8 / 47
春 八
しおりを挟む
「まぁ、それくらいなら……」
「お前と一緒に出掛ける時は物忌みって事にして仕事休めば良いし」
「あのなぁ……」
貴晴は呆れて隆亮を見た。
確かに物忌みを仕事を休む口実にする者は多いらしいが……。
邸から見た方角の方塞りと違い、物忌みは個人によって理由が異なるから真偽は他人には分かりにくい。
夢見が悪かったというのも物忌みの理由になるから言い訳として使いやすいのだ。
「隆亮殿は右大将の随身になった」
祖父が言った。
随身というのは護衛のことだが私的に雇っているのではなく、近衛府から派遣されるのだ警護の者なのだ。
そして隆亮は近衛府の役人である。
「え、そうなんですか?」
隆亮が驚いたように声を上げた。
どうやら隆亮自身も知らなかったらしい。
「無論、実際は貴晴の手伝いだ」
祖父が言った。
「もしどこかへ行くことになったら物忌み……」
「そんなことをしなくても右大将に話を通してある」
祖父が隆亮の言葉を遮って言った。
随身の仕事は警護だが、護衛している相手の遣いをすることもある。
例えば文を届けたりなどだ。
そして右大将というのは女好きで勇名を馳せている。
悪名と言うべきか……。
文を届けるように頼まれたことにすれば右大将の側にいなくても怪しまれないだろう。
しょっちゅう女に文を出してるだろうしな……。
話を通したのは祖父ではなく弾正台の話を持ち掛けてきた『誰か』だろう。
おそらく帝か上皇……。
貴晴は溜息を吐いた。
一生関わりたくないと思っていたのに……。
「じゃあ、早速行こう……」
何故か隆亮の方が乗り気で立ち上がった。
「隆亮、すまんが先に行っててくれるか」
「分かった」
隆亮はそう言うと出ていった。
貴晴が祖父に向き直る。
「隆亮にはどこまで話してあるんですか?」
貴晴が訊ねると、
「私がお前を弾正台に推挙したと言うことだけだ」
祖父が答えた。
「祖父上から話を持ち掛けたのですか!?」
貴晴が気色ばむと、
「隆亮殿にはそう話してあると言うだけだ」
祖父が「落ち着け」というように答える。
「では祖父上は話を持ち掛けられたのですね。どなたにですか」
「それが関係あるのか?」
「雇い主を知らずに働くことは出来ないでしょう」
貴晴が答えた。
「お前が正式に弾正台になると決まったら教える」
祖父の答えに貴晴は引き下がるしかなかった。
身分の高い者を調べて、場合によっては摘発するかもしれないのだから迂闊に人に漏らすわけにはいかないのは分かる。
邸を出ると牛車の前で隆亮が待っていた。
貴晴が隆亮に続いて牛車に乗ろうとした時、
「誰か!」
女性の叫び声が聞こえてきた。
檳榔毛の車からだ。
牛車の横を歩いていた男が驚いたように身体の向きを変えたが、別の男が、
「構わねぇ、このまま行くぞ!」
と声を掛ける。
どちらも牛飼童や貴族の使用人の格好ではない。
牛車を盗もうとしているのか……!
「おい、お前ら!」
貴晴は牛車に向かって駆け出した。
男達は貴晴が一人と見て取るとこちらに向かってこようとした。
貴族一人、どうということはないと思ったのだろう。
だが、貴晴の後ろから隆亮と供の者達も付いてきているのを見ると慌てて逃げ出した。
貴晴は牛車の横で足を止めたが、
「待て!」
従者達は盗賊達を追い掛けていく。
由太が隣を駆け抜けた瞬間、
「捕らえるなよ」
貴晴は由太にだけ聞こえる声で命じた。
由太は前を向いたまま頷くとそのまま走っていった。
「大丈夫ですか?」
貴晴はそう声を掛けてから御簾の下に見えている裾に気付いた。
桜の襲……。
さっき管大納言の牛車の御簾から見えていた裾と同じ色の襲だ。
管大納言の大姫なのか……?
貴晴はとっさに、
「花散らす 風はあらしと 思ふれど 過ぎ去りゆけば 心やすらへと」
と詠じた。
織子は車の中で歌を聞いてハッとした。
さっきの人……!?
「風の音に おぼゆる人の 声聞けば 憂い去りしと 心やすらぐ」
織子はが急いで歌を返す。
やはりさっきの……!
貴晴と織子が互いになんと言えばいいのか言葉を探している時、大納言家の随身と思しき男達が駆け付けてきた。
「助かりました」
随身の一人が貴晴達に礼を言った。
「どういう事だ! 何故姫から離れた!」
隆亮が叱責する。
そう言えば隆亮は随身達の上司か……。
「そ、それは……」
随身達が困ったように顔を見合わせると、
「あ、それは私が用を頼んだので……」
車の中から大姫が答えた。
「…………」
貴晴と隆亮は視線を交わした。
「あ、あの……」
大姫が困ったような声で言い掛けてから口籠もる。
大納言の随身は六人。
大の男が六人も必要になる用……?
大荷物を運ぶのでもない限り考えづらいし、どちらにしろそういうのは随身ではなくて使用人にさせるものだ。
となると自分で人払いをしたのかもしれない。
例えば男との逢瀬とかで……。
男と二人きりになりたくて人払いをしたのなら随身達が揃っていなくてもおかしくはないが……。
貴晴はさり気なく身体の向きを変えて牛車の前の御簾に視線を走らせた。
男物の衣裳の裾は出ていない。
貴晴が牛車の方に目を向けた時、辺りに盗賊以外の男はいなかったから一人で飛び降りて逃げたのでもないだろう。
となると男が裾を中に引き込んで、はみ出さないように抱え込んでいるのでもない限り乗っていないという事だ。
「そういうことなら……お気を付けて」
としか言いようがない。貴晴がそう声を掛けると、
「ありがとうございました」
という大姫の声を残して牛車は向きを変えた。
寺の方に戻っていく。管大納言の邸は反対方向だ。
なんでわざわざ寺に戻るんだ?
訝しみながら牛車を見つめていた貴晴は隆亮に促されて隆亮の牛車が止まっているところに戻った。
「どういう事!?」
牛車に乗ってきた匡が織子を咎めた。
「どうと聞かれても……」
織子が牛車を盗ませたわけではない。
一番驚いたのも怖い思いをしたのも織子だ。
それにしても……。
前に牛車から降りた時は殺されそうになったから今回は中で大人しくていていたのに……。
牛車には嫌な思い出しか……。
そう思い掛けてさっき助けてくれた人のことを思い出した。
まさか誰かと歌のやりとりが出来るとは思わなかった。
歌のやりとりなんて物語の中でしかあり得ないと思ってたのに……。
お互い姿が見えないのに歌だけで思いを伝え合うなんて……。
そう思うと胸がときめいた。
もっとも、これで終わりなのだが――。
下の句を詠んだ時もさっきも、お互いどこの誰か知らないのだ。
もし次の機会があったとしてもそれがさっきの人かどうかは知りようがない。
まさか合い言葉みたいに今朝の歌の下の句と上の句を言い合って確かめるわけにもいかない。
出来なくはないがあまり様にならない。
きっと一度だけの思い出にしておいた方がいいのだろう。
思い出はいつまでも綺麗なままだ。
「お前と一緒に出掛ける時は物忌みって事にして仕事休めば良いし」
「あのなぁ……」
貴晴は呆れて隆亮を見た。
確かに物忌みを仕事を休む口実にする者は多いらしいが……。
邸から見た方角の方塞りと違い、物忌みは個人によって理由が異なるから真偽は他人には分かりにくい。
夢見が悪かったというのも物忌みの理由になるから言い訳として使いやすいのだ。
「隆亮殿は右大将の随身になった」
祖父が言った。
随身というのは護衛のことだが私的に雇っているのではなく、近衛府から派遣されるのだ警護の者なのだ。
そして隆亮は近衛府の役人である。
「え、そうなんですか?」
隆亮が驚いたように声を上げた。
どうやら隆亮自身も知らなかったらしい。
「無論、実際は貴晴の手伝いだ」
祖父が言った。
「もしどこかへ行くことになったら物忌み……」
「そんなことをしなくても右大将に話を通してある」
祖父が隆亮の言葉を遮って言った。
随身の仕事は警護だが、護衛している相手の遣いをすることもある。
例えば文を届けたりなどだ。
そして右大将というのは女好きで勇名を馳せている。
悪名と言うべきか……。
文を届けるように頼まれたことにすれば右大将の側にいなくても怪しまれないだろう。
しょっちゅう女に文を出してるだろうしな……。
話を通したのは祖父ではなく弾正台の話を持ち掛けてきた『誰か』だろう。
おそらく帝か上皇……。
貴晴は溜息を吐いた。
一生関わりたくないと思っていたのに……。
「じゃあ、早速行こう……」
何故か隆亮の方が乗り気で立ち上がった。
「隆亮、すまんが先に行っててくれるか」
「分かった」
隆亮はそう言うと出ていった。
貴晴が祖父に向き直る。
「隆亮にはどこまで話してあるんですか?」
貴晴が訊ねると、
「私がお前を弾正台に推挙したと言うことだけだ」
祖父が答えた。
「祖父上から話を持ち掛けたのですか!?」
貴晴が気色ばむと、
「隆亮殿にはそう話してあると言うだけだ」
祖父が「落ち着け」というように答える。
「では祖父上は話を持ち掛けられたのですね。どなたにですか」
「それが関係あるのか?」
「雇い主を知らずに働くことは出来ないでしょう」
貴晴が答えた。
「お前が正式に弾正台になると決まったら教える」
祖父の答えに貴晴は引き下がるしかなかった。
身分の高い者を調べて、場合によっては摘発するかもしれないのだから迂闊に人に漏らすわけにはいかないのは分かる。
邸を出ると牛車の前で隆亮が待っていた。
貴晴が隆亮に続いて牛車に乗ろうとした時、
「誰か!」
女性の叫び声が聞こえてきた。
檳榔毛の車からだ。
牛車の横を歩いていた男が驚いたように身体の向きを変えたが、別の男が、
「構わねぇ、このまま行くぞ!」
と声を掛ける。
どちらも牛飼童や貴族の使用人の格好ではない。
牛車を盗もうとしているのか……!
「おい、お前ら!」
貴晴は牛車に向かって駆け出した。
男達は貴晴が一人と見て取るとこちらに向かってこようとした。
貴族一人、どうということはないと思ったのだろう。
だが、貴晴の後ろから隆亮と供の者達も付いてきているのを見ると慌てて逃げ出した。
貴晴は牛車の横で足を止めたが、
「待て!」
従者達は盗賊達を追い掛けていく。
由太が隣を駆け抜けた瞬間、
「捕らえるなよ」
貴晴は由太にだけ聞こえる声で命じた。
由太は前を向いたまま頷くとそのまま走っていった。
「大丈夫ですか?」
貴晴はそう声を掛けてから御簾の下に見えている裾に気付いた。
桜の襲……。
さっき管大納言の牛車の御簾から見えていた裾と同じ色の襲だ。
管大納言の大姫なのか……?
貴晴はとっさに、
「花散らす 風はあらしと 思ふれど 過ぎ去りゆけば 心やすらへと」
と詠じた。
織子は車の中で歌を聞いてハッとした。
さっきの人……!?
「風の音に おぼゆる人の 声聞けば 憂い去りしと 心やすらぐ」
織子はが急いで歌を返す。
やはりさっきの……!
貴晴と織子が互いになんと言えばいいのか言葉を探している時、大納言家の随身と思しき男達が駆け付けてきた。
「助かりました」
随身の一人が貴晴達に礼を言った。
「どういう事だ! 何故姫から離れた!」
隆亮が叱責する。
そう言えば隆亮は随身達の上司か……。
「そ、それは……」
随身達が困ったように顔を見合わせると、
「あ、それは私が用を頼んだので……」
車の中から大姫が答えた。
「…………」
貴晴と隆亮は視線を交わした。
「あ、あの……」
大姫が困ったような声で言い掛けてから口籠もる。
大納言の随身は六人。
大の男が六人も必要になる用……?
大荷物を運ぶのでもない限り考えづらいし、どちらにしろそういうのは随身ではなくて使用人にさせるものだ。
となると自分で人払いをしたのかもしれない。
例えば男との逢瀬とかで……。
男と二人きりになりたくて人払いをしたのなら随身達が揃っていなくてもおかしくはないが……。
貴晴はさり気なく身体の向きを変えて牛車の前の御簾に視線を走らせた。
男物の衣裳の裾は出ていない。
貴晴が牛車の方に目を向けた時、辺りに盗賊以外の男はいなかったから一人で飛び降りて逃げたのでもないだろう。
となると男が裾を中に引き込んで、はみ出さないように抱え込んでいるのでもない限り乗っていないという事だ。
「そういうことなら……お気を付けて」
としか言いようがない。貴晴がそう声を掛けると、
「ありがとうございました」
という大姫の声を残して牛車は向きを変えた。
寺の方に戻っていく。管大納言の邸は反対方向だ。
なんでわざわざ寺に戻るんだ?
訝しみながら牛車を見つめていた貴晴は隆亮に促されて隆亮の牛車が止まっているところに戻った。
「どういう事!?」
牛車に乗ってきた匡が織子を咎めた。
「どうと聞かれても……」
織子が牛車を盗ませたわけではない。
一番驚いたのも怖い思いをしたのも織子だ。
それにしても……。
前に牛車から降りた時は殺されそうになったから今回は中で大人しくていていたのに……。
牛車には嫌な思い出しか……。
そう思い掛けてさっき助けてくれた人のことを思い出した。
まさか誰かと歌のやりとりが出来るとは思わなかった。
歌のやりとりなんて物語の中でしかあり得ないと思ってたのに……。
お互い姿が見えないのに歌だけで思いを伝え合うなんて……。
そう思うと胸がときめいた。
もっとも、これで終わりなのだが――。
下の句を詠んだ時もさっきも、お互いどこの誰か知らないのだ。
もし次の機会があったとしてもそれがさっきの人かどうかは知りようがない。
まさか合い言葉みたいに今朝の歌の下の句と上の句を言い合って確かめるわけにもいかない。
出来なくはないがあまり様にならない。
きっと一度だけの思い出にしておいた方がいいのだろう。
思い出はいつまでも綺麗なままだ。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる