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魂の還る惑星 第六章 Al-Shi'ra -輝く星-
第六章 第七話
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それはともかく四年ほど間が空いてるとはいえ小夜と霧生兄弟の両親が呪詛で殺されたのは間違いないだろう。
そして霧生兄弟の祖父も殺された。
霧生兄弟の祖父が亡くなった当時、ムーシケーが霧生兄弟を助けたことや柊矢と付き合っていた沙陽がクレーイス・エコーだったことを考え合わせると彼らがクレーイス・エコーだったのは間違いないだろう。
あの頃、沙陽は自分がクレーイス・エコーになったと言っていて、誰かからクレーイスを渡されたわけでもないのに、また下らない戯言を、と呆れたのを覚えている。
理由は不明だが、どうやら沙陽にはムーソポイオスのクレーイス・エコーが分かるようだ。
だから小夜がクレーイスを持っているのを見る前からクレーイス・エコーだと知っていた。
そういう能力を持っているのか身内にそういう人間がいて教わったのかは知らないが。
だがクレーイス・エコーだから霧生兄弟が狙われたのか、それとも祖父を消したかったのか、あるいは三人とも抹殺しようとしたのかは分からない。
椿矢は溜息を吐いてノートパソコンを閉じた。
結局、分かったのは霧生兄弟の祖父と両親、それに小夜の両親が殺されたらしいということだけだ。
柊矢が貸してくれた霧生兄弟の祖父の日記や手紙などにも手懸かりは全くなかった。
呪詛の依頼のことや〝歌〟が聴こえるということも一切書いてなかった。
祖母が家を出たきっかけや離婚の理由にも触れていなかった。
小夜の祖父が娘の養子先の記録を処分して全く連絡を取らなかったように、霧生兄弟の祖父もムーシカやムーシコスに関係することは人に知られないようにするために意図的に書き記さなかったのだ。
ムーシコスのほとんどはムーシカが聴こえることを秘密にしているが、ここまで徹底して隠していた者は初めてだ。
おそらく呪詛を依頼されたことで身の危険を感じたのだろう。
唯一、関連がありそうな記述は柊矢の祖父が柊矢に二歳半でヴァイオリンを習わせ始めたということだ。
当初、柊矢の父はまだ早すぎると反対したが説き伏せたと書いていた。
なんと言って説得したかについての記述はなかった。
つまりムーシカやムーシコスに関係があることだったのだ。
霧生兄弟の祖父が息子に母親がいなくなった訳をどう説明したのかは不明だが、自分達に〝歌〟が聴こえるのが原因で出ていったということは知っていたのではないだろうか。
だから柊矢が〝歌〟のことをうっかり口走ってしまったときの予防策だと説明されて納得したのだろう。
楸矢が、子供をヴァイオリニスト――というかプロの音楽家――にしようと思っている親は二、三歳くらいから習わせ始めると言っていたが、ヴァイオリニストにしたかっただけなら秘密にする必要はないからそう書いていたはずだ。
おそらく楽器を習っていればムーシカを口ずさんだり人には聴こえない歌が聴こえると言っても周囲の者は作曲でもしてるのだと解釈して不審に思わないと考えたのだろう。
柊矢にヴァイオリンの才能があったのは偶然だったようだ。
楸矢にも三歳になる前からフルートを習わせ始めた。
ヴァイオリンではなくフルートにしたのは息子夫婦の死に疑念を抱き、万全の注意を払って演奏中は歌えない楽器を選んだのかもしれない。
二人が楽器を習っていた理由は推察できたものの、ここまで細心の注意を払って隠されたのでは呪詛の手懸かりを掴む役には立たない。
他にも殺害されたムーシコスがいるのかもしれないが知り合いでもない限り地球人との区別は付かない。
少なくとも雨宮家では呪殺と思われる死者は出てないし霍田家でも不審死をした者がいるという話は聞いてない。
小夜に関しては昔の事故と今回の呪詛は関係があるのだろうか。
二歳の時の事故は小夜を狙ったのだろうか。
だが、それなら十四年間の空白は一体どう考えればいいのだろうか。
……本当に十四年間狙われなかったのか?
そういえば楸矢が、小夜は柊矢と知り合うまでムーサの森を見たことがなかったと言っていた。
十四年間ムーサの森に飛ばされることがなかった。
つまり事故の類には遭わなかったということだ。
だとしてもムーシコスが十六歳になるまでムーサの森を見たことがないなんて有り得るのか?
それも抜きん出てムーシケーとの共感力が強い小夜の前に姿を現さなかった?
二歳の頃から護ってきたのに?
今までクレーイス・エコーでさえムーシケーは護ったことがなかった。
少なくとも椿矢は聞いたことがない。
夭折したクレーイス・エコーは幾らでもいる。
ましてや普通のムーシコスを護ったりはしない。
実際、霧生兄弟の祖父や父親、小夜の祖父や母親は助けなかった。
幼い頃から護られてきたなんて例外中の例外だ。
その例外にだけ姿を見せたことがなかった?
……護るため、か?
ムーサの森が姿を現せば他のムーシコスにも見えてしまう。
ムーシカを奏でる以外でムーシコスを見分ける方法はムーサの森に気付くことだ。
だから敢えて小夜の前にだけ出現しなかったのか?
小夜の祖父が娘を守るために養子に出した先の書類を処分して痕跡を残さなかったように、ムーシケーも小夜の存在をぎりぎりまで隠していたかったのだろうか。
小夜を守れる存在が現れるまで。
柊矢と出会うまで。
確か柊矢と一緒にいるときに初めて森を見たと言っていた。
柊矢が小夜をクレーイス・エコーに選んだことで庇護者が出来たことに安心して姿を現したのか?
柊矢が沙陽と付き合っていた頃は沙陽がクレーイス・エコーだったのだからムーシケーとしても最初から小夜をクレーイス・エコーにするつもりだったわけではないのかもしれないが結果的にそうなった。
そして霧生兄弟の祖父も殺された。
霧生兄弟の祖父が亡くなった当時、ムーシケーが霧生兄弟を助けたことや柊矢と付き合っていた沙陽がクレーイス・エコーだったことを考え合わせると彼らがクレーイス・エコーだったのは間違いないだろう。
あの頃、沙陽は自分がクレーイス・エコーになったと言っていて、誰かからクレーイスを渡されたわけでもないのに、また下らない戯言を、と呆れたのを覚えている。
理由は不明だが、どうやら沙陽にはムーソポイオスのクレーイス・エコーが分かるようだ。
だから小夜がクレーイスを持っているのを見る前からクレーイス・エコーだと知っていた。
そういう能力を持っているのか身内にそういう人間がいて教わったのかは知らないが。
だがクレーイス・エコーだから霧生兄弟が狙われたのか、それとも祖父を消したかったのか、あるいは三人とも抹殺しようとしたのかは分からない。
椿矢は溜息を吐いてノートパソコンを閉じた。
結局、分かったのは霧生兄弟の祖父と両親、それに小夜の両親が殺されたらしいということだけだ。
柊矢が貸してくれた霧生兄弟の祖父の日記や手紙などにも手懸かりは全くなかった。
呪詛の依頼のことや〝歌〟が聴こえるということも一切書いてなかった。
祖母が家を出たきっかけや離婚の理由にも触れていなかった。
小夜の祖父が娘の養子先の記録を処分して全く連絡を取らなかったように、霧生兄弟の祖父もムーシカやムーシコスに関係することは人に知られないようにするために意図的に書き記さなかったのだ。
ムーシコスのほとんどはムーシカが聴こえることを秘密にしているが、ここまで徹底して隠していた者は初めてだ。
おそらく呪詛を依頼されたことで身の危険を感じたのだろう。
唯一、関連がありそうな記述は柊矢の祖父が柊矢に二歳半でヴァイオリンを習わせ始めたということだ。
当初、柊矢の父はまだ早すぎると反対したが説き伏せたと書いていた。
なんと言って説得したかについての記述はなかった。
つまりムーシカやムーシコスに関係があることだったのだ。
霧生兄弟の祖父が息子に母親がいなくなった訳をどう説明したのかは不明だが、自分達に〝歌〟が聴こえるのが原因で出ていったということは知っていたのではないだろうか。
だから柊矢が〝歌〟のことをうっかり口走ってしまったときの予防策だと説明されて納得したのだろう。
楸矢が、子供をヴァイオリニスト――というかプロの音楽家――にしようと思っている親は二、三歳くらいから習わせ始めると言っていたが、ヴァイオリニストにしたかっただけなら秘密にする必要はないからそう書いていたはずだ。
おそらく楽器を習っていればムーシカを口ずさんだり人には聴こえない歌が聴こえると言っても周囲の者は作曲でもしてるのだと解釈して不審に思わないと考えたのだろう。
柊矢にヴァイオリンの才能があったのは偶然だったようだ。
楸矢にも三歳になる前からフルートを習わせ始めた。
ヴァイオリンではなくフルートにしたのは息子夫婦の死に疑念を抱き、万全の注意を払って演奏中は歌えない楽器を選んだのかもしれない。
二人が楽器を習っていた理由は推察できたものの、ここまで細心の注意を払って隠されたのでは呪詛の手懸かりを掴む役には立たない。
他にも殺害されたムーシコスがいるのかもしれないが知り合いでもない限り地球人との区別は付かない。
少なくとも雨宮家では呪殺と思われる死者は出てないし霍田家でも不審死をした者がいるという話は聞いてない。
小夜に関しては昔の事故と今回の呪詛は関係があるのだろうか。
二歳の時の事故は小夜を狙ったのだろうか。
だが、それなら十四年間の空白は一体どう考えればいいのだろうか。
……本当に十四年間狙われなかったのか?
そういえば楸矢が、小夜は柊矢と知り合うまでムーサの森を見たことがなかったと言っていた。
十四年間ムーサの森に飛ばされることがなかった。
つまり事故の類には遭わなかったということだ。
だとしてもムーシコスが十六歳になるまでムーサの森を見たことがないなんて有り得るのか?
それも抜きん出てムーシケーとの共感力が強い小夜の前に姿を現さなかった?
二歳の頃から護ってきたのに?
今までクレーイス・エコーでさえムーシケーは護ったことがなかった。
少なくとも椿矢は聞いたことがない。
夭折したクレーイス・エコーは幾らでもいる。
ましてや普通のムーシコスを護ったりはしない。
実際、霧生兄弟の祖父や父親、小夜の祖父や母親は助けなかった。
幼い頃から護られてきたなんて例外中の例外だ。
その例外にだけ姿を見せたことがなかった?
……護るため、か?
ムーサの森が姿を現せば他のムーシコスにも見えてしまう。
ムーシカを奏でる以外でムーシコスを見分ける方法はムーサの森に気付くことだ。
だから敢えて小夜の前にだけ出現しなかったのか?
小夜の祖父が娘を守るために養子に出した先の書類を処分して痕跡を残さなかったように、ムーシケーも小夜の存在をぎりぎりまで隠していたかったのだろうか。
小夜を守れる存在が現れるまで。
柊矢と出会うまで。
確か柊矢と一緒にいるときに初めて森を見たと言っていた。
柊矢が小夜をクレーイス・エコーに選んだことで庇護者が出来たことに安心して姿を現したのか?
柊矢が沙陽と付き合っていた頃は沙陽がクレーイス・エコーだったのだからムーシケーとしても最初から小夜をクレーイス・エコーにするつもりだったわけではないのかもしれないが結果的にそうなった。
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