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4.幻想城
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勇者は少しだけ、嘘を吐いていた。しかし最後には深海に向かうので、全くの嘘を言ったのでもなかった。
キャル達は空を目指した。
そして、これより勇者ラヒエが辿った路をキャルは辿る。何故なら、キャルは貝の国にとって正真正銘、勇者ラヒエだからだ。
そして、キャルに従っていた魔神こそが後の滅びの魔神なのだ。
天を目指したのは、キャルの儚い我が儘。しかしそれが最初に交わした魔神との契約でもあり、向かうしかなかった。
スクロールを読み上げた時の事を、キャルは思い返していた。
「死を覚悟したわ。あなたはどう見ても人の命を喰らう者だもの」
魔神は、ラヒエは何も答えない。
「どうせ私は、もうすぐ死ぬけど」
キャルは不治の病だった。魔神との契約で生命力を受けなかったら、とっくに命が果てていたのだ。
だが、尽きるはずの命を長らえるのは魔神の大魔力をもってすら実は困難な業だ。故に、少女はもうすぐその余りに短い生涯に幕を閉じる。
ただ、天を目指すその瞳は、その真っ直ぐさは最早、勇者と呼んでも構わない輝きを伴っていた。
「本当は契約の外になるだろうけど」
キャルは姿を現さない魔神に語りかけた。
「海の一番深い所に、お城を建ててね」
魔神は何も答えない。
「そして、私はそこにずっといたい」
魔神は何も答えない。
そして、水面に到着した。
太陽の光。青い空。白い雲。
それが少女の見た最期の景色だった。
魔神は、それをただ何処かからずっと見届けていた。そして、やがて魔神は少女を青年勇者の姿の使い魔とした。肉体を媒介に、適当な精霊を宿したのだ。
魔神と少女の契約は、それでも終わらない。契約人の死ごときで、魔神の契約は破棄されないのだ。
精神と肉体の消滅。これこそがその条件。
しかし魔神は、深海を目指し始めた。少女だった存在を連れて。
感傷ではなかった。それは予感と言うのが正しかった。魔神はそうするのが当然、正しいと直感したのだ。
それに、契約の事もあった。魔神ともなると下級の神とは違い、無効契約を無視しても大した事にはならない。だがラヒエは妙に義理堅い所のある魔神だ。
少女の願いを引き受ける事の重み、それだけは人間よりもずっと知っているのだ。
だが、魔神は魔神。所詮は人と相容れるには至らない宿命がある。まず、生命としてあまりに利害が一致しないのだ。
それは恐竜と人間ならばどちらかしか生き残らないだろうという理屈にも似た、運命論であり、生命論である。ラヒエは運命としての生命を今、ひしと感じているのだ。
キャル達は空を目指した。
そして、これより勇者ラヒエが辿った路をキャルは辿る。何故なら、キャルは貝の国にとって正真正銘、勇者ラヒエだからだ。
そして、キャルに従っていた魔神こそが後の滅びの魔神なのだ。
天を目指したのは、キャルの儚い我が儘。しかしそれが最初に交わした魔神との契約でもあり、向かうしかなかった。
スクロールを読み上げた時の事を、キャルは思い返していた。
「死を覚悟したわ。あなたはどう見ても人の命を喰らう者だもの」
魔神は、ラヒエは何も答えない。
「どうせ私は、もうすぐ死ぬけど」
キャルは不治の病だった。魔神との契約で生命力を受けなかったら、とっくに命が果てていたのだ。
だが、尽きるはずの命を長らえるのは魔神の大魔力をもってすら実は困難な業だ。故に、少女はもうすぐその余りに短い生涯に幕を閉じる。
ただ、天を目指すその瞳は、その真っ直ぐさは最早、勇者と呼んでも構わない輝きを伴っていた。
「本当は契約の外になるだろうけど」
キャルは姿を現さない魔神に語りかけた。
「海の一番深い所に、お城を建ててね」
魔神は何も答えない。
「そして、私はそこにずっといたい」
魔神は何も答えない。
そして、水面に到着した。
太陽の光。青い空。白い雲。
それが少女の見た最期の景色だった。
魔神は、それをただ何処かからずっと見届けていた。そして、やがて魔神は少女を青年勇者の姿の使い魔とした。肉体を媒介に、適当な精霊を宿したのだ。
魔神と少女の契約は、それでも終わらない。契約人の死ごときで、魔神の契約は破棄されないのだ。
精神と肉体の消滅。これこそがその条件。
しかし魔神は、深海を目指し始めた。少女だった存在を連れて。
感傷ではなかった。それは予感と言うのが正しかった。魔神はそうするのが当然、正しいと直感したのだ。
それに、契約の事もあった。魔神ともなると下級の神とは違い、無効契約を無視しても大した事にはならない。だがラヒエは妙に義理堅い所のある魔神だ。
少女の願いを引き受ける事の重み、それだけは人間よりもずっと知っているのだ。
だが、魔神は魔神。所詮は人と相容れるには至らない宿命がある。まず、生命としてあまりに利害が一致しないのだ。
それは恐竜と人間ならばどちらかしか生き残らないだろうという理屈にも似た、運命論であり、生命論である。ラヒエは運命としての生命を今、ひしと感じているのだ。
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