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薬種の庭(一年目、冬)
忖度するダンジョンコア
そうなってくると、そのうち滅ぼすことになるかもしれないからと、あまり深入りしないようにしていた近所の街と、もう少し友好的な関係を築いてもいいのではないだろうかという気にもなってくる。
そんなわけで。
〝小神殿〟への引っ越しを機に、セリオンの街というか、俺にとっての異世界における、人々の暮らしぶりに改めて興味と関心が湧いてきた今日この頃。
「小遣いほしいんだけどさー、この辺りって何が売れんの? ダンジョンがうち以外に三つもあれば大抵のものは揃うんじゃねぇ?」
「そうですね……」
困ったときのレイノルドとばかり、俺が尋ねると。レイノルドは書斎から地図を引っ張り出してきた。
中世ライクな丸い大地の地図だ。
まんなかに今いる王国の首都があって、大地の外側には海が広がっている。縮尺なんか当てにならない感じのやつ。
セリオンの街は王国の端。竜の峰と呼ばれる山脈の麓に存在している。
この地図にはダンジョンの場所も記されている――というか、街とダンジョンの位置関係を示しているもののようなので、よくわかるが。街から通える距離にダンジョンが四つもあるような街はセリオンだけだった。
他は街の近くにダンジョンがあったとしても、一つか二つ。
ダンジョンの場所は意外とまばらだし、気持ち偏ってもいて。王国の南側ほど街が多く、ダンジョンは少なく描かれていた。
「セリオンの街では〔豊穣の森〕から食料資源を、〔人形鉱〕からは鉱物資源が得られますし、国内屈指の攻略難易度を誇る〔試練の谷〕は冒険者で年間を通して賑わっていますから、魔石やダンジョン産のマジックアイテムも他の街より多く出回っていると思います」
「余所から冒険者が集まってきても飢える心配はないし、武器や防具の調達にも困らない。そう考えると至れり尽くせりだな」
その分、冒険者のレベルもピンキリで。上の方にはそれこそ〔試練の谷〕で腕を鳴らしているようなのがごろごろいる。
それがわかっているから、俺は〔人形鉱〕や〔試練の谷〕のような、冒険者をモンスターと戦わせて報酬を持ち帰らせるタイプのダンジョン運営はやらないことに決めていた。
「セリオンの街で不足しているもの、ということでしたら、まず思いつくのは薬です」
「薬? ポーションとかならそれこそ〔人形鉱〕か〔試練の谷〕で拾えるんじゃねぇの? 戦闘メインのダンジョンが回復アイテム出さないとかねぇだろ」
「街に持ち込まれるポーションの総数は、他の街よりも多いくらいだと思います。ですが〔人形鉱〕や〔試練の谷〕に挑戦する冒険者たちは手に入れたポーションを自分たちで消費してしまうので、セリオンの一般家庭にまでは行き届きません。〔豊穣の森〕は食料供給に特化した弊害とでも言いましょうか、毒としても使えてしまうような薬効のある植物はほとんど見つかっていないので、セリオンで暮らす非冒険者は初級ポーションで事足りてしまうような些細な体調不良でも神殿を頼っているのが現状です」
「じゃあうちでポーションか、薬の原料になるようなものを供給するのがまるい感じか」
「そのように取り計らっていただけると、セリオンの民には喜ばれると思います」
「いいじゃん。エルフが育てた薬草とか、めちゃくちゃ効きそうだし」
レイノルドは俺の異世界妖精郷計画を把握しているので、忖度された可能性も大いにあるが。それぞれ何十年、何百年と存在しているような古参のダンジョンに囲まれている現状、新興過ぎてたいしたリソースもないうちで他と同じようなことをやってもしょうがない。
ポーションそのものというより、薬になるようなもの、という括りで〔豊穣の森〕寄りの営業をすれば荒っぽい冒険者にダンジョンを荒らされるようなこともないだろうし。考えれば考えるほど、それは良い考えのように思えた。
「んじゃ、ひとまず試してみるか」
ダンジョン内に薬草を生やすと言っても方法は色々とあるが、どのみちたいしたコストはかからない。
そういう意味では取り返しがつかないレベルの失敗をする方が難しいくらいなので。草木も眠る冬の間に、俺はせっせと薬種事典を読み込むことにした。
そんなわけで。
〝小神殿〟への引っ越しを機に、セリオンの街というか、俺にとっての異世界における、人々の暮らしぶりに改めて興味と関心が湧いてきた今日この頃。
「小遣いほしいんだけどさー、この辺りって何が売れんの? ダンジョンがうち以外に三つもあれば大抵のものは揃うんじゃねぇ?」
「そうですね……」
困ったときのレイノルドとばかり、俺が尋ねると。レイノルドは書斎から地図を引っ張り出してきた。
中世ライクな丸い大地の地図だ。
まんなかに今いる王国の首都があって、大地の外側には海が広がっている。縮尺なんか当てにならない感じのやつ。
セリオンの街は王国の端。竜の峰と呼ばれる山脈の麓に存在している。
この地図にはダンジョンの場所も記されている――というか、街とダンジョンの位置関係を示しているもののようなので、よくわかるが。街から通える距離にダンジョンが四つもあるような街はセリオンだけだった。
他は街の近くにダンジョンがあったとしても、一つか二つ。
ダンジョンの場所は意外とまばらだし、気持ち偏ってもいて。王国の南側ほど街が多く、ダンジョンは少なく描かれていた。
「セリオンの街では〔豊穣の森〕から食料資源を、〔人形鉱〕からは鉱物資源が得られますし、国内屈指の攻略難易度を誇る〔試練の谷〕は冒険者で年間を通して賑わっていますから、魔石やダンジョン産のマジックアイテムも他の街より多く出回っていると思います」
「余所から冒険者が集まってきても飢える心配はないし、武器や防具の調達にも困らない。そう考えると至れり尽くせりだな」
その分、冒険者のレベルもピンキリで。上の方にはそれこそ〔試練の谷〕で腕を鳴らしているようなのがごろごろいる。
それがわかっているから、俺は〔人形鉱〕や〔試練の谷〕のような、冒険者をモンスターと戦わせて報酬を持ち帰らせるタイプのダンジョン運営はやらないことに決めていた。
「セリオンの街で不足しているもの、ということでしたら、まず思いつくのは薬です」
「薬? ポーションとかならそれこそ〔人形鉱〕か〔試練の谷〕で拾えるんじゃねぇの? 戦闘メインのダンジョンが回復アイテム出さないとかねぇだろ」
「街に持ち込まれるポーションの総数は、他の街よりも多いくらいだと思います。ですが〔人形鉱〕や〔試練の谷〕に挑戦する冒険者たちは手に入れたポーションを自分たちで消費してしまうので、セリオンの一般家庭にまでは行き届きません。〔豊穣の森〕は食料供給に特化した弊害とでも言いましょうか、毒としても使えてしまうような薬効のある植物はほとんど見つかっていないので、セリオンで暮らす非冒険者は初級ポーションで事足りてしまうような些細な体調不良でも神殿を頼っているのが現状です」
「じゃあうちでポーションか、薬の原料になるようなものを供給するのがまるい感じか」
「そのように取り計らっていただけると、セリオンの民には喜ばれると思います」
「いいじゃん。エルフが育てた薬草とか、めちゃくちゃ効きそうだし」
レイノルドは俺の異世界妖精郷計画を把握しているので、忖度された可能性も大いにあるが。それぞれ何十年、何百年と存在しているような古参のダンジョンに囲まれている現状、新興過ぎてたいしたリソースもないうちで他と同じようなことをやってもしょうがない。
ポーションそのものというより、薬になるようなもの、という括りで〔豊穣の森〕寄りの営業をすれば荒っぽい冒険者にダンジョンを荒らされるようなこともないだろうし。考えれば考えるほど、それは良い考えのように思えた。
「んじゃ、ひとまず試してみるか」
ダンジョン内に薬草を生やすと言っても方法は色々とあるが、どのみちたいしたコストはかからない。
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