言うのも」
小夜はそう言って作り方を検索し始めた。
デパートの売り場は混雑していた。
「ツリーがいっぱいある……」
小さい物は三十センチ程度の物から大きいものは二メートルのものまで様々だった。
「どれにしたら良いの?」
小夜が困ったように清美に訊ねた。
一緒に来た柊矢も清美を見ている。
「柊矢さんちならこれくらいかな」
清美はそう言って一メートル半近いツリーを指した。
「これだけ大きいと車に入らないから配達ですね」
小夜が柊矢に言った。
「組み立て式だよ。まぁそれでも箱は大きいけど」
「飾りは……付いてるんだ。なら買わなくて良いのかな」
「あ、飾るのは三十日まで待って」
「うん、分かった」
「他に買う物は?」
柊矢が箱を手にして訊ねた。
「ツリーの飾りは付いてるので、後は特に……」
小夜がそう言うと柊矢はツリーの会計に向かった。
買い物を終えると三人はデパートの外に出た。
デパートの前には大きなクリスマスツリーがあり、植え込みもイルミネーションの電飾で飾られていた。
「ここも夜は綺麗そう。二十五日、晴れると良いね」
小夜がツリーや電飾を見ながら言った。
どうやら二十五日に清美と楸矢が中央公園に行く話は聞いているようだ。
「夜だから雨じゃなきゃ良いんだけどね。雪でも降ってくれればロマンチックなのになぁ。なんで東京って四月には積もるのに十二月には降らないんだろ」
「ちらつくくらいなら偶にあるだろ」
「クリスマスに降った事あります?」
「さぁな。クリスマスの天気なんか気にした事ないからな」
彼女がいたにも関わらずクリスマスの天気を気にした事が無いなんてデートをした事が無かったのだろうか。
柊矢さんから振ったって聞いたけどホントは振られたんじゃ……。
小夜はその点寛大というか気にしない性格なので問題ないと思うが。
そう言う意味ではお似合いなのかもしれない。
割れ鍋に綴じ蓋と言うか……。
翌日、清美と小夜は雑貨屋に来ていた。
クリスマスリースを買いに来たのだ。
小夜がリースを見ている間に清美はオーナメント形式のアドベントカレンダーを見ていた。
一セットだけなら大した金額ではないのだが三セットに加えて中に入れるお菓子代となるとかなりの金額になってしまう。
清美が悩んでいるところへ小夜が来た。
「楸矢さんへのプレゼント?」
清美が持っているラッピングペーパーを見て小夜が訊ねた。
「あ、小夜」
しまった!
一人で買いに来れば良かった……。
「清美、これプレゼントするの?」
「どうしようか考えてたんだ」
清美は曖昧に答えた。
「楸矢さん、喜ぶと思うよ」
「ホント?」
「うん、私も柊矢さんへのプレゼントこれにしようかな。違う種類のなら間違えないよね」
「そうだね」
「清美はどれにするの?」
「どれにしようかな……」
ま、いっか。
自分のは買わないようだし後で小夜の分を買お。
柊矢には別のものを用意すれば良いだろう。
「小夜、中身はどれ買うの?」
「え、お菓子ならなんでもいいんでしょ。自分で作るよ」
そうか……。
ケーキが作れるなら小さいお菓子くらい簡単だろう。
清美は中身用のお菓子に目を向けた。
買えそうな金額のものはどれもビニールに包まれている。
クッキーはビニールに包まれてる方が湿気る心配なくて良さそうだけど……。
カラフルな包みならともかく、透明なビニール包装だといかにも市販品という感じだ。
それに様々な色や形があるジンジャークッキーはともかく、それ以外のお菓子は見た目も味も同じものだ。
毎日同じお菓子では途中で開ける楽しみがなくなるだろう。
よほど味が良ければ別だろうが高校生の小遣いで買える金額のものがそんなに美味しいとは思えない。
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