10 / 10
5.最果て
下
しおりを挟む
貝の国の人々はデリヒクを温かく迎えてくれた。魔神の魔力が消えて、貝の国からの優しい気配は深海からでも分かるようになり、デリヒクは無事に帰る事が出来たのだった。
深海の一番深い場所が分かってきたのは、それから更に50年近く後の事だった。
深海からの魔魚人らとの壮絶な死闘や近隣諸国との冷戦の開始など、決して一筋縄ではいかなかった。
長く過酷な、厳しい時代をくぐり抜け、平和の尊さを皆が噛み締めて訪れた、文明的で平和な時代からの発見だ。
そして、理不尽で訳の分からないバイブルは否定されてオカルトとなり、過激な行き過ぎた科学もまた見直された、そんな時代が訪れてやっと認められた功績だ。
深海の底にあたる、世界の中心。そこには何もなかった。完全な無である事が証明されたのだ。
デリヒクがその場所を訪れたのは、それから更に3年後だ。今度は頼れる戦士たちと共に深海に向かっていった。深海の底に魔力も生命の気配もない事を、デリヒクは世界盟合の代表として確認した。
その頃にはデリヒクは王となっており、二人の息子と五人の孫がいた。
何か懐かしい気配もある気がしたが、一瞬の事のように思われた。デリヒクはその長い生涯の中であと7回、中心を訪れた。
そして、やはり何もない事をその度に確かめた。
幻想城の魔神のような深く記憶に刻まれる悲しい戦いも幾つか乗り越えた。ただ、今度は仲間がいた。デリヒクは皆の力を借りながら、今でも少しずつ強くなっている。そう実感する事が出来たのだ。
何もかもが思い通りになった訳ではない。人間とて万能ではないし、誤解や衝突も何度もあった。人を信じるに足る賢者が理不尽に命を落とした事もあった。
水世界はあたかもファンタジーだが、そこで起こる出来事は現実なのだ。
その度に人は悲しみと向き合う事を強いられた。ある者は全てに無関心になり、ある者は腐敗し、またある者は全てを敵にした。
ある者は忍耐を強いられ、ある者は孤独を選び、またある者は平穏を勝ち取った。
デリヒクは最期の瞬間まで勇敢で聡明だった。人は彼を何度も見直したし、何度も助けられた。
それら全ての物語をここに記すには、余りにも時間が足りず残念に思う。
けれども、人はどんな世界でも何かを成す事を目指すのだろう。そうした無限の物語はウォーター・ダウンにおいても、永遠に紡がれていくのだ。
さて、ここに一人の魔神がいる。デリヒクと瓜二つのその魔神はいずれ王に成り代わり、世界を混乱に陥れるのだが、それはまたいずれ話そう。
深海の一番深い場所が分かってきたのは、それから更に50年近く後の事だった。
深海からの魔魚人らとの壮絶な死闘や近隣諸国との冷戦の開始など、決して一筋縄ではいかなかった。
長く過酷な、厳しい時代をくぐり抜け、平和の尊さを皆が噛み締めて訪れた、文明的で平和な時代からの発見だ。
そして、理不尽で訳の分からないバイブルは否定されてオカルトとなり、過激な行き過ぎた科学もまた見直された、そんな時代が訪れてやっと認められた功績だ。
深海の底にあたる、世界の中心。そこには何もなかった。完全な無である事が証明されたのだ。
デリヒクがその場所を訪れたのは、それから更に3年後だ。今度は頼れる戦士たちと共に深海に向かっていった。深海の底に魔力も生命の気配もない事を、デリヒクは世界盟合の代表として確認した。
その頃にはデリヒクは王となっており、二人の息子と五人の孫がいた。
何か懐かしい気配もある気がしたが、一瞬の事のように思われた。デリヒクはその長い生涯の中であと7回、中心を訪れた。
そして、やはり何もない事をその度に確かめた。
幻想城の魔神のような深く記憶に刻まれる悲しい戦いも幾つか乗り越えた。ただ、今度は仲間がいた。デリヒクは皆の力を借りながら、今でも少しずつ強くなっている。そう実感する事が出来たのだ。
何もかもが思い通りになった訳ではない。人間とて万能ではないし、誤解や衝突も何度もあった。人を信じるに足る賢者が理不尽に命を落とした事もあった。
水世界はあたかもファンタジーだが、そこで起こる出来事は現実なのだ。
その度に人は悲しみと向き合う事を強いられた。ある者は全てに無関心になり、ある者は腐敗し、またある者は全てを敵にした。
ある者は忍耐を強いられ、ある者は孤独を選び、またある者は平穏を勝ち取った。
デリヒクは最期の瞬間まで勇敢で聡明だった。人は彼を何度も見直したし、何度も助けられた。
それら全ての物語をここに記すには、余りにも時間が足りず残念に思う。
けれども、人はどんな世界でも何かを成す事を目指すのだろう。そうした無限の物語はウォーター・ダウンにおいても、永遠に紡がれていくのだ。
さて、ここに一人の魔神がいる。デリヒクと瓜二つのその魔神はいずれ王に成り代わり、世界を混乱に陥れるのだが、それはまたいずれ話そう。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる