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第一部 在らざる異世界にて
000 はじまりの日
しおりを挟む気がつけば、『この世』に生まれ落ちていた。
(わたし、は――)
ダンジョンコアによって生み出されたベリーレアユニット《異邦人》。
(ここ、は?)
ダンジョンのユニット製造所。
そして――
「あなた、が……わたしの……マスター?」
「そうだ」
自分のものではない知識が頭の中にあって、理性は違和感なくそれを受け入れる。
置き去りにされかけた感情も、簡素な祭壇から生み出された『私』の前に立つ『マスター』の姿を一目見たことで、殊の外あっさりと、自分の置かれた異常な状況に適応した。
(めちゃくちゃ好みの美少年……!)
彼を護り、敵を倒し、このダンジョンを成長させる。
自分に出来ること。成すべきことの全ては、教えられるまでもなく自然と理解できていた。
はじめこそ、強く感じられた違和感もあっという間に薄れていって。生み落とされたばかりの、まだ何をするにも覚束ない体を引きずって、私は自ら『彼』の前に跪く。
「ベリーレアユニット《異邦人》。心からの献身と約束された勝利を、あなたに。――私の御主人様」
そんな具合に、私の異世界での日々ははじまった。
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