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魔法の剣
ペチャク
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「う、うーん、うーん」
「ガーンダム、しっかりしろ」
「うっ、ここは?」
「医務室だ。さっきは、すまん」
ガーンダムが気を失って、テックは医務室に直行した。たまに練習中の事故はあるので、冒険学校の医務室は夜間も開いている。
「しかし、お前には驚かされる」
意識をしっかり取り戻してから、ガーンダムは話し始めた。
「何がだ」
「俺が長剣を使わせた理由は分かるな」
「え?いや、よく分かってねえ」
「それは嘘だ。俺には分かる。模擬戦の動きは、短剣使いではなく長剣使いだった。間合いの取り方の時点で、俺でなくとも勘づいたヤツはいるだろうよ」
長剣に慣れた者は、剣道でいう中段の構えで戦う。そして、短剣の場合においても構え方がある。
生粋の短剣使いは武器のリーチの短さがあるために、中段の構えでは隙を消せない。よって、長剣と比べると、上段や下段に近い構えが主流なのだ。
「いやいや、俺は中段でもそこそこ勝ったぞ」
テックは反論した。しかし、今はガーンダムを倒した事実がある。
「抜かせ。長剣なら、実力で俺と戦えていただろう」
「買いかぶりすぎだ、熱くなるのは分かるけどよ。さっきのは、まぐれだ」
「もう1回、勝負せい。次は俺も真空弾を解禁するぞ」
二人は似た者同士だ。戦いの事となると夢中になり、会話が途切れる事がない。
「失礼するネ。ガーンダム、ここ、いるカ」
訛りのある独特な喋りの美声が聞こえてきた。医務室の保険医、ペチャク=チンチだ。
「こ、ここにおりますとも。ペチャク先生ェ」
ガーンダムは明らかにペチャクに好意を寄せた声色を放った。
「首の骨、ひびあるアル。病院、行くヨロシね」
「うそぉおおん」
「マジかよ、本当すまん」
テックとの戦いで、頚部にダメージを負ったガーンダムは、ペチャクの触診により骨折を指摘され、全治2ヶ月という結構な結果となったのだった。
「刺客に対しての力でやっちまったからなあ」
その日の深夜。神託の庭で、テックはフレイアと会話していた。
「お前、隠し抜くつもりあるのか?」
「ガーンダムは強え。ああいう実力があるヤツに手加減出来るほど余裕は、ないんだ」
「なるほど。では、更に圧倒的に強くなり、余裕を育てる以外に道はないんだぜ」
そして、疾風飛びの完成を目指した練習を始めた。また、薬草採取依頼を始めた辺りで、テックにはもう1つ習得しておきたい技があった。
魔法剣の四。
第四剣、輪廻だ。
「輪廻ってのは、生命の巡り。それは分かる。だがそれで戦うって、どういう事なんだ」
「強い事だけが強さ。テック、お前はまだそこから飛び出せてないんだぜ」
「ますます意味が分からん」
「負ければ良い。イヤでも分かる」
突き放された。そう悟ったテックであった。
ペチャク=チンチ。医務室勤務1年という新人ながら、世界有数のフォルータ医科大学に現役で首席入学し、そのまま成績優秀で卒業した天才だ。
元はカトウェック大陸にある大勢力、イクラ王道連邦に従う宗教家の一族であったが、カルト色が色濃い両親の指導に反発し、故郷を飛び出した。
そのため、10代前半から独り暮らしだ。
冒険学校においては、自由人として知られている。とりわけ美人ではないが恋の噂が特に目立ち、一回り年の差がある学生と付き合っては別れ、浮気は数えきれず、修羅場に立ち会った学生もまた数知れないという。
武芸は今一つなため、強い男性に守ってもらおうとする傾向があるようだが、それがペチャクの人間的な弱点、欠点となっているのだ。
一方で、人生経験だけは豊富なため、常識ある教養人の顔も持つ。雑誌にコラムを持っているほどだ。
エッセイの執筆経験もある。また、独身女性にとってはカリスマ的存在であるため、学校外の人間からサインを求められる事もある。
我々の世界で言う所の、お騒がせ芸能人に匹敵する存在なのだ。
テックやショーンは、ペチャクに取り立てて興味はないが、アナは意外にもミーハーな所がある。
「ペチ姉さん。新鮮なイケメンの情報ですぜ」
「おお、お主もワルよのう。ほほほ」
そうして、汚い手で有名人からサインを貰うアナなのだった。
「なんだか最近、アナ、楽しそうだね」
「ああ、なんでも俺たちみたいなイモ男に囲われるのも飽きてきたらしいぜ」
「そうなんだ」
どうでも良い会話しかないテックとショーンは、ガーンダムの見舞いに行く事にした。模擬戦が終わったところで中間試験の勉強が忙しいのだが、だからと言ってあまりにガーンダムがかわいそうだ、という話の流れになったからだ。
「おう、テックとそのお供じゃねえか」
「お、おとも」
「いや、お供みたいだけど友だちだ」
「あの、毒を吐かれるような事したっけ?」
ガーンダムは見た目には健康そのものだが、あれから徐々に首の痛みが強まり、今は鎮痛剤と抗生物質で小康状態なようだ。
「薬の副作用でずっと眠いからよ、用なら手短に頼む」
「いや、ただの見舞いだ。お大事にな」
「お大事に」
本当にお供みたいだ、とショーンは密かに思ったのだった。
「ガーンダム、しっかりしろ」
「うっ、ここは?」
「医務室だ。さっきは、すまん」
ガーンダムが気を失って、テックは医務室に直行した。たまに練習中の事故はあるので、冒険学校の医務室は夜間も開いている。
「しかし、お前には驚かされる」
意識をしっかり取り戻してから、ガーンダムは話し始めた。
「何がだ」
「俺が長剣を使わせた理由は分かるな」
「え?いや、よく分かってねえ」
「それは嘘だ。俺には分かる。模擬戦の動きは、短剣使いではなく長剣使いだった。間合いの取り方の時点で、俺でなくとも勘づいたヤツはいるだろうよ」
長剣に慣れた者は、剣道でいう中段の構えで戦う。そして、短剣の場合においても構え方がある。
生粋の短剣使いは武器のリーチの短さがあるために、中段の構えでは隙を消せない。よって、長剣と比べると、上段や下段に近い構えが主流なのだ。
「いやいや、俺は中段でもそこそこ勝ったぞ」
テックは反論した。しかし、今はガーンダムを倒した事実がある。
「抜かせ。長剣なら、実力で俺と戦えていただろう」
「買いかぶりすぎだ、熱くなるのは分かるけどよ。さっきのは、まぐれだ」
「もう1回、勝負せい。次は俺も真空弾を解禁するぞ」
二人は似た者同士だ。戦いの事となると夢中になり、会話が途切れる事がない。
「失礼するネ。ガーンダム、ここ、いるカ」
訛りのある独特な喋りの美声が聞こえてきた。医務室の保険医、ペチャク=チンチだ。
「こ、ここにおりますとも。ペチャク先生ェ」
ガーンダムは明らかにペチャクに好意を寄せた声色を放った。
「首の骨、ひびあるアル。病院、行くヨロシね」
「うそぉおおん」
「マジかよ、本当すまん」
テックとの戦いで、頚部にダメージを負ったガーンダムは、ペチャクの触診により骨折を指摘され、全治2ヶ月という結構な結果となったのだった。
「刺客に対しての力でやっちまったからなあ」
その日の深夜。神託の庭で、テックはフレイアと会話していた。
「お前、隠し抜くつもりあるのか?」
「ガーンダムは強え。ああいう実力があるヤツに手加減出来るほど余裕は、ないんだ」
「なるほど。では、更に圧倒的に強くなり、余裕を育てる以外に道はないんだぜ」
そして、疾風飛びの完成を目指した練習を始めた。また、薬草採取依頼を始めた辺りで、テックにはもう1つ習得しておきたい技があった。
魔法剣の四。
第四剣、輪廻だ。
「輪廻ってのは、生命の巡り。それは分かる。だがそれで戦うって、どういう事なんだ」
「強い事だけが強さ。テック、お前はまだそこから飛び出せてないんだぜ」
「ますます意味が分からん」
「負ければ良い。イヤでも分かる」
突き放された。そう悟ったテックであった。
ペチャク=チンチ。医務室勤務1年という新人ながら、世界有数のフォルータ医科大学に現役で首席入学し、そのまま成績優秀で卒業した天才だ。
元はカトウェック大陸にある大勢力、イクラ王道連邦に従う宗教家の一族であったが、カルト色が色濃い両親の指導に反発し、故郷を飛び出した。
そのため、10代前半から独り暮らしだ。
冒険学校においては、自由人として知られている。とりわけ美人ではないが恋の噂が特に目立ち、一回り年の差がある学生と付き合っては別れ、浮気は数えきれず、修羅場に立ち会った学生もまた数知れないという。
武芸は今一つなため、強い男性に守ってもらおうとする傾向があるようだが、それがペチャクの人間的な弱点、欠点となっているのだ。
一方で、人生経験だけは豊富なため、常識ある教養人の顔も持つ。雑誌にコラムを持っているほどだ。
エッセイの執筆経験もある。また、独身女性にとってはカリスマ的存在であるため、学校外の人間からサインを求められる事もある。
我々の世界で言う所の、お騒がせ芸能人に匹敵する存在なのだ。
テックやショーンは、ペチャクに取り立てて興味はないが、アナは意外にもミーハーな所がある。
「ペチ姉さん。新鮮なイケメンの情報ですぜ」
「おお、お主もワルよのう。ほほほ」
そうして、汚い手で有名人からサインを貰うアナなのだった。
「なんだか最近、アナ、楽しそうだね」
「ああ、なんでも俺たちみたいなイモ男に囲われるのも飽きてきたらしいぜ」
「そうなんだ」
どうでも良い会話しかないテックとショーンは、ガーンダムの見舞いに行く事にした。模擬戦が終わったところで中間試験の勉強が忙しいのだが、だからと言ってあまりにガーンダムがかわいそうだ、という話の流れになったからだ。
「おう、テックとそのお供じゃねえか」
「お、おとも」
「いや、お供みたいだけど友だちだ」
「あの、毒を吐かれるような事したっけ?」
ガーンダムは見た目には健康そのものだが、あれから徐々に首の痛みが強まり、今は鎮痛剤と抗生物質で小康状態なようだ。
「薬の副作用でずっと眠いからよ、用なら手短に頼む」
「いや、ただの見舞いだ。お大事にな」
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本当にお供みたいだ、とショーンは密かに思ったのだった。
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